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穢れの女王
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『うむ、誰ぞが、ヘルゲートを開いたのか?』
・・・・・・・
『うむ、ヘルゲートが閉じられておらぬ。ふむ、この先に、どのような世界があるのか興味が湧くのう。妾も、外に出てみるかのう』
・・・・・
骨に皮を被せただけの細い人差し指が空間をなぞると、空間に髪の毛よりも細い筋が入った。その筋に指を差し込むと、グググッと押し込んでいく。続いて、両手の指をその切れ目に掛けると、グイッと左右に広げ、その隙間から、この世界に出た。
黒いローブで隠されたその躰は、リッチと見まがうほどやせ細っていて、骨に皮を被せただけのように見える。しかし、顔は髑髏ではなく、薄い皮があり、僅かに生気があった。黒い髪が、顔を包んで、肩から腰へと流れている。その蝋のように白い顔は、ミイラのように肉が無いが、もし、肉付きをよくすれば、美しい女性になることが想像できる顔立ちだ。
もっとも、それは、瞼を開くまでのことだった。
ゆっくりと開かれていく瞼の下には、眼球が無く、暗黒の深淵があった。
ミイラのような顔を左右に振って、暫らく周囲の様子を伺っていたそれは、
『ふむ、面白いことをやっておるな』
と呟くと、前に出した片手の人差し指を、こちらへ来いという風に曲げた。
『我を強制召喚するとは、何者・・・』と、フィアは驚いたが、その驚きは、目の前のそれを見て、さらに大きくなった。
フィアは、その場で跪く。
『これは、穢れの女王陛下様』と畏まった。
『そなた、冥界の眷属のくせに、何故、この世界におる?』
『ははっ、古の魔導士に冥界より召喚され、それ以来、この世界に留まっております』
『ふむ、人間に召喚されたのか?』
『左様でございます。しかし、陛下は何故に、この世界に?』
『あの、ヘルゲートを開けたのはそなたか?閉じられておらなんだぞ』
『あっ、そういうことでしたか?』
『妾も、この世界を見たいと思ってな。ところで、アンデッドフィールドが出来ておるが、あれは、そなたの仕業か?』
『いえ、あれは、我を召喚した人間によって生まれたものです』
『ふむ、そなたは、この世界で何をしておるのじゃ?』
『召喚した者を助けております』
『古の魔導士か?』
『いえ、古の魔導士は遥かな昔に没して、今は、違う者に仕えております』
『ふむ、面白いことをしておるようじゃのう。妾も、このちょっとした戦いに手を出すことに決めたぞ。無聊を慰めるのにちょうどよい。そなたは、今から、妾に仕えい』
『御意』
穢れの女王と呼ばれた異形と、フィアであったリッチは、その場から姿を消し、アンデッドの原に現れた。
『アンデッドフィールドから、アンデッドどもを解き放ってやろう』
穢れの女王の一言で、アンデッドの原に閉じ込められていたアンデッド達が、領都に向かって進み出した。
『このもの達に、煉獄の業火を纏わせてやろう』
次の一言で、アンデッドの身体から、鎧から、手に持つ槍や剣から、炎が噴き出した。
その頃、砦で久しぶりにぐっすり眠って朝を迎えた俺は、トラディション伯爵領で起こっていることなど知るわけもなく、ひと仕事終えたと思って、呑気に、この後の行動を考えていた。
そして、フィアの意見を聞こうと思って『フィア』と念話で呼んでみたが、返事が無かった。
ステータスを確認しても、フィアのステータスが消えている。
『フィアが奪われたのか?しかし、誰に?』
『穢れの女王の仕業だよ』と、ルージュが念話で教えてくれた。
『穢れの女王?』
『これ以上のことは言えない』
『危険な奴なのか』
『注意しなよ』
ルージュの念話は、それっきり途絶えた。
トラディション伯爵の執務室では、伯爵とフェイナールが、前線から退却してきたラディウスからの報告を聞いていた。
「あの炎を何とかしないと勝ち目はないぜ」とラディウス。
「どんな炎だ」
「アンデッドの身体中から炎が噴き出していて、鎧や武器からも炎が噴き出してやがる。具合が悪いことに、その炎がこっちの攻撃を全部燃やしてしまいやがる。スキルも魔法も効かねえしよ」
「アンデッドから噴き出す炎か。それは、禁術の煉獄の業火ではないか?」
「煉獄の業火?」とラディウス。
「お前でも知らぬか。リッチが使う禁術じゃよ」と伯爵が説明する。
「ここでリッチが絡んで来るとはのう」とフェイナール。
「王国の介入は避けられぬな」と伯爵。
「むしろ、王国に救援を願い出でては如何ですかな?」と、フェイナール。
トラディション伯爵は膝を打って、
「それは妙手じゃ。ふはははっ。リッチに領地を犯されていると救援を願い出れば、王家の奴等も、我らの為に兵を出さざるを得まい。一石二鳥の妙手じゃ。さっそく、手配せよ」と伯爵の命により、フェイナールは執務室を出て行った。
残ったラディウスに、
「アンデッドどもが、領都に入らぬように食い止めておけ」
「難しいぜ」
「試しに、破眼の儀式石を使ってみろ」
「リッチやアンデッドは、怨霊とは違うからな。そんなものは効かないと思うぜ」
『うむ、誰ぞが、ヘルゲートを開いたのか?』
・・・・・・・
『うむ、ヘルゲートが閉じられておらぬ。ふむ、この先に、どのような世界があるのか興味が湧くのう。妾も、外に出てみるかのう』
・・・・・
骨に皮を被せただけの細い人差し指が空間をなぞると、空間に髪の毛よりも細い筋が入った。その筋に指を差し込むと、グググッと押し込んでいく。続いて、両手の指をその切れ目に掛けると、グイッと左右に広げ、その隙間から、この世界に出た。
黒いローブで隠されたその躰は、リッチと見まがうほどやせ細っていて、骨に皮を被せただけのように見える。しかし、顔は髑髏ではなく、薄い皮があり、僅かに生気があった。黒い髪が、顔を包んで、肩から腰へと流れている。その蝋のように白い顔は、ミイラのように肉が無いが、もし、肉付きをよくすれば、美しい女性になることが想像できる顔立ちだ。
もっとも、それは、瞼を開くまでのことだった。
ゆっくりと開かれていく瞼の下には、眼球が無く、暗黒の深淵があった。
ミイラのような顔を左右に振って、暫らく周囲の様子を伺っていたそれは、
『ふむ、面白いことをやっておるな』
と呟くと、前に出した片手の人差し指を、こちらへ来いという風に曲げた。
『我を強制召喚するとは、何者・・・』と、フィアは驚いたが、その驚きは、目の前のそれを見て、さらに大きくなった。
フィアは、その場で跪く。
『これは、穢れの女王陛下様』と畏まった。
『そなた、冥界の眷属のくせに、何故、この世界におる?』
『ははっ、古の魔導士に冥界より召喚され、それ以来、この世界に留まっております』
『ふむ、人間に召喚されたのか?』
『左様でございます。しかし、陛下は何故に、この世界に?』
『あの、ヘルゲートを開けたのはそなたか?閉じられておらなんだぞ』
『あっ、そういうことでしたか?』
『妾も、この世界を見たいと思ってな。ところで、アンデッドフィールドが出来ておるが、あれは、そなたの仕業か?』
『いえ、あれは、我を召喚した人間によって生まれたものです』
『ふむ、そなたは、この世界で何をしておるのじゃ?』
『召喚した者を助けております』
『古の魔導士か?』
『いえ、古の魔導士は遥かな昔に没して、今は、違う者に仕えております』
『ふむ、面白いことをしておるようじゃのう。妾も、このちょっとした戦いに手を出すことに決めたぞ。無聊を慰めるのにちょうどよい。そなたは、今から、妾に仕えい』
『御意』
穢れの女王と呼ばれた異形と、フィアであったリッチは、その場から姿を消し、アンデッドの原に現れた。
『アンデッドフィールドから、アンデッドどもを解き放ってやろう』
穢れの女王の一言で、アンデッドの原に閉じ込められていたアンデッド達が、領都に向かって進み出した。
『このもの達に、煉獄の業火を纏わせてやろう』
次の一言で、アンデッドの身体から、鎧から、手に持つ槍や剣から、炎が噴き出した。
その頃、砦で久しぶりにぐっすり眠って朝を迎えた俺は、トラディション伯爵領で起こっていることなど知るわけもなく、ひと仕事終えたと思って、呑気に、この後の行動を考えていた。
そして、フィアの意見を聞こうと思って『フィア』と念話で呼んでみたが、返事が無かった。
ステータスを確認しても、フィアのステータスが消えている。
『フィアが奪われたのか?しかし、誰に?』
『穢れの女王の仕業だよ』と、ルージュが念話で教えてくれた。
『穢れの女王?』
『これ以上のことは言えない』
『危険な奴なのか』
『注意しなよ』
ルージュの念話は、それっきり途絶えた。
トラディション伯爵の執務室では、伯爵とフェイナールが、前線から退却してきたラディウスからの報告を聞いていた。
「あの炎を何とかしないと勝ち目はないぜ」とラディウス。
「どんな炎だ」
「アンデッドの身体中から炎が噴き出していて、鎧や武器からも炎が噴き出してやがる。具合が悪いことに、その炎がこっちの攻撃を全部燃やしてしまいやがる。スキルも魔法も効かねえしよ」
「アンデッドから噴き出す炎か。それは、禁術の煉獄の業火ではないか?」
「煉獄の業火?」とラディウス。
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「ここでリッチが絡んで来るとはのう」とフェイナール。
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「むしろ、王国に救援を願い出でては如何ですかな?」と、フェイナール。
トラディション伯爵は膝を打って、
「それは妙手じゃ。ふはははっ。リッチに領地を犯されていると救援を願い出れば、王家の奴等も、我らの為に兵を出さざるを得まい。一石二鳥の妙手じゃ。さっそく、手配せよ」と伯爵の命により、フェイナールは執務室を出て行った。
残ったラディウスに、
「アンデッドどもが、領都に入らぬように食い止めておけ」
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