絶滅危惧種の子なら隣で寝てるけど? ~異世界で保護飼育は難しい~

AAKI

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8睡目・God knows・・・?

8

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「推測にしか過ぎませんが、多分。どうしてなのかと言われると、前にも……あれ?」

 俺の推定に答えかけて、ハァビーは首を捻った。

「なんだ?」

「すみません。そう言えば、話していませんでしたね……」

「なにを?」

 手で顔を隠して、自分の不備に恥を覚えているのであろうハァビー。

「いろいろとありすぎて、重要なことを忘れていました」

「だからなにを?」

 彼女らしからぬ遠回しな言い方に、少しばかりせっついてしまった。俺も話したいことがあるし、目的地までそれほど時間もないから巻きでお願いします。

「ヘエヌジーという世界では、ほとんどの国で双子などの同一の容姿をした関係を悪しきものとみなします。忌むべき者、呪いとして定着しているということですね」

「えーと、変身能力を持っている生物は基本的に嫌われていると?」

 彼女の説明を聞いて納得した。

 そして、まさかと言いたいぐらいの想像が頭に思い浮かんだ。

「変身能力も呪いだから、“聖櫃”の力で封じられた?」

「推測に過ぎませんが、シェイプシフターが一定の姿で留まっている理由をそれ以外に説明できません」

「はぁ……。“聖櫃”恐るべし」

 俺の質問に、ハァビーは神妙な面持ちで答えた。そりゃ、マジものの“聖櫃”を聖女以外が持っていることが外にバレたら大問題だ。

 あの斡旋商の男が他所の人で、フェイの容姿や“聖櫃”の見た目を知らなかったのが救いか。

「ん?」

 俺はそこで、己の大変な過ちに気づいた。

「あー、種を1つしかくれなかったのはケチだからじゃないのか」

 バロメッツやアルラウネの種子を育てるのに、ハァビーが一粒ずつしか渡してくれなかった理由を理解した。1グループの種子は大体が同じ見た目になるわけだから、一度に一粒になるのは当然だ。

 ついつい口に出してしまったことに気づいて、横目でハァビーを見ればショックを受けた顔をしているじゃないか……。

「ダイナさんって、私のこと、そんな風に見てたんですね……」

「そ、その、単なる不可抗力だから! その、ごめんって!」

 これから強敵に挑むってときに仲間内での不和など困るから、言い訳ならびに謝罪を述べた。

 すると、ハァビーは直ぐに優しい顔になって言う。

「冗談です。私も説明してませんでしたし、おあいこということで」

 ちょっとやられた感。

「そりゃ……ありがとうございます」

「それで、ダイナさんもなにかおっしゃりたいことがあるんじゃありませんか?」

 流石はハァビーだ。俺がヘエヌジー語辞典を用意していたことに気づいていた。

 俺はまだヘエヌジー語を頭の中で日本語に直している感覚が残っているから、シェイプシフターの言葉を理解できる。いや、わかるというよりかは違和感の正体が認識できる。

「うん、まぁ、実際にやってみるほうが早いか」

 俺はそう言うと、後をついてくるだけだったシェイプシフターに向き直った。ちなみに、手綱を持っておかないと本当にフラフラとどこかへ行こうとする。

「エーアイビィダーエムナ テセタマ」

「……! バジーエッチジィシー ガワイ ダーエムカワ ダーティーヤ ハワイ テメビィピーハ」

 まぁ、まずは、ずっと連れ歩くだけになってしまったことを謝罪しましたよ。

 さておき、シェイプシフターが驚いた反応するのも無理はない。自分の言葉、シェイプシフター語とでも呼ぶようなそれを理解できる他種族がいるとは思わなかったんだからそりゃな。

 さて、掴みは終わって交渉開始だ。

「ビーエムナビィシィビー ジーアイワイ エヌダダァギーエフ デワイ ダエヌビィダーエムワ ガワイ ダーエックスダダァティーテ テワイ カダーエムレダァシー?」

「ダーエムワジーエッチジィシー」

 仕事を手伝って貰えるように頼んだが、あっさりと断られた。

 恩着せがましいことも言えないから、これで断られるとどうして良いかわからん。

 曰く、いつでも逃げられるから助けて貰った意識はない。曰く、俺達がエアールに負けたときは勝手に逃げる。

「えー……その様子ですと、断られたみたいですね」

「あぁ。2人で頑張るしかなさそうだ」

 ハァビーも状況を理解したようで、2人して絶望感を覚えたのだった。

 そうしている間にも平原の匂いに誘われるまま、街道を外れて小さな林の中へと入っていく。当然、がむしゃらに探してるわけじゃない。

「角で引っ掻いた痕跡、ありました」

「フンも落ちてるし、この中で間違いなさそうだな。ゴクリッ……」

 痕跡を探し出して追跡した先が、この変哲もない林だったわけ。こんな普通の雑木林に猛獣並の危険生物がいると思うと、生唾だって飲み込んでもしかたないさ。

 だが、逆に大型の生物なら行動が制限……いや、ビッグフビフビは我が道を切り開いてたなぁ。

「気をつけてください。狭いからと言って、機動力が下がるなんて思ったらいけません。それと」「ん?」

 ハァビーが注意してくれようとした瞬間、何かがヌッと姿を表した。

 驚く暇とか、声を上げる準備とか、そういうのは全くなかった。

「……」「……」「ワビィビィシィジィジー ネ」

 一回り小さなシェイプシフターの方が威圧感を覚えそうだが、思った以上に冷静だ。
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