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初心者イベント編
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見知った顔が新聞の一面を飾っているのはいささか現実味がないが、容姿をゲームと同じにしていることにも驚く。
『新世代の技術革新と言われた"ナノスフィア”を実用段階まで高めた天才起業家・天祥 灰人氏は言う。「ナノマシンは近い将来に完成する」と宣言した』
グレイザさんの中の人は、極薄のタッチモニター、機能集積シートだったかしら? それ、ナノスフィアを用いて拡張現実による擬似共有空間を作りだすことに成功した。
家に居ながら会社のオフィスで会議をし、端末一つで海外旅行が楽しめる世界。そう言えば、どれほどのものかわかるのではないだろうか。グルメ旅ができれば最高だが。
『灰人氏の弟にして天才事業家・天祥 聖氏は、未来の技術に期待を寄せる。「様々な問題からたどり着けなかった。仮想現実には出来なかった僕のスフィア・ザ・ファンタジアを一段階押し上げることができる」と語る』
凄い過言ではあるけれど、ナノスフィアをゲームに転用したのがセルシュの中の人である。本人が作ったわけではなく、自身の事業である出版の方から設定などを募っただけと聞いたけど。
要するに、二人ともきっかけと資金を提供はしたけど直接は関わってない。あぁ、別にそれが駄目って言ってるわけではないわ。
「あー、何を考えてるのかしら」
届かぬ巨峰を見上げて独り言を呟いた。
確かに、レベリングを手伝ってくれたり仕事を任せてくれたりと、感謝するところは多くあるわ。だから、別にあんな横暴で横柄な上司なーんとも思ってない。
ドヤられても困るだけよ。
「――そういえば」
新聞など読みつつ、自分の業務を遅々として進めていた私に部長から声がかかった。
「はい?」
「好きなら、プレゼンしてみるかい?」
「何をです?」
いきなりのことで、言っている意味が本当にわからなかった。
今の私はとても間抜けな顔をしているに違いないわ。
「その、マスコットのことさ。漫画かアニメか、ゲームかはしらんけど」
補足されてなんとか理解するも、おかしなことを仰るという感想しか出てこない。私は、ただの経理よ?
疑問しかないため確認を取ろうとする。
「広告代理店なのは確かですけど、私みたいな一介の経理補佐が商品のプレゼンなんてして良いんです?」
「別にプレゼンそのものをしろってわけじゃないさ。資料をまとめるのと草案をって話」
部長の返事に、なるほどと納得した。
私がやるのはこっちでも補佐だということね。それは良いとして、別の疑問もあるわ。
「部長が社長とかに上げて手柄にしちゃうのは構いませんけど、広告代理店が注文もないのに?」
「手柄にしないから、山分けだから。他所からの仕事ばかりじゃやってけないって上から来てるのよ」
次の質問にも、ある程度は納得できる答えが出てきた。沈みかけの船に乗っていたというのは驚きだけどね。
「山分けにはするんっすね。でも、BUGUウサギって3~4年前に出た作品っすよね?」
ツッコミありがとう葉桐くん。ただ、そこまでで何が言いたいのかわかったわ。
だから、私が否定させて貰う!
「脂が乗ってないと? そんなことは無いわ」
葉桐くんは、作品名と大凡のことしか知らないからと怒らなかった。
確かに並の作品ならデビューから1~2年が旬よね。語るとまた長くなるから、今度こそ抑えて見せる。
「今なお多くのファンが練りに練り上げ次創作を輩出して、メディア展開も幅広い作品なのよ。ちょうど、熟しつつも余計な脂が落ちて食べごろになってるわ」
「それ、ゴミ箱どころかコンポスト行きになりそうっす……」
葉桐くんは、私の濁した内容を理解して呆れ顔をした。
は、発酵食よっ。発酵食。
ただ、部長にはそれなりの伝わり方をしたみたい。
「まぁ、詳しくは資料にまとめてくれれば良いよ。やる?」
「……」
問われて、当然、少しぐらいは怖気づいた。
けれど、自分の好きな作品を商品化できる方が嬉しいと思う。
「やりますッ。やらせてください!」
その話に食いつくことにした。
「助かる~。若い感性が欲しかったからさ」
「わかるっす。ぶちょー、スフィファンのことバーチャルリアリティって言いそうっすよね」
余計なことを言うのはひょうきん族葉桐くんの悪いところだわ。スフィア・ザ・ファンタジアのことすら知らないだろう部長に、略称を使うのも煽っているようでマイナス点よ。
部長はニコリと笑って言う。
「今日、飲みな。決定」
「そんなぁ~! 彼女とデートなんっす! パワハラっす!」
ほら、怒らせた。
そんなわけで、私は別の仕事を任されることになった。
まずは、目の前の数字を打ち込んでエクセルと格闘することね。恋を諦めた私がのめり込めるものは、もう仕事と娯楽のバリキャリ喪女人生なのよね……。
き、気を取り直せ!
えーと、深いほうは経理の先輩がしてくれてるし、私は確認と書類作成がメイン。ゲーム同様、今は便利なソフトも増えて楽ではあるんだけどね。ひたすら数字とにらめっこしてるとどっちの作業かわからなくなることがあるわ。あるわよね?
と、若干の混乱を頭に抱えながらも作業と時間は進んでいった。
「あ、今回の初心者イベント、BUGUウサギとのコラボってあったっす」
昼頃に伝えられた情報で、私のやる気がアップしたのは言うまでもない。気分アゲアゲよ。
『新世代の技術革新と言われた"ナノスフィア”を実用段階まで高めた天才起業家・天祥 灰人氏は言う。「ナノマシンは近い将来に完成する」と宣言した』
グレイザさんの中の人は、極薄のタッチモニター、機能集積シートだったかしら? それ、ナノスフィアを用いて拡張現実による擬似共有空間を作りだすことに成功した。
家に居ながら会社のオフィスで会議をし、端末一つで海外旅行が楽しめる世界。そう言えば、どれほどのものかわかるのではないだろうか。グルメ旅ができれば最高だが。
『灰人氏の弟にして天才事業家・天祥 聖氏は、未来の技術に期待を寄せる。「様々な問題からたどり着けなかった。仮想現実には出来なかった僕のスフィア・ザ・ファンタジアを一段階押し上げることができる」と語る』
凄い過言ではあるけれど、ナノスフィアをゲームに転用したのがセルシュの中の人である。本人が作ったわけではなく、自身の事業である出版の方から設定などを募っただけと聞いたけど。
要するに、二人ともきっかけと資金を提供はしたけど直接は関わってない。あぁ、別にそれが駄目って言ってるわけではないわ。
「あー、何を考えてるのかしら」
届かぬ巨峰を見上げて独り言を呟いた。
確かに、レベリングを手伝ってくれたり仕事を任せてくれたりと、感謝するところは多くあるわ。だから、別にあんな横暴で横柄な上司なーんとも思ってない。
ドヤられても困るだけよ。
「――そういえば」
新聞など読みつつ、自分の業務を遅々として進めていた私に部長から声がかかった。
「はい?」
「好きなら、プレゼンしてみるかい?」
「何をです?」
いきなりのことで、言っている意味が本当にわからなかった。
今の私はとても間抜けな顔をしているに違いないわ。
「その、マスコットのことさ。漫画かアニメか、ゲームかはしらんけど」
補足されてなんとか理解するも、おかしなことを仰るという感想しか出てこない。私は、ただの経理よ?
疑問しかないため確認を取ろうとする。
「広告代理店なのは確かですけど、私みたいな一介の経理補佐が商品のプレゼンなんてして良いんです?」
「別にプレゼンそのものをしろってわけじゃないさ。資料をまとめるのと草案をって話」
部長の返事に、なるほどと納得した。
私がやるのはこっちでも補佐だということね。それは良いとして、別の疑問もあるわ。
「部長が社長とかに上げて手柄にしちゃうのは構いませんけど、広告代理店が注文もないのに?」
「手柄にしないから、山分けだから。他所からの仕事ばかりじゃやってけないって上から来てるのよ」
次の質問にも、ある程度は納得できる答えが出てきた。沈みかけの船に乗っていたというのは驚きだけどね。
「山分けにはするんっすね。でも、BUGUウサギって3~4年前に出た作品っすよね?」
ツッコミありがとう葉桐くん。ただ、そこまでで何が言いたいのかわかったわ。
だから、私が否定させて貰う!
「脂が乗ってないと? そんなことは無いわ」
葉桐くんは、作品名と大凡のことしか知らないからと怒らなかった。
確かに並の作品ならデビューから1~2年が旬よね。語るとまた長くなるから、今度こそ抑えて見せる。
「今なお多くのファンが練りに練り上げ次創作を輩出して、メディア展開も幅広い作品なのよ。ちょうど、熟しつつも余計な脂が落ちて食べごろになってるわ」
「それ、ゴミ箱どころかコンポスト行きになりそうっす……」
葉桐くんは、私の濁した内容を理解して呆れ顔をした。
は、発酵食よっ。発酵食。
ただ、部長にはそれなりの伝わり方をしたみたい。
「まぁ、詳しくは資料にまとめてくれれば良いよ。やる?」
「……」
問われて、当然、少しぐらいは怖気づいた。
けれど、自分の好きな作品を商品化できる方が嬉しいと思う。
「やりますッ。やらせてください!」
その話に食いつくことにした。
「助かる~。若い感性が欲しかったからさ」
「わかるっす。ぶちょー、スフィファンのことバーチャルリアリティって言いそうっすよね」
余計なことを言うのはひょうきん族葉桐くんの悪いところだわ。スフィア・ザ・ファンタジアのことすら知らないだろう部長に、略称を使うのも煽っているようでマイナス点よ。
部長はニコリと笑って言う。
「今日、飲みな。決定」
「そんなぁ~! 彼女とデートなんっす! パワハラっす!」
ほら、怒らせた。
そんなわけで、私は別の仕事を任されることになった。
まずは、目の前の数字を打ち込んでエクセルと格闘することね。恋を諦めた私がのめり込めるものは、もう仕事と娯楽のバリキャリ喪女人生なのよね……。
き、気を取り直せ!
えーと、深いほうは経理の先輩がしてくれてるし、私は確認と書類作成がメイン。ゲーム同様、今は便利なソフトも増えて楽ではあるんだけどね。ひたすら数字とにらめっこしてるとどっちの作業かわからなくなることがあるわ。あるわよね?
と、若干の混乱を頭に抱えながらも作業と時間は進んでいった。
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昼頃に伝えられた情報で、私のやる気がアップしたのは言うまでもない。気分アゲアゲよ。
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