絶滅危惧種の子なら隣で寝てるけど? ~異世界で保護飼育は難しい~

AAKI

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10睡目・残酷な天使のベーゼ

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「嫌なのじゃ」

「悪いけど、バロメッツ達をって、はい?」

 想定外の返事に、俺は聞き間違いかと思った。

 ファリッバは賢い子。これからやろうとしていることがわからないってこともないだろう。

 じゃあ、やっぱり聞き間違いだな(確信)。

「ダイナ殿、我は戦いたいのじゃ。争いは嫌いでも、ときには挑まなければならないこともあると思うのじゃ」

「ファリッバ……けど、これは俺達のエゴ。えっと、ワガママだ」

 売られたケンカを勝手に買った。それだけのこと。ファリッバや他の皆を巻き込むなんて、ただの大馬鹿の大間抜けだ。

「ならば、これも我のワガママなのじゃ。どうせ、ハァビーさんと2人だけでは勝算などないとわかってのことなのじゃろう?」

 そう言われたのでは、俺も何も言葉が返せない。これまでの態度で全部読まれてるし……。賢い子。

 とは言え、ハァビーの方が気を揉むんじゃないかと視線を移す。

「ハァビー?」

「ダイナさんが決めたのならと言いたいところですが、私も本音を言えば心細かったですから」

 彼女は苦笑を浮かべながらも答えた。

 どうやら3人でことに当たることができるようだ。壁の建設には青鋼の糸はとても役に立つだろう。

「じゃあ、急ぎ平原に壁を作るか」

 イブ村と学園の間にある草むらを借りることにした。

 材料は大木や岩を積み上げつつ、塹壕を掘ることで必要数を減らす。物資が不足しているわけではないが、運搬車を使っても運べる量に限界がある。シィディアでも時間がかかりすぎる。

「俺はモグラ芋、俺はモグラ芋……ブツブツ」

「あぁぁ、ダイナ殿が壊れたのじゃ……」

「ファリッバさん、も、自分を縛っちゃ、ダメです……って! 」

 1日も経過する頃には、全員に限界が来ていた。不眠不休で働くって辛いんだなぁ。アハハハハッ。

 壁なんて、まだ大枠ぐらいしかできていない。

 ダメだ。これじゃ、襲撃されるまでの間にハリボテを作るのが精一杯だ。

「ど~する? 明日明後日にはハァ~。ハルピュイアさん達がやってくるぞフゥ~」

 息を整えようとしても上手くいかない。この疲労感は、単に体力の問題でもないんだろうな。

 ハァビーやファリッバも座り込んだままで、立ち上がろうとしても膝が震えて立てない様子だ。手も、女の子には不似合いなボロボロさ。

「どうしましょう……。ハリボテでも良いので作って、別の策を練るかでしょう」

「うむぅ。しかし、こんな何もないところでどのような策を講じるのじゃ?」

 ハァビーの言葉にファリッバは疑問を呈する。

 言う通り、見渡せば草か土しかないような場所で、空からの目を欺けるようなものはない。森へと撤退して接近させることもできるか、とも考えたが爆撃で一掃されたら終わりだ。こんな時、打てる手は三十六計逃げるに如かずってところなんだが。

 まぁ、一度は立ち向かうことを選んだ以上、勝ち目のない戦いでも挑まないとダメなんだろうな。

「俺の首」「ダイナさん」「ダイナ殿」

 首1つを差し出して許して貰えないかと言いかけたところで、何かを察したのであろう2人が声を掛けてきた。

 これ以上の言葉は彼女らから恨みをを買うので俺は黙った。

「ごめん。今のなし」

「はいッ」

「よろしいのじゃ」

 フンッすと鼻を鳴らす2人。素敵な団結力で……。

 しかして、どうしたものかと頭を悩ませるのだった。

 下手な考え休むに似たりってところか。

「少しでも攻撃を受け止められたら、反撃の手立てはあるかもしれない。ハリボテでも作っちまおう!」

 体に鞭打って俺は立ち上がった。

「じゃあ、まず枠を完成させましょう」

「材料を固めておくよ」

「頼んだ」

 ん?

「聖女も手伝った差し入れもたっぷりですわ」

「手伝った? 盛り付けた だけ」

「いただく」

「こら。まだ働いてもないだろうに」

 あれ?

「はいはい、2匹とも先生のとこ行ってろ。材料を取り出すぞ」

「おぉっと、良いぞ。ほら、バロメッツもアルラウネも、エルフ達もこっち」

 俺は、誰と話してるんだ?

 何故か進んでいく作業に、俺は疲れ過ぎて夢か幻でも見ているのかと思った。しかし、見回せばフワフワの綿毛を携えた刈り取り時の姿。紫の華を揺らす小さな少女がいて、やや半透明の女性達が傍に控えている。

 何で、皆が?

「ちょ、ちょちょちょっと! どうして皆がここにッ?」

「そうです。まだ学校で授業をしている時間では?」

 ハァビー、違う。そうじゃない。

 感動を返して。

「どうやら、学園側の話がまとまったようなのじゃ」

 ファリッバはサムベアさん達の反応を見ていただけに、この状況に頭が追いついていた。

「いやー、私もダメだと確信してたはずなんだけどね。学園長が意外にもあっさり許可を出してさ」

 サムベアさんは苦笑を浮かべつつ、頭を掻きながら言った。

 一体どういうことなのか。まぁ、サムベアさんが説明できないことを推測できるほど賢くもない。

「だからって……いや、自分の学校ぐらいは守りたいってことか?」

 考えるのを止めて、なぜ生徒である5人や他の皆までこの戦いに名乗り出ているのかを聞いた。
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