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FILE1.痴漢幽霊騒動
その3
しおりを挟む囮捜査が難しくなったことで地道に情報収集をすることになった探偵たち。
「なあ君達」
「ひぃ!?」
……。
「はぁい、そこの彼女」
「きゃぁぁ!」
……。
「ノってるか~い」
「ケツ穴確定だけはやめてください……!」
……。
零士が声をかけた瞬間、ブレザー姿の生徒達か上がるのはそんな悲鳴ばかりである。巨躯なのは理解しているがそれでもそんなに強面なのかとヘコむ。零士とて人間だ。
気にはしていられないと奮闘するも、不審者として通報されかけて心が折れて断念した。
「お待たせしました、てどうしたんです?」
分かれて情報を集めていた双葉が戻ってきた。しゃがみ込み項垂れる零士を見て、体調でも悪いのかと心配してくれる。
「いつものことだ……」
3回に1回はある通過儀礼だと答えておいた。2人で聴き込んでいるときはどうとでもなるため、それくらいの頻度である。
「あぁいつものやつですか。じゃあ、私の分だけで良さそうですね」
双葉は納得すると聞き込んできた話を報告し始める。
「詳細こそわかりませんが、生徒達も校内であまりよろしくない噂が流れていることに気付いているようです。聞く限りですと、教師と生徒の禁断の関係みたいなゴシップとか、都市伝説的なオカルトの類でしたね」
「そうか。話を聞けたとしても、あんまりアテにできなさそうだな」
聞き込みも空振りかと零士は悩みあぐねた。
「ただ、反面で、大半以外の数パーセントにどうも生徒さん達が口をつぐみたがる何かがあるみたいです」
学校の醜聞を表に出さないようにする知性はあるらしい。さすがは進学校だ。変なところで口が固い。
「【レイン】アプリで来たけどマジで可愛いじゃん!」
「なになに、あれ彼氏さん?」
「上司の人でしょ?」
双葉の存在を聞きつけてきた学生達が野次馬になっている。
「双葉ちゃ~ん、仕事終わったら遊びにきてよ」
「は~い、またね~」
友達もできたようでなによりである。しかし、これでは解決の糸口が見つからない。
『We are the Cartoon Heroes - ゥォ - ゥォ - ゥォ』
そんな折だ、零士の携帯電話が鳴った。
「ん?」
明可からの着信だ。
「何かあったんでしょうか?」
「もしもし?」
双葉を伴い学校の方向へ向かいながら野次馬からも逃れた。
「えぇ、向かってる。話をするくらいなら問題ないぜ。校長先生と教頭先生をお待たせしないように急ぐよ」
どうやら聖雄のことで校長先生と教頭先生が話を聞きたいとのことらしい。渡りに船だ。まだ安心できるような流れかはわからないが、とりあえず校内を探る機会ができたことを喜ぶ。双葉もやる気のようだ。
「学校のツートップとの面談だ。上手く立ち回れば何か情報が得られるかもな」
「零士君、スマイルですよ。私の足を引っ張らないでくださいね」
「おいおい、そりゃこっちのセリフだ。また手を出すようなことはしないでくれよ」
「あぁ! まるで私が暴力女みたいな言い方!」
「痛い! 痛い! ケツが2つに割れるから蹴るな!」
「元からやろがい!」
相変わらずの漫才を2人でやりながら百童子高校へとたどり着いた。
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