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坑道のリッチ
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カスタリング鉱山で、俺には重要な役目が与えられている。
坑道に潜むリッチと会話して、リッチが敵対してこないことを、侯爵軍に確信させないといけないのだ。
もっともリッチは、既に俺の召喚眷属になっているので、話し合う小芝居をするぐらい何の問題もない。
リッチであるフィアは、召喚してから一度も送還していない。どういうスキルか魔法かは分からないが、常時姿を消していられるということで、姿を消したまま俺の傍にいるらしい。今まで念話で話をしたことが無かったが、これからの会話は、侯爵家の人間に聞かれるわけにはいかないので、念話でフィアに呼びかけた。
『フィア、念話で話はできるか?』
『もちろんじゃ』と返事が返って来た。
『侯爵との会話は聞いたか?』
『聞いておったぞ』
『前に居た坑道に現れて一芝居売って欲しんだがな』
『うむ、我のドッペルゲンガーを出しておこう』
『ドッペルゲンガーって、独自の自我を持っているんだろう。大丈夫か?』
『性格のいい奴を出しておくから大丈夫じゃよ』
不安を感じながらも
『前の場所に現れてくれたら俺が話しかけるから、話を合わせて欲しい。それと、俺以外の者とは話をするなよ』
『了解じゃ』
これで準備は済んだので、目の前のことに注意を戻した。
今、侯爵軍はカスタリング鉱山に築かれた砦を攻撃している。この砦は、落とした後で侯爵軍が使う予定なので、砦を破壊しないように攻撃している為、攻略に時間がかかっている。
「旦那様、私が打って出ようと思います。援護をお願い出来ますか?」とアンテローヌに頼まれた。
「アンテが行くのか?他の将軍に任せたらどうだ?」と引き留めると、
「私が行くのが、一番早く片が付きます。時間を掛けていると、伯爵軍の本隊がやって来るでしょうから」
アンテローヌは、隠密から派生した応用スキルを持っているようで、そのスキルを使われると、気配察知にも熱感知にも引っかからず、まったく気付くことが出来ない。しかも、フィアが姿を隠すのに使っているものとは違うらしい。
「援護はどうすればいい?」
「砦に、正面から目立った攻撃をして下さい」
「火魔法でもいいか?」
「敵の注意を引き付けてくだされば、どのようなものでも」と答えて、アンテローヌは姿を消した。
『姿を消して行動するということは、暗殺に行ったんだよな。普段は優しげだが、実は、恐ろしい女なのかも知れない』と、少しゾクリとした。
俺は本陣を出て、砦の正面から100メート程離れた地点まで進み、「ファイアトルネード」と叫んで火魔法を撃った。
大型の火の渦巻きが発生して、砦に向かって走っていく。
砦の上の弓を持つ兵士が、俺に向かって矢を放つが、風魔法で逸らせていく。
10秒ほどでファイアトルネードが砦にぶつかり、城壁の上の兵たちが炎に包まれた。
暫くすると砦の門が少し開いた。アンテローヌが潜入に成功して、門の内側を制圧したようだ。
侯爵軍の兵隊が門の隙間に殺到し、門を大きく押し開けた。
後は、砦に雪崩れ込んだ侯爵軍が、数の力で砦を制圧した。
砦の守備隊はほとんど降参したが、一部が坑道に逃げ込んだようだ。
俺も、侯爵達と一緒に砦に入ると、アンテローヌが姿を現して、侯爵に何かを報告した。
「後は、坑道だけじゃ。婿殿の出番じゃ。よろしく頼むぞ」と言われたので、アンテローヌに、
「とりあえず、俺が1人で行ってくる。外で待っていてくれ」と言うと頷いたので、そのまま1人で坑道に入っていった。
坑道の中に入ったが、姿を消した侯爵家の人間に尾行されている可能性があるので、特別なスキルを使わないようにしながら進んだ。
坑道の中に逃げ込んだ敵はフィアが対処してくれたので、俺は、敵に出会わずに3層まで降りていった。
3層の奥で、フィアのドッペルゲンガーが現れた。俺に向けて杖を向けてくる。
俺は両手を軽く挙げて、開いた手の平を見せ、
「戦う気はない。話し合いに来た」と大きな声で呼び掛けた。
ドッペルゲンガーの黒い眼窩の中で赤い灯が光り、俺を見つめている。
「人間よ、我の安寧を妨げるなかれ。妨げた者には報いがあらん」
こう言い放つとドッペルゲンガーは、杖を上に突き上げ、そのまま姿を消した。
『あれはあれで良いが、芝居がかった奴だったな』
気配察知にも熱感知にも何も引っかからないが、俺を見張っていて、今のやり取りを見ていた奴は必ずいると思っている。
アンテローヌが使う姿を消すスキルは、このランズリード家に先祖代々伝えられている特殊なスキルの可能性が高い。
だとしたら、この遠征に15人も参加しているアンテローヌの兄弟姉妹の何人かが、あるいは全員がそのスキル持ちで、誰かが俺を尾行していてもおかしくない。もしかしたら、アンテローヌ自身も、その中にいるかもしれないが、俺の目の前で、堂々と姿を消すスキルを使っていたから、それはないと思いたい。
そんなことを考えながら、坑道の奥から引き返した。
「首尾はどうじゃ?リッチと会えたか?話し合いは上手くいったか?」
坑道から出て来た俺に、侯爵が声を掛けてきた。
「リッチの安寧を妨げなければ問題はなさそうです」と俺が答えると、侯爵は大袈裟に頷き、
「大手柄じゃ。皆の者、よく聞け。我らは、このカスタリング鉱山の主のリッチに認められた。これより、カスタリング鉱山は、このランズリード家が治めることを、ここに宣言する」
ランズリード侯爵は俺を利用して、まんまと他領の鉱山を占拠してしまった。
俺は、ただ、侯爵に利用されただけなのか?
また、領地を横取りされて、トラディション伯爵は黙っているのか?
坑道に潜むリッチと会話して、リッチが敵対してこないことを、侯爵軍に確信させないといけないのだ。
もっともリッチは、既に俺の召喚眷属になっているので、話し合う小芝居をするぐらい何の問題もない。
リッチであるフィアは、召喚してから一度も送還していない。どういうスキルか魔法かは分からないが、常時姿を消していられるということで、姿を消したまま俺の傍にいるらしい。今まで念話で話をしたことが無かったが、これからの会話は、侯爵家の人間に聞かれるわけにはいかないので、念話でフィアに呼びかけた。
『フィア、念話で話はできるか?』
『もちろんじゃ』と返事が返って来た。
『侯爵との会話は聞いたか?』
『聞いておったぞ』
『前に居た坑道に現れて一芝居売って欲しんだがな』
『うむ、我のドッペルゲンガーを出しておこう』
『ドッペルゲンガーって、独自の自我を持っているんだろう。大丈夫か?』
『性格のいい奴を出しておくから大丈夫じゃよ』
不安を感じながらも
『前の場所に現れてくれたら俺が話しかけるから、話を合わせて欲しい。それと、俺以外の者とは話をするなよ』
『了解じゃ』
これで準備は済んだので、目の前のことに注意を戻した。
今、侯爵軍はカスタリング鉱山に築かれた砦を攻撃している。この砦は、落とした後で侯爵軍が使う予定なので、砦を破壊しないように攻撃している為、攻略に時間がかかっている。
「旦那様、私が打って出ようと思います。援護をお願い出来ますか?」とアンテローヌに頼まれた。
「アンテが行くのか?他の将軍に任せたらどうだ?」と引き留めると、
「私が行くのが、一番早く片が付きます。時間を掛けていると、伯爵軍の本隊がやって来るでしょうから」
アンテローヌは、隠密から派生した応用スキルを持っているようで、そのスキルを使われると、気配察知にも熱感知にも引っかからず、まったく気付くことが出来ない。しかも、フィアが姿を隠すのに使っているものとは違うらしい。
「援護はどうすればいい?」
「砦に、正面から目立った攻撃をして下さい」
「火魔法でもいいか?」
「敵の注意を引き付けてくだされば、どのようなものでも」と答えて、アンテローヌは姿を消した。
『姿を消して行動するということは、暗殺に行ったんだよな。普段は優しげだが、実は、恐ろしい女なのかも知れない』と、少しゾクリとした。
俺は本陣を出て、砦の正面から100メート程離れた地点まで進み、「ファイアトルネード」と叫んで火魔法を撃った。
大型の火の渦巻きが発生して、砦に向かって走っていく。
砦の上の弓を持つ兵士が、俺に向かって矢を放つが、風魔法で逸らせていく。
10秒ほどでファイアトルネードが砦にぶつかり、城壁の上の兵たちが炎に包まれた。
暫くすると砦の門が少し開いた。アンテローヌが潜入に成功して、門の内側を制圧したようだ。
侯爵軍の兵隊が門の隙間に殺到し、門を大きく押し開けた。
後は、砦に雪崩れ込んだ侯爵軍が、数の力で砦を制圧した。
砦の守備隊はほとんど降参したが、一部が坑道に逃げ込んだようだ。
俺も、侯爵達と一緒に砦に入ると、アンテローヌが姿を現して、侯爵に何かを報告した。
「後は、坑道だけじゃ。婿殿の出番じゃ。よろしく頼むぞ」と言われたので、アンテローヌに、
「とりあえず、俺が1人で行ってくる。外で待っていてくれ」と言うと頷いたので、そのまま1人で坑道に入っていった。
坑道の中に入ったが、姿を消した侯爵家の人間に尾行されている可能性があるので、特別なスキルを使わないようにしながら進んだ。
坑道の中に逃げ込んだ敵はフィアが対処してくれたので、俺は、敵に出会わずに3層まで降りていった。
3層の奥で、フィアのドッペルゲンガーが現れた。俺に向けて杖を向けてくる。
俺は両手を軽く挙げて、開いた手の平を見せ、
「戦う気はない。話し合いに来た」と大きな声で呼び掛けた。
ドッペルゲンガーの黒い眼窩の中で赤い灯が光り、俺を見つめている。
「人間よ、我の安寧を妨げるなかれ。妨げた者には報いがあらん」
こう言い放つとドッペルゲンガーは、杖を上に突き上げ、そのまま姿を消した。
『あれはあれで良いが、芝居がかった奴だったな』
気配察知にも熱感知にも何も引っかからないが、俺を見張っていて、今のやり取りを見ていた奴は必ずいると思っている。
アンテローヌが使う姿を消すスキルは、このランズリード家に先祖代々伝えられている特殊なスキルの可能性が高い。
だとしたら、この遠征に15人も参加しているアンテローヌの兄弟姉妹の何人かが、あるいは全員がそのスキル持ちで、誰かが俺を尾行していてもおかしくない。もしかしたら、アンテローヌ自身も、その中にいるかもしれないが、俺の目の前で、堂々と姿を消すスキルを使っていたから、それはないと思いたい。
そんなことを考えながら、坑道の奥から引き返した。
「首尾はどうじゃ?リッチと会えたか?話し合いは上手くいったか?」
坑道から出て来た俺に、侯爵が声を掛けてきた。
「リッチの安寧を妨げなければ問題はなさそうです」と俺が答えると、侯爵は大袈裟に頷き、
「大手柄じゃ。皆の者、よく聞け。我らは、このカスタリング鉱山の主のリッチに認められた。これより、カスタリング鉱山は、このランズリード家が治めることを、ここに宣言する」
ランズリード侯爵は俺を利用して、まんまと他領の鉱山を占拠してしまった。
俺は、ただ、侯爵に利用されただけなのか?
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