絶滅危惧種の子なら隣で寝てるけど? ~異世界で保護飼育は難しい~

AAKI

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7睡目・ワガママで悩まさないで

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 咄嗟に嘘を答えるものの、声が裏返っていたような気はするし棒読み感マックスである。

「え? あー……こーいう乗り物だよ。車輪2つで動くものが一般的かなぁ」

「そうですか」

 おや? 思ったよりもあっさり諦めてくれたな。

「ダイナ先生ってよ。嘘をつくとき、鼻の下がヒクヒク動くよな」

 唐突に、カホーがそんな指摘をしてきた。これまで誰も言ってくれたことのない見分け方だったので、思わず鼻の下に走る縦の筋を触ってしまう。

「マジ!? 気付かなかった!」

「嘘だよ」

 俺は騙された。カホーまで俺の敵に回るとは思わなか……そんなこのもなかった。

「だが、嘘つきは見つかったようだ」

 この間抜け具合には、あのケェヌさえ小さく笑いを漏らした。

 男の子達は、どうやら自転車以上の車両の技術に興味がある様子。こぞって先生を騙しにくるなんて、ちゃんとした大人にならないぞ。プンプンッ。

「ダイナせんせぇ? 後学のため、生徒に教授いただけませんか?」

「ダメッ。教えません! 甘えた声を出してねだってもおしえませんッ!」

「甘えた声でねだったりはしませんけど、そこをなんとか」

「ダメダメダメ! ダメったらダメ!」

 俺の周りをチョロチョロとするシービンから顔を背けつつ、必死に黙秘を続けるのだった。しかし、こうも頼まれると教えても良いんじゃないか、黙っている方が酷いことをしているような気がしてしまう。

 俺って甘い?

 そう危うく決意が揺らぎかけたところで、助け舟を出してくれたのはファリッバだった。

「確かシービンさんと言ったか。ダイナ殿は理由があって噤んでおるようジャ。どうか、先の品に免じて引いてはくれんかの?」

 青鋼のインゴットと、俺の知識の黙秘とで取引しようって話だ。

「十と僅かの小娘の頼みジャが、どうか聞き届けてはくれんかの?」

「えーと……そういうことなら」

「……」

 シービンを説得してくれたは良いが、俺は感謝より先に彼女の年齢に驚いていた。ハッとなって遅れてお礼を言う。

「あっと、その、助かった。若いのに良く出来てるというか」

「ぅ……む。どうということはないのジャ」

 すると、ファリッバは白い肌を少し紅潮させてそっぽをむいた。後の方で、ハァビー達がちょーと不機嫌そうな顔をしているような気はするが、無視するとしよう。

 シービンも諦めてくれたし一安心ってところで、口を開いたのはフェイだった。

「もしかしてファリッバさんって、『LHC実験』の?」

「ッ……!?」

 彼女の指摘に、ファリッバは息を飲んで顔を強張らせた。赤かった肌が白へ、そして青白く染まるのが横目で見ていてわかるほどだ。

 シジットがフェイを慌てて抱え、悲鳴を上げるのも気にせず運搬車の荷台に乗せる。

「キャッ」

「さぁ、出発しましょう!」

「そうだな! ファリッバ、悪いな!」

 今日も素早いマインスイープお疲れ様!

 女の子2人を載せ、男達で漕ぐか押すかして走り出した。皆の慌てようを見たフェイも自分のしでかしたことに気付いたようだ。走る荷台の上からファリッバに向けて、「申し訳ありませんわ」と謝っているのがどこか寂しく響いていた。

 一応、ファリッバもフェイに悪気があって言ったのでは無いとわかっているようで、両腕を前後に扇ぐようにして見送ってくれている。旅路が順風満帆であれという、願いを込めた所作だ。

「大仰ですが、ありがたく受け取りましょう。ディヴメア神の風がありますように」

 ハァビーと、一応フェイも、胸に手をあてもう片手を前に突き出した。返礼の挨拶みたいなものだ。

「あぁ。それで……さっきのエルエッチシー実験とかなんとかって?」

 十分に距離を離したところで、俺は訊くことにした。無理に訊き出そうってつもりもないが。

「あ~……」

「私は詳しく知らないのですが、噂程度であれば……」

 フェイとハァビーが言い淀む。

 そんなにヤバい話なのか?

「いや、無理にとは言わないけど」

「詳しくはディヴメア神様への冒涜に当たるので伏せておきますわ。ただ、戦争には非道な手段もあるということですわ」

 引き下がろうとしたところで、フェイは全てではないにせよ言葉を紡いだ。そこで俺が思い出したのは『聖別』のことだ。

 遺伝子組換え食物の如く育ったのだから……それ以上だけど。まぁ、邪道に用いれば人間の生殖能力を変えてしまうぐらいはできるかもしれない。

「他国がこの国を攻める際、内側から人型種族を根絶やしにする術を模索しました……」

 ハァビーが更に言葉を継ぎ足した。

 それが、LHC実験ってことか。無農薬栽培で非生殖化した虫を解き放って、子孫を残させないようにする方法がある。多分、人型種族の交配可能な生物をそれ以外にしてしまう。そんな感じだ。

「なるほど……」

 綺麗事ばかりではないということだな。

 納得したところで、俺達は学園への道を急ぐ。

「でも、本当に学園祭をする必要があるのかな?」

 途中、疑問を投げたのはシジットだった。これには誰しもが答えを出せず、かと言って全面的に否定はできなかった。

 学園祭と言っても、俺が基底世界で経験した学生達のバカ騒ぎじゃない。終戦記念に、隣国の使節団がやってきて聖法国の首脳と会談する。その逆も然り。

 そして国内の状況を伝え合って、困っているところをお互いに助け合いましょうって握手と書類を交わす。その際に、国の研究機関でもある学園にもやってくるから、そのおもてなしや護衛を生徒達も巻き込んでやると。

 話を聞いたときはカルチャーギャップだったなぁ。
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