魔法学園の空間魔導師

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第一章:魔法学園の空間魔導師

夏休み前

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 ここは都心から遠く離れた島々────

 〝小笠原諸島〟と呼ばれる大小様々な島の中でも特に小さく、また住民が居ない無人の離島。

 人が居ないはずのその島にポツリと建つ建物は民家と言うよりは何かの施設のようにも見えた。

 しかしその見た目は〝廃墟〟と言っても遜色が無く、とても誰かが出入りしているようには思えない。

 その建物内にて、数人の白衣に身を包んだ男性達が、様々な生き物が入れられた檻や強化ガラスの箱の前で何やら話をしていた。


「まったく……世間では長い休みに入ろうかってのに、俺達はこんな離島で働き詰めかよ」

「そう言うな。そろそろ結果を出さんと援助が切られっちまうんだからよ」

「そうは言ったってここの所、全く成果が出そうな兆しが見えないじゃないか」

「秘密裏に捕獲してきたこいつらの餌代も半端じゃねぇしよ」

「喧しいぞ!文句を言っている暇があるのなら手を動かさんか!」


 口々に愚痴を放っていた男性達……しかし突如聞こえてきた叱責の声に思わずその場で姿勢を正した。

 彼らを叱責した人物は、そのでっぷりと肥えた身体を動かし、両側に美女を侍らせながら男性達に怒鳴り始めた。


「せっかく雇ってやっているというのに愚痴だけは達者になりおって!いいか?ここで結果を出さねば、ワシだけでなく貴様らも切られる事になるのだ!そうなれば路頭に迷うどころか、全員この世から消されるぞ!」


 その言葉に男性達はガタガタと震え出す。

 それを見た男はため息をついたあと、先程とは変わって温厚な口調でこう諭した。


「思わず怒鳴ってしまったが、幸いにも我々には唯一の〝成功例〟がある……それを被検体とすれば更に先鋒にとって満足となる結果を残せるだろう」

「しかし……いくら成功例と言えど、未だ不安定な存在ですよ?」

「もし、それに何か問題が起きたら……」

「それを考えてどうにかするのがお前達の仕事だろう?ワシは何も考え無しに言っているのでは無い。お前達の腕を信頼しているからこそ言っておるんだ。お前達はワシが今まで見てきた中でも優秀な者達ばかりなのだからな」


 そう言われ途端に気を良くする男性達。

 男は鼻を鳴らしたあと、踵を返してそこから立ち去ろうとする。


「では任せたぞ。良い結果が出るのを楽しみにしている」

「「「はい、お任せ下さい!!」」」

「フンッ……単純な奴らは使い勝手が良くて、実に扱いやすいな」


 男のその言葉は士気が向上している男性達には聞こえていなかった。

 男は女性を侍らせながら移動すると、その先に置かれていた生体ポッドの中に入れられていた一人の少女を見てこう呟いた。


「〝コレ〟が量産出来れば……ワシの余生は安泰だな」

 男が見つめる先……生体ポッドの中の少女はゆっくりとその瞼を開けると、感情な無い目で男を見つめるのであった。





 ◆





 アルセーヌとの一件があってから月日が経ち、早いもので七月も半ば頃を迎えていた。

 教室内では迫る夏休みへの話題で溢れており、この夏を楽しむ者や、課せられた宿題に嘆く者など様々な反応を示している。

 そんな俺も例には漏れず、今ではお馴染みの顔ぶれとなった瑠璃、煉、都胡、咲良、そして才加で夏休みの予定について話をしていた。

 その前にだが才加について、今まで俺は彼女のことを〝霧隠〟と呼んでいたのだが、彼女から〝一人だけ苗字で呼ぶのはちょっと〟と言われ名前呼びに変えた。

 確かに一人だけ下の名前で呼ばないってのも距離を置いてるようで申し訳ないと、俺は直ぐに納得しそう呼ぶようにしたのである。

 まぁ、そんな才加が咲良と夏休みの事について話をしていた際に、ふと俺達はどう過ごすのか気になって話しかけてきたというわけである。

 ちなみに俺の夏休みの予定は既に決まっていたりする。

 それを話してやると、途端に才加が羨ましそうに声を上げるのだった。


「旅行か~……いいな~……」


 俺の家族は長期の休みになる度に一回は家族旅行に出かけている。

 それに今年は都胡が帰ってきたので、数年ぶりに双方の家族同士で一緒に旅行に行こうという話になったのだ。

 行き先は小笠原諸島の父島である。

 なんでも叔父さんが〝どうせならば〟と色々と予定を立てて、しかもそこの旅館にも予約を入れてくれたそうだ。

 そしてついでにそこでバーベキューでもしようという話になり、家族全員が賛成したことでそこに決まったのである。


「いつもは川や山荘でのバーベキューやったけど、今回は海を見ながらやから楽しみやわ~」


 気の早い事で都胡は既にそれを思い浮かべてウキウキしている。

 それを見て才加は更に羨ましがるのであった。


「そんなに羨ましいなら才加はん達も一緒に行こか?」

「いいの?!」


 都胡の提案に俯いていた才加がガバッとその顔を上げる。その目は高まる期待で爛々と輝いていた。


「まぁ御影のご両親がええのなら、ウチは別に構わんのやけど……それに皆一緒ならもっと楽しくなるやろ?」

「そうは言ってもだな……もう既に宿に予約入れっちまってんだろ?今から追加頼んでも受け入れてくれるか分からねぇぞ?」

「ほんなら今聞いてみるわ」


 そう言って自身の父親に連絡を入れる都胡。

 そして数秒の会話を経て、都胡は満面の笑みでこちらへとサムズアップをしたのだった。


「三人分の予約を追加出来ないか聞いてくれるって♪︎」

「「都胡様ーーー!!」」


 まだ受け入れてくれるか分からないのに都胡に尊敬の眼差しを向ける煉と才加。

 咲良はそれを見て苦笑いを浮かべ、俺と瑠璃は呆れたような笑みを浮かべるのだった。

 その後、叔父さんからの連絡で宿泊先の旅館からOKの返事を貰ったとの事で煉、咲良、才加も追加で旅行に行く事が決まった。

 俺は旅館の方々の寛容さに感心しながら、心の中で旅行が更に楽しみになるのであった。

 しかしこの時の俺は、まさかその旅行先でとんでもない事件に巻き込まれるなど、夢にも想わなかった。
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