兄の遺したエロゲに転生したモブ女は、生き残りを目指す 呪われたエロい鎧はチートアイテム?

在江

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第4章 呪い解ければ夢も股旅

予感しかない

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 首都について、やっとあたしは国の名前を知った。

 エゾカンシ王国。何か日本語っぽいけど、多分意味は別のものだろう。だって、首都の名前がエマンガリサヨだもの。
 微妙に日本語にできそうな出来なさそうな辺り、ゲーム世界を思わせる。

 最近、王様が変わったとかで、首都にはお祭り気分が残っていた。

 平穏な代替わりではなく、どこかの騎士が乗っ取ったんだか奪い取ったんだか。物騒な話だった。ゲームストーリーとしては、どの辺に当たるんだろう。始まる前か、エンディングの後か。

 エロゲでも冒険者のファンタジーだから、戦い要素があるのね。あたしみたいに、割と平和にセックスでレベル上げするだけだと、このゲームは進まないのかな。

 あたしはモブキャラだし、クリアを目指す気はない。

 でも、レベルを上げるには、実際の戦いも必要だよね。あたしの職業、戦士だもの。

 ここまで生き残ったのだ。金儲けして、余裕のある人生を送りたい。それには強くならないと。
 冒険者資格も持っている。首都なら、あたしに合った依頼もありそうだ。その前に。

 エロ鎧をどうしよう。

 道中、ずっと迷っていた。
 人家のない場所で行き倒れないよう、首都まで宿屋に泊まるようにして、旅を進めてきた。
 それにしても、誰も寄ってこなかった。想定以上だった。

 寄ってくるのは、スライムとゴブリンくらいだった。そうそう。ゴブリンも倒せるようになった。
 最初の1体は、ミンチかっていうぐらい切り刻んだ。これで、恨みを晴らしたことにしよう。

 酷い目にも遭わないんだけど、男にも言い寄られない。女にも。地味にへこんだ。

 捨てようかな、とも思ったのよ。呪いのアイテムでしょ。
 その辺の魔法使いが脱がせることもできなかったくらい、レベルが高い。初心者から冒険者を始めたあたしが、普通にゲットできる代物じゃない。でどころが怪しすぎる。

 でも、異世界転生して以来、苦楽を共にした鎧でもある。捨てるには惜しい。

 かといって、また着るのも、ためらってしまう。

 考えがまとまらないまま、あたしは古道具屋の前に立った。

 バートレット司祭は、貴族と取引がある店って言っていたけど、どの店がそうなのか、あたしにわかる訳ない。歩いていて、たまたま最初に突き当たった店である。
 とりあえず、金になるか見てもらおう。

 「おや、これは‥‥」

 店主が針金をつまんで広げ、モノクルをきらりと光らせる。あたしはどきどきする。
 記憶がないだけで、盗品の可能性だってある。いきなり、憲兵とか騎士団とかに牢へぶち込まれるのは、勘弁して欲しい。

 「‥‥なかなかよくできた用具ですね。しかも材質もいい」

 へ。鎧じゃないの? あたしはステータスを思い返す。確かに、鎧(呪い)って書いてあったよね。店主が鑑定できないだけか。安く買い叩かれるかもしれない。

 「これだったら、金貨150コインで買い取りますよ」

 いきなり、すごい査定きた。鑑定の甘い店主ですらこの値段。あたしは欲が出た。

 「その程度ですか」
 「中古だからね。大分使い倒したでしょ」

 痛いところを突いてくる。鑑定力は低くても、商売力は高いみたいだ。

 「迷っているんだったら、しばらくうちで預かって、売値の3割を手数料でもらう契約にしてもいいよ」
 「そういうやり方もあるんですか」

 それだと、金貨500枚くらいで売るつもりだったってことか。

 「あるよ。でも、売れなかった時は預かり料を別に貰うけど。これだと、ひと月で金貨1コインかな」
 「お願いします」

 ひと月あれば、金貨1枚くらいは稼げるだろう。稼がなくちゃ。

 「じゃあ、売れたら連絡するから、名前と住まいを教えて」

 帳面を出してきた。反射的に預かってもらうことに決めたあたしは、はた、と困る。

 「ええと、名前はユノですけど、まだ首都に来たばかりで、住む場所が決まっていなくて」
 「ああそう。冒険者だよね。ギルドに顔出した?」

 「これからです」
 「なら、明日また来て。これ、預かり証。ここと、こっちにもサインして」

 怪しまれもせず、預かり証と鎧を引き換えて解放された。冒険者なら、住むところがないのも普通か。

 あたしは早速、冒険者ギルドを探して行ってみた。そこでは安い宿も紹介してくれたし、中古の鎧も売ってくれた。あの鎧もここで査定してもらったら手短で済んだかな。


 色々手続きを終えて、依頼掲示板を見に行く。もう午後だから、すぐ稼げるような割の良い仕事は、全部売れてしまった。依頼済み、の印がペタペタ上から押されている。

 明日の朝、もう一度見に来ればいいか。
 あたしはギルドを出て、紹介された安宿で部屋を確保すると、また外へ出た。


 夕食を取る店を探しつつ、教会の建物も探す。

 もしかしたら将来、修道院にお世話になるかもしれないからね。たとえマイナー宗教団体でも、彼らはいい人たちっぽかった。洗脳監禁を心配している訳じゃない。ついでに見るだけ。

 教会は何なく見つかった。結婚式場のチャペルみたいな尖塔せんとうが目印だ。入り口の扉が開かれていて、ぼちぼち人が吸い込まれていく。女性に限らず、男性や子供も見かけた。
 あたしは紛れて入った。誰もとがめなかった。

 前に村で見たのと同じ雰囲気。ということは‥‥正面の神像には、おっぱいと亀頭がついていた。
 たまたま同じ神を崇めているだけかもしれない。あたしは、後ろの方の席に座って、さりげなく人々を観察した。

 みんな、ディルドオナホ持参だよ。子供は持っていなさそう。
 もしかして、これからあの、が始まるんだろうか。女のあたしがディルドオナホ持っていないと、魔女狩りされるかも。

 あたしは、あらディルドオナホ忘れちゃったわ、みたいな小芝居を控え目にして、そそくさと立ち去ろうとした。

 その時、司祭が登場し、後ろの扉が下僕によって閉められた。終わった。
 あたしは、目立たぬように席へ戻ろうとした。元の席が埋まっている。
 端をずずっと移動するうちに、結構前の方まで来てしまった。もう始まりそうだ。とにかく座る。

 司祭が、いわゆる説教というやつを始める。いかん。お腹空いてきた。

 ぐうう、と鳴ってしまう。慌てて腹を押さえるけど、音は止まらない。というか、別の場所から聞こえるような気が。どこから?

 ううう。

 思い出した。ハインツ司祭の元で、あたしがオナった小部屋。
 視線を巡らすと、同じ場所に、カーテンの下がった小窓が見えた。もちろん、中は見えない。でも音はそこから聞こえてくる。誰か高貴な方がいらっしゃるのだ。

 「さあ、祈りましょう」

 司祭が祈りの言葉を唱え始める。会衆席の信者たちも、一緒に唱える。皆んな目を閉じている。暗記しているのね。すごいわ。
 重なりあって響く祈りの言葉を縫うように、小部屋から聞こえてくるうめき声。はっきり言えば、あえぎ声。

 「あああっ」

 もしかして、あの部屋って、本当にオナニー部屋だったのかしら。

 あたしの疑問をよそに、盛り上がる祈りと喘ぎ声。芸術的なまでにハモっている。司祭も会衆席の信者も、喘ぎ声に集中を乱されず、祈りの文句を唱え続けた。

 祈りが終わると、一同立ち上がる。続けて歌に入った。聖歌隊はいなくて、会衆席の信者が司祭の指揮で歌う、素朴な感じ。
 それでもって、例の小部屋から聞こえてくる声が、2種類に増えた。2人分。リズミカルに掛け合って、歌の伴奏になっている。
 気になる。気になるけど、さすがに覗けない。

 密かに悶えるあたしと関係なく、礼拝は進み、歌が終わると終了だった。うまい具合? に、歌と同時に声も途絶えた。BGMとかじゃないよね。

 帰る前に、袋を持った下僕が席を回ってきた。他の信者に合わせて、あたしも少しばかり寄付をした。信者じゃないけど、見逃してね、という意味を込めて。

 あたしは、寄付をして気が大きくなったこともあって、結構遅くまで粘った。もちろん、あの小部屋から誰が何人出てくるか、知りたいからだ。

 でも、小部屋の扉は開かず、教会の人影はどんどん減っていく。
 他に出口があるのかもしれない。

 先ほどの下僕が寄ってきた。さりげなく逃げるには、遅過ぎた。

 「特別祈祷をご希望ですか」

 「もしかして、あの小部屋でしてもらえるのですか」

 「はい。1回につき、金貨10枚申し受けます」

 下僕は、あたしのど庶民な格好が目に入らない風で、にこやかに案内した。
 あたしは諦めて外へ出た。そうよね。高貴な方に1発ヤってもらうんだから、お金かかるよね。

 思いがけず礼拝にがっつり参加したせいで、遅くなってしまった。お腹空いた。とっとと夕飯を食べよう。


 翌朝、早起きしたあたしは、冒険者ギルドへ行ってみた。

 いた、いた。

 依頼板の前に、ファンタジー世界の住人がたむろしている。耳の尖ったエルフや、ずんぐり体型のドワーフ、ハロウィンの仮装みたいな魔法使い、あたしより本格的な装備の戦士。

 あたしは、彼らをかき分けるようにして、字を読める距離まで近付いた。

 ゴブリン退治。ゴブリン退治。ホブゴブリン退治。

 だから、ゴブリン多過ぎだって。ネズミかゴキブリレベル。

 嫌な思い出はあるけど、今のあたしなら、普通に倒せるかな。1人で仕事請け負うんだもの。難しい仕事はできない。

 「なあ、あんたソロ戦士だろ。俺たちのパーティと組まないか」

 肩に金属的な重みを感じて振り向くと、同じくらいの年頃の男の子が、鎧の小手をつけた手を載せていた。どことなくジェイムズを思い起こさせる見た目だけど、馴れ馴れしい態度が童貞じゃなさそうだ。

 「あんまり難しい仕事はできないんだけど」

 仕事に誘ってくれたのは、嬉しい。でも、あんまり期待されても困ってしまう。実践経験が少ないからだ。
 それに、彼の後ろにいる仲間っぽい魔女が、あたしを睨んでいる

 「触手植物の駆除で、魔法の補助として、剣を使える奴が欲しいんだ。報酬は均等に分けるから、今回だけでも、どうかな」

 ぬぬっ、触手だと。

 エロい予感しかしない。

 ここは、断るべきなんだろう。でも、断るとゴブリン退治しかない。

 「うん。よろしくお願いね」
 「こちらこそ、よろしく」
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