ダブリン。進化者は無双する。8歳だけど身体は大人。

肩ぐるま

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呪い再び 3

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「これから、2人だけのときは、テレナと呼べ」
そこで、一呼吸置いて、
「必ず生きて帰って来るんだぞ。そして、テレナと呼んでくれ」
その言葉と共に背中を押されて、テレナリーサの執務室を出た俺は、クレラインやオーリアに顔を合わせることなく、囚人船に向かった。
今回は船の上での戦いなので、ゼネラルアーマーは召喚していない。ゼネラルアーマーを着て水に落ちると、沈んでしまうからだ。
そう言えば、ブラッドスライムになって俺の肩に張り付いているルージュのことが気になる。
「今度のことで力を貸してくれるのか?」と聞くと
「蘇ったばかりで、まだ力がない。期待するな」と言われた。
となると、頼みの綱は、呪い無効と、テレナから預かった破眼の剣だ。
そんなことを考えているうちに、囚人船が係留されている所に来た。しかし、河岸から囚人船までは距離がある。小舟で行かないと辿り着けないのだ。

こうして、囚人船の王との戦いは、間抜けな事に、まず小舟を探すことから始まった。
川岸で小舟を探したが、囚人船が係留されている物騒な場所に舟が置いてある筈がない。
小舟を探しあぐねた俺は、仕方なく、川に飛び込んで泳いで行くことにした。
前方の真っ暗な川面に、燐光でほのかに光った船が見えてきた。
俺は、囚人船の舷側まで来ると、岩這いスキルで舷側をよじ登った。
舷側を登り終えると、甲板に飛び上がり、ゼネラルソードを召喚する。

「よく来たな。色男。例の焼き物は持ってきたか?」
声を掛けて来たのは、どこにでもいるような平凡な身なりをしている、腐った魚のような目をした男だった。
「焼き物は持ってきた。先に、呪いを解け」と俺が言うと
「それはできん」と後ろから殴りかかってきた男がいた。
気配察知と超音波スキルで周囲を警戒していたので、体を空中回転して避け、後ろ回し蹴りで、蹴り飛ばした。 
もともと、俺は、交渉する気は無い。相手もそうだろう。
俺は、蜃気楼を出して、蹴り飛ばした男を蜃気楼に追いかけさせると同時に、瞬動で、腐った魚の目をした男との距離を詰め、鎧袖一触で切りつけた。蜃気楼に一瞬気を取られた男は、俺の剣を避けることができず、肩の下あたりで切断され、上半身がずれ落ちた。
これでアンデオンの刺客らしい奴は倒した、後は、囚人船の王という奴だ。周囲に、三半規管の破壊魔法を撃ってみるが、予想通り、半ばアンデッドになっているらしい、この船の奴らには効かなかった。
俺は、身を翻して、高くなっている後ろの甲板に飛び乗り、アレックスとバートを召喚すると、衝撃派魔法をアンデット達に撃つが、一向にダメージを与えられない。
そのとき
「無駄、無駄、無駄」と言いながら、俺達を囲もうとしていた男たちの中央から、1人の大男が前に出てきた。
「お前が囚人船の王か?」
「あの男は、殺そうと思っていたところだ。手間が省けたというものだ」
アンデオンの刺客のことを言っているようだ。
「お前が掛けた呪いを解け」と俺が言うと、
「呪いを解いて欲しければ、若い女の魂を食わせろ」と言い返してくる。
俺はゼネラルソードを左手に持ち替え、右手で破眼の剣を抜き放った。
「「「「ぐっ」」」」
男たちが、一瞬ひるむ。その隙を逃さず、一番前に出ていた囚人船の王に、瞬動で距離を詰め、鎧袖一触で斬りつけた。
確かに、必殺ともいえる一太刀が入ったが、大男は軽く体を揺らしただけだった。
「ふん。そんな剣の腕では我には通用せん。▲□◎※●▼◎」
大男が聞き取れない言葉を発したが、呪い無効が働いているのか、俺には何のダメージもなかった。さらに、アレックスやバードは魔物なので、人間相手の呪いが効くわけがない。
俺は、お返しにとばかりに、エアーカッター、ファイアーボール、クレイランス、電撃と撃てる魔法を次々と撃つが、どの魔法も効き目がない。
一方、相手の呪いも俺には効かない。
その上、俺が、破眼の剣を構えている為、遠巻きにしているだけで、睨み合いになった。
こうして手詰まりを感じたとき、
『斬り殺した男の懐を探ってみな』と頭の中で声がした。
一瞬驚いたが、これはルージュの声だと分かり、直ぐに斬り殺した男を見ると、何故かアンデッド達は、その男を避けるようにして、俺を囲んでいる。
「アレックス、バート、あの男の所まで、行くぞ」と指示して、そちらの方向に攻撃を加えながら、男のところまで行き、ゼネラルソードの召喚を解除して、左手で死んだ男の懐を探ると、四角い石があったので取り出すと、アンデット達に動揺が走った。
「これをどう使えばいい?」と小声でルージュに聞く。
『左手に持て』と言うので、四角い石を左手に、右手に破眼の剣を構えるとアンデッドどもが、数歩後ろに下がった。
その状態で暫く睨み合っていたが、
「どうやら、その石の使い方を知らんようだな。それで、よくこの船に乗り込んで来たものだ」と言いながら大男が、前に出てこようとする。
「おい、どうやって使うんだ?早く教えてくれ」と、ルージュを急かせると、
「▲※□◎※●▼□◎▼▲」と、ルージュが呪文を唱えた。
「この呪文は?何者だ?」と大男が足を止める。
すると、俺の襟元から飛び出したルージュが、甲板に着くと直ぐに人型になって、俺の方を見上げて、「その石をここに置きな」と自分の横の床を指差すので、石をルージュの横に置いた。
ルージュがその石に触ると、その手が薄い膜になって、石を覆っていく。
すると石がルージュに吸収されていき、ルージュは身長が倍になり、色も薄い肌色に変わって、石がなくなった。
「▲※●▼□〇□◎※●▼□△◎▼▲●◇」
「▽▲※□◇※●◎▼□●▼□◇◎▼▲」
「▲◎▼※□◎※◇○●▼□◎※▼▲」
「▲※□◎※●▼□□◎※▼□△◎▼●◇▲」
ルージュと大男が聞き取れない言葉で、何事かやり取りしている。
やがて、やり取りが終わったのか、俺の方を向いて
「話はついた。お前さんの女の呪いは解けた。それじゃ、帰ろうか」
「えっ、終わったのか?」と聞くと、
「あいつらは、破眼の儀式石を取り込んだ私には逆らえない。だから、色々、約束をさせた。呪いを解くのもその一つさ。今後、私達には手を出さないという約束もさせた」
「そんな約束、信用出来るのか?」
「約束を破ったら、生き返らせてやると脅したから大丈夫さ。さっ、さっさと戻ろう。戻って、酒を飲もうぜ」
と、ルージュは身軽に俺の体を駆け上がると、俺の肩に腰を掛けた。
「生き返らせるというのが、何故、脅しになるんだ?」
と、俺が疑問を口にすると、
「あいつらは、生者でもなく死者でもない。だから、死ぬ恐れがないが、生き返って生者になると、死んで消滅する恐れがある。奴らは、それが一番怖い」
と、よく分からない説明をされた。
「さっき話していた言葉は、何だ?」
「あれは死者の言葉だ。生者には聞き取れない」
そうか、こいつも亡霊だったんだと思い出して、
「お前は、生きているのか?死んでいるのか?」と聞くと
「私は生きてはいるが、生者とはいえない。だからといって、死んでもいない。この体は呼吸をしていないから、何処に閉じ込めても窒息して死ぬことはない。何も食べなくても、体がバラバラに千切れても平気だ。元々が、ただの血だからな。その体に私の魂が宿った。それが、今の私だ」
良く分からない説明だったが、とにかく一旦戻って、パティの様子を確認しようと思い、アレックスとバートとゼネラルソードを送還した。
川を泳いで渡り、革鎧と服を風魔法と火魔法で乾かしながら、騎士団の宿舎に戻った。
ルージュは、スライムの形に戻って、俺の体に貼り付いている。

騎士団の宿舎に戻ると、まずテレナリーサの執務室に行き、剣を返そうとすると、仮面を外したテレナリーサに、いきなり抱き締められた。
「心配で心配で。よく無事で帰って来てくれた」
「ああ、剣が役に立った。ありがとう」
「それは何よりだ」
「パティの様子はどうだ?」
「さっき、気が付いたそうだ」
俺がパティの様子を見に行こうとすると、腕を掴んで引き止められ、
「もう少し私にも時間をくれ」と言ってキスをしてきた。そして、直ぐに体を離して「忘れものだぞ」と言うので、何を忘れたのか分からないでいると、
「名前を呼んでくれと言ったじゃないか」と、恥ずかしそうに言う。
こんな可愛いところがある女だっのかと驚いたが、
「テレナ、帰ったぞ」と言うと、
「お帰りなさい」と言いながら、改めてキスをしてきた。
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