17 / 30
17 元魔王の記憶 *
しおりを挟む
ヒサエルディスのフクロウが指定した場所は、変哲もない四辻だった。フクロウが来なかったら、通り過ぎるところだ。
「遅かったですね。あんまり遅いから、移動するところでした」
「こっちは翼がないんだ。山や川もひとっ飛びとはいかない」
別の移動方法も持ってはいるが、色々条件を整える必要があるし、今回は正体不明の魔族連れである。
地道に、人間らしく徒歩でたどり着いたのだ。
「では、私の後についてください。そうそう。魔族は抱えた方がいいでしょう」
フクロウは偉そうに指示すると、呪文を唱え始めた。俺は、猫姿のゾーイを抱えて復唱した。
周囲の景色が白い霧に覆われる。鳥の囀りも風の音も消えた。
フクロウの呪文だけが、つらつらと流れる。
やがて、俺が復唱し終えたタイミングで、霧が一挙に晴れた。
森の中に、左右対称な石造りの館が建っていた。背後には山、手前に泉が湧いている。
「やあザカリー。相変わらずだな。上手に老化を止めている。魔族の肉でも食ったか」
エルフらしからぬ露出の多い服を着た、ヒサエルディスが出迎えた。こう見えて賢者と呼ばれている。
ゾーイが、彼女の言葉に反応し、腕の中で身震いした。
「そう言えば、バジリスクを食った。もしかして、俺に魔族肉を避けさせたのは、老化と関係あるのか?」
それならむしろ、奨励してくれても良さそうだった。
「いや、それとは別件だ。いずれにせよ、しょっちゅう食う物でもなかろう。まずは、茶でも飲むか」
ヒサエルディスは俺と黒猫に、ざっと視線を走らせると、背を向けた。
後へついて脇道へ入ると、茂みに隠れていたテーブルと椅子が現れた。既に茶の用意ができている。
「お前、人型になれ」
俺の腕に抱えられた黒猫を指した途端、払い落とされたように腕から落ちて、猫人に変わった。館から服が飛来した。
ゾーイは基本全裸なのである。猫の時はそれで良いが、人の姿に変わる度、服を用意せねばならない。
「ありがとう」
もそもそと服を被るゾーイを、ヒサエルディスは椅子に掛けたまま、見下ろすように眺めた。
「ほう。礼儀は知っているようだな、魔王の年の功ってやつか」
「へ」
「え」
俺も驚いたが、ゾーイも驚いた。口を開けたまま、あわあわと手足を震わせている。
賢者エルフは一人落ち着いて、茶を口へ運んだ。
「まず、座って飲め。茶が冷める」
ヒサエルディスに言われるまま、俺たちは茶を飲んで、サンドイッチやスコーンやタルトをむしゃむしゃ平らげた。
腹が満たされるにつれ、気持ちが落ち着いてきた。
俺は彼女に問われるまま、ゾーイとの出会いから、名付けた後に言われた主従契約のことを話した。
「ふうん。まあ、その契約が現在有効なのは確かだな。何かのきっかけで破れることはあるだろうが」
エルフは紅茶を飲みつつ、ゾーイを観察した。急に始まった茶会にも、ゾーイは意外にも礼儀正しく、対応できていた。ただの少女猫魔族ではないことが、俺にも分かってきた。
というか、魔王って言っていたよな?
「魔王って、俺たちが倒した奴、だよな?」
「そうだ。僅かに残る魔力の残滓を見れば、明らかだ。気付かないお前が、どうかしている」
そこは恥入るべきなのだろうが、倒した筈の敵とお茶会するのも、どうかしていると思う。
ヒサエルディスは、つくづくゾーイを眺める。普通の人間には、猫人にしか見えないだろう。
「それはそうと、記憶喪失の件を、どう考えるか」
魔王が、びくりと反応した。元魔王と言うべきか。
「猫人に偽装する能力とそれに必要な知識、日常生活に必要な数百年以上にわたる知識は保持している。特定の分野に関する記憶だけ抜け落ちる、という症例は承知しているが、魔王としての記憶だけ失ったとしたら、何故ザックに反応した?」
「えっと。何となく、覚えがあるような気がして」
ヒサエルディスは質問した訳ではないのだが、ゾーイは生真面目に応対した。見た目も態度も、俺たちが相対した魔王とは大違いである。
それに俺、魔王とヤっちまったののか。蘇る魔王のビジュアル。だめだ、トラウマになる。
ゾーイとのセックスを思い出すのも、この場では問題がある。
「魔王の記憶と魔力は、連動しているのだろう。もし、こいつが魔力を取り戻したら、記憶も戻る訳だ」
俺の葛藤をよそに、話は続く。
「私も同じ場にいたのだが、覚えはあるか?」
「ありません」
元魔王は即答した。ヒサエルディスは、手のひらを動かし、アキとベイジルとアデラ、それに姫の似姿を目の前に並べて見せた。当時の旅装である。懐かしい。
ゾーイは突然現れた絵を、驚嘆の眼差しで見つめる。
「彼らに見覚えは?」
元魔王は、恐る恐るアキと姫を指差した。
「うーん。この男の人と女の人、かなあ」
自信がなさそうな答えであった。似姿が消える。もっと眺めていたかった。
「直接会うことで反応したならば、記憶より魔力が作用したのだろうな。アキも姫もアデラも王都住まいだったし、ベイジルと私は隔離された場所にいる。お前が一番嗅ぎつけられやすかったという訳だ」
姉弟子が俺を顎で指した。紅茶カップで手が塞がっていた。
「なるほど。根本的な問題として、こいつを生かしておいて大丈夫なのか?」
俺が、最初にすべきだった質問を聞いたゾーイが、飛び上がって椅子からずり落ち、土下座した。
「こ、殺さないでください。何でも言うこと聞きますから。お願いします。毎日フェラで五十本抜きもしますから」
「お前、何をやらせていたんだ?」
ヒサエルディスが尋ねた先は、俺である。俺は呆れてゾーイを見下ろした。
「そんなにしゃぶられたら、俺の息子がふやけてしまう。誤解だ、ヒッサ。確かにこいつとセックスはしたが、無理やり犯してはいない」
「人間の男は皆、自分のしたセックスは合意の元で行われた、と認識するらしいぞ」
姉弟子は、以前、人間の男から手酷い裏切りを受けたらしい。俺が生まれるより前の話である。
それで、弟弟子として引き取った俺が、同じことをしないよう、彼女なりの教育を施した。
俺が姫の突飛な約束を受け入れたのも、言ってみれば彼女の教育の賜物である。
俺は咳払いした。
「その話をしたいなら、別の機会にしよう。で、どうなんだ?」
倒した筈の魔王が生きていた、しかも倒した俺が、庇護者みたいになっている。少なくとも王家にとって、この状態は外聞が悪い気がする。
「私にも考えはあるが、師匠に聞いてみよう」
ヒサエルディスは立ち上がった。
「お元気なのか?」
師匠もまた、エルフである。俺とヒサエルディスの師匠だから、年齢だけは相当いっている筈だ。エルフは長命だが、不死ではない。
「しばらく顔を見ていない。ちょうど良い。一緒に会いに行ってみるか」
館へ向かうヒサエルディスが、俺を手招きする。
「どこまで行くんだ?」
「家の中だ。ゾーイ、お前も来るんだ。大人しくしておけよ」
「は、はい~」
土下座していた元魔王が、急いで立ち上がり追いついた。
「家の中って、一緒に住んでいるのか?」
扉を開くヒサエルディスに尋ねる。彼女は、広い玄関ホールに立ち、両手を広げた。
「こっちが私の住むエリアで、こっちが師匠だ。他にも出入り口があるから、完全に独立して生活することができる」
なるほど、左右対称の建物は、そういう意味があったのか。
「師匠。ザカリーが来ましたよ。魔王も一緒です」
ヒサエルディスは、扉についた呼び鈴を鳴らした。
「どうぞ」
ノッカーが口を利いた。ゾーイが耳をぴくりとさせた。魔王と分かっても、記憶と余りに違い過ぎて、どう対応したら良いのか戸惑ってしまう。
「お邪魔します」
ヒサエルディスを先頭に、ゾーイを挟む形で中へ入る。
扉を開けた内側も、また玄関のように広い空間だった。
大理石の床の向こうから、相変わらずの師匠が姿を現した。
美形エルフの粋みたいな外見で、研究にしか興味がない。それなりの格好をすれば女に爆モテするだろうに、今もヤブ医者のような姿である。
「やあ、ザック。魔王ちゃんも、いらっしゃい。ヒッサも、しばらくぶりかな」
真っ直ぐ進むと見えたヒサエルディスが、急角度で横へ逸れた。彼女の後を歩いていたゾーイは、急には止まれず、そのまま数歩進み、止まった。
後から来た俺は、当然その手前で止まった。
「ふわああああっ!」
ゾーイが声を上げると同時に、足元から光が立ち上った。
「こ、これは」
「魔法陣だな」
光を遮る腕の下で俺とヒサエルディスが会話する中、ゾーイが膝から崩れ落ちる。
びしゃっ。
液体のはねる音がした。
俺は、音のした方を見た。
ゾーイが水溜まりの中へ、尻餅をついていた。ヒサエルディスが取り寄せたワンピースを被っただけで、下着はつけていない。あそこ丸出しである。
「ああっ」
まだ毛もまばらな割れ目へ、ゾーイの手が伸びる。もう片方の手が胸の方へ向かい、彼女は仰向けに倒れ込んだ。
「あっ、ひっ。いいっ」
ぐちょぐちょ、と派手に音を立てながら、ゾーイの指が一本、二本、と膣を出入りする。その目は快感に揺蕩って虚ろである。どうやら、水たまりは、彼女の愛液らしい。
「ザックも中へ入って、一緒に楽しんだら?」
魔法陣の向こうから、師匠に声をかけられた。ヒサエルディスもそうだが、彼もまた平静に元魔王のオナニーを観察していた。
エルフだからか賢者だからか、この二人は昔から、こんな感じだった。
「入ったら、お前もイカないと、解除されないんじゃないか?」
ヒサエルディスが指摘する。
「そうそう」
師匠が嬉しそうに同意した。
「あんっ。ああんっ、ザック様あ~」
びしゃびしゃと愛液ダダ漏れのゾーイが、魔法陣の中から俺を呼ぶ。紅潮した肌、潤んだ瞳、濡れた声。刺激的なお誘いではある。
「命令だ。一人でイけ」
「そんなあ~」
俺の命令は聞こえたようだ。言葉と裏腹に、手の動きが激しくなる。
「冷たいなあ。ベイジーのところで散々ヤって、飽きてしまったかな?」
「な、何故それを?」
「ヒッサに来た手紙を回してもらった。師として、弟子を気にかけるのは当然だろう。特にザックみたいに、面倒事に巻き込まれる星の下に生まれた子は」
動揺する俺に、師匠は何でもないことのように告げた。
ベイジルも、良くも恥ずかしげもなく書き送ったものだ。
「イクッ、イクッ、あああっ」
ゾーイが果てた。彼女を包む光が消え、魔法陣も失せた。
「遅かったですね。あんまり遅いから、移動するところでした」
「こっちは翼がないんだ。山や川もひとっ飛びとはいかない」
別の移動方法も持ってはいるが、色々条件を整える必要があるし、今回は正体不明の魔族連れである。
地道に、人間らしく徒歩でたどり着いたのだ。
「では、私の後についてください。そうそう。魔族は抱えた方がいいでしょう」
フクロウは偉そうに指示すると、呪文を唱え始めた。俺は、猫姿のゾーイを抱えて復唱した。
周囲の景色が白い霧に覆われる。鳥の囀りも風の音も消えた。
フクロウの呪文だけが、つらつらと流れる。
やがて、俺が復唱し終えたタイミングで、霧が一挙に晴れた。
森の中に、左右対称な石造りの館が建っていた。背後には山、手前に泉が湧いている。
「やあザカリー。相変わらずだな。上手に老化を止めている。魔族の肉でも食ったか」
エルフらしからぬ露出の多い服を着た、ヒサエルディスが出迎えた。こう見えて賢者と呼ばれている。
ゾーイが、彼女の言葉に反応し、腕の中で身震いした。
「そう言えば、バジリスクを食った。もしかして、俺に魔族肉を避けさせたのは、老化と関係あるのか?」
それならむしろ、奨励してくれても良さそうだった。
「いや、それとは別件だ。いずれにせよ、しょっちゅう食う物でもなかろう。まずは、茶でも飲むか」
ヒサエルディスは俺と黒猫に、ざっと視線を走らせると、背を向けた。
後へついて脇道へ入ると、茂みに隠れていたテーブルと椅子が現れた。既に茶の用意ができている。
「お前、人型になれ」
俺の腕に抱えられた黒猫を指した途端、払い落とされたように腕から落ちて、猫人に変わった。館から服が飛来した。
ゾーイは基本全裸なのである。猫の時はそれで良いが、人の姿に変わる度、服を用意せねばならない。
「ありがとう」
もそもそと服を被るゾーイを、ヒサエルディスは椅子に掛けたまま、見下ろすように眺めた。
「ほう。礼儀は知っているようだな、魔王の年の功ってやつか」
「へ」
「え」
俺も驚いたが、ゾーイも驚いた。口を開けたまま、あわあわと手足を震わせている。
賢者エルフは一人落ち着いて、茶を口へ運んだ。
「まず、座って飲め。茶が冷める」
ヒサエルディスに言われるまま、俺たちは茶を飲んで、サンドイッチやスコーンやタルトをむしゃむしゃ平らげた。
腹が満たされるにつれ、気持ちが落ち着いてきた。
俺は彼女に問われるまま、ゾーイとの出会いから、名付けた後に言われた主従契約のことを話した。
「ふうん。まあ、その契約が現在有効なのは確かだな。何かのきっかけで破れることはあるだろうが」
エルフは紅茶を飲みつつ、ゾーイを観察した。急に始まった茶会にも、ゾーイは意外にも礼儀正しく、対応できていた。ただの少女猫魔族ではないことが、俺にも分かってきた。
というか、魔王って言っていたよな?
「魔王って、俺たちが倒した奴、だよな?」
「そうだ。僅かに残る魔力の残滓を見れば、明らかだ。気付かないお前が、どうかしている」
そこは恥入るべきなのだろうが、倒した筈の敵とお茶会するのも、どうかしていると思う。
ヒサエルディスは、つくづくゾーイを眺める。普通の人間には、猫人にしか見えないだろう。
「それはそうと、記憶喪失の件を、どう考えるか」
魔王が、びくりと反応した。元魔王と言うべきか。
「猫人に偽装する能力とそれに必要な知識、日常生活に必要な数百年以上にわたる知識は保持している。特定の分野に関する記憶だけ抜け落ちる、という症例は承知しているが、魔王としての記憶だけ失ったとしたら、何故ザックに反応した?」
「えっと。何となく、覚えがあるような気がして」
ヒサエルディスは質問した訳ではないのだが、ゾーイは生真面目に応対した。見た目も態度も、俺たちが相対した魔王とは大違いである。
それに俺、魔王とヤっちまったののか。蘇る魔王のビジュアル。だめだ、トラウマになる。
ゾーイとのセックスを思い出すのも、この場では問題がある。
「魔王の記憶と魔力は、連動しているのだろう。もし、こいつが魔力を取り戻したら、記憶も戻る訳だ」
俺の葛藤をよそに、話は続く。
「私も同じ場にいたのだが、覚えはあるか?」
「ありません」
元魔王は即答した。ヒサエルディスは、手のひらを動かし、アキとベイジルとアデラ、それに姫の似姿を目の前に並べて見せた。当時の旅装である。懐かしい。
ゾーイは突然現れた絵を、驚嘆の眼差しで見つめる。
「彼らに見覚えは?」
元魔王は、恐る恐るアキと姫を指差した。
「うーん。この男の人と女の人、かなあ」
自信がなさそうな答えであった。似姿が消える。もっと眺めていたかった。
「直接会うことで反応したならば、記憶より魔力が作用したのだろうな。アキも姫もアデラも王都住まいだったし、ベイジルと私は隔離された場所にいる。お前が一番嗅ぎつけられやすかったという訳だ」
姉弟子が俺を顎で指した。紅茶カップで手が塞がっていた。
「なるほど。根本的な問題として、こいつを生かしておいて大丈夫なのか?」
俺が、最初にすべきだった質問を聞いたゾーイが、飛び上がって椅子からずり落ち、土下座した。
「こ、殺さないでください。何でも言うこと聞きますから。お願いします。毎日フェラで五十本抜きもしますから」
「お前、何をやらせていたんだ?」
ヒサエルディスが尋ねた先は、俺である。俺は呆れてゾーイを見下ろした。
「そんなにしゃぶられたら、俺の息子がふやけてしまう。誤解だ、ヒッサ。確かにこいつとセックスはしたが、無理やり犯してはいない」
「人間の男は皆、自分のしたセックスは合意の元で行われた、と認識するらしいぞ」
姉弟子は、以前、人間の男から手酷い裏切りを受けたらしい。俺が生まれるより前の話である。
それで、弟弟子として引き取った俺が、同じことをしないよう、彼女なりの教育を施した。
俺が姫の突飛な約束を受け入れたのも、言ってみれば彼女の教育の賜物である。
俺は咳払いした。
「その話をしたいなら、別の機会にしよう。で、どうなんだ?」
倒した筈の魔王が生きていた、しかも倒した俺が、庇護者みたいになっている。少なくとも王家にとって、この状態は外聞が悪い気がする。
「私にも考えはあるが、師匠に聞いてみよう」
ヒサエルディスは立ち上がった。
「お元気なのか?」
師匠もまた、エルフである。俺とヒサエルディスの師匠だから、年齢だけは相当いっている筈だ。エルフは長命だが、不死ではない。
「しばらく顔を見ていない。ちょうど良い。一緒に会いに行ってみるか」
館へ向かうヒサエルディスが、俺を手招きする。
「どこまで行くんだ?」
「家の中だ。ゾーイ、お前も来るんだ。大人しくしておけよ」
「は、はい~」
土下座していた元魔王が、急いで立ち上がり追いついた。
「家の中って、一緒に住んでいるのか?」
扉を開くヒサエルディスに尋ねる。彼女は、広い玄関ホールに立ち、両手を広げた。
「こっちが私の住むエリアで、こっちが師匠だ。他にも出入り口があるから、完全に独立して生活することができる」
なるほど、左右対称の建物は、そういう意味があったのか。
「師匠。ザカリーが来ましたよ。魔王も一緒です」
ヒサエルディスは、扉についた呼び鈴を鳴らした。
「どうぞ」
ノッカーが口を利いた。ゾーイが耳をぴくりとさせた。魔王と分かっても、記憶と余りに違い過ぎて、どう対応したら良いのか戸惑ってしまう。
「お邪魔します」
ヒサエルディスを先頭に、ゾーイを挟む形で中へ入る。
扉を開けた内側も、また玄関のように広い空間だった。
大理石の床の向こうから、相変わらずの師匠が姿を現した。
美形エルフの粋みたいな外見で、研究にしか興味がない。それなりの格好をすれば女に爆モテするだろうに、今もヤブ医者のような姿である。
「やあ、ザック。魔王ちゃんも、いらっしゃい。ヒッサも、しばらくぶりかな」
真っ直ぐ進むと見えたヒサエルディスが、急角度で横へ逸れた。彼女の後を歩いていたゾーイは、急には止まれず、そのまま数歩進み、止まった。
後から来た俺は、当然その手前で止まった。
「ふわああああっ!」
ゾーイが声を上げると同時に、足元から光が立ち上った。
「こ、これは」
「魔法陣だな」
光を遮る腕の下で俺とヒサエルディスが会話する中、ゾーイが膝から崩れ落ちる。
びしゃっ。
液体のはねる音がした。
俺は、音のした方を見た。
ゾーイが水溜まりの中へ、尻餅をついていた。ヒサエルディスが取り寄せたワンピースを被っただけで、下着はつけていない。あそこ丸出しである。
「ああっ」
まだ毛もまばらな割れ目へ、ゾーイの手が伸びる。もう片方の手が胸の方へ向かい、彼女は仰向けに倒れ込んだ。
「あっ、ひっ。いいっ」
ぐちょぐちょ、と派手に音を立てながら、ゾーイの指が一本、二本、と膣を出入りする。その目は快感に揺蕩って虚ろである。どうやら、水たまりは、彼女の愛液らしい。
「ザックも中へ入って、一緒に楽しんだら?」
魔法陣の向こうから、師匠に声をかけられた。ヒサエルディスもそうだが、彼もまた平静に元魔王のオナニーを観察していた。
エルフだからか賢者だからか、この二人は昔から、こんな感じだった。
「入ったら、お前もイカないと、解除されないんじゃないか?」
ヒサエルディスが指摘する。
「そうそう」
師匠が嬉しそうに同意した。
「あんっ。ああんっ、ザック様あ~」
びしゃびしゃと愛液ダダ漏れのゾーイが、魔法陣の中から俺を呼ぶ。紅潮した肌、潤んだ瞳、濡れた声。刺激的なお誘いではある。
「命令だ。一人でイけ」
「そんなあ~」
俺の命令は聞こえたようだ。言葉と裏腹に、手の動きが激しくなる。
「冷たいなあ。ベイジーのところで散々ヤって、飽きてしまったかな?」
「な、何故それを?」
「ヒッサに来た手紙を回してもらった。師として、弟子を気にかけるのは当然だろう。特にザックみたいに、面倒事に巻き込まれる星の下に生まれた子は」
動揺する俺に、師匠は何でもないことのように告げた。
ベイジルも、良くも恥ずかしげもなく書き送ったものだ。
「イクッ、イクッ、あああっ」
ゾーイが果てた。彼女を包む光が消え、魔法陣も失せた。
20
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる