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第5章 神の器の奮闘記 ~スカイリンク封印編~
第62話 晴れしらずの山、再び
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再びやってきた、晴れしらずの山。メンバーは前回同様アリスと俺、そして今回は玄太もひっついて来た。装備はアリスは自慢の弓。俺の腰にはエレメタル製のスコップ、ブルーストライク。玄太はリュックをしょっての探索パーティ。
「てんぱいがまた倒れたらおれがおぶらなきゃ!」
だって。今日はどうせスカイリンク使わねえっての!
そしてこの山は、相変わらず湿った空気と、ぬめっとした岩肌。晴れ呼びの石の効果で雨こそ降ってないが、まさに、歓迎されてない感フルスロットルだ。
「ここが…てんぱいが導流晶を見つけた場所っすか?」
玄太がじっと、山の中腹にぽっかり口を開けた洞窟を見つめる。
「そう。前はアリスと二人でな。スライムと鼠、そんで最後は地獄の地底湖で水中アドベンチャーだったぞ」
「大げさねぇ。地獄は言いすぎじゃない?……でも、まあ間違ってないかも」
アリスがふっと笑って俺に目配せする。…いや、マジでデッカイ鼠だけでも、アリスがいなきゃ詰んでたからなぁ。現代人にとっちゃ、猫くらいの大きさの鼠ってだけでアウトなんだよ!
「まぁ、一回入ってるしもう怖いもんはねえ!」
なんて、強がる俺。
「でも、その時って導流晶取っただけなんすよね?」
「えーっと、まぁ…」
「そうよ!取るだけ取って、速攻帰還!だって、あの時の天貴ったら、玄太が~玄太が~!ってもう大変だったんだから!」
「えぇぇ~!!?てんぱいそんなに…!?」
「はぁ!?俺そんなん言って…」
「て、てんぱい…おれ、嬉しいっす…」
玄太を横目で見ると、マジで嬉しそうに赤くなってやんの。
「ん、いやまぁ、コホン…そうだな」
まぁ、いいか。いや、正直言うとあのときは心配すぎて確かに余裕がなかったしな。
「ともかく!中に入る準備はいいな?」
「問題ないわ」
俺たちは暗光石を腰に下げ、再び洞窟へと足を踏み入れた。
********
「ゲド将軍!」
「なんだ。何か掴んだか?」
晴れしらずの山。その名の通り、常に霧と雨に包まれていた山が、突如として晴れ始めた。その異変に気づき、ゲド一行は偶然にもこの地に調査で訪れていた。
「洞窟へ向かう林道で、農場の者らしき一行を確認したとの報告が!」
「なにぃ…?アルカノアの連中だと?」
「はい。青いツナギの男と、十五、六の娘。特徴からして、農場の者かと!」
「…よりにもよって、このタイミングで、あの二人がここに?」
ゲドは眉を寄せ、濡れた山肌を見上げる。
「鉱石の発掘かと思われます。近辺から微弱ながら結晶反応も確認されています!」
「ほう…物資補給にしては、やけに踏み込みが深いじゃねぇか」
ゲドは腕を組み、にやりと口の端を吊り上げる。
「この状況でわざわざ農場を離れるなんて、よっぽどの理由だろう」
そして、空を見上げた。
「…気象を操れる奴なんて、そう多くはない。わざわざここを晴らせてまで動く理由はなんだ?」
遠く、霧が引き始めた山腹の向こう。偶然のはずの遭遇に、ゲドは確信を覚えていた。
「…くくっ。面白ぇ展開になってきやがった」
「将軍、どうなさいますか?」
「奴らも手ごわい、慎重に追え。まだ手は出すな」
「了解!」
「奴らが何を掴むのか。しばらく、観察させてもらうとしよう」
*******
ポタ、ポタ、ポタ……。
天井から滴る水音だけが、無音の闇に響いていた。濡れた岩。重たい湿気。ひとつ踏み出すごとに、足元が少しずつ闇に沈んでいく。
「こっちは地底湖の方向、今回は鉱石の群生地を目指すから深部へ向かいましょう!」
アリスが前を指差す。けど、少しだけ足がすくんでいるようにも見えた。
「え、深部!?ちょっと心の準備が……」
「ここまで来て心の準備も何もないでしょ!」
そう言ってズンズンと進むアリスの尻を追って、俺たちは暗光石の淡い光を頼りに、じわじわと奥へ進んでいった。ぬめるような岩の感触、地下水のにおい、そして重くなる湿気。
「…なんか、前と空気が違う気がするんだけど」
俺がつぶやくと、アリスも一度立ち止まり、小さく頷いた。
「ええ。前より色んな気配が濃い…」
「ま、まさか…前よりデッカイ鼠とか、出ないよな?」
「さあ……?」
「おい、嘘って言えよ」
軽くツッコミを入れつつも、アリスの視線は真剣だ。
「違うのよ。冗談じゃなく、この洞窟ってずっと雨続きでほとんど情報が無いの」
「ってことは、とんでもないものが潜んでいても…」
「でっけえナメクジとか、いやっすね…」
おい、玄太。そういう壮大な振りはやめろ。
「とにかく気をつけて。鉱石の群生地は、その力に寄せられていろんなものが集まるはず」
ごくり、と玄太がつばを飲む音がやけに大きく響いた。
──そのときだった。
「……ズルリッ」
誰かの足音?いや、違う。岩が、ひとりでに軋んだような…。俺はとっさに暗光石を掲げて洞窟の奥に目を凝らす。霧が濃く渦巻くその先に、なにかが「ゆらり」と動いた。
「…てんぱい、今、なんか…いたっすよね?」
「ああ。いたな」
次の瞬間、視界の闇の中から、低く、濁った「うなり声」が響いた。
「ぐぅぅぅ…ッ」
うなり声と同時に、闇の奥からそれは姿を現した。ぬらりと光る灰紫の皮膚。まるで粘土細工のようにどろりと崩れた体型。そして、まるで溶けかけた仮面のような顔。
「なんすか、あれ…」
玄太が、震えた声でつぶやいた。
「おいおい、ナメクジって言ってたの、フリじゃなかったよな?」
それはナメクジというより、雨水と泥が混ざり合って動き出した何か。
「これ…なに」
アリスが前に出て、警戒の構えを取る。
「くっそ、アリスでも分かんねえのか…!」
俺は腰からブルーストライクを取り出して一応構える。今はこんなの役に立たねえけど、やるっきゃねえ。
「アリス、玄太、いくぞ!」
「了解!」
「おっしゃあああああっ!」
ジメジメした洞窟の中、異形との戦いが始まった!
「てんぱいがまた倒れたらおれがおぶらなきゃ!」
だって。今日はどうせスカイリンク使わねえっての!
そしてこの山は、相変わらず湿った空気と、ぬめっとした岩肌。晴れ呼びの石の効果で雨こそ降ってないが、まさに、歓迎されてない感フルスロットルだ。
「ここが…てんぱいが導流晶を見つけた場所っすか?」
玄太がじっと、山の中腹にぽっかり口を開けた洞窟を見つめる。
「そう。前はアリスと二人でな。スライムと鼠、そんで最後は地獄の地底湖で水中アドベンチャーだったぞ」
「大げさねぇ。地獄は言いすぎじゃない?……でも、まあ間違ってないかも」
アリスがふっと笑って俺に目配せする。…いや、マジでデッカイ鼠だけでも、アリスがいなきゃ詰んでたからなぁ。現代人にとっちゃ、猫くらいの大きさの鼠ってだけでアウトなんだよ!
「まぁ、一回入ってるしもう怖いもんはねえ!」
なんて、強がる俺。
「でも、その時って導流晶取っただけなんすよね?」
「えーっと、まぁ…」
「そうよ!取るだけ取って、速攻帰還!だって、あの時の天貴ったら、玄太が~玄太が~!ってもう大変だったんだから!」
「えぇぇ~!!?てんぱいそんなに…!?」
「はぁ!?俺そんなん言って…」
「て、てんぱい…おれ、嬉しいっす…」
玄太を横目で見ると、マジで嬉しそうに赤くなってやんの。
「ん、いやまぁ、コホン…そうだな」
まぁ、いいか。いや、正直言うとあのときは心配すぎて確かに余裕がなかったしな。
「ともかく!中に入る準備はいいな?」
「問題ないわ」
俺たちは暗光石を腰に下げ、再び洞窟へと足を踏み入れた。
********
「ゲド将軍!」
「なんだ。何か掴んだか?」
晴れしらずの山。その名の通り、常に霧と雨に包まれていた山が、突如として晴れ始めた。その異変に気づき、ゲド一行は偶然にもこの地に調査で訪れていた。
「洞窟へ向かう林道で、農場の者らしき一行を確認したとの報告が!」
「なにぃ…?アルカノアの連中だと?」
「はい。青いツナギの男と、十五、六の娘。特徴からして、農場の者かと!」
「…よりにもよって、このタイミングで、あの二人がここに?」
ゲドは眉を寄せ、濡れた山肌を見上げる。
「鉱石の発掘かと思われます。近辺から微弱ながら結晶反応も確認されています!」
「ほう…物資補給にしては、やけに踏み込みが深いじゃねぇか」
ゲドは腕を組み、にやりと口の端を吊り上げる。
「この状況でわざわざ農場を離れるなんて、よっぽどの理由だろう」
そして、空を見上げた。
「…気象を操れる奴なんて、そう多くはない。わざわざここを晴らせてまで動く理由はなんだ?」
遠く、霧が引き始めた山腹の向こう。偶然のはずの遭遇に、ゲドは確信を覚えていた。
「…くくっ。面白ぇ展開になってきやがった」
「将軍、どうなさいますか?」
「奴らも手ごわい、慎重に追え。まだ手は出すな」
「了解!」
「奴らが何を掴むのか。しばらく、観察させてもらうとしよう」
*******
ポタ、ポタ、ポタ……。
天井から滴る水音だけが、無音の闇に響いていた。濡れた岩。重たい湿気。ひとつ踏み出すごとに、足元が少しずつ闇に沈んでいく。
「こっちは地底湖の方向、今回は鉱石の群生地を目指すから深部へ向かいましょう!」
アリスが前を指差す。けど、少しだけ足がすくんでいるようにも見えた。
「え、深部!?ちょっと心の準備が……」
「ここまで来て心の準備も何もないでしょ!」
そう言ってズンズンと進むアリスの尻を追って、俺たちは暗光石の淡い光を頼りに、じわじわと奥へ進んでいった。ぬめるような岩の感触、地下水のにおい、そして重くなる湿気。
「…なんか、前と空気が違う気がするんだけど」
俺がつぶやくと、アリスも一度立ち止まり、小さく頷いた。
「ええ。前より色んな気配が濃い…」
「ま、まさか…前よりデッカイ鼠とか、出ないよな?」
「さあ……?」
「おい、嘘って言えよ」
軽くツッコミを入れつつも、アリスの視線は真剣だ。
「違うのよ。冗談じゃなく、この洞窟ってずっと雨続きでほとんど情報が無いの」
「ってことは、とんでもないものが潜んでいても…」
「でっけえナメクジとか、いやっすね…」
おい、玄太。そういう壮大な振りはやめろ。
「とにかく気をつけて。鉱石の群生地は、その力に寄せられていろんなものが集まるはず」
ごくり、と玄太がつばを飲む音がやけに大きく響いた。
──そのときだった。
「……ズルリッ」
誰かの足音?いや、違う。岩が、ひとりでに軋んだような…。俺はとっさに暗光石を掲げて洞窟の奥に目を凝らす。霧が濃く渦巻くその先に、なにかが「ゆらり」と動いた。
「…てんぱい、今、なんか…いたっすよね?」
「ああ。いたな」
次の瞬間、視界の闇の中から、低く、濁った「うなり声」が響いた。
「ぐぅぅぅ…ッ」
うなり声と同時に、闇の奥からそれは姿を現した。ぬらりと光る灰紫の皮膚。まるで粘土細工のようにどろりと崩れた体型。そして、まるで溶けかけた仮面のような顔。
「なんすか、あれ…」
玄太が、震えた声でつぶやいた。
「おいおい、ナメクジって言ってたの、フリじゃなかったよな?」
それはナメクジというより、雨水と泥が混ざり合って動き出した何か。
「これ…なに」
アリスが前に出て、警戒の構えを取る。
「くっそ、アリスでも分かんねえのか…!」
俺は腰からブルーストライクを取り出して一応構える。今はこんなの役に立たねえけど、やるっきゃねえ。
「アリス、玄太、いくぞ!」
「了解!」
「おっしゃあああああっ!」
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