ダブリン。進化者は無双する。8歳だけど身体は大人。

肩ぐるま

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アリシア閣下

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「そろそろ王都に戻ろうと思う」とアンテローヌに告げると、
「それでは、その前に、是非、ランズリードに寄って、侯爵閣下に挨拶をして下さいませ。私も家を出る挨拶をしないといけませんし」
と言われたので、
「本当に、王都に付いて来るのか?」と聞くと、
「眷属にされてしまった責任を取ってもらいますわ。嫌だと言われても付いて行きます」と宣言されてしまった。これは、侯爵との挨拶は長引くなと思ったが、仕方がないと観念して、俺達は、馬車で領都ランズリードに向かった。
案の定、ランズリードでは、侯爵が開いた、3日3晩も続く宴会に付き合わされた。
正式な結婚式は後日挙げるとして、今回の出発で、アンテローヌは侯爵家の人間ではなくなり、俺を中心とした新しい家臣団を興すことになるそうだ。つまり、新しい貴族家の予備軍になるらしい。だから、この別れが、実質的に娘を嫁に送り出す宴になるということで、侯爵は連日酔い潰れ、俺も散々酒を飲まされた。
「婿殿、娘を頼むぞ」
酔った侯爵は、涙を堪えながら、俺の手を取って何度も何度も繰り返した。
「ご安心下さい。お父様。立派に家臣団を立ち上げてみせますので」と、アンテローヌが俺に代わって宣言している。俺には、貴族の風習が分からないから、
「お任せ下さい、お義父さん」と、俺も同じ言葉を繰り返すばかりだった。

俺達が助け出した子供達は、ランズリード侯爵が手配した孤児院に預け、俺達はいよいよランズリードを出発した。

ランズリードから、伯爵領を通らず王都に行くには、遠回りになるが、セレストリ辺境伯領を通るしかない。
幸い、ランズリード家とセレストリ家は縁戚なので、この道を選んだ場合、旅の安全は確保される。

俺達は、侯爵家の城から北に向かう街道に出て、ランズリードの紋章が着いた馬車を走らせた。御者はクレラインとオーリアが交互に務め、俺とアンテローヌ、ルビーが馬車の中にいる。

これまで、馬車といえば幌馬車か荷馬車しか乗っていなかったから、貴族用の箱馬車に乗るのは、少し落ち着かない、
それをアンテローヌに伝えると、
「慣れて下さいませ」と言われてしまった。

ランズリード領を出た後は、セレストリ領を通過するだけだと思っていたが、何故か、馬車は、領都セレストリに向かっていた。
セレストリの手前にある、幾つかの街を素通りして、領境から10日程掛けて、漸く領都セレストリに着いた。
馬車は、街の城門で止まることなく、貴族用の門を通って街に入り、そのままセレストリ城に向かった。
「ここの領主に用事があるのか?」とアンテローヌに聞くと、
「お会いになれば分かりますわ」と、言葉を濁されるだけで、ちゃんと答えてくれない。
いよいよ城を囲む城壁の門をくぐり、前庭を抜けて、城の前に馬車を横付けにすると、知っている顔が出迎えに出ていた。
「シモーヌ、何故ここに?」
「あなた様をお迎えする為に決まっておりますでしょう」と答えながら、馬車から降りた俺の腕を両腕で抱え込んだ。
「シモーヌ様、こんなところで、いちゃいちゃしないで、案内して下さいませ」とアンテローヌが、シモーヌを嗜める。
シモーヌとは、氷魔法を教えてもらっているうちに、そういう仲になってしまっている。
シモーヌは微笑みながら
「さっ、ご案内致しましょう。閣下がお待ちかねですよ」と悪戯っぽい笑みを浮かべて、腕を抱え込んだまま俺を引っ張って行く。
セレストリ城は、国境の守りを任されている辺境伯の居城だけあって、ランズリード城と比べると、桁違いに大きい。
正面から見える左右の幅だけでもかなりある。しかも、その両端から後方にも居館が伸びており、広い中庭を囲んでコの字形の建築になっているそうだ。
シモーヌに腕を取られたまま、城に入り、大ホールを抜けて、通路を進み、角を幾つか曲がって、大きな扉の前に着くと、両脇に立つ門兵が扉を開けた。
シモーヌは、俺を引っ張って部屋の奥へと進んでいく。
その部屋の奥には、もう1人の知っている顔があった。俺が少し苦手にしているアリシアだ。
アリシアは、何故か玉座に座っていた。ということは、ここは謁見の間だ。
シモーヌは俺をアリシアの前まで連れて来ると、俺から手を離して、
「閣下、お連れ致しました」と、カーテシーを決める。
『アリシアが閣下?』と、俺は状況が呑み込めずに、まごまごしていると、
「ご苦労でしたシモーヌ卿」とアリシアは答えて席を立ち、そのまま俺の目の前を横切って、部屋を出て行った。
「さっ、参りましょう」とシモーヌが、また、俺の腕を抱え込んで、その後を追い、俺も引っ張られて行く。その後をアンテローヌとオーリア達が、慌てて付いて来る。
シモーヌに連れて来られたのは、懇談が出来る私室で、大きなテーブルに10脚ばかりの椅子が並べられていた。
扉が閉じられて、部屋の中に居るのが俺達だけになると、アリシアが俺にスッと寄って来て、背中を俺に預けるようにしながら、俺の腕を自分の身体に巻きつけると、俺の掌を自分の胸に持って行き、
「あなたの大好きなGカップがお待ちしてましたわ」と、ふざける。Gカップは俺が教えた言葉だ。2人だけに分かる暗号だと思って使っているのかも知れない。
「何故、アリシアがここに?」と聞くと。
「あら、ここは私の実家なのですわ。今は、父上が、遠征に出ておりますので、私は王都から呼び戻されて、臨時の領主をしていますのよ。暫く、ゆっくりしていって下さいませ」と楽しそうに答える。
「じゃあ、シモーヌは?」と問うと、
「シモーヌは異母妹ですわ」との答え。
「姉妹だったのか?」
「ダブリン様がお望みなら、このセレストリ領を差し上げますわよ。私達がついてきますけど」とアリシアの戯言。
「あら、でも、ランズリード領もダブリン様のものになるのでしょう。セレストリ領と合わせると、王国一の大貴族におなりですわ」とシモーヌが、アンテローヌに向かって言う。
「いえ、私は、ダブリン様に嫁いで、ランズリード家を出ました」とアンテローヌが答える。
「それより、王都を離れてもいいのか?」
俺はアリシアが振った話から強引に話題を変えた。
「父上の出兵は王命ですから、私がその間、父上の代理をするのも、王命のようなものですわ。テレナリーサ様の許可は頂いておりますわ」
「お茶を入れますので、立っていないで、座りましょう」とシモーヌ。
俺が椅子に座ると、何故か、アリシアがそのままの姿勢で俺の膝の上に座わる。そして、俺の掌を自分の胸に押し付けながら、
「この胸が、寂しい、寂しいと泣いていましたのよ。今日は、もう、離しませんからね」と言うが、その笑顔は、俺をからかっている笑顔だ。
「揶揄うのは、ほどほどにしてくれよ。ベッドでならいいけど、ここでは、不味いだろう」
と言うと、
「ふふふ、色仕掛けの耐性が出来ましたのね。ちょっぴり残念ですわ」と言って立ち上がって、自分の席に着いた。
本当にアリシアは苦手だ。色仕掛けでからってくるし、無視すると茶化されるので、上手く渡り合えない。
俺がアリシアに手こずっている間に、シモーヌがお茶を入れてくれた。
他の者達も、既に椅子に座っている。
「アリシア様と、随分仲が良ろしいんですね」とアンテローヌが、少し妬いたように口を尖らすと、
「あらあら、妬きもち?私は、実は嫌われているんですのよ。だから、こうして気を引こうとしているのに、ちっとも相手にしてもらえないのよ。ダブリン様が好きなのは、私じゃなくて、この大きな胸だけなの」と、下ネタ攻勢が続く。これにはアンテローヌも困って、黙ってしまった。
「そう言えば、ダブリン様に、ギルドで胸を揉まれた話は致しましたかしら?」と余計な話を始めた。
アンテローヌが首を振ると、
「ダブリン様と一緒にギルドに行ったときのことですわ。柄の悪い冒険者が、いい女を連れてるじゃね~かって絡んできましたの。するとダブリン様が私を抱くようにして、これは俺の女だと言って、大勢の殿方たちが見ている前で、私の胸を揉んでくれましたのよ。うっとりしましたわ~」と、過去の話を持ち出す。
すると、
「え~、なに~、それ~、変態じゃないの」と、シモーヌ。
「旦那様を見る目が変わりそうですわ」と、アンテローヌ。
「おい、アリシア、いい加減にしてくれよ。あれは、お前の自作自演じゃないか。俺を変態扱いするんじゃないよ」と抗議するが、
「あら、その方が、私には好都合なのですわ。ダブリン様が、皆さまに嫌われたら、私が独占できますもの。私、変態の殿方が大好きですから」と、わざとらしく大きなウィンクをするアリシア。やっばり、こいつは苦手だ。
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