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FILE1.痴漢幽霊騒動
その4-9
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「あちらさんも狙いがあるんだ。固まって行動してたんじゃ手をこまねくだろうさ」
「……迎え撃つのはわかりました。はぁ……」
未だに幽霊だと信じていない様子の零士を呆れて見つめる。
殴れる相手なのかもわからないから聞いているのにである。
「アナタ達、まさか教室をでるつもり!? アタシ達を守ってちょうだいよ!」
さすがの無央も幽霊相手では誰かを頼らざるを得ないようだ。
「安心しな。何かあったらすぐに戻ってきてやるからよ」
当然、零士とて見捨てるつもりはなくそう答えた。そこで代わりを買って出てくれたのは明可である。
「生徒は私が守りますから!」
気持ちを切り替えられたようで何よりだ。
「な? 頼れる先生がいるから少しだけ待っててくれ」
零士は無央達をなだめてると教室を出た。
「それで、何がわかったんです?」
後ろをついてきた双葉が少し離れたくらいのところで聞いてきた。誘い込めば良いところをわざわざ教室を出たのには理由があると思ったからだろう。
「騒ぎのそれぞれが実は一つに繋がってたって話さ」
「そうなんですか!?」
「あぁ。発端としては五十鈴の痴漢事件だろうな、おぉっと、電話だ」
推理を疲労しようとしたところで明可からの着信が入る。
「もしも――」
「何やってんの!? 助けに来なさいよ!」
「うぉっ!」
通話の始まりはそんな無央の悲鳴じみた文句から。
「何があった!? いや、緊急事態か!」
「離れない方が正解だったんじゃないですか!?」
双葉が怒ったところで通話が切れる。
「普通こっちを狙うだろ!?」
「幽霊だから普通じゃないんでしょうね!」
最後まで説得を続けるもそれで零士が幽霊の存在を認めるわけもなく。とりあえず皆のいる教室へと急いだ。
「おい! クソッ! また鍵か!?」
「大変! 六味さんが!」
駆けつけるも扉は接着剤で塗り固めたかのように動かず、喉気窓からは幽霊に六味が襲われている様子が見える。明可は無央を守る形で騒ぎの中心との間に立っているが、手にした長柄の放棄を震えずにいる。
『よくも……何で、私に……』
教室の中の放送スピーカーだけから、怨嗟の声が流れてくる。そんな低く唸るような音色が救出を踏みとどまらせたのだろう。
それでも見殺しにはできず零士は声を張り上げて伝えた。
「九十九さん、止めさせるんだ! その子にそれ以上、罪を重ねさせたらダメだ!」
「私……。 その子って、どういう……?」
明可の恐怖と戸惑いの入り混じった表情が返ってくる。
殴って倒さなくても良いのだ。相手が、幽霊が何者かわかっているなら。
『邪魔、しないで……! こうでもしないと、しないと……』
その子と呼ばれた存在は、何かを思い出すかのようにうめいた。懇願し拒絶する姿は、目の前の幽霊がただのキリングマシンでは無いことを示唆していた。
それでも零士の言葉だけではどうして良いかわからない。迷い二の足を踏む彼女に答えを放つ。
「届くはずだ! アンタの妹さんなんだからよ!」
「えっ!?」
「……迎え撃つのはわかりました。はぁ……」
未だに幽霊だと信じていない様子の零士を呆れて見つめる。
殴れる相手なのかもわからないから聞いているのにである。
「アナタ達、まさか教室をでるつもり!? アタシ達を守ってちょうだいよ!」
さすがの無央も幽霊相手では誰かを頼らざるを得ないようだ。
「安心しな。何かあったらすぐに戻ってきてやるからよ」
当然、零士とて見捨てるつもりはなくそう答えた。そこで代わりを買って出てくれたのは明可である。
「生徒は私が守りますから!」
気持ちを切り替えられたようで何よりだ。
「な? 頼れる先生がいるから少しだけ待っててくれ」
零士は無央達をなだめてると教室を出た。
「それで、何がわかったんです?」
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「騒ぎのそれぞれが実は一つに繋がってたって話さ」
「そうなんですか!?」
「あぁ。発端としては五十鈴の痴漢事件だろうな、おぉっと、電話だ」
推理を疲労しようとしたところで明可からの着信が入る。
「もしも――」
「何やってんの!? 助けに来なさいよ!」
「うぉっ!」
通話の始まりはそんな無央の悲鳴じみた文句から。
「何があった!? いや、緊急事態か!」
「離れない方が正解だったんじゃないですか!?」
双葉が怒ったところで通話が切れる。
「普通こっちを狙うだろ!?」
「幽霊だから普通じゃないんでしょうね!」
最後まで説得を続けるもそれで零士が幽霊の存在を認めるわけもなく。とりあえず皆のいる教室へと急いだ。
「おい! クソッ! また鍵か!?」
「大変! 六味さんが!」
駆けつけるも扉は接着剤で塗り固めたかのように動かず、喉気窓からは幽霊に六味が襲われている様子が見える。明可は無央を守る形で騒ぎの中心との間に立っているが、手にした長柄の放棄を震えずにいる。
『よくも……何で、私に……』
教室の中の放送スピーカーだけから、怨嗟の声が流れてくる。そんな低く唸るような音色が救出を踏みとどまらせたのだろう。
それでも見殺しにはできず零士は声を張り上げて伝えた。
「九十九さん、止めさせるんだ! その子にそれ以上、罪を重ねさせたらダメだ!」
「私……。 その子って、どういう……?」
明可の恐怖と戸惑いの入り混じった表情が返ってくる。
殴って倒さなくても良いのだ。相手が、幽霊が何者かわかっているなら。
『邪魔、しないで……! こうでもしないと、しないと……』
その子と呼ばれた存在は、何かを思い出すかのようにうめいた。懇願し拒絶する姿は、目の前の幽霊がただのキリングマシンでは無いことを示唆していた。
それでも零士の言葉だけではどうして良いかわからない。迷い二の足を踏む彼女に答えを放つ。
「届くはずだ! アンタの妹さんなんだからよ!」
「えっ!?」
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