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FILE1.痴漢幽霊騒動

その4-4

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「ちょっと待ってください!」
「なんだ?」
「何さ?」
「いやいや、阿藤さんも! 無央さんも! なんで当たり前のように話そうとしてるんですか!?」

 そういうのは明可だ。

「いやぁ、無理に隠そうとすると余計な尾ひれをつけて手持ちの情報を拡散する、いわゆる自称情報通というのがいるんですよ」
「……」

 察しの良い双葉はタブレットを抱えながら説明した。都市伝説や陰謀論の吹き溜まりみたいなものげんぶつを前に明可も押し黙る。

「てなわけで、ある程度は話させてもらうよ。さぁ、双葉ちゃん頼んだ」

 零士は情報の取捨選択を双葉に投げた。

「人使いが荒いですよ、まったく……」

 彼女の方もボヤきつつ、しかし任せてもおけないため買って出た。

「九十九先生からのご依頼で、とある人物の調査を――」
「ほうほう、その誰かというのは名誉のために探らないでおいて欲しいと――」
「もしかしたら別の角度から切り込めるんじゃないかと校内を見回っていたら――」
「なるほど。情報通のアタシなら幽霊騒ぎについて何か知っているかもと――」

 凄まじい言葉の応酬が傍観者達の頭上を行き交った。
 それでも互いに必要な情報をやりとりしているのだから、双葉もさることながら無央も自称ではないのではないのかもしれない。

「――幽霊騒ぎ?」

 そんな中で聞き慣れない単語を明可がキャッチする。
 零士もオカルトと一笑に付して省いた部分であるため詳細を知らない。今では僅かな情報でも必要なため、細い糸を手繰り寄せる気持ちで聞くことにする。

「あぁ、九十九先生には聞かれないようにしてたんだっけ? まぁ、先生達は大体馬鹿げた話しだって取り合ってくれなかったよ」
「そ、それはごめんなさい……」

 六味がこちらの解説を担当してくれる。ちゃんと喋れたのだなと関心したのは零士と双葉の秘密である。反面で明可は、仕方ないようなことだというのに申し訳無さそうにした。

「九十九先生だけじゃない……どうせ、誰も真面目に聞いてくれないからって、一部の生徒だけの噂してたクリーピーパスタだから」
「ゆ、幽霊とまでは想いませんけど、それでも受験勉強のノイローゼとか? 後は変な薬の厳格とかあるかもですし……。いえ、阿藤さんにお願いしたこととは関係ないですからね?」
「ふぅむ」

 几帳面にも下賜な誤解を招かないように気を配られ、無央も無理に邪推はできない。そして、騒動の原因がどうあれ単なるオカルトで終わらないと感じ始めた零士。

「あの人もそうだっけ? あー……今のはなしで!」
「あ……」

 それを裏付けるかのように、無央の失言に明可は反応した。依頼とは関係ないからか、零士達に話していないことがあるらしかった。すると、双葉が何かを知っているとジャケットの裾を引っ張った。

「これ見てください」
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