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24話(※)~古代遺跡~
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~古代遺跡~
全身の血が沸騰するのを感じた。
怒鳴り声を荒野にぶつけた俺は、手綱を力いっぱい引き絞る。
「パイパー、とまれ! とまってくれ!!」
だが、ヴァルカリオンは頑として止まらない。
騎士の命令に忠実であろうとするその瞳は、ただ前を向き、ひたすらに駆け続ける。
「頼む……頼むから、お願いだから、とまってくれ! パイパー!!」
懇願の声がかすれる。
そのとき、パイパーの脚がわずかに緩み、蹄の音が少しずつ弱まっていった。
やがて、砂煙を散らしながらも、その巨体はついに歩みを止める。
もしもパイパーがルクレールの専属の馬であれば、決して主の命令を破らず、このまま『ファリア・レマルドの環』まで走り続けていただろう。しかし、彼は元々ルクレールの馬ではなく、おそらく俺の本来の担当騎士に仕えているヴァルカリオン――。
パイパーが振り返る。
その大きな黒い眼差しには、確かに心配の色が宿っていた。
「……パイパー……」俺は息をつくと、パイパーの背から飛び降りて彼の顔を両手で包み込んだ。「ここからは俺ひとりで行く。お前は、遺跡へ向かってくれ」
パイパーの鬣を、掌でそっと撫でたあと、俺は身体強化魔法を二重にかけた。筋肉が幾分か張り詰め、血流が熱を帯びていく。
たとえば、俺が行って何ができるのか――問われたとしたら、答えは出せない。
既にあの凄腕の寮監三人とデュラン副官がルクレールのもとへ向かっている。砦のグリフォン隊も出ている。戦いは、俺が辿り着く前に終わっているかもしれない。俺など、足手まといにすらならないのかもしれない。
それでも。
俺のために身を挺しておとりになりやがったあのくそ野郎の眼帯騎士を、このまま放っておくことはできなかった。彼が命を懸けたその場に俺が居ないだなんて――そんな選択は、どうしてもできなかった。
たとえ間違った行動だと分かっていても。
俺は無意識に外套のフードの内側へ手を伸ばしていた。
組紐の結び目の固さを確かめるように親指で撫で、目を閉じて一瞬だけ呼吸を整える。
──ルクレールの無事を確認したら、必ず、アルチュールの居る場所に帰る。
大地を蹴り、荒野をひた走る。
喉は焼けつくように乾き、呼吸は胸の奥をかきむしるように荒くなる。それでも足は止められなかった。
そのとき――背後から馬の嘶きと、蹄が大地を打ち鳴らす音が迫ってきた。
振り向けば、そこにはパイパーの姿があった。
「お前……なんで来るんだよ……」
足を止めると、パイパーはたちまち追いつき、俺の横に並ぶ。首を振り、黒い瞳でこちらを覗き込んでくる。
まるで「置いていくな」と言っているみたいだ。
「分かった。お前は、人間の命令をわりと無視する馬なんだな……」
呆れ半分に口にすれば、パイパーはフンと鼻息を鳴らした。
「急ぐんだ、頼む」
苦笑しながら鞍に飛び乗る。瞬間、全身が浮くような加速に包まれ、風が視界をさらっていった。
その背に揺られながら、胸の奥でひとつの名前が何度も熱を帯びる。
――ルクレール……。
くっそ野郎、後でしばく!
あの背中を追って砂塵を蹴立てて戻ると、視界の先で稲妻のように閃く槍と剣が交錯していた。
俺はパイパーの背から飛び降り、手綱を握ったまま大地に足を踏みしめる。少し離れた荒地には、騎士団長や寮監たちのヴァルカリオンが戦いから距離をとって待機しており、不安げにひづめで地を掻いているのが見えた。
戦況は――優勢。だが綱渡りだ。
地表に出たソルヴォラックスは、長い円筒状の身をくねらせ、地中に戻ろうとするたびにうっすらと見える蜘蛛の糸のようなものに引き戻される。ボンシャンが巨大な引力結界を張り、土中に潜らせまいと圧を掛けているようだ。巨体と魔力がぶつかり合い、空気が低く唸る。
上空では砦のグリフォン隊が輪を描き、下降と上昇を繰り返しながら槍の雨を降らしていた。金と白の羽がきらめき、鋭い穂先が節目を正確に穿つ。騎士団長は魔術式ボウガンを肩口に据え、装填と同時に魔力陣が閃く。副団長は鎖付きアックスを唸らせ、巨体の節目に絡みつかせると、全身の力で引き寄せながら振り下ろす。
カナードとデュランは機を見て障壁を展開し、ゆっくりと宙から落ちて来るソルヴォラックスの牙で縁取られた口腔を面で受け、弾き返した。
「今だ、デュボア!」
カナードの声に応じ、デュボアが地を裂く踏み込みで間合いを詰める。対角からルクレールが走り、ふたりの刃が十字を描いた。ルクレールの剣は、狙い違わず柔肉の継ぎ目を穿ち、深々と突き刺さる。
ほぼ、決まった。
そう思った瞬間だった。
地鳴りが一段深く響き渡り、突然、地面が沈み、世界が大音響とともに落ちた。
荒野の皮膚が破れ、深く巨大な穴がぽっかりと口を開ける。
内部に積層した石壁――円環状の石柱、崩れた梁――そこに現れたのは、地下何層にもつながる古代地下遺跡だった。
ソルヴォラックスが、引力結界ごとずるりと裂け目へ呑まれていく。
「退けーー!」
ボンシャンの叫びと同時、騎士団長と副団長が、ほぼ同時に重力に引かれ、崩れ落ちる。しかし、団長は真上にいたグリフォン隊の鉤爪に攫い上げられ難を逃れた。
「ザイロン――来い!」
カナードの声が鋭く走る。
ほどけたアスコットタイは瞬時に長大な風蛇に変わり、音もなく宙を駆けた。そして、副団長の身体をするりと絡め取ると、そのまま軽やかに地上へと送り届ける。
デュボアは踏み止まれず、崩れた石の縁に片手でぶら下がる。駆け寄ったデュランがその腕を掴み、一気に裂け目から引き上た。
刹那、ルクレールの刃は魔蟲の肉に深々と食い込み、抜けぬまま引きずり込まれていく。
足場が崩れ、抗う間もなく彼の身体ごと地の底へと呑み込まれた。
「ルクレール!!」
「ヴァロア!」
デュランたちの絶叫が響く。
その声を背に、思考よりも早く身体が走っていた。
喉を裂くように声が迸る。
「ルクレーーール!」
「セレス!? 戻れ、何をしている!」
「コルベール! なぜここに――!」
寮監たちやデュランの怒声が飛ぶ。しかし、俺は止まらなかった。全身に巡らせた身体強化魔法《フォルティス》が、脚を鋭敏に、軽やかに走らせる。
「戻りなさい、コルベール!」
ボンシャンの絶叫とともに、引力結界を編んだ糸が宙を奔り、俺の身体を絡め取ろうと迫った。反射的に魔力を集中させ、周囲に障壁を展開する。ぱん、と鋭い音を立てて糸がはじけ切れ、結界の外へと散った。
その瞬間、ボンシャンの瞳が驚愕に見開かれるのが見えた。だが、もう遅い。
俺は裂け目の縁を蹴り、ためらいなく闇へと身を投げた。
風圧が障壁を叩き、耳を裂く轟音とともに、視界は岩肌と石片の流れる影に塗りつぶされていく。
昼の光はなお開口から射し込んでいたが、深みに進むほど闇が押し寄せ、輪郭を飲み込んでいった。
――元々、あの男は俺のためにここに残った。考えろ。考えるんだ! 絶対に、生かす!
掌を下に押し出し、水を呼ぶ。
「アラペリス、オゥ……!」
ゆっくりと空間に水が集まり、直後、滝のような流水があふれ落ちた。轟音を立てて奔流が走り、見えない穴の底を一気に覆い尽くすように広がっていく。この穴を、出来る限り水で満たす。だが、ただの水じゃだめだ――より浮力を。
遺跡の石には貝殻の化石が残っている。ここは太古の昔、海だった。そのことは、今回の旅程で寮監からも説明を受けていた。だが、それはセレスタン本体はもうずっと前に、本で読んで知っていた知識。
脳裏をかすめる――ならば、塩だ。
イメージしろ。この空間から塩を抽出する。
「アラペリス、セェレ!」
砂と粘土に散った微量元素が、白い霧のように水の中へと溶け込んでいく。魔力を全開放しているせいか、脳の奥が焼けるように痛む。
濃い塩水が穴を満たし、渦を巻きながら底へと広がっていく。
その水面の上に、ゆっくりと落下するほのかな灯りが見えた。ルクレールだ。火の属性魔法を操り、手から柔らかな光を放っている。
落下したソルヴォラックスの巨体が、塩水の中へどぶんと沈み――暴れた。
粘膜が泡立ち、白くひび割れる。体表の浸透圧が狂い、節目の膜がずるりと剥ける。巨体は痙攣し、口腔の牙がばらばらと砕け落ちた。
間に合った……。
安堵の一呼吸が、命取りだった。
視界が白く瞬き、音が遠のく。
これが、急性魔力虚脱か――意識が遠のく。
体が崩れ落ちる寸前、空中で硬い胸に強く抱き留められた。
「……よくやった」
耳のすぐ側で囁く低い声。
ルクレールだ。彼は、魔力で自分の降下速度を押さえていたのだろう。俺の体を胸に抱え、自分の背中から水へ入る角度へと捻る。
冷たい波が肩まで来て、肺がきしむ。塩分を含む水は程よい浮力を与えてくれる。遠く、穴の天井から差す光が揺れた。地の底には、どこかに通じる穴でもあるのか――水に流れがある。
視界の端に、ソルヴォラックスが最後の痙攣を見せて静止するのが映った。
ルクレール……、唇で名を紡いだところで四肢の感覚が砂に沈む巨石のように重く落ち、静寂が俺を呑み込んだ。
༺ ༒ ༻
どれくらい経っただろう。
――呼ばれている。
誰かが、俺の名を呼んでいる。
額に触れる掌はあたたかく、髪に落ちる吐息がくすぐったい。頬に、唇に、柔らかなものが触れて離れた。二度、三度。水の匂いと、わずかな鉄の匂い。
人肌は、ひどく心地いい。
誰かの舌が、口の中をまさぐっている。
瞼を押し上げると、すぐ目の前に眼帯の男の顔――視界が一瞬で澄み、意識が浮上した。
広い、平たい岩の上。
体を起こそうとして――動かない。急性魔力虚脱のせいだけじゃない。物理的に押さえつけられている。
……こ、これは。
俺の上に、左手首にブレスレットと首に奇石のペンダントを付けただけの全裸の男?
そして、俺も――同じく首にストーン・ホルダーのペンダントだけを付けて全裸。
反射的に相手の逞しい肩を叩くと、唇から温度が離れた。
「目が覚めたか」
低い声。至近距離。ルクレールだ。
「ここ……どこだ」
「穴の真下からわりと流された。……岩壁が削れていて、崩れた石柱とか石段の名残が見える。水底には岩棚がいくつも重なっいて、まるで古い神殿の土台みたいだ。おかげで、それを伝って水から上がれた。上は闇に沈んでいるが、横へと細い空洞が伸びている」
「で、なんで俺、全裸なの?」
「濡れていたから」
「で、なんであんたも全裸なの?」
「濡れていたから」
「……なんで俺の上に居るの」
「温めていた」
周囲には、火属性の魔法で出したらしい火球が幾つも揺れている。
「な、なら、あれで温めれば――」
ルクレールは、まるで玉座に座る王のような豪奢な微笑を浮かべたまま、俺を見下ろした。
「お、俺に、何か……した?」
「身体的ダメージがないか確認をした」
「きっ、キスしてただろう!」
「その程度で我慢していた俺を褒めてくれ。指一本、挿れていないのに」
どこにだよ!? という質問は口に出来なかった。それに、言うなら「指一本、触れていない」だろう!
耳元に温い息が触れる。耳朶を甘噛みされてびくりと肩が跳ね、覚えず自分のものとは思えないほどいやらしい声が出た。
「煽るな、セレス」
「あゃぉってねえわっ!」
ぷっと吹き出すルクレールの肩が揺れ、笑いが漏れた。微かな水気を含んだ赤髪が俺の頬にかかる。
「……ったく。必死で泳いで助けたってのに、声が可愛すぎて集中できねぇ」
「集中しなくていい! なにもすんな!」
「ちなみに言うと――」と彼は囁く。「今から色々とするつもりだ……」
たっ……、助けて、デュラン副官!
こいつ、おっ始めるつもりです!
再び、口を塞がれた。
深く、容赦のないキス。舌が絡み、喉の奥まで押し込まれる。駄目だ、飲まれる。抵抗する隙さえ、甘さで溶かされていく。
こいつ……上手すぎる。
下で、硬いものが容赦なく俺の太ももに当たっていた。
凶器。
誰か――本当に誰か、これをもぎ取ってくれ。
ルクレールの唇がいったん離れ、今度は首筋へ移動する。熱い吐息と舌先が皮膚をなぞり、俺の呼吸は勝手に荒くなった。
感情が持って行かれてしまう前に、聞きたいこと、言いたいことがあったはずなんだ……。
「ル、ルクレール……」
「……なんだ」
「なんで、ソルヴォラックスと……一緒に、穴に……? あんた、だったら、回避……できただろう」
また唇が落ちて来る。角度を変えて何度か軽く触れ、離れた。
こいつ、キス好きだな。腫れるわ、唇っ!
額と額が重なり、視線と互いの息が絡み合う。
「剣が……抜けなかったんだ」
「そんな……ことで……!」
「お前の剣だ……。降下途中で回収した。そこにある」
顔を上げ、火球の横を顎で指す。そこには、確かに俺が反転魔法をかけたエクラ・ダシエの剣が置かれていた。
「大事にするって言っただろう」
胸が詰まり、声にならない。流されそうになる――と、そのとき。
剣の傍に、畳まれた衣類が見えた。
「ルクレール……なにあれ?」
「ああ、俺たちの服だ」
「……乾いてる? みたいなんだけど」
濡れていたら、火の前に並べたりしないか?
「ああ。当然だ。俺は火属性だから」
「なんで服を着せないんだよ!!」
まだ完全には力の入りきらない腕でなんとか頑張って押し返し、右手を振り抜いた。目の前の男の頬に、ぴたんっと情けない音が響く。
良かった――急性魔力虚脱から、ほんの少しだけど回復しているようだ。一発、しばけた。
ルクレールは上体を起こすと、叩かれた頬を摩りながらくつくつと笑い出し、ついには腹を抱えて笑い転げた。
俺も起き上がる。
「大体……! おとりになるってなんだよ! 俺のこと、守られるだけの存在じゃないって言っただろ! なにが、肩を並べるにふさわしい相手だ! ……くそっ……」声が震え、言葉が詰まる。視界が滲んだ。「あんたが……、い……生きててくれて……、良かった……」
涙が、あふれた。
「セレス……」
頬を両手で包まれ、目を覗き込まれる。
「……うん」
「穴に落ちて、お前の声が聞こえたとき、夢じゃないかと思った」
「そうかよ……」
俺は鼻をすすり、溢れる涙をどうにか止めようとした。
短い沈黙のあと、彼の声が低く震える。
「――好きだ、セレス。全てを捧げるから、俺のものになってくれ」
「……イチモツ元気にしたまま言う台詞かよ」
「ああ……みっともないな」
ルクレールは笑った。
俺は目を閉じて彼の名を囁くと、深く息を吸って肺の底まで満たし、静かにそれを吐き切ってから目を開けた。
「俺は、アルチュールが好きだ」
火球がぱちりと弾けた。
「……そうか……」
その声は掠れていて、けれど拒絶も怒りもなかった。
「理由は言えないけれど……ずっと前から、彼のことを知っていたんだ」
ルクレールの吐息が震えた。
「……殿下に目をえぐられてもいいから……セレス、今……魔眼を解放して、お前をここで抱きたい……お前に、好きだと、愛していると言われたい……」
その言葉に、俺は思わず彼を見た。
眼帯の下に潜むものを思い、背筋がぞくりと震える。
魔眼の魔力にさらされた者の瞳には、必ず痕跡が刻まれる。それは始祖の血を受け継ぐ王家の男だけが見抜くことのできる隠された印。
もし私欲のために勝手に解放し、後でその痕跡を発見され見咎められれば……、眼をくり抜かれる。それが科せられる刑罰。
この男は、本気で言っている。
彼の表情は獰猛で、それでいて痛みを孕んでいた。
赤い火球の揺らめきの中、俺の口から唐突に言葉が零れる。
「……モン・クール……、モン・ルーク」
ルクレールの身体がびくりと強張った。
「どうして……それを」
息を呑む声が耳に刺さる。
やはり――。
ルクレールも、かつて同じ呼び方をされていたのだ。
「母が……亡くなった母が、俺を呼んでいた言葉だ。二人きりのときだけ……。なぜ、セレスが知っている」
眼帯の下から突き刺すような視線。
原作本編に出て来た塔に閉じ込められていた赤髪のルーク――唯一支えとなった母親から「モン・クール、モン・ルーク」と呼ばれ、「美しい瞳を持つあなたを誇りに思うわ」と言われていた魔眼の少年。
彼の姿と、この男の輪郭が重なる。
ルクレールの母親も、きっと同じ事を言っていた違いない。
「セレス……お前は、何者なんだ」
「……さあ。俺にもよく分からない。ただ――」言葉を探すように一度息を整え、彼をまっすぐに見つめ返した。「今は言えるのは、ルクレールのお母さんが「綺麗だ」と言った、その瞳を……俺のために失って欲しくないって思っているってことだけだ」
「セレス……」
彼は、何かを訴えるように唇を噛んだ。
「なあルクレール、眼帯を外してもいいか?」
「……駄目だ」
即座に拒む声。だが、その声音には恐れが滲んでいた。
多分、彼は――、
「オッド・アイなんだろ?」
ルクレールが片眼を大きく見開いた。
ほとんど世間では知られていないが、魔眼は、瞳の色が赤い。ルクレールの片眼は、藍色。そして、この世界でオッド・アイは魔物の目と呼ばれ、忌まれた存在だ。
「いいから……見せてくれ、ルクレール」
沈黙のあと、彼はゆっくりと手を伸ばし、眼帯を外した。
現れた深紅の瞳。
火の色とも血の色とも違う、透き通るような赤――。
「……綺麗だ」言葉が零れた。「ルビーみたいだ。……やっぱり、失って欲しくない」
その瞬間、強く抱き締められた。
骨が軋むほどの力で。
「セレス……愛してる。心から好きだ」
胸の奥が痛い。俺は、彼の背に腕を回しながらも、唇を震わせた。
「……ごめんな。ルーク……ごめん……」
謝罪の言葉は、抱擁の熱に溶けて消えていった。
༺ ༒ ༻
服を着直した俺たちは、しばらく岩棚に腰を下ろし、火球の明かりの下で救助を待ちながら他愛のない話をした。
パイパーがルクレールの命令を破り俺を遺跡に連れて行かなかったこと。
俺がまた規律を破ってこんなことをしでかしてしまったせいで、今度こそ停学は免れないだろうということ。
ルクレールがすでに奇石通信で、自分と俺の無事を伝書使アッシュに報告済みだということ――伝書使の網には城や学院、砦ごとに『閣下』『陛下』『猊下』と呼ばれる上位のコルネイユが三羽置かれていて、彼らが互いに通信を繋いでいる。いわば、昔の電話交換手のようなもの。
いずれのコルネイユも、簡単な魔法を操ることができ、通信の中継や保護の術を担っている。おそらく、アッシュからは騎士団のブノワ閣下へ、さらに各地へと連絡が流れているため、学院のゾンブル閣下をはじめ、今は地表にいる寮監含めた全員にはもう伝わっているはず。
ただ、アッシュの報告によれば、地下では正確な位置の特定までは難しいらしい。
それから、ルクレールの手首を飾るブレスレットには、使い魔である狼が封じられていて、彼が服を乾かしているあいだ、その狼が姿を現し俺の身体を温めてくれていたことも――。
「……礼を言いたい。呼び出してくれないか」
そう頼むと、ルクレールはふっと目を細め、ブレスレットに触れた。
「出でよ、イオンデーラ」淡い光が広がり、やがて一頭の狼が姿を現す。「デュランのガーロンよりは小さいが、速さならこいつは負けない」
毛並みは深い赤褐色で、火を思わせる色合い――鋭い金の瞳を持ちながら、その佇まいは不思議な温かさを宿していた。
「俺の使い魔、イオンデーラだ」
名を告げる声に応じて、狼は低く喉を鳴らし、俺のそばへ歩み寄る。
「ありがとう、イオンデーラ」
毛並みに触れると、ほんのりと体温が伝わり、胸の奥まで安堵が沁みわたった。
赤い狼はそのまま俺の前に腰を下ろすと、重々しい頭を膝の上へと預けてきた。金色の瞳を細め、撫でてくれとせがむように鼻先を押しつけてくる。その仕草に思わず口元が緩み、掌で毛並みを梳けば、狼は満ち足りたように喉を震わせた。
しばし無言で火球が弾ける音だけを聞いていると、
「……あの黒髪の子爵家次男には、気持ちは伝えたのか?」
ルクレールがぽつりと口を開いた。
唐突な問いに目を瞬かせる。
「いや……、全然。俺たちは、そういうんじゃない。友人だ」
「……あいつはお前にぞっこんだぞ。お前に触れようとした俺の手を、掴んで離さなかった」
「誰もかれもが、あんたみたいにすぐにひん剥いておっ始めるような男じゃないんですよ」
そう言いながら、俺の膝に頭を預けている狼の耳を撫でる。柔らかな毛並みの感触が指に絡み、イオンデーラは気持ちよさそうに目を細めた。
「なら――お前は、まだ誰のものにもなっていない」
「……そうなるね」
「でも、キスは初めてじゃないな」
「……なんでだよ」
「反応がこれっぽっちも初々しくない。品行方正な堅物のお坊ちゃんだと聞かされていたがな? 相手はリシャールか?」
転生前に、短期間だけど一緒に同人誌を作る彼女が居ました。童貞ですが、キスの経験はあります。
――とは言えない。言っても相手にはなんのことだか分からないだろう。
ていうか、なんで、男の名前が一番に出て来るんだよ。
「殿下じゃない」
「てっきり既にリシャールが手を出しているものだと思っていた……。そうしたら、ガーゴイル事件のとき、あんな黒髪の目つきの悪いのが出て来て、正直、驚いた」
「アルチュール、目つき悪いか?」
「俺には常に睨んで来る。でもまあ、殿下から横取りするのは多少は気が引けたが……、知り合いでもない相手からなら、なんの遠慮もいらない」
「なんだよ、それ」
ルクレールの赤い瞳が炎を映して揺れる。
「俺は諦めないってことだ」
言うが早いか、後頭部を押さえつけられ、唇を深く塞がれた。
やめろと言う気持ちを込めて目の前の男の胸板を両手で叩くが、鍛え抜かれた本物の騎士はびくともしない。それに俺は、急性魔力虚脱からまだ完全復活しているわけではなく、膝にはイオンデーラが居て動けない。重い。
しかし、ほんとこいつキスが上手いな……なんなんだよ、溶けそうだ……。
角度を変える度に、俺の口の端から甘い声が洩れる。
綾ちゃん……、兄ちゃんはどうやら快楽と言うものに流されやすい体質のようです――。
いや、そもそもヤリチンの経験値、半端ねぇ……。
と、半ば感心していると、ルクレールが俺の左手を取り、自分の股間へと押し当てた。
熱い。硬い。
はっきりとした存在感が掌に伝わり、背筋に戦慄が走った。
俺の口を塞いでいたルクレールの唇が離れる。息が触れるほどの近さで耳元に囁かれた。
「男相手に、こんなふうになるのは初めてだ。……寧ろ、今までで一番、興奮してる」
吐息混じりの言葉に心臓が跳ねる。次の瞬間、再び唇を奪われ、頭の芯まで痺れるような熱が流れ込んできた。
俺の口を塞いでいるルクレールの唇がにやりと歪むのが分かる。
ちくしょう、余裕かましてんじゃねえぞっ。
胸板を片手で押し返しながら心の中で毒づく。
……よし、もごう。これは、もげ、ということだな。
いいだろう、もいでやるっ。
必死に握り込んだその瞬間――、
「――お取込み中のところ、失礼」
涼しい声が頭上から降ってきた。
ルクレールがようやく唇を放す。
俺は彼の腕の中で、弾かれたように顔を上げた。そこに舞い降りてきたのは、巨大な風蛇ザイロン。その背に跨っていたのは、第二寮『レスポワール』の寮監ジャン・ピエール・カナードと、デュラン副官。
声の主はカナードだった。
デュランの胸鎧に埋め込まれた魔導灯が、淡い金色の光を放っている。その光がザイロンの首筋を掠め、鱗の一枚一枚を浮かび上がらせていた。
ザイロンを目にするのは、これで三度目になる。
あまりに静かに飛ぶのが不思議で、以前、わざわざ文献を探して調べた。
彼らは羽ばたくたびに、口からごく微細な音波を放っているそうだ。その音が周囲の空気を震わせ、羽ばたきの音や風切りを覆い隠す。音を音で包み、かき消す仕組み。
この世界の研究者たちはそれを「沈黙の息」と呼んでいる。けれど俺には、それが何を意味するのか分かっていた。
正に――音を以て音を隠す、『マスキング効果』。
そのせいで、すぐ頭上に降りてくるまで、接近にまったく気づけなかったのだ。
デュランが急ぎザイロンから飛び降りると、鋭い声を張り上げる。
「はっ、離れなさいヴァロア!」
そのまま俺の腕をぐいと引き寄せ、がっちりと捕獲された。急性魔力虚脱の後遺症のせいか、まだ足元はふらつき気味で、抗う余地もない。立ち上がった足元ではイオンデーラが、くーんと短く鳴き、心配そうに鼻先で俺の脛をつついた。
「セレス、大丈夫か!? あのケダモノは、おっ始めなかったか!? 合体は、合体はしなかったか!?」
……なんとも、答えようがない。
おっ始めました。合体寸前でなんとか回避しました。
そんなこと、俺の口から言えるわけがない。
しかし、無言は肯定に繋がる。
「合体は……、してません」
真っ赤になりながら、絞り出すように言うと、デュラン副官は心底ほっとしたように胸を撫でおろした。
全身の血が沸騰するのを感じた。
怒鳴り声を荒野にぶつけた俺は、手綱を力いっぱい引き絞る。
「パイパー、とまれ! とまってくれ!!」
だが、ヴァルカリオンは頑として止まらない。
騎士の命令に忠実であろうとするその瞳は、ただ前を向き、ひたすらに駆け続ける。
「頼む……頼むから、お願いだから、とまってくれ! パイパー!!」
懇願の声がかすれる。
そのとき、パイパーの脚がわずかに緩み、蹄の音が少しずつ弱まっていった。
やがて、砂煙を散らしながらも、その巨体はついに歩みを止める。
もしもパイパーがルクレールの専属の馬であれば、決して主の命令を破らず、このまま『ファリア・レマルドの環』まで走り続けていただろう。しかし、彼は元々ルクレールの馬ではなく、おそらく俺の本来の担当騎士に仕えているヴァルカリオン――。
パイパーが振り返る。
その大きな黒い眼差しには、確かに心配の色が宿っていた。
「……パイパー……」俺は息をつくと、パイパーの背から飛び降りて彼の顔を両手で包み込んだ。「ここからは俺ひとりで行く。お前は、遺跡へ向かってくれ」
パイパーの鬣を、掌でそっと撫でたあと、俺は身体強化魔法を二重にかけた。筋肉が幾分か張り詰め、血流が熱を帯びていく。
たとえば、俺が行って何ができるのか――問われたとしたら、答えは出せない。
既にあの凄腕の寮監三人とデュラン副官がルクレールのもとへ向かっている。砦のグリフォン隊も出ている。戦いは、俺が辿り着く前に終わっているかもしれない。俺など、足手まといにすらならないのかもしれない。
それでも。
俺のために身を挺しておとりになりやがったあのくそ野郎の眼帯騎士を、このまま放っておくことはできなかった。彼が命を懸けたその場に俺が居ないだなんて――そんな選択は、どうしてもできなかった。
たとえ間違った行動だと分かっていても。
俺は無意識に外套のフードの内側へ手を伸ばしていた。
組紐の結び目の固さを確かめるように親指で撫で、目を閉じて一瞬だけ呼吸を整える。
──ルクレールの無事を確認したら、必ず、アルチュールの居る場所に帰る。
大地を蹴り、荒野をひた走る。
喉は焼けつくように乾き、呼吸は胸の奥をかきむしるように荒くなる。それでも足は止められなかった。
そのとき――背後から馬の嘶きと、蹄が大地を打ち鳴らす音が迫ってきた。
振り向けば、そこにはパイパーの姿があった。
「お前……なんで来るんだよ……」
足を止めると、パイパーはたちまち追いつき、俺の横に並ぶ。首を振り、黒い瞳でこちらを覗き込んでくる。
まるで「置いていくな」と言っているみたいだ。
「分かった。お前は、人間の命令をわりと無視する馬なんだな……」
呆れ半分に口にすれば、パイパーはフンと鼻息を鳴らした。
「急ぐんだ、頼む」
苦笑しながら鞍に飛び乗る。瞬間、全身が浮くような加速に包まれ、風が視界をさらっていった。
その背に揺られながら、胸の奥でひとつの名前が何度も熱を帯びる。
――ルクレール……。
くっそ野郎、後でしばく!
あの背中を追って砂塵を蹴立てて戻ると、視界の先で稲妻のように閃く槍と剣が交錯していた。
俺はパイパーの背から飛び降り、手綱を握ったまま大地に足を踏みしめる。少し離れた荒地には、騎士団長や寮監たちのヴァルカリオンが戦いから距離をとって待機しており、不安げにひづめで地を掻いているのが見えた。
戦況は――優勢。だが綱渡りだ。
地表に出たソルヴォラックスは、長い円筒状の身をくねらせ、地中に戻ろうとするたびにうっすらと見える蜘蛛の糸のようなものに引き戻される。ボンシャンが巨大な引力結界を張り、土中に潜らせまいと圧を掛けているようだ。巨体と魔力がぶつかり合い、空気が低く唸る。
上空では砦のグリフォン隊が輪を描き、下降と上昇を繰り返しながら槍の雨を降らしていた。金と白の羽がきらめき、鋭い穂先が節目を正確に穿つ。騎士団長は魔術式ボウガンを肩口に据え、装填と同時に魔力陣が閃く。副団長は鎖付きアックスを唸らせ、巨体の節目に絡みつかせると、全身の力で引き寄せながら振り下ろす。
カナードとデュランは機を見て障壁を展開し、ゆっくりと宙から落ちて来るソルヴォラックスの牙で縁取られた口腔を面で受け、弾き返した。
「今だ、デュボア!」
カナードの声に応じ、デュボアが地を裂く踏み込みで間合いを詰める。対角からルクレールが走り、ふたりの刃が十字を描いた。ルクレールの剣は、狙い違わず柔肉の継ぎ目を穿ち、深々と突き刺さる。
ほぼ、決まった。
そう思った瞬間だった。
地鳴りが一段深く響き渡り、突然、地面が沈み、世界が大音響とともに落ちた。
荒野の皮膚が破れ、深く巨大な穴がぽっかりと口を開ける。
内部に積層した石壁――円環状の石柱、崩れた梁――そこに現れたのは、地下何層にもつながる古代地下遺跡だった。
ソルヴォラックスが、引力結界ごとずるりと裂け目へ呑まれていく。
「退けーー!」
ボンシャンの叫びと同時、騎士団長と副団長が、ほぼ同時に重力に引かれ、崩れ落ちる。しかし、団長は真上にいたグリフォン隊の鉤爪に攫い上げられ難を逃れた。
「ザイロン――来い!」
カナードの声が鋭く走る。
ほどけたアスコットタイは瞬時に長大な風蛇に変わり、音もなく宙を駆けた。そして、副団長の身体をするりと絡め取ると、そのまま軽やかに地上へと送り届ける。
デュボアは踏み止まれず、崩れた石の縁に片手でぶら下がる。駆け寄ったデュランがその腕を掴み、一気に裂け目から引き上た。
刹那、ルクレールの刃は魔蟲の肉に深々と食い込み、抜けぬまま引きずり込まれていく。
足場が崩れ、抗う間もなく彼の身体ごと地の底へと呑み込まれた。
「ルクレール!!」
「ヴァロア!」
デュランたちの絶叫が響く。
その声を背に、思考よりも早く身体が走っていた。
喉を裂くように声が迸る。
「ルクレーーール!」
「セレス!? 戻れ、何をしている!」
「コルベール! なぜここに――!」
寮監たちやデュランの怒声が飛ぶ。しかし、俺は止まらなかった。全身に巡らせた身体強化魔法《フォルティス》が、脚を鋭敏に、軽やかに走らせる。
「戻りなさい、コルベール!」
ボンシャンの絶叫とともに、引力結界を編んだ糸が宙を奔り、俺の身体を絡め取ろうと迫った。反射的に魔力を集中させ、周囲に障壁を展開する。ぱん、と鋭い音を立てて糸がはじけ切れ、結界の外へと散った。
その瞬間、ボンシャンの瞳が驚愕に見開かれるのが見えた。だが、もう遅い。
俺は裂け目の縁を蹴り、ためらいなく闇へと身を投げた。
風圧が障壁を叩き、耳を裂く轟音とともに、視界は岩肌と石片の流れる影に塗りつぶされていく。
昼の光はなお開口から射し込んでいたが、深みに進むほど闇が押し寄せ、輪郭を飲み込んでいった。
――元々、あの男は俺のためにここに残った。考えろ。考えるんだ! 絶対に、生かす!
掌を下に押し出し、水を呼ぶ。
「アラペリス、オゥ……!」
ゆっくりと空間に水が集まり、直後、滝のような流水があふれ落ちた。轟音を立てて奔流が走り、見えない穴の底を一気に覆い尽くすように広がっていく。この穴を、出来る限り水で満たす。だが、ただの水じゃだめだ――より浮力を。
遺跡の石には貝殻の化石が残っている。ここは太古の昔、海だった。そのことは、今回の旅程で寮監からも説明を受けていた。だが、それはセレスタン本体はもうずっと前に、本で読んで知っていた知識。
脳裏をかすめる――ならば、塩だ。
イメージしろ。この空間から塩を抽出する。
「アラペリス、セェレ!」
砂と粘土に散った微量元素が、白い霧のように水の中へと溶け込んでいく。魔力を全開放しているせいか、脳の奥が焼けるように痛む。
濃い塩水が穴を満たし、渦を巻きながら底へと広がっていく。
その水面の上に、ゆっくりと落下するほのかな灯りが見えた。ルクレールだ。火の属性魔法を操り、手から柔らかな光を放っている。
落下したソルヴォラックスの巨体が、塩水の中へどぶんと沈み――暴れた。
粘膜が泡立ち、白くひび割れる。体表の浸透圧が狂い、節目の膜がずるりと剥ける。巨体は痙攣し、口腔の牙がばらばらと砕け落ちた。
間に合った……。
安堵の一呼吸が、命取りだった。
視界が白く瞬き、音が遠のく。
これが、急性魔力虚脱か――意識が遠のく。
体が崩れ落ちる寸前、空中で硬い胸に強く抱き留められた。
「……よくやった」
耳のすぐ側で囁く低い声。
ルクレールだ。彼は、魔力で自分の降下速度を押さえていたのだろう。俺の体を胸に抱え、自分の背中から水へ入る角度へと捻る。
冷たい波が肩まで来て、肺がきしむ。塩分を含む水は程よい浮力を与えてくれる。遠く、穴の天井から差す光が揺れた。地の底には、どこかに通じる穴でもあるのか――水に流れがある。
視界の端に、ソルヴォラックスが最後の痙攣を見せて静止するのが映った。
ルクレール……、唇で名を紡いだところで四肢の感覚が砂に沈む巨石のように重く落ち、静寂が俺を呑み込んだ。
༺ ༒ ༻
どれくらい経っただろう。
――呼ばれている。
誰かが、俺の名を呼んでいる。
額に触れる掌はあたたかく、髪に落ちる吐息がくすぐったい。頬に、唇に、柔らかなものが触れて離れた。二度、三度。水の匂いと、わずかな鉄の匂い。
人肌は、ひどく心地いい。
誰かの舌が、口の中をまさぐっている。
瞼を押し上げると、すぐ目の前に眼帯の男の顔――視界が一瞬で澄み、意識が浮上した。
広い、平たい岩の上。
体を起こそうとして――動かない。急性魔力虚脱のせいだけじゃない。物理的に押さえつけられている。
……こ、これは。
俺の上に、左手首にブレスレットと首に奇石のペンダントを付けただけの全裸の男?
そして、俺も――同じく首にストーン・ホルダーのペンダントだけを付けて全裸。
反射的に相手の逞しい肩を叩くと、唇から温度が離れた。
「目が覚めたか」
低い声。至近距離。ルクレールだ。
「ここ……どこだ」
「穴の真下からわりと流された。……岩壁が削れていて、崩れた石柱とか石段の名残が見える。水底には岩棚がいくつも重なっいて、まるで古い神殿の土台みたいだ。おかげで、それを伝って水から上がれた。上は闇に沈んでいるが、横へと細い空洞が伸びている」
「で、なんで俺、全裸なの?」
「濡れていたから」
「で、なんであんたも全裸なの?」
「濡れていたから」
「……なんで俺の上に居るの」
「温めていた」
周囲には、火属性の魔法で出したらしい火球が幾つも揺れている。
「な、なら、あれで温めれば――」
ルクレールは、まるで玉座に座る王のような豪奢な微笑を浮かべたまま、俺を見下ろした。
「お、俺に、何か……した?」
「身体的ダメージがないか確認をした」
「きっ、キスしてただろう!」
「その程度で我慢していた俺を褒めてくれ。指一本、挿れていないのに」
どこにだよ!? という質問は口に出来なかった。それに、言うなら「指一本、触れていない」だろう!
耳元に温い息が触れる。耳朶を甘噛みされてびくりと肩が跳ね、覚えず自分のものとは思えないほどいやらしい声が出た。
「煽るな、セレス」
「あゃぉってねえわっ!」
ぷっと吹き出すルクレールの肩が揺れ、笑いが漏れた。微かな水気を含んだ赤髪が俺の頬にかかる。
「……ったく。必死で泳いで助けたってのに、声が可愛すぎて集中できねぇ」
「集中しなくていい! なにもすんな!」
「ちなみに言うと――」と彼は囁く。「今から色々とするつもりだ……」
たっ……、助けて、デュラン副官!
こいつ、おっ始めるつもりです!
再び、口を塞がれた。
深く、容赦のないキス。舌が絡み、喉の奥まで押し込まれる。駄目だ、飲まれる。抵抗する隙さえ、甘さで溶かされていく。
こいつ……上手すぎる。
下で、硬いものが容赦なく俺の太ももに当たっていた。
凶器。
誰か――本当に誰か、これをもぎ取ってくれ。
ルクレールの唇がいったん離れ、今度は首筋へ移動する。熱い吐息と舌先が皮膚をなぞり、俺の呼吸は勝手に荒くなった。
感情が持って行かれてしまう前に、聞きたいこと、言いたいことがあったはずなんだ……。
「ル、ルクレール……」
「……なんだ」
「なんで、ソルヴォラックスと……一緒に、穴に……? あんた、だったら、回避……できただろう」
また唇が落ちて来る。角度を変えて何度か軽く触れ、離れた。
こいつ、キス好きだな。腫れるわ、唇っ!
額と額が重なり、視線と互いの息が絡み合う。
「剣が……抜けなかったんだ」
「そんな……ことで……!」
「お前の剣だ……。降下途中で回収した。そこにある」
顔を上げ、火球の横を顎で指す。そこには、確かに俺が反転魔法をかけたエクラ・ダシエの剣が置かれていた。
「大事にするって言っただろう」
胸が詰まり、声にならない。流されそうになる――と、そのとき。
剣の傍に、畳まれた衣類が見えた。
「ルクレール……なにあれ?」
「ああ、俺たちの服だ」
「……乾いてる? みたいなんだけど」
濡れていたら、火の前に並べたりしないか?
「ああ。当然だ。俺は火属性だから」
「なんで服を着せないんだよ!!」
まだ完全には力の入りきらない腕でなんとか頑張って押し返し、右手を振り抜いた。目の前の男の頬に、ぴたんっと情けない音が響く。
良かった――急性魔力虚脱から、ほんの少しだけど回復しているようだ。一発、しばけた。
ルクレールは上体を起こすと、叩かれた頬を摩りながらくつくつと笑い出し、ついには腹を抱えて笑い転げた。
俺も起き上がる。
「大体……! おとりになるってなんだよ! 俺のこと、守られるだけの存在じゃないって言っただろ! なにが、肩を並べるにふさわしい相手だ! ……くそっ……」声が震え、言葉が詰まる。視界が滲んだ。「あんたが……、い……生きててくれて……、良かった……」
涙が、あふれた。
「セレス……」
頬を両手で包まれ、目を覗き込まれる。
「……うん」
「穴に落ちて、お前の声が聞こえたとき、夢じゃないかと思った」
「そうかよ……」
俺は鼻をすすり、溢れる涙をどうにか止めようとした。
短い沈黙のあと、彼の声が低く震える。
「――好きだ、セレス。全てを捧げるから、俺のものになってくれ」
「……イチモツ元気にしたまま言う台詞かよ」
「ああ……みっともないな」
ルクレールは笑った。
俺は目を閉じて彼の名を囁くと、深く息を吸って肺の底まで満たし、静かにそれを吐き切ってから目を開けた。
「俺は、アルチュールが好きだ」
火球がぱちりと弾けた。
「……そうか……」
その声は掠れていて、けれど拒絶も怒りもなかった。
「理由は言えないけれど……ずっと前から、彼のことを知っていたんだ」
ルクレールの吐息が震えた。
「……殿下に目をえぐられてもいいから……セレス、今……魔眼を解放して、お前をここで抱きたい……お前に、好きだと、愛していると言われたい……」
その言葉に、俺は思わず彼を見た。
眼帯の下に潜むものを思い、背筋がぞくりと震える。
魔眼の魔力にさらされた者の瞳には、必ず痕跡が刻まれる。それは始祖の血を受け継ぐ王家の男だけが見抜くことのできる隠された印。
もし私欲のために勝手に解放し、後でその痕跡を発見され見咎められれば……、眼をくり抜かれる。それが科せられる刑罰。
この男は、本気で言っている。
彼の表情は獰猛で、それでいて痛みを孕んでいた。
赤い火球の揺らめきの中、俺の口から唐突に言葉が零れる。
「……モン・クール……、モン・ルーク」
ルクレールの身体がびくりと強張った。
「どうして……それを」
息を呑む声が耳に刺さる。
やはり――。
ルクレールも、かつて同じ呼び方をされていたのだ。
「母が……亡くなった母が、俺を呼んでいた言葉だ。二人きりのときだけ……。なぜ、セレスが知っている」
眼帯の下から突き刺すような視線。
原作本編に出て来た塔に閉じ込められていた赤髪のルーク――唯一支えとなった母親から「モン・クール、モン・ルーク」と呼ばれ、「美しい瞳を持つあなたを誇りに思うわ」と言われていた魔眼の少年。
彼の姿と、この男の輪郭が重なる。
ルクレールの母親も、きっと同じ事を言っていた違いない。
「セレス……お前は、何者なんだ」
「……さあ。俺にもよく分からない。ただ――」言葉を探すように一度息を整え、彼をまっすぐに見つめ返した。「今は言えるのは、ルクレールのお母さんが「綺麗だ」と言った、その瞳を……俺のために失って欲しくないって思っているってことだけだ」
「セレス……」
彼は、何かを訴えるように唇を噛んだ。
「なあルクレール、眼帯を外してもいいか?」
「……駄目だ」
即座に拒む声。だが、その声音には恐れが滲んでいた。
多分、彼は――、
「オッド・アイなんだろ?」
ルクレールが片眼を大きく見開いた。
ほとんど世間では知られていないが、魔眼は、瞳の色が赤い。ルクレールの片眼は、藍色。そして、この世界でオッド・アイは魔物の目と呼ばれ、忌まれた存在だ。
「いいから……見せてくれ、ルクレール」
沈黙のあと、彼はゆっくりと手を伸ばし、眼帯を外した。
現れた深紅の瞳。
火の色とも血の色とも違う、透き通るような赤――。
「……綺麗だ」言葉が零れた。「ルビーみたいだ。……やっぱり、失って欲しくない」
その瞬間、強く抱き締められた。
骨が軋むほどの力で。
「セレス……愛してる。心から好きだ」
胸の奥が痛い。俺は、彼の背に腕を回しながらも、唇を震わせた。
「……ごめんな。ルーク……ごめん……」
謝罪の言葉は、抱擁の熱に溶けて消えていった。
༺ ༒ ༻
服を着直した俺たちは、しばらく岩棚に腰を下ろし、火球の明かりの下で救助を待ちながら他愛のない話をした。
パイパーがルクレールの命令を破り俺を遺跡に連れて行かなかったこと。
俺がまた規律を破ってこんなことをしでかしてしまったせいで、今度こそ停学は免れないだろうということ。
ルクレールがすでに奇石通信で、自分と俺の無事を伝書使アッシュに報告済みだということ――伝書使の網には城や学院、砦ごとに『閣下』『陛下』『猊下』と呼ばれる上位のコルネイユが三羽置かれていて、彼らが互いに通信を繋いでいる。いわば、昔の電話交換手のようなもの。
いずれのコルネイユも、簡単な魔法を操ることができ、通信の中継や保護の術を担っている。おそらく、アッシュからは騎士団のブノワ閣下へ、さらに各地へと連絡が流れているため、学院のゾンブル閣下をはじめ、今は地表にいる寮監含めた全員にはもう伝わっているはず。
ただ、アッシュの報告によれば、地下では正確な位置の特定までは難しいらしい。
それから、ルクレールの手首を飾るブレスレットには、使い魔である狼が封じられていて、彼が服を乾かしているあいだ、その狼が姿を現し俺の身体を温めてくれていたことも――。
「……礼を言いたい。呼び出してくれないか」
そう頼むと、ルクレールはふっと目を細め、ブレスレットに触れた。
「出でよ、イオンデーラ」淡い光が広がり、やがて一頭の狼が姿を現す。「デュランのガーロンよりは小さいが、速さならこいつは負けない」
毛並みは深い赤褐色で、火を思わせる色合い――鋭い金の瞳を持ちながら、その佇まいは不思議な温かさを宿していた。
「俺の使い魔、イオンデーラだ」
名を告げる声に応じて、狼は低く喉を鳴らし、俺のそばへ歩み寄る。
「ありがとう、イオンデーラ」
毛並みに触れると、ほんのりと体温が伝わり、胸の奥まで安堵が沁みわたった。
赤い狼はそのまま俺の前に腰を下ろすと、重々しい頭を膝の上へと預けてきた。金色の瞳を細め、撫でてくれとせがむように鼻先を押しつけてくる。その仕草に思わず口元が緩み、掌で毛並みを梳けば、狼は満ち足りたように喉を震わせた。
しばし無言で火球が弾ける音だけを聞いていると、
「……あの黒髪の子爵家次男には、気持ちは伝えたのか?」
ルクレールがぽつりと口を開いた。
唐突な問いに目を瞬かせる。
「いや……、全然。俺たちは、そういうんじゃない。友人だ」
「……あいつはお前にぞっこんだぞ。お前に触れようとした俺の手を、掴んで離さなかった」
「誰もかれもが、あんたみたいにすぐにひん剥いておっ始めるような男じゃないんですよ」
そう言いながら、俺の膝に頭を預けている狼の耳を撫でる。柔らかな毛並みの感触が指に絡み、イオンデーラは気持ちよさそうに目を細めた。
「なら――お前は、まだ誰のものにもなっていない」
「……そうなるね」
「でも、キスは初めてじゃないな」
「……なんでだよ」
「反応がこれっぽっちも初々しくない。品行方正な堅物のお坊ちゃんだと聞かされていたがな? 相手はリシャールか?」
転生前に、短期間だけど一緒に同人誌を作る彼女が居ました。童貞ですが、キスの経験はあります。
――とは言えない。言っても相手にはなんのことだか分からないだろう。
ていうか、なんで、男の名前が一番に出て来るんだよ。
「殿下じゃない」
「てっきり既にリシャールが手を出しているものだと思っていた……。そうしたら、ガーゴイル事件のとき、あんな黒髪の目つきの悪いのが出て来て、正直、驚いた」
「アルチュール、目つき悪いか?」
「俺には常に睨んで来る。でもまあ、殿下から横取りするのは多少は気が引けたが……、知り合いでもない相手からなら、なんの遠慮もいらない」
「なんだよ、それ」
ルクレールの赤い瞳が炎を映して揺れる。
「俺は諦めないってことだ」
言うが早いか、後頭部を押さえつけられ、唇を深く塞がれた。
やめろと言う気持ちを込めて目の前の男の胸板を両手で叩くが、鍛え抜かれた本物の騎士はびくともしない。それに俺は、急性魔力虚脱からまだ完全復活しているわけではなく、膝にはイオンデーラが居て動けない。重い。
しかし、ほんとこいつキスが上手いな……なんなんだよ、溶けそうだ……。
角度を変える度に、俺の口の端から甘い声が洩れる。
綾ちゃん……、兄ちゃんはどうやら快楽と言うものに流されやすい体質のようです――。
いや、そもそもヤリチンの経験値、半端ねぇ……。
と、半ば感心していると、ルクレールが俺の左手を取り、自分の股間へと押し当てた。
熱い。硬い。
はっきりとした存在感が掌に伝わり、背筋に戦慄が走った。
俺の口を塞いでいたルクレールの唇が離れる。息が触れるほどの近さで耳元に囁かれた。
「男相手に、こんなふうになるのは初めてだ。……寧ろ、今までで一番、興奮してる」
吐息混じりの言葉に心臓が跳ねる。次の瞬間、再び唇を奪われ、頭の芯まで痺れるような熱が流れ込んできた。
俺の口を塞いでいるルクレールの唇がにやりと歪むのが分かる。
ちくしょう、余裕かましてんじゃねえぞっ。
胸板を片手で押し返しながら心の中で毒づく。
……よし、もごう。これは、もげ、ということだな。
いいだろう、もいでやるっ。
必死に握り込んだその瞬間――、
「――お取込み中のところ、失礼」
涼しい声が頭上から降ってきた。
ルクレールがようやく唇を放す。
俺は彼の腕の中で、弾かれたように顔を上げた。そこに舞い降りてきたのは、巨大な風蛇ザイロン。その背に跨っていたのは、第二寮『レスポワール』の寮監ジャン・ピエール・カナードと、デュラン副官。
声の主はカナードだった。
デュランの胸鎧に埋め込まれた魔導灯が、淡い金色の光を放っている。その光がザイロンの首筋を掠め、鱗の一枚一枚を浮かび上がらせていた。
ザイロンを目にするのは、これで三度目になる。
あまりに静かに飛ぶのが不思議で、以前、わざわざ文献を探して調べた。
彼らは羽ばたくたびに、口からごく微細な音波を放っているそうだ。その音が周囲の空気を震わせ、羽ばたきの音や風切りを覆い隠す。音を音で包み、かき消す仕組み。
この世界の研究者たちはそれを「沈黙の息」と呼んでいる。けれど俺には、それが何を意味するのか分かっていた。
正に――音を以て音を隠す、『マスキング効果』。
そのせいで、すぐ頭上に降りてくるまで、接近にまったく気づけなかったのだ。
デュランが急ぎザイロンから飛び降りると、鋭い声を張り上げる。
「はっ、離れなさいヴァロア!」
そのまま俺の腕をぐいと引き寄せ、がっちりと捕獲された。急性魔力虚脱の後遺症のせいか、まだ足元はふらつき気味で、抗う余地もない。立ち上がった足元ではイオンデーラが、くーんと短く鳴き、心配そうに鼻先で俺の脛をつついた。
「セレス、大丈夫か!? あのケダモノは、おっ始めなかったか!? 合体は、合体はしなかったか!?」
……なんとも、答えようがない。
おっ始めました。合体寸前でなんとか回避しました。
そんなこと、俺の口から言えるわけがない。
しかし、無言は肯定に繋がる。
「合体は……、してません」
真っ赤になりながら、絞り出すように言うと、デュラン副官は心底ほっとしたように胸を撫でおろした。
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