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FILE1.痴漢幽霊騒動
その4-2
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「粗方は九十九先生から伺いましたが、お二人の口からも起こったことを詳しく話してくださいますか?」
アイコンタクトに知らず知らず言葉を挟んでくる犬子。
「私はそこの彼女に頭を殴られたんですよ? そんな私がなぜ謂れのない罪で糾弾されなければならないのです?」
「まあまあ……落ち着きなさい五十鈴先生」
この場では零士も凄めないとわかってか食って掛かる聖雄。ただ、犬子のたしなめもあって衝突は避けられた。
「……」
双葉はやはりというべきか不満そうにしているが、なんとか怒りを抑えてくれていた。下手に突っかかって不利にならないよう気をつけてくれている。
零士も多く話せることもないため必要最低限だけを言い返す。
「こちらは困っていた女生徒を通りすがりに助けた程度の認識だぜ。アンタをどうこうしたいとは考えてない。処罰についても学校に任せるよ」
「どちらも己に非はないという主張ですか……これでは『意図してではないが迷惑をかけたので厳重注意』が精々でしょうか」
「校長先生!」
学校側の上手い逃げ方に明可が物申しそうになった。
「まあこれでおしまいでしょうな」
それを遮り手早く話を畳んでしまう知太郎。
「お互いに忙しい身でしょうしこれくらいで良いかと。それでは、お二方もありがとうございました」
犬子も乗っかり手早く片付け早足に校長室を出ていった。
「あ……」
明可はそれらを唖然と見送ることしかできなかった。双葉は呆れて声が出ない様子。零士は上に立つ者の保身と処世術に感動さえ覚えていた。
「あれぐらいじゃないとやってけないのかねぇ」
「感心しないでください……。あんなのは――」
明可にまでたしなめられてしまう。
笑えない漫才に割り込んだのは聖雄だ。
「――自分もこれで失礼するよ、九十九先生。放送部を見回って置かないといけないのでね」
付き合ってられないとばかりに校長室を出ていく。
悔しいことに引き止める口実もなく、ただ夕闇の迫る背中を見送るのだった。
「お疲れって感じなのに仕事熱心なことだ」
零士は追求よりも別のことに意識を切り替えていた。
「何か気づいた感じですね」
双葉が言う。なんだかんだで三年の付き合いである。
「もう少しあの先生がどんな仕事をしてるか確認しなくちゃな。こう言ったらなんだが、この学校はどうもおかしい」
保身などというのは大なり小なりあるものと諦め、席を立つ。聖雄の今朝の件とは違うところに魔物は潜んでいるとみた。
「そっちの方はお任せください」
「?」
明可が首をかしげるのを横目に、双葉も意図を理解してタブレット端末を操作しはじめた。
アイコンタクトに知らず知らず言葉を挟んでくる犬子。
「私はそこの彼女に頭を殴られたんですよ? そんな私がなぜ謂れのない罪で糾弾されなければならないのです?」
「まあまあ……落ち着きなさい五十鈴先生」
この場では零士も凄めないとわかってか食って掛かる聖雄。ただ、犬子のたしなめもあって衝突は避けられた。
「……」
双葉はやはりというべきか不満そうにしているが、なんとか怒りを抑えてくれていた。下手に突っかかって不利にならないよう気をつけてくれている。
零士も多く話せることもないため必要最低限だけを言い返す。
「こちらは困っていた女生徒を通りすがりに助けた程度の認識だぜ。アンタをどうこうしたいとは考えてない。処罰についても学校に任せるよ」
「どちらも己に非はないという主張ですか……これでは『意図してではないが迷惑をかけたので厳重注意』が精々でしょうか」
「校長先生!」
学校側の上手い逃げ方に明可が物申しそうになった。
「まあこれでおしまいでしょうな」
それを遮り手早く話を畳んでしまう知太郎。
「お互いに忙しい身でしょうしこれくらいで良いかと。それでは、お二方もありがとうございました」
犬子も乗っかり手早く片付け早足に校長室を出ていった。
「あ……」
明可はそれらを唖然と見送ることしかできなかった。双葉は呆れて声が出ない様子。零士は上に立つ者の保身と処世術に感動さえ覚えていた。
「あれぐらいじゃないとやってけないのかねぇ」
「感心しないでください……。あんなのは――」
明可にまでたしなめられてしまう。
笑えない漫才に割り込んだのは聖雄だ。
「――自分もこれで失礼するよ、九十九先生。放送部を見回って置かないといけないのでね」
付き合ってられないとばかりに校長室を出ていく。
悔しいことに引き止める口実もなく、ただ夕闇の迫る背中を見送るのだった。
「お疲れって感じなのに仕事熱心なことだ」
零士は追求よりも別のことに意識を切り替えていた。
「何か気づいた感じですね」
双葉が言う。なんだかんだで三年の付き合いである。
「もう少しあの先生がどんな仕事をしてるか確認しなくちゃな。こう言ったらなんだが、この学校はどうもおかしい」
保身などというのは大なり小なりあるものと諦め、席を立つ。聖雄の今朝の件とは違うところに魔物は潜んでいるとみた。
「そっちの方はお任せください」
「?」
明可が首をかしげるのを横目に、双葉も意図を理解してタブレット端末を操作しはじめた。
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