ホラー短編集【キグルミ】

AAKI

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1篇目【ガールフレンド?(仮)】

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 まず手始めに・・・これは友達から伝え聞いた話だ。
 彼――仮にAとしておこう。Aにはガールフレンドがいる。基本的には白のワンピース、赤色のパンプス、シンプルな出で立ち。たまに学校の制服ということもある。
 有名人の誰に似ているとかは説明できない程度に平々凡々とした顔立ちで、黒いロングのストレートヘアーをしている。
 名前は高代。下の名前はわからない。
 語った友人が高代の存在に気づいたのは小学校の5~6年生だった。
 Aを探して教室へ来たのだが、あいにくと少し前に家の用事があると言って帰った。そのことを伝えると、高代も今ならまだ間に合うと言って急ぎ追いかけていった。
 翌日、Aに高代のことを聞く。「お熱いことで」とか「なんで黙ってたんだよ」といった囃し立て方をしたようだ。

 しかし、A曰く――「彼女なんていない」と。
 友人他、ガールフレンドのことを知っている者はAが恥ずかしがっているだけだと、最初は思ったらしいのだ。しかし、Aとその彼女が一緒にいるところを見た者はいない。どちらも学校に来ているし、共通の友人が何人もいる。
 それなのに・・・だ。
 当初、Aたちが隠しているから一緒にいる場面い出くわさないだけだと疑問に片を付けていた。小学生だ。彼女を放っておいて男友達で遊ぶなんて珍しくもない。
 それでも、中学校にも上がるとAと高代の関係を訝しむ者も出てくる。
 誰かがからかうなんてこともなく、もう隠す必要などないとAを説得したこともあるのだが。そのときも、Aは「彼女なんていないよ」という。
 さらには「高代って名前の人物に出会ったこともないから!」などと声を荒げる。
 もしその言葉が本当なら、高代という子は勝手に彼女面をしている痛いヤツということになる。
 その程度であればよかったのだが、異常な出来事は少し後に起こる。

 「無理にでも二人をくっつけてみたらどうか」なんて話が、友人たちの間で持ち上がったのだ。なんでもない悪戯だった。
 Aにも高代にも誰が来るかは伝えず、一緒に遊びに行こうと誘ったのである。
 しかし、高代と連絡が取れなかった。学校も急に休んで姿を表さず、遊びに出かけた後も何日も来ない。彼女だとかどうだとかそういうのを抜きにして、どうしたのかと心配になった友人たちは様子を見に向かった。
 教師もどういう理由で休んでいるのかは知らないらしく、配布プリントを届けに行くという口実の下高代の家がある場所を聞いたのだ。
 ただ、住所のマンションからはすでに引き払っており、もぬけの殻だった。クラスメイトどころかAに対して伝言もなくいなくなっている。
 近所の人に聞く限りだと、遊びに誘おうとした日にはマンションを出ていったという。さすがに偶然だと信じたい。このときは、無理やり夜逃げだということで皆納得した。
 それからしばらく高代の名前をAの周りできくことはなかった。この時点で中学2年生。

 次にその名前を聞くのは高校1年のときである。Aと語り手の友人は一緒の高校へ。
 高校で新しく友達になったBがAをからかいながら言う。
「何だよ、お前。彼女なんているんじゃん」
「え?」
「何のこと?」
 急にそんなことを言い出すものだから、Aも友人も意味がわからず首をかしげる。このとき、不思議なだが二人とも数年前のことを覚えていなかった。
「いや、だから高代って子。Aの彼女だろ? 名字からAなんじゃないかって教室へ来てたぞ」
 本当におかしな話で、久しぶりだからとかと違って高代の名前にピンとこなかったらしい。どんな子かを詳しく聞いて、やっと友人がどこかにしまわれた記憶を引っ張り出してこれた。
 Aは、小中と追いかけ回してきた偽りのガールフレンドだと教えたところで、なんとか思い出すほどである。イヤな記憶にフタをしていたのかもしれないが、違和感のようなものを拭えなかった。
「中学のころ、ご両親の都合で別れも言えずに引っ越して、偶然にもAを見つけて探してるんだろ? 良い彼女じゃん」
 BはAたちの悩みなど知らない様子で言う。

 Aや友人の説明を長々と聞いて、ようやく高代の異質さに気づき始める。
「自分がAの彼女だと思い込んでるってことか? そんなヤバそうな子には見えなかったけどなぁ」
「まぁ、完全には信じきれないだろうけど。今度、教室に来たら連絡してよ」
 Aは、Bだけではなく他の友達にもそう言伝をお願いする。携帯電話が持てるようになって、今度こそ高代の姿を拝めると期待した。
 しかしそんな期待も虚しく、高代に出会うことはできなかった。なにせAの行動を把握しているかのように、ことごとく連絡がつながらないタイミングで現れるのだ。
 Aもバイトがあったりしたし、友人だっていつもヒマというわけではないらしい。おかしなことに高代は、中学校まで彼女と友達をしていた者の前にも姿を見せないのである。当然Aも、高代の家に行こうとしたこともあるが、事情もなく教師から聞けるわけもなく誰も住所をしらない。

 誰もが「写メとかは送ってこれるのに、なんで直接会うのだけできないんだ?」と当たり前のような疑問を覚える。
 写メを見ても、Aには全く見覚えがない。普通なら、小中学校でも学年全員が集まる場で否応なく顔をあわせることになるはずなのに、そういうこともなかった。
 友人もまた「考えてみれば学校のイベントなんかに参加していた記憶がない」と証言する。
 学校には来ていても生徒が集まる場にはいない。その間は保健室で休んでいるという話は教師から聞き、他の友達にも姿を目撃されている。
 Aはそこがチャンスだと考え、次の学年集会に抜け出して保健室に向かうことにしたのだ。学校に来ていることも確認済みだ。
 今度こそはとAも思ったことだろう。

 そんなおり、聞こえてくる。
 甲高いサイレンの音。
 救急車がやってきたのだ。
「!」
 何事かと思っているうちに救急車は高低まで乗り付け、ストレッチャーを持った救急隊員が保健室へと駆け込んでいく。せめて顔を見ようと出てくる救急隊員に近づくも、見せられない状態なのか保険医に邪魔されてしまった。
「近づいてはダメ」
「何があったんですか?」
「意識を失って倒れたときにストーブに突っ込んだの」
 Aが聞くと保険医は答えた。保健室には、天板も熱を持つ古い型のストーブがあったらしく、沸かしていたお湯と鉄板で顔面が見るも無残な状態になったというのだ。
 たしかに、顔のあたりに氷嚢(氷枕みたいなやつ)のようなものがあてがわれているのがチラッと見えた。
 後々、集会で教師から「顔の怪我の療養で皆さんとお別れになりました」なんて本当に残念がってるのかわからないような言葉で締められた。
 高校での高代との関わりはそれで終わりだ。

 それから友人とAは別々の大学に進み、1年、だいたい2年くらいは何事もなかったと思う。思うというのは、次に高代がAの周りに現れるまで、友達だと言う女子から話を聞く間まったく思い出さなかったからだ。
 高代がいなくなった後には必ず関係する記憶を失うみたいである。Aと一緒の大学に行った(印象に残っていないと思うが)Bもまた、高代のことなどすっかり忘れていたのだ。
 友人とて、Aからの連絡を受けてからいろいろと説明されるまで思い出せなかった。印象的な別れとなったはずなのに。
 しかし、これまでのパターンから、高代と直接会おうとすればどこかにいなくなってしまうという発想はあった。ただ、Aはそんなことできないと言う。
「ご両親に不幸だったり、本人の怪我だったり、自分のせいなんじゃ・・・」
 ってことらしい。
 ただただ遠くから彼女面される以外にデメリットはないのだから、少しばかり不気味であっても諦めるのはわかる。他に恋人を作ったからといって何かをしてくる様子もなかった。そちらの面でのトラブルはあったとかなかったとか。

 さらには就職した後も、職場にこそ現れないまでも彼女の存在を社内に匂わせているようである。
 これからもAは、高代という偽物のガールフレンドに付きまとわれ続けるのだろう。モテない私は少し羨ましくも思う……。
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