絶滅危惧種の子なら隣で寝てるけど? ~異世界で保護飼育は難しい~

AAKI

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10睡目・残酷な天使のベーゼ

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 周りで見ているハルピュイアさん達も、敗色濃厚で士気のない表情を浮かべている。そうしている間にもケェヌ達が合流して、もはや勝ち目がないと見て武器を手放す者も出てきた。

「……だ」

「え?」

 ハルさんがうつむきながら何かを言ったが、聞き取れずに訊ね返した。

「……っきうちだ」

「窮地だ?」

「違う! 一騎打ちだ! お前と、私で!」

「はい?」

 何やら恐ろしいことおっしゃっているので、聞き間違いではないか確認した。一騎打ちってあれでしょ? やぁやぁ我こそは!

 って名乗りあってキンキンカンカンカキーンってやるやつ。

 正直、増強薬もなしに正面から戦って勝てる気はしない。

「私と一騎打ちしろ! お前が勝てばどんな要求にも応えてやる!」

 じゃあ、俺が負けたら?

「逆に私が勝ったら、あのお利口ちゃんを差し出せ。奴を処刑した後は、私自身はどうなっても構わない……」

 とんでもないことを言い出したので、俺もしばらく二の句が告げなかった。聞いていた俺側の皆も、流石にこの発言は聞き捨てならなかったのか臨戦態勢をとった。

 折角ここまで争いを収められそうになったところで、この提案を飲むのは難しい。

 ハルさん達からすれば、自分達の神様……いや、母親のような存在を他国に売り渡したハァビーを許せない。その制裁が最低限の目標で、不可能ならば全滅。その二択なわけか。

「悪いけど、他人の命を賭けられるだけ俺は強くない。ハァビーもだけど、貴女のこともそうだ」

 なんとか一騎打ちに勝ってこの戦いを終わらせることが出来たとして、全員が納得できる落とし所なんて考えつかないんだ。どう足掻いても、ハルさんは敗戦の責任を取らされるだろう。

「だから、その、皆を無事に還して終わり。それが俺にとっての理想なんだ」

 ことなかれか、ハルさん1人を悪人にして終わるか、はたまたハァビーの命を差し出して復讐による流血の終焉か。

「なら、こうだ! 死ね!」

 ハルさんが取った行動は、暴挙と呼べるものだった。足で掴んだ剣を俺に向けて投擲したのだ。

 俺だから、多分、俺だけしか感じられないものがある。ハルさんの気持ちが、刃の飛来に乗せて突き刺さってくる。これを強制的な一騎打ちにして、俺がはたき落とせばそこで試合終了。

 ハルさんは敗北を認めて、俺が要求していない要求まで飲むつもりだ。すなわち、自爆による全滅という結末を。

「……」「そんな……」

 ならば、俺がはたき落とさずにこの身で受け止めたら?

 あぁ、チクショー……。結構、痛いし、自分のバカさ加減に呆れる。

「引き分けじゃ、ダメ、か……? 最後っ屁も不発で、俺も生きてる」

 ちょっとぐらいこれで頭に登った血も下がっただろう。

 俺は最後の気力を振り絞ってハルさんの翼腕を取り、そして立ち上がらせることも出来ずに倒れる。

「ダイナさん! ダイナさ……」

 最後に聞こえたのは、ハァビーが俺に呼びかける声だった。あ~ぁ、また泣かせちまった……。
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