絶滅危惧種の子なら隣で寝てるけど? ~異世界で保護飼育は難しい~

AAKI

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8睡目・God knows・・・?

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 同族意識が高くとも、ハァビーや俺に良くしてくれるこの店はとても有情だ。彼女が重宝するのも良く分かる。また次の機会にも立ち寄ることを伝え店を出た。

「うーん、あの商人も獣人種だな。やっぱりアビーエチビー……面倒だしアビーチで良いか」

「また勝手に略称を……。えー、アビーチは武力国家なので、逃げて来た人がこういう業務に手を染めやすいんです」

「差別意識が強くて亡命者が多いなら、こうもなるか。さっきの人達は?」

「一応、逃走してきたらしいです。男の方は、元々戦争にも参加していた将軍さんなんだとか」

 店の前を通り過ぎるので、こそこそと話して無視する様子を見せておいた。あまり絡まれても、俺達には対処し辛い案件だからだ。ハァビーもこそこそと知っていることを教えてくれた。

 人に歴史ありって感じか。店主の老婆も何かと事情があるんだろうな。

「そこのご両人、労働力は……」

 客引きしてくるやつれたネズミみたいな顔の男性。

 興味のない振りをして通り過ぎようとするも、やっぱりどういう店なのかテントの中を横目で見る。主だった男性は外で屈強さをアピールする中、女性はテントの中でお呼びがかかるのを待つだけらしい。

 大半は大人なんだけど、金髪の少女も1人混じっている。フェイよりも少し若いぐらいだろうか。他の国に比べれば豊かとは言え、やっぱり全国民が楽ってわけじゃ……。

「!?」

 見事な二度見だった。

「ダイナさん?」

「すまない! ちょっと、その金髪の子を見せて欲しいんだが」

 慌てた様子の俺にハァビーは気づくが、俺は露店に近づいて女の子を指定した。

 店員はにこやかな笑顔で、揉み手などしながら顎で少女に指示を出す。少女はのっそりとテントから出てこようとして、足に引っかかる腰紐を解く。

「斡旋業なんじゃないのか?」

「こ、これって……!」

 俺の問いやハァビーの驚きも当然だ。

「やぁ、こいつは言葉が通じなくてね。放って置くとフラフラどっかへ行こうとするんだ」

 店員の指す少女は、俺達の知る聖女フェイと瓜二つだった。

 見た目が2つか3つ幼いこと、さらに金髪が手入れの悪さでくすんでいて、言葉をしゃべれないことを除けば。

 腰のロープも簡単に結んであるだけで、外そうと思えば簡単に外れるみたいだ。体の栄養状態こそ芳しくないものの、暴力を振るわれているといった様子も見られない。

「言葉がわからない労働力じゃ買い手がつかないか……」

 俺はフェイ似の少女を見ながら、言葉を選んで言った。フェイが全てを打ち明けてくれているとは限らないが、生き別れの妹とかそういう事情なのだろうか。

 とりあえず、店員に足元を見られないよう神経を使う。ハァビーもそれを察して行動する。

「……少し、状態の検査をさせて頂いてもよろしいですか?」

「えっと、ホントに傷つけるようなことはしてないよ? 食事は最低限だけど……」

 詳しく見させてくれという頼みは、店員にとっては痛くもない腹をさぐられるようなものだ。しかし、首に掛けられた値札の数が30万セブから15万まで書き換えられているのを見ると、ミニフェイの買い手は長いこと見つかっていないらしい。

 つけ入るすきはある。

「彼女は治癒の聖法魔法が使える。問題はそれなりの仕事ができるかだ」

 肉体労働に耐えうるか見るだけだと店員に訴えた。

「雇うにもお金が足りませんが、どうします……?」

「俺が何とか無理を通すよ。ハァビーは、何か気になることがあるんだろ?」

 無理な筋ではあるが、今日のうちならまだやりようがあった。

 ハァビーは頷くと、少女を連れて建物の影へと向かった。気遣いのできる良い子。

「あの子を雇いたいんだが、今は手持ちがどうしても足りない。試用も兼ねて、仕事を1つ片付けてきたい」

「試用、ですかい……? しかし、こちらも商売でしてね」

「担保として前金は払う。使えるようなら永久雇よ……ぅーん、ずっとこっちで引き取る」

「なるほど。うーん……わかりました」

 斡旋商の心情としては、ここでうなずいてくれるのは予想していた。その一仕事の内容を打ち明けたら拒否されそうだが、何とか凌ぎ切る。

 話術? そんなもの絶賛暴走中の肉食系草食動物にパピルス添えで食わせとけ!

 そうしている間に、確認を終えたハァビーが戻ってきた。

「どうだ?」

「はい」

 俺が訊くと、彼女は斡旋商の店員を気にして手招するので耳を寄せた。

「驚かずに聞いてください」

「あぁ」

 前置きに小さく返事をした。眼の前に、正体不明の教え子のマネごとをする少女がいて、これ以上驚くことなどどこにある?
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