こーる・おぶ・くとぅるー ~ひと夏の呼び声~

AAKI

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4.この病院はおかしい

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 昨日と同じく、夕飯のときに起こされる。

「ショウゴくーん、ご飯よ~」
「んん……あ、おネエさん。ツカサは?」

 そういえば、ツカサと話をするってことで待ってたんだっけ? しまったなぁ。

「あぁ、大丈夫よ。検査が終わったのがついさっきだから。女の子を待たせておねんねなんてことはないから安心して」
「そうか。だいぶ遅いけど、大丈夫なの?」

 昼ごろから今までかかるなんて、ツカサのことが心配になった。

「ふふっ、大丈夫よ。少しだけトラブルがあっただけだから」

 おネエさんはこれまでとはちょっと違う、なんだか1人でこっそりケーキを食べちゃったときのお母さんと同じ笑顔を浮かべた。

「……?」
「お寝坊さんが気にすることはないから」

 やっぱり隠し事してる、よね。でも、それがわかっても、ボクはなぜか聞き出すことができなかった。
 だって、おネエさんやこの街に前々から住んでる人は、昨日の夜に何かがあることを知っているはず。なのに、魚顔のお化けの話をちょっとも信じようとしなかった。

「ほらほら、冷めないうちに食べちゃいなさい。ツカサちゃんのことはお医者さんに任せておけば良いからね」
「う、うん……」

 ボクは、おネエさんの笑顔が怖くてうなずくことしかできなかった。
 ミソ汁を飲むふりをしながらおネエさんが出ていくのを待って、こっそり入り口の方に向かってみる。すると、お医者さんと話しているのが少しだけ聞こえる。

「……のご飯に……を入れたかい?」
「えぇ、ちゃんと……も飲んで……。さすがに今夜は……出ないでしょう」

 なんの話だろう? ご飯の中に何かを入れたってことかな。それを飲んだから夜はどこかに出ていかないって言ってる。
 ボクはそこまで整理したところでゾッとした。
 だって、おネエさん|たちが話してるのがボクの夕飯のことだったら……。

「ど、どうしよう……」

 急いでベッドに戻るも、どうするべきか考えがまとまらない。
 ご飯を捨てようか? でも、結構な肉の塊だってあるからトイレに流すのは無理だ。ゴミ箱も、さすがに掃除をされてしまう。
 おっことした振りをすれば! いやいや、それだと食べてないこと自体をあやしまれる!

「えぇっと、あ!」

 まだ手つかずで置かれている同室の子の夕食を見つけて、それとすり替えることを思いついた。
 さすがに命の危険性があるものは入れていないはず……最悪、ごめん!

「寝てるかな?」

 同室の子が反応しないのを確かめつつ、カーテンの隙間にスベりこんでこっそりとトレーを入れ替えた。そのとき、寝返りをうったからか布団が外れ顔が覗く。
 ヒッ!?

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 ボクは、その顔を見て悲鳴を上げた。なにせ、昨晩に浜辺で見たお化けのそれと似ていたからだ。
 厚い唇に潰れたみたいな鼻。目を閉じていてわかるのはソレぐらいだったけど、不気味なあの顔を思い出すのには十分だった。
 驚いた拍子にカーテンの外へと倒れ込み、元は自分のものでなかったトレーをひっくり返してしまう。正直、びっくりしすぎてそれすらもしばらく気にならなかったんだけど。

「どうしたの、ショウゴくん!?」

 悲鳴を聞きつけたのか、かんご師のおネエさんが慌ててやってきた。

「だ、大丈夫!? 掃除するから動かないでね。ケガとかしなかった? ヤケドもない?」

 ミソ汁やサラダをかぶったボクを心配して駆け寄ると、他のかんご師さんとかとも連携して片付けの準備をしてくれた。

「う、うん……」
「いったい何があったの?」
「えぇっと……」

 おネエさんに聞かれて、ボクはどう答えて良いか迷った。さすがに食事を入れ替えようとしたなんて言えないから……。

「一緒にご飯を食べようと声をかけたんだけど、その」

 さてここからどう言い訳しよう?

「足を滑らせたのね。気をつけなきゃダメよ?」

 おネエさんが勝手に勘違いをして口実を作ってくれた。

「そう! 足が滑って!」
「なんだか嬉しそうね? まぁ、代わりのご飯がないか聞いてきて上げるね」

 そう気をつかってくれるけど、またご飯に何かを入れられても交換できそうにないからスグに断る。

「あ、もう良いよ! そんなにお腹空いてないからさ!」
「そう? しっかり食べないと治りづらくなるけど……それでなくとも育ち盛りでしょう?」
「一食くらいなら問題なし!」
「そ、そう?」

 なんとか強引に食事を断ることができた。
 でも、これを何度も、退院するまで続けないといけないの? いずれはバレるだろうし、うえじにしちゃう……。

「はい、着替え終わり」
「ありがとう。それと、ごめん」

 一応、手間をかけさせたしまったことに頭を下げておいた。あくまで怪しまれないように、だ。

「気にしない、気にしない。また、何かあったらえんりょなく呼ぶんだよ~」

 ご飯の汚れと一緒に体も拭いてもらってスッキリしたところで、お腹の虫が鳴るのを気づかれないように布団の中へと逃げる。

「……さて、どうしよう」

 かんご師さん達がいなくなったのは聞き耳を立ててわかったから、つい気がゆるんで独り言をつぶやく。同室に、まさかお化けの子がいるなんて思いもしなかった。この街も病院も、何かがおかしい。
 まぁ、正直、ボクくらいの頭で考えても答えなんて出なかったんだけど。もっと勉強すれば良かった……かな――。
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