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最終章帰還

帰還#31

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赤ん坊のように泣き続ける優に、少し引き気味になりながら、影は話し始めた。

「まだ気付かないのか?その水溜まりで自分を見てみろ…」

涙を擦りながら、大きな水溜まりに自分の姿を映すと、其処には成人の大人が映っていた。

「これが僕?嘘だ、こんな大人な筈ない…」

現実を受け止め入れずにいる優に、間髪言わず話し攻める。

「この世界はお前が作り出した世界だ、闇だの光だの女優だの、お前の妄想でのみ存在する、もう目を覚ませ、現実逃避するな、お前の夢はなんだ?こんなとこで油売っていていいのか?もう俺に頼るな、自分自身で歩みを進めろ!」

吹っ切れたように背伸びをし、電車に乗り家に帰る事にした。

「少し現実逃避し過ぎたな、そうだ買い物頼まれていたんだ、急いで帰らないと…」

レジ袋を手に、家の前で少し立ち止まった優は、何も無かったかのようにドアを開けた。

「遅くなってごめん、今帰ったよ!」

シーンっと静まった部屋に、カチャカチャと食器を洗う音と、レジ袋の擦れる音がこだましている。

「あら、遅かったわね頼んだ物をちゃんと買って来てくれた?」

赤ん坊を背負い、明るく振り向く花子の姿が其処にはあった、レジ袋を花子に渡し優は、自分の部屋に戻ると万年筆を手に取り、続きを書き始める。

長い旅を終え、地球に戻った優はふと、ある事を思い出した。

「そうだ御守りをまだ開けて無かった、何が入っているんだろ?」

ボロッボロになった赤い御守りを開けると、何重にも畳まれた手紙が入っていた、その手紙にはこう書かれていた。

「ぎせほけてかげこりめむへにあふかや
まほりがらじぱひぷぬもまる」

それは復活呪文が書かれていた。

電源が切れる音「プツーーンッ…」

突如テレビの電源が切れ、今までやり込んだ物語を保存出来ずに終えてしまった。

「おい!何するんだよ!」

コントローラを床に叩きつけ、怒りを爆発させる。

「あはは、いつまでこんなゲームやってんだよ、早く遊びに行こうぜ」

不貞腐れながら部屋を出て行く少年は、何処か優に似ている。

「あ、遊びに行くならこれを持って行きなさい、きっと役に立つから…」…終わり


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みんなの感想(1件)

葉子
2018.11.02 葉子

とても楽しいです!続き楽しみに待ってますね(笑)

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