異世界生活に求めるはただ幼女と共にあることのみ

ジェロニモ

文字の大きさ
5 / 23

4話

しおりを挟む
「姉御!アレはなんなんですかい!?」

「人!?そんなはずは……っ!それになんて格好をっ!アミティ、あなたは後ろに隠れてなさい!」

「探査にも反応しませんでしたし、あんな格好してる人間いるわけねぇ。
ありゃ新手の魔物かもしれやせん!」

  何がなんだがよくわからないが、彼女たちのやりとりで自分の今の格好は思い出せた。
 アミティちゃんももう反応しなくなってたから気にしてなかったが、全裸マン一歩手前のバリバリの不審者である。

それだけならまだしも、人外の疑いすらかけられている始末だ。
 仕方なく僕は両手を頭の後ろに組んで地べたに這いつくばった。

「僕は無害な存在です。森で泣きじゃくって居たアミティちゃんを見つけて一緒に雨宿りして居ただけです。
怪しいものじゃ決してありません!」

「じゃ、じゃあその格好はなんだ!森の中にそんなふざけた格好で入る奴があるか!
自宅でもそんな格好のやつはいねぇよ!」

おっさんの意見はごもっともです。

「むしろ最初は全裸だったんです。だからこれでもマシになった方なんですよ。いや本当なんです!信じてください。」

「信じられるか!」

 どれだけ真意に訴えても返ってくるのは拒絶のみ。タキシードでも着てればこうはならなかったのか。
今思えば裸で森に放置はないだろう。舐めてんのか。

いやしかしそのおかげでアミティちゃんと知り合えたと言えなくもないし。こちらの神が僕のために出会いを演出してくれた可能性も否定はできない。

 神への愚痴はひとまず保留にした。

「変態さんの言ってることは本当だよ!一緒に雨宿りしてただけなの!
あんな卑猥なかっこーっで迷ってたみたいだから、わたしが保護してあげてたの。」

 アミティちゃんが女性の服の裾を引っ張って訴えかけてくれて居た。それにしてもそっかー。僕はアミティちゃんに保護されている側だったのかー。
 確かに暖と無毒な飲料水を提供してもらいと、僕は彼女に出会ってなかったら森の中でのたれ死んで居たかもしれない。

 というよりアミティちゃん。今その呼び方はまずいと思うよ。

「変態さんだと!?やっぱりアミティちゃんアレに何かされて!」

 弓を構えたおっさんは殺気を篭った目で僕を睨みつけてきた。限界まで引き絞った弓はギリギリと音を鳴らしていて、あの弓で射られたら僕はあっけなく貫かれてしまうと思う。そんな迫力を感じた。

ーーああこれは死んだかもしれない。

 でもアミティちゃんと出会えたこの二度目の人生に悔いなどない。たとえ短くとも濃縮された時間だった。

 ぼくはアミティちゃんの頭を撫でた手の感覚、アミティちゃんに頭を撫でられた時の手の温もりを思い浮かべて、そっと目を閉じた。

………しかし待てども待てども終わりはやってこなかった。
うっすーら眼を開いて状況を確認してみると、アミティちゃんが弓の前で両手を目一杯広げて僕を庇うように立っていた。

「退いてくれアミティちゃん!」
「ヤッ!!」

アミティちゃんは首を横にぶんぶん振る。

「アミティちゃん!大丈夫!僕は大丈夫だからそこから退くんだ!」

 もし間違えてあのおっさんがストッパーになっている手を離しまえば………その時のことを想像してゾッとした僕はあらん限りの声で叫んだ。

 すると女性が殺気立つおっさんの前に手を差し出して、ぼくを射ろうとするおっさんを諌めた。

「ローガンさん。ひとまず待ってください。」

「でも姉御!」

「警戒を解け。と言ったわけではありません。少し待って欲しいと言ったんです。

 あまり直視したくはありませんがアレはその。なんというか全裸に近い丸腰のようですし。
今はアレが私たちにとって害になるかどうか、なんとも言えません。

 わたしはアミティに話を聴きます。どうかローガンさんはアレを警戒しておいてください。」

 害になるかどうかはまだ不明と言っておきながら、僕の呼称が「アレ」であるあたり彼女が僕に対してあまり良い感情を抱いていないことが伺えた。

 バシャバシャとドロドロの地面を踏みしめて、女性はアミティちゃんの前までやってきた。

「アミティ。あなたはアレが悪い人だと思いましたか?」

「変態さんは悪い人じゃないもん!わたしおはなししたからわかるもん。ほんとだもん!」

「そうですか………。」

 アミティちゃんは女性の問いかけに食い気味に答えた。瞳を逸らすことなく女性を見つ続けている。

アミティちゃん……。

 僕を擁護するアミティちゃんに涙が溢れそうになる。

 アミティちゃんに話を聴いた女性はしばらく目を閉じて固まった。そしてゆっくりと眼を開いて深く息を吐くと、言った。

「ローガンさん。弓を下ろしてください。」

「なっ。あんな見るからにヤバそうなやつを信じるんですかい!?

 それにさっきからアミティちゃんもあいつのこと変態変態って言ってるじゃないですか!」

「だ、だって変態さんは変態さんだから。」

アミティちゃんはいったい何が悪いのか分からないといった困惑した様子だ
うん。アミティちゃんはちょっと静かにしておこうね。

「まぁその辺は気になりますし後でとっちめますが、アミティは悪い感情を持ってそう呼んでいるわけではないようです。

 私もアレを信じたのではありません。
私はアミティの人を見る目を信じたのです。子供は大人の悪意に敏感ですからね。」

 女性はアミティちゃんの両肩にそっと手を添えて軽くかがんで目線を合わせて笑いかけた。

「私はアレのことを守ろうとするアミティを信じます。」
「ママ……。」

 アミティちゃんは泣きはらした目にまた涙を貯めて、ゆっくりと女性の首に手を回して抱きついた。そして女性もそれを受け入れる。

「……はぁ。わかりやしたよ。先走っちまってすいやせんでした。」

 おっさんは、大きくため息をつくと、弓を下げ後頭部をガシガシと手で掻いた。

 なんだかよくわからないけど、確かなことが二つ。

 僕の命はアミティちゃんに助けられたということ。
 
ーーそして、アミティちゃんの母親が、アミティちゃんの母親なんだということだ。

顔をお腹に埋めて嗚咽を漏らすアミティちゃんの背中をトン、トンと優しく叩きながら、自身も静かに涙を流す女性を見て僕はそう思ったのだ。

 ポツポツと身体を打っていた水滴の感覚がないのに気がついて空を見上げると、雨が止んでいた。

 そして気を利かせたお日様さんが雲の切れ間からちょこっと顔を出して、スポットライトみたいな光を差し込んで、抱き合う二人を照らした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

没落港の整備士男爵 ~「構造解析」スキルで古代設備を修理(レストア)したら、大陸一の物流拠点になり、王家も公爵家も頭が上がらなくなった件~

namisan
ファンタジー
大陸の南西端に位置するベルナ子爵領。 かつては貿易で栄えたこの港町も、今は見る影もない。 海底には土砂が堆積して大型船は入港できず、倉庫街は老朽化し、特産品もない。借金まみれの父と、諦めきった家臣たち。そこにあるのは、緩やかな「死」だけだった。 そんな没落寸前の領地の嫡男、アレン(16歳)に転生した主人公には、前世の記憶があった。 それは、日本で港湾管理者兼エンジニアとして働き、現場で散った「整備士」としての知識。 そして、彼にはもう一つ、この世界で目覚めた特異な能力があった。 対象の構造や欠陥、魔力の流れが設計図のように視えるスキル――【構造解析】。 「壊れているなら、直せばいい。詰まっているなら、通せばいい」 アレンは錆びついた古代の「浚渫(しゅんせつ)ゴーレム」を修理して港を深く掘り直し、魔導冷却庫を「熱交換の最適化」で復活させて、腐るだけだった魚を「最高級の輸出品」へと変えていく。 ドケチな家令ガルシアと予算を巡って戦い、荒くれ者の港湾長ゲンと共に泥にまみれ、没落商会の女主人メリッサと手を組んで販路を開拓する。 やがてその港には、陸・海・空の物流革命が巻き起こる。 揺れない「サスペンション馬車」が貴族の移動を変え、「鮮度抜群の魚介グルメ」が王族の胃袋を掴み、気性の荒いワイバーンを手懐けた「空輸便」が世界を結ぶ。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界のんびり放浪記

立花アルト
ファンタジー
異世界に転移した少女リノは森でサバイバルしながら素材を集め、商人オルソンと出会って街アイゼルトヘ到着。 冒険者ギルドで登録と新人訓練を受け、採取や戦闘、魔法の基礎を学びながら生活準備を整え、街で道具を買い揃えつつ、次の冒険へ向けて動き始めた--。 よくある異世界転移?です。のんびり進む予定です。 小説家になろうにも投稿しています。

春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ
恋愛
教師との悲恋、そして突然の死をもって転生をした少女、シャーロット・ジェム。凍れる国にて、小さな魔法屋を営んでいた。名門学園からの推薦状が届いたことにより、平和だった日々に暗雲が訪れるように。 今世も彼女に死は訪れる――未来を望むには二つ。 ――ヤンデレからもたらされる愛によって、囲われる未来か。そして。 ――小さくて可愛いモフモフ、女神の眷属と共に乗り越えていくか。 鳥籠に囚われるカナリア色の髪の少女、ヤンデレホイホイの彼女が抗っていく物語。 生きていく物語。 小説家になろう様でも連載中です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

処理中です...