擬人彼等にご注意を。

彼岸花

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不思議な人

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ひかりー気をつけるのよー分からなかったら電話するのよー」

玄関先から朝だというのに大きな声でお母さんが手を振りながら言った。

「うん。分からなかった電話するから。行ってきます」

それに応えるように私もお母さんに手を振り前を向いた。

「はぁ‥‥」

前を向いた途端、自然と溜め息が漏れる。この溜め息は何度目だろう。

それほど学校に行くのが嫌なのだ。学校に行くというより新しい学校と行ったほうが正しいのかもしれない。

そう、これから私は新しい学校に転校することになったのだ。しかもその知らせを聞いたのは今朝だ。

いつも通りの時間に起きリビングに行くとお母さんがにこやかな笑顔で「はい、新しい制服ねー」と言いながら私に制服を渡してきた。

当然意味が分からない私は問い詰める。が、お母さんはさも当たり前のように言った。

「え、だってー今の制服可愛くないものー光にはこっちの制服が似合うとおもうのよー」

なに、この理由?制服が似合わないだけで勝手に転校させられるのかい私はー!!

お父さんに助けを求めるも「‥‥そうだな。そっちの制服のほうがかわいい」としか言わなかった。

なに、この両親?!と思った。だけど、ここで何を言ってももう転校の手続きとか勝手にしてるんだろうからその新しい学校に行くしかないのだ。

まぁ、幸い前の学校に親友と呼べるほどの友達もいなかったしどっちかといえば、なぜか一人でいる方が多かったからいいと言えばいいのだろうけど。なぜか複雑な気持ちだ。

そんな気持ちのまま今、私は登校している。フッと空を見上げた。

雲一つない晴れた空。だけど、私の心は雲がかかったようなモヤモヤした気持ちだ。

しばらく空を見上げながら歩くという危険な歩き方をしていた私の身に不幸な出来事がおきる。

「‥‥あ、」

と言う小さな声が聞こえたかと思ったらなにかに躓き、バランスが保てなくそのまま地面へ。

「わへぇぇえ?!」

という、我ながらなんとも情けない声を出しながら衝撃に備えるため思わずぎゅっと目を瞑った。

だけど、しばらく経っても痛みが襲ってこなくてその代わりに「‥‥重い」と短く苛立った声が頭上から聞こえてきた。

ゆっくりと目をあければ、どうやら見知らぬ人の膝の上に倒れ込んでしまったようだ。って、冷静に状況を整理してる場合じゃないわよ私!!

すぐさまその人の膝の上から起き上がり慌てて謝った。けど、その人は、冷たい瞳で私を見上げるだけだった。

「‥‥」

「‥‥」

こ、困った。この言いようがない沈黙。ど、どうしたものか。
私がよそ見したせいで巻き込んでしまったからこのまま去る訳にも行かない。

かと言ってずっとこの沈黙のままここにいる訳にも行かない。

あーどうしよう。ほんとに困った。一人この状況に悩んでいると、その人は急に立ち上がり冷めた視線を私に送ってくる。

さほど私と変らない身長。癖っ気のある茶髪に特徴的なタレ目。なんと言うか、かっこいいはかっこいいけどかわいいと言った方が彼には合っている気がした。

ジロジロと私が見ていたのが気に触ったのか眉間にシワを寄せているのがさらに深くなる。そして彼はぼそっと呟いた。

「‥‥人間、嫌い」

「え?」

と、私は聞き返したけど彼は完全に無視した。そして軽々とそばにある塀の上に飛び上がった。

「すごっ」

思わずその身体能力に驚きの声をあげる。彼はそのまま塀の上に乗ったままバランスよく歩き出した。

凄すぎるわ。私なんか運動音痴だから塀に上ることすらできない。いや、そもそもそう簡単に塀に上る人なんて少ないだろう。

感心しながら器用に歩いてる彼を見ながらふっと思い出し「あの!!」と彼を呼び止めた。

彼は足を止め振り返えた。だけど表情は険しい表情だ。

「あ、あの、この近くにできたばかりの学校てありますか?」

家を出る前にお母さんが少し説明してくれた。なんでもこれから私が行くことになる学校はできたばかりみたいで生徒を募集してるみたいらしい。

しかもその学校の校長先生とうちのお父さんがとてつもなく親しい関係らしい。そのため、こんな早くに新しい学校が決まったんだとか。

学校名を言ってた気がしたんだけど、完璧に忘れた。

「‥‥」

私の問いかけに彼はなにも喋らない。その代わりにジッと私を見ているだけで。あまりにもジロジロと見られているから居心地が悪くなりもう一度声をかけることにした。

「あ、あの、」と問いかけると彼は前を向き直り歩きだしてしまった。

どうやら私は余程彼に嫌われてしまったようだ。きっと彼の上に倒れ込んだことが原因だろう。

仕方ない。自力で探すことにしよう。お母さんには分からなかった電話しなさいて言われたけどお母さんはお母さんで家のことがあるから迷惑かけるわけにはいかない。

うん、なんとかなる。そう自分に言い聞かせ前を向いた。だけど少し離れたところで先程の彼が足を止め私をジッとみていた。

む?なぜこんなに見られてるのか分からず首を傾げる。すると 彼は付いてこいと言わんばかりにゆっくりと塀の上を歩き出す。

もしかして案内してくれるのかな?あんなに嫌われてる私を。
半信半疑のまま私は彼のあとを追いかけた。そして、さほど遠くないところに学校を見つける。

ここがそおなんだ。少し前を歩いていた彼に「ありがとうございます」とお礼を言った。

そして彼はゆっくりと振り返り不思議なことを口にする。

「‥‥あとで後悔する」

後悔?なんのことを言ってるんだろう?その意味を聞こうとしたけど彼は校舎の中へと消えていった。

どうやら彼はここの生徒のようだ。またどこかで会うだろうか。そんなことを思いながら学校名が書かれてるところを視線を向ける。

「‥も‥‥り‥学園」

思わず口に出してしまうほど変わった学校名。森学園。なに森学園て。いや、別に学校名をバカにしてるとかじゃなく純粋に変わった学校名だと思っているのよ。

まぁ、とりあえず職員室に向かおう。そして私はようやく辿り着いた学校へと足を踏み入れた。
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