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プロローグ

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最初は弟が出来て嬉しかった。
黒髪黒目でカラスと呼ばれていた僕とは違い、
黄金の髪に深紅の目。
まるでお人形のような見た目をしている少年は、シャルルと言った。

「よ、……よろしくね、?」

幼いながらもあるだけの勇気を振り絞って僕はシャルルに手を差し出した。
しかし、対等な立場だと思っていたのは僕だけのようで
握り返すことなく、パシッと手を振り払われた。

「……え?」

「所詮は下級貴族のあの女の子。上級貴族様と同等に扱ってもらえると思うなよ。」

そう言う父親の目は冷たく、虫でも見るかのようなめつきだった。

その日から僕の人生は地獄とかした。

蝶よ花よと育てられるシャルルとは違い、日の当たらない狭い狭い小部屋にただ1人。
与えられたのは石のように硬いベッドのみだった。
食事はシャルル達が残した残飯だけが与えられた。

「シャルル、クッキーはいかが?」

と優しく問いかける継母の声。

「食べる!」

家族愛が詰まった会話を、僕は指を加えながら扉越しに聞くことしか出来なかった。

そうして何年もの月日が経ち、シャルルが成人した。
この1ヶ月後に皇帝の生誕を記念するパーティーが開催されると伝書鳩が伝えに来た。

このパーティーに参加できるのは成人した人のみ。
皇帝は今年で24。16で成人するこの国に20を超えても皇帝に妃が居ないことは珍しいことだ。

生誕パーティーは皇帝に自分の存在をアピールするにはうってつけな場所で、貴族たちはこれでもかと自分を飾り付けて現れる。

妃の座を狙うのはシャルルも同じで1ヶ月後に備えて新しい服の慎重したりなど忙しそうにしていた。

「お前も今回のパーティーには出席するからな。」

そういったものに無縁のはずだった僕にとって、まさに目が点になる話だった。
 
「勘違いしないでちょうだい。お前はシャルルの引き立て役として連れていくだけよ。」

「……はい。」

「あとねえ、先に教えてあげるわ。シャルルはどうせ妃になれる。そうなればお前は用済み。だからこのパーティーが終了した時点でお前は追放よ。」

「……え……、?」

追……放……
その言葉が僕の頭で反響する。
そんなことされたら僕はどうやって生きていけばいいのだろうか。

身長も169と低く、力も無いためギルドに所属して生きていくのは無理だ。
かと言って学がある訳でもないため、学が必要な職には付けない。

どうしようもできない事実に頭が真っ白になる。

「とにかくお前はシャルルが気に入られるように努力しなさい。」

僕を見ることも無くそう言うと継母は去ってしまった、
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