男の唾液と煙草の相性

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 Twitterをスクロールしながら他人の今を垣間見る。タピオカ飲んでるやつ、仕事の愚痴、髪の毛切ったという報告自撮り、どれもさほど興味のない内容ばかりが流れてくるけれど見てしまうのは単なる暇つぶしか、それとも実際のところ他人に興味があって仕方ないのだろうか。
 私は隣でぐっすり眠る男の顔を覗き込む。髭がほとんど生えておらず皺もほとんど見当たらない肌と筋の通った鼻、濃い睫毛は私のものよりも長いんじゃないか。寝癖のついた髪をそっと撫でてから彼を起こさないようにベッドを抜け出す。ベッドの下には昨日の残骸が転がっていて、男のボクサーパンツが戒めるように私の脚に絡まった。
 バスローブを素肌に羽織ってバスタブにお湯を張る。ジョボジョボとお湯が流れ出る音を聴きながらタバコに火を点けて深く吸い込む。普段はあまり吸わないようにしているが、こういうとき、つまりたいして知らない男の人と一晩限りの関係を持ったときに無性に吸いたくなる。宇多田ヒカルがFirst loveを作ったのが確か十代前半だったと思うけれど、彼女はその歳にして男とタバコを足し合わせた味を理解していたのかと想像すると可笑しくなる。私は17歳でタバコに出会ったが、男とタバコをセットで味わえるようになったのは20歳を超えてからだ。タバコは男の唾液と相性が良い。
 細長いメンソールのタバコを右手の人差し指と中指で挟んでバスタブのふちに腰掛けて宙を仰ぐ。まだベッドの中にいる男は昨日大学で同じゼミの友達と飲んでいたときに声を掛けてきたサラリーマンだ。話してみると同じ大学出身ということがわかり、そこそこ名前の通った商社に勤めていたのでとりあえずラブホテルに誘ってみたがあっちの方はいまいちだった。小さくて入っているのかどうかわからないちんこは仕方ないとして、AVの中でしか通用しないであろう激しい手マンや言葉攻めに途中からうんざりした。学生が終わってもそんなセックスしかできないなんて今まで頭の悪い女としか付き合ってこなかった証拠だ。
 バスタブに溜まったお湯を見て、私はタバコを灰皿で揉み消してバスローブを脱ぐ。足先からゆっくりお湯に浸かると最初は皮膚の表面が、徐々に温もりが身体の内側に浸透してきて心地良い。半身浴しつつ自身の指を確認すると先週やってもらったネイルが少し剥げていた。女は金のかかる生き物だ。しかし金のかからない女ほどつまらない生き物はないと思っているから、私は私に金をかける。
 目を閉じてお湯に浸かり身体を温めているとバスルームのドアが開いて裸の男が目を擦りながら入ってきた。
「おれも入っていい?」
「どうぞ」
 男はバスタブの中に身体を沈めてくる。私と向かい合う形になり、脚と脚が絡まる。
「気持ちいいね」
「そうね」
「昨日も気持ち良かった」
「ほんと? 私も気持ち良かったよ」
「ふふ、相性がいいね」
「そうね」
 男は私の脚を持ち上げて足先に口付けした。
「やだ、くすぐったい」
「じっとして」
「ちょっと、だめ、くすぐったいから」
 嫌がる私をよそに、男はそのままふくらはぎ、内腿へと顔を移動させてくる。瞬時に私は頭の中で今日の予定を確認する。確か13時から美容院の予約をしているから、一旦家に戻り着替えてそこに間に合うようにここを出なくてはいけない。先ほどスマホを見たときに時間を確認したから今は8時くらいだろうか。この男の小さなちんこを咥えていかせるのに昨日の感覚だと恐らく10分とかからないはずだ。
 私はバスタブから立ち上がる。
「ベッドにいこ」
 男も立ち上がって私の首筋を舐めてきた。
「早くいれたい」
「ベッドまで我慢して」
 股間を見ると細い、まるでS字フックの先端を想像させるようなちんこがこっちを向いていた。そっと左手で触ると先っぽから滑りのある液体が出てきていて可愛らしい。
 タバコが吸いたい。タバコを吸いながらバックで突かれたい。
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