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第一章 日常
03 何度も見る幸せだった夢
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夢を見た。車の中と同じように、リチャードの夢だった。
キャンプでは定番のスモアを美味しそうに頬張る人を見ていたら、リチャードが寄り添い皿からマシュマロを取る。
──美味しいよ。作ろうか?
こくこくと何度も頷くナオに、リチャードは不慣れな様子でマシュマロを火であぶり出した。
──あ。
もう少し大丈夫、というのは過剰な自意識で、すぐに黒くなったマシュマロに、リチャードは苦笑いをする。
──僕、これが食べたいです。
遠慮がちに言うと、リチャードはほっとした様子でチョコレートとマシュマロをビスケットに挟んだ。
頬張るナオを、リチャードは心配そうに見つめていた。
──とても美味しいです。
──良かった。次はもっと上手く作れるように練習するから。
次、と彼は間違いなくそう言った。果たして次なんてあるのかと疑問だったが、口にすれば幸せな時間が終わってしまいそうで、ナオは彼の作ったスモアを少しずつ齧ることしかできなかった。
一生、夢でいられたらどんなによかったか。
頬がくすぐったくなり、ナオは夢から現実に引き戻された。
真上では、親友のセシルが眉毛をハの字に曲げている。
「大丈夫? 泣いてるよ」
「……ごめん。幸せな夢見てた」
「…………どんなの?」
「過去の夢。車の中でも見たんだ。僕はずっと、過去に縛られてる」
「もしかしたら、俺とおんなじかもね」
セシルは大きなあくびを一つすると、もう一度ベッドに横になった。てっきり起きるものだと思っていたのに。
「あーあ、バーベキューの予定だったのにさあ」
「今日するんじゃないの?」
「この天気じゃ無理だよ」
カーテンを開けると、森が斜めに大きく揺れていた。横殴りの雨は窓ガラスを叩きつけるも、防音ガラスのおかげか音はほとんどしない。
「僕、シャワー浴びてきていい?」
「どうぞどうぞー。俺は寝る」
時刻は午前七時。少し温めのシャワーを浴び終えた頃は、三十分経過していた。
「セシル、お腹空かない?」
「空かない……寝たい……」
「もう……僕は食べに行くからね」
セシルは布団に潜り、芋虫になってしまった。朝に弱い彼は放っておくべきだろう。
食堂では、リチャードがちょうど食べ始めようとしているところだった。ハリーはすでに食べ終え、コーヒーを啜っている。
「おはよう。眠れた?」
朝特有のかすれたリチャードの声に、胸が熱くなった。
「はい」
「今日は天気が悪いね」
「はい」
気の利かない返事しかできずに、後悔しか襲ってこない。
「おはようございます。すぐにナオ様の分もお持ちします。セシル様は?」
「あの、まだ寝てます……多分昼まで寝てるかと」
「ふふ……相変わらずですね。少々お待ち下さいね」
ステラがいなくなり、コーヒーを飲み終えたハリーも席を立った。
広い食堂でふたりっきりになってしまい、なんとか落ち着こうとナオはコップの水を口にする。
飲みながら盗み見すると、リチャードはソーセージを口にしている。昨日とは違い、ラフな格好と髪型だった。軽く上げただけでも様になっている。厚めのジャケットは、暑くないのだろうか。
「せっかくバーベキューの日だったのに、残念だったね」
「そうですね……楽しみでした」
「……本当に?」
笑いながらも真剣な眼差しに、ナオは合わせていられなくてすぐにコップに目を落とす。
ステラが朝食を持ってやってきた。緊張で間が持たなかったので、ナオはほっと胸を撫で下ろす。
「午後からは晴れるそうですよ。でもまた深夜には雨になるようです」
「ならバーベキューはできそうだな」
「そうですね」
トマトの乗ったサラダは新鮮で、塩とオリーブオイルだけでも充分に味がしっかりしている。コーンスープにはたくさんの粒が入っていた。
ほとんど無言のまま食事をしていると、と例の大学生四人がやってきた。続いてテイラー夫妻も来て賑やかな食事となるが、昨日のことがあって、ナオは気持ち急いで残りの朝食を口に入れる。
ナオが席を立つと、続いてリチャードも立ち上がった。
せっかく会えたチャンスだ。何か話したいと欲求が沸いてきて、後ろ姿に声をかけてみる。
「あの……よければ、一緒に映画でも……」
「すまない。仕事をしなくてはならないんだ」
「……そうですか」
あまりにがっかりした顔をしたせいか、リチャードまで似た顔になってしまった。
「本当にすまない。……映画が好きなのか?」
「たまにですけど、観に行きます」
「そういえば前に、セシルがナオと観に行ってくるとか言ってたな……高校生の頃かな?」
「あの、本当に気にしないで下さい。お仕事が忙しそうですし、息抜きになればと思っただけなんで」
「……ふむ。なら今度、一緒に観ると約束する」
「本当ですか?」
ナオは高揚感で空を飛びたい気分だった。ベッドがあるなら、ダイヴしてごろごろ喚きたい。
「ああ、もちろん。どんなジャンルが好きなんだ?」
「呪いの人形が動くものとか、悪魔が人間に復讐する話とか大好きです。あとはやっぱり怨霊ですね。ピエロが人を襲う映画も大好きです」
「…………善処しよう」
些か早口になったナオは、全身で幸せオーラを吹き出している。飛び跳ねて喜びたいところを必死で抑え、部屋に戻った。
セシルはまだ寝ている。さすがに起こすべきだと身体を揺すると、芋虫からは唸り声が上がった。
「午後には晴れてバーベキューをやるかもって」
「ええ? やるの?」
「なんで不服そうなの?」
「……分かった。起きるよ。でも朝ご飯は食べたくないなあ」
「ステラに朝食はいらないって伝えたら?」
「ちょっと、何やってんの?」
「なにって……夏休みのレポートだよ」
「まさか持ってきてたわけ?」
「もちろん。仕事道具も」
「はあ…………」
セシルは日本語で切腹ものだ、五右衛門風呂の刑だと、偏った知識で吠えた。
「俺たちは恋人を作りにきたんじゃないの? せっかくの夏休みなのにさー」
「別にほしいわけじゃ……」
「勉強も仕事もいいけどさ、大学三年だよ? もっと遊んだ方がいいと思う」
真剣に肩を掴むものだから、ナオは堪えきれずに笑ってしまった。
「分かったよ。でも空いた時間で勉強はして、バーベキューにはちゃんと参加する」
「約束だからね。ちょっとステラのとこに行ってくる」
飛び起きたセシルの布団を整え、ナオは昼食までの数時間、ずっと机に向かっていた。
天気予報通りに空は快晴へと向かい、これが夜になればまた土砂降りになるらしいから分からないものだ。太陽は雲に隠れ、日差しが肌を突き刺すことはなかった。これならば、外でバーベキューをしても
朝食のときには元気のなかった大学生は、昨日の深夜まで騒いでいたらしい。二日酔いもまだ続いているが、すでに缶ビールを開けている。
ナオが気になったのは、イーサンだ。先ほどからナオを見てはにやりといやらしい笑みを零し、この前の階段上で聞いた話を思い出してしまう。
「ほら、ナオ。これ美味しいよ。食べる?」
「うーん……」
少し大きめのステーキだ。
「ディックが焼いてくれたんだ」
「……食べる」
リチャードが調理したものとなれば、話は別だ。
厚めにカットされた肉の塊が置かれ、意気込みが沸いてくる。
できるだけ小さくカットして、ゆっくり味わうことにした。
たまねぎが入った甘めのソースがさっぱりしていて、噛みごたえのある肉とよく合う。
朝食を食べなかったセシルはよほどお腹が空いたのか、肉を重ねて持ってきた。つけあわせの人参はすぐに隣のナオの皿へ移動する。
「ちょっと、なにこれ」
「ディックに押しつけられたんだよ。いらないっていったのに!」
「人参くらい食べられるようにならないと」
いつの間にか後ろに立っていたリチャードに、ナオは肩が上がった。
リチャードは肉も野菜も満遍なく盛りつけている。
「昨日もほとんど野菜は食べなかっただろう?」
「レタスは食べたよ! ブロッコリーも嫌いって言ったのに、ステラのやつ、俺のサラダだけ異常に多く入れてた」
「父さんがセシルのサラダにブロッコリー多めにって言ってたからな」
しれっと言うリチャードに、ナオは声を上げて笑う。
リチャードも笑い、強めの火で焼いた肉を口にする。
ナオはこっそりリチャードを盗み見すると、ばっちり目が合ってしまった。
リチャードは人の視線によく気づく。視野の広さに驚かされることも多い。
「電話だ」
「また? せっかく遊びに来たんだから出なくていいじゃん」
「そういうわけにもいかないだろう」
リチャードは半分も食べていない皿をそのままにし、別荘の中へ行ってしまった。
「忙しそうだね」
「相手がディックじゃなくて恋人なら、仕事と俺とどっちが大切なんだって言ってたところだよ」
食べ進めていると、缶ビールを開けて馬鹿騒ぎをしていた大学生たちが、隣の席に座った。
「よお、お前。こっちの席に来いよ」
お前を指しているのが自分だと気づいたナオは、困惑したままフォークを口に入れる。
「ナオに何の用?」
不機嫌そうにセシルは聞き返すと、イーサンは舌打ちをする。
「お坊ちゃんには興味ねえよ。それよりお前、俺の部屋に来い」
「ちょっとアンタ、本気でそういう趣味があったわけ?」
アビゲイルがからかうような声を上げると、ロイドも下品な笑みを口元に浮かべる。
イーサンはかなり酔っていた。酒癖が悪い、全人類の代表のような人間だ。
「男とはまだヤッたことがねえからな。酔った勢いなら女みてえな顔をしたお前ならヤレるかもしれねえ」
「お前、いい加減にしろよ」
「何を揉めているの?」
セシルが立ち上がったところで、アビゲイルの母親が揉め事に気づいてやってきた。
「…………なんでもないです」
口を開きかけるセシルを宥め、ナオは小さく頭を振った。
せっかくのバーベキューで、揉め事は起こしたくなかった。つくづく、リチャードがいないタイミングでよかったと思う。
キャンプでは定番のスモアを美味しそうに頬張る人を見ていたら、リチャードが寄り添い皿からマシュマロを取る。
──美味しいよ。作ろうか?
こくこくと何度も頷くナオに、リチャードは不慣れな様子でマシュマロを火であぶり出した。
──あ。
もう少し大丈夫、というのは過剰な自意識で、すぐに黒くなったマシュマロに、リチャードは苦笑いをする。
──僕、これが食べたいです。
遠慮がちに言うと、リチャードはほっとした様子でチョコレートとマシュマロをビスケットに挟んだ。
頬張るナオを、リチャードは心配そうに見つめていた。
──とても美味しいです。
──良かった。次はもっと上手く作れるように練習するから。
次、と彼は間違いなくそう言った。果たして次なんてあるのかと疑問だったが、口にすれば幸せな時間が終わってしまいそうで、ナオは彼の作ったスモアを少しずつ齧ることしかできなかった。
一生、夢でいられたらどんなによかったか。
頬がくすぐったくなり、ナオは夢から現実に引き戻された。
真上では、親友のセシルが眉毛をハの字に曲げている。
「大丈夫? 泣いてるよ」
「……ごめん。幸せな夢見てた」
「…………どんなの?」
「過去の夢。車の中でも見たんだ。僕はずっと、過去に縛られてる」
「もしかしたら、俺とおんなじかもね」
セシルは大きなあくびを一つすると、もう一度ベッドに横になった。てっきり起きるものだと思っていたのに。
「あーあ、バーベキューの予定だったのにさあ」
「今日するんじゃないの?」
「この天気じゃ無理だよ」
カーテンを開けると、森が斜めに大きく揺れていた。横殴りの雨は窓ガラスを叩きつけるも、防音ガラスのおかげか音はほとんどしない。
「僕、シャワー浴びてきていい?」
「どうぞどうぞー。俺は寝る」
時刻は午前七時。少し温めのシャワーを浴び終えた頃は、三十分経過していた。
「セシル、お腹空かない?」
「空かない……寝たい……」
「もう……僕は食べに行くからね」
セシルは布団に潜り、芋虫になってしまった。朝に弱い彼は放っておくべきだろう。
食堂では、リチャードがちょうど食べ始めようとしているところだった。ハリーはすでに食べ終え、コーヒーを啜っている。
「おはよう。眠れた?」
朝特有のかすれたリチャードの声に、胸が熱くなった。
「はい」
「今日は天気が悪いね」
「はい」
気の利かない返事しかできずに、後悔しか襲ってこない。
「おはようございます。すぐにナオ様の分もお持ちします。セシル様は?」
「あの、まだ寝てます……多分昼まで寝てるかと」
「ふふ……相変わらずですね。少々お待ち下さいね」
ステラがいなくなり、コーヒーを飲み終えたハリーも席を立った。
広い食堂でふたりっきりになってしまい、なんとか落ち着こうとナオはコップの水を口にする。
飲みながら盗み見すると、リチャードはソーセージを口にしている。昨日とは違い、ラフな格好と髪型だった。軽く上げただけでも様になっている。厚めのジャケットは、暑くないのだろうか。
「せっかくバーベキューの日だったのに、残念だったね」
「そうですね……楽しみでした」
「……本当に?」
笑いながらも真剣な眼差しに、ナオは合わせていられなくてすぐにコップに目を落とす。
ステラが朝食を持ってやってきた。緊張で間が持たなかったので、ナオはほっと胸を撫で下ろす。
「午後からは晴れるそうですよ。でもまた深夜には雨になるようです」
「ならバーベキューはできそうだな」
「そうですね」
トマトの乗ったサラダは新鮮で、塩とオリーブオイルだけでも充分に味がしっかりしている。コーンスープにはたくさんの粒が入っていた。
ほとんど無言のまま食事をしていると、と例の大学生四人がやってきた。続いてテイラー夫妻も来て賑やかな食事となるが、昨日のことがあって、ナオは気持ち急いで残りの朝食を口に入れる。
ナオが席を立つと、続いてリチャードも立ち上がった。
せっかく会えたチャンスだ。何か話したいと欲求が沸いてきて、後ろ姿に声をかけてみる。
「あの……よければ、一緒に映画でも……」
「すまない。仕事をしなくてはならないんだ」
「……そうですか」
あまりにがっかりした顔をしたせいか、リチャードまで似た顔になってしまった。
「本当にすまない。……映画が好きなのか?」
「たまにですけど、観に行きます」
「そういえば前に、セシルがナオと観に行ってくるとか言ってたな……高校生の頃かな?」
「あの、本当に気にしないで下さい。お仕事が忙しそうですし、息抜きになればと思っただけなんで」
「……ふむ。なら今度、一緒に観ると約束する」
「本当ですか?」
ナオは高揚感で空を飛びたい気分だった。ベッドがあるなら、ダイヴしてごろごろ喚きたい。
「ああ、もちろん。どんなジャンルが好きなんだ?」
「呪いの人形が動くものとか、悪魔が人間に復讐する話とか大好きです。あとはやっぱり怨霊ですね。ピエロが人を襲う映画も大好きです」
「…………善処しよう」
些か早口になったナオは、全身で幸せオーラを吹き出している。飛び跳ねて喜びたいところを必死で抑え、部屋に戻った。
セシルはまだ寝ている。さすがに起こすべきだと身体を揺すると、芋虫からは唸り声が上がった。
「午後には晴れてバーベキューをやるかもって」
「ええ? やるの?」
「なんで不服そうなの?」
「……分かった。起きるよ。でも朝ご飯は食べたくないなあ」
「ステラに朝食はいらないって伝えたら?」
「ちょっと、何やってんの?」
「なにって……夏休みのレポートだよ」
「まさか持ってきてたわけ?」
「もちろん。仕事道具も」
「はあ…………」
セシルは日本語で切腹ものだ、五右衛門風呂の刑だと、偏った知識で吠えた。
「俺たちは恋人を作りにきたんじゃないの? せっかくの夏休みなのにさー」
「別にほしいわけじゃ……」
「勉強も仕事もいいけどさ、大学三年だよ? もっと遊んだ方がいいと思う」
真剣に肩を掴むものだから、ナオは堪えきれずに笑ってしまった。
「分かったよ。でも空いた時間で勉強はして、バーベキューにはちゃんと参加する」
「約束だからね。ちょっとステラのとこに行ってくる」
飛び起きたセシルの布団を整え、ナオは昼食までの数時間、ずっと机に向かっていた。
天気予報通りに空は快晴へと向かい、これが夜になればまた土砂降りになるらしいから分からないものだ。太陽は雲に隠れ、日差しが肌を突き刺すことはなかった。これならば、外でバーベキューをしても
朝食のときには元気のなかった大学生は、昨日の深夜まで騒いでいたらしい。二日酔いもまだ続いているが、すでに缶ビールを開けている。
ナオが気になったのは、イーサンだ。先ほどからナオを見てはにやりといやらしい笑みを零し、この前の階段上で聞いた話を思い出してしまう。
「ほら、ナオ。これ美味しいよ。食べる?」
「うーん……」
少し大きめのステーキだ。
「ディックが焼いてくれたんだ」
「……食べる」
リチャードが調理したものとなれば、話は別だ。
厚めにカットされた肉の塊が置かれ、意気込みが沸いてくる。
できるだけ小さくカットして、ゆっくり味わうことにした。
たまねぎが入った甘めのソースがさっぱりしていて、噛みごたえのある肉とよく合う。
朝食を食べなかったセシルはよほどお腹が空いたのか、肉を重ねて持ってきた。つけあわせの人参はすぐに隣のナオの皿へ移動する。
「ちょっと、なにこれ」
「ディックに押しつけられたんだよ。いらないっていったのに!」
「人参くらい食べられるようにならないと」
いつの間にか後ろに立っていたリチャードに、ナオは肩が上がった。
リチャードは肉も野菜も満遍なく盛りつけている。
「昨日もほとんど野菜は食べなかっただろう?」
「レタスは食べたよ! ブロッコリーも嫌いって言ったのに、ステラのやつ、俺のサラダだけ異常に多く入れてた」
「父さんがセシルのサラダにブロッコリー多めにって言ってたからな」
しれっと言うリチャードに、ナオは声を上げて笑う。
リチャードも笑い、強めの火で焼いた肉を口にする。
ナオはこっそりリチャードを盗み見すると、ばっちり目が合ってしまった。
リチャードは人の視線によく気づく。視野の広さに驚かされることも多い。
「電話だ」
「また? せっかく遊びに来たんだから出なくていいじゃん」
「そういうわけにもいかないだろう」
リチャードは半分も食べていない皿をそのままにし、別荘の中へ行ってしまった。
「忙しそうだね」
「相手がディックじゃなくて恋人なら、仕事と俺とどっちが大切なんだって言ってたところだよ」
食べ進めていると、缶ビールを開けて馬鹿騒ぎをしていた大学生たちが、隣の席に座った。
「よお、お前。こっちの席に来いよ」
お前を指しているのが自分だと気づいたナオは、困惑したままフォークを口に入れる。
「ナオに何の用?」
不機嫌そうにセシルは聞き返すと、イーサンは舌打ちをする。
「お坊ちゃんには興味ねえよ。それよりお前、俺の部屋に来い」
「ちょっとアンタ、本気でそういう趣味があったわけ?」
アビゲイルがからかうような声を上げると、ロイドも下品な笑みを口元に浮かべる。
イーサンはかなり酔っていた。酒癖が悪い、全人類の代表のような人間だ。
「男とはまだヤッたことがねえからな。酔った勢いなら女みてえな顔をしたお前ならヤレるかもしれねえ」
「お前、いい加減にしろよ」
「何を揉めているの?」
セシルが立ち上がったところで、アビゲイルの母親が揉め事に気づいてやってきた。
「…………なんでもないです」
口を開きかけるセシルを宥め、ナオは小さく頭を振った。
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