嫁ぎ先は青髭鬼元帥といわれた大公って、なぜに?

猫桜

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淡雪、大公家の由来に迫る

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「説明して貰おうか」

 立ったままの光顕を正面に見据えた。

「?何をでしょうか?」

「なぜ、態度が一変したのかをさ」

 忠義者の光顕だから本心を吐露させるには一筋縄ではいかないだろうと思っていたのだが・・・

「ああ、その事ですか。はい、わかりました」

 間髪を入れず、ひそやかではあるが、きびきびした声であっさりと言ったので拍子抜けしてしまった。
 僕は光顕に座るよう促した。
 誰も入ってこれないよう扉を閉めた晴がスッと部屋の隅に控えた。

「先ずは、大公であられる直江様が都ではなく、何故このような辺境な場所におられるのか、そこからお話しさせてください」

 僕が何かいうよりも前に光顕が口をきった。
 なんだか長くなりそうな気配だよな。

「直江様の父君、先の大公閣下と病床に伏されている陛下とは叔父甥の間柄でいらっしゃったのはご存知でいらっしゃると思います」

 ・・・ごめん、今、知りました。
 そうなの?直江ってめちゃくちゃ高貴な血筋じゃん。
 春は知ってたのかな?と春を見る。
 “だ~から~、釣書をバランスゲームみたいに~積上げてないで見てください~と言いましたでしょ”と、ジト目で語っている。
 仕方ないだろ。興味もなかったし、ウザかったんだからさ。
 いまから生きた情報を得るからいいじゃん。

「直江様の祖父でいらっしゃれた直嗣様は先の恭仁陛下の長子で在られました。年齢の序列から通常であれば、長子の直嗣様が東宮となり、陛下になられ治世されるはずでした。生前の直嗣様は、武術に秀で豪放磊落《ごうほうらいらく》でありながら、知略に富み、明晰で公明正大な方でいらっしゃり、資質に於いて、東宮に立坊りゅうぼうされる事のに何の問題もありませんでした」

 凄いな、直江の爺さまは。
 理想の東宮像だよ。
 感心しかないわ。
 けど、光顕が資質に於いてはとわざわざ言ったってことは・・・

「しかし、惜しむらくは、直嗣様をお産みになられた加奈子様が貴妃でいらっしゃったこと、ご実家があまり裕福ではない加奈子様は権勢を誇っていたわけでもありませんでした。どちらかというと、家門が加奈子様の地位に依存していたという方が正解でした。皇子をお産みになられる前の加奈子様もそれは分かっていらっしゃって、女御として後宮にあがられましたが、目立たぬようにひっそりと静かにお暮らしでした」

「後宮での権勢は~後見と寵愛できまりますからね~それがないとなると~不安定ですよね~」

 春がしみじみという。
 後宮なんて寵愛や生母の実家、後見人の力に寄って左右されるっていうもんな。

「ところが、後宮を散策中の陛下の目に留まったことから加奈子様の静かな生活が一転し、それに伴い、周囲も不穏になり、いやがらせの類も増えたそうです」

「陛下は何をしてたんだよ?」

「皇后様以外にも貴妃、女御、更衣が寵を競っており、目立たぬようにお暮らしだった加奈子様にそれほど深いご寵愛があったわけではなかったそうです」 

 女の園の嫉妬、怖っ。聞いてるだけで鳥肌だよ。

「そんな中、加奈子様は先の帝の御子を身籠られ、長子をお産みになられたことが加奈子様のお立場を変えてしまったのです。陛下の長子をご出産されたからといって確たる立場になったわけでもなく、反対に後宮の風当たりは強く、殊更、まだ皇子をお産みになられていなかった当時の皇后からの嫌がらせは目に余る程だったとか」

 男の僕がいうのもナンだけど・・
 これだから男って奴は頼りにならないんだよ。
 自分の子を産んだ貴妃を守れないどころか、放置って最低っ。男の風上にも置けないな。
 そんな男がルビさきの陛下だっただなんて、最悪じゃんか。
 ク◯だな。
 自然と眉間の皺に皺が寄った。

「今後、皇后や後見がしっかりした貴妃や女御に皇子がお生まれになれば、いくら才覚があるとはいえ、我が子は一宮家となり、名ばかりの閑職に追いやられる。加奈子様はご自分に確たる後見が無いばかりに資質に恵まれた我が子が東宮に立坊することができない事に深くお心を痛めれ、悩まれていたところに、皇后のご懐妊の知らせを受けられました。悲劇はここから始まったのです」

 ゴクリと唾を飲み込んだ。
 なんだろう、この物語じみた展開は。
 御家騒動の流れ確定!とか笑えない冗談なんですけど・・・

四卿しきょう落ちなる事件を淡雪様はどこまでご存知でいらっしゃいますか?」

 光顕が抑揚のない声で尋ねてきた。

「えっと、当時の内大臣、蔵人頭くろうどのとう中務卿なかつかさきょう、近衛大将が自分達が擁立する皇子を東宮につけようと王政の転覆の企てを種々画策したが失敗し、一門が王都を追われ流刑、皇子も謀反の責任をとり、自害されたという事くらいかな・・・って、まさか」

「そうです。皇后が第二皇子をお産みになられた。当時の皇后は左大臣家の一の姫。となれば後見は当然、左大臣家となります。直嗣様に比べると、大人しく何事も考えてから行動される現陛下は対象的でいらっしゃいました。また、前の左大臣は野心家で己に刃向かう者は容赦なくまつりごとから締出したり、閑職に追いやったりしていた左大臣が東宮の外爺となれば、左大臣へいま以上の権利が集中する事を危惧した内大臣様は、掌中の珠の三の君を直嗣様の正室とすることで加奈子様の後見となり、直嗣様の東宮立坊を推したのです」

 陰謀渦巻く王政・・・こうなると想像を遥かに越えて現実味に乏しく、何だか物語を読み聞かせられているようだ。
 喜怒哀楽が出やすい春の表情も能面のように固まり乏しくなっている。

「で、どうなったの?」

 光顕が重くなった口を開いた・・・













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