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06 シスター・マリエッタ、淫魔ファウヌスのアイスになる。
月が真上に差し掛かるころ。
マリエッタの凌辱はまだ続いていた。
「ん、ん、んぅ!」
触手による胸への愛撫は激しさを増し、やさしく触れてくるもの、強くつねってくるもの、平たい形状で舐めるような動きをするものと、それぞれ動いてマリエッタの胸に甘美で卑猥な感覚を与え続ける。
嬲られて勃起した乳首を、繊毛のようなもので覆われた触手がていねいにくすぐってくる。ぞわぞわとした感覚が腰から這い上がってきて気持ち悪い。それでも勃起に触手の先端がじゅるるるっと吸い付いてきて、その刺激に脳内で火花が散った。
「ーーーーーッ!」
いい加減この感覚にも慣れそうなものなのに、ずっと新鮮に感じるのは魔草の液のせいだろう。もう何度気をやったかわからない。それでも、体中の甘いうずきは消えなかった。
「んふ、ぅ」
口の触手も、最初より細いものに代わっていた。だが、複数本が侵入していて、それぞれ動いて口腔を性器のように犯す。舌を蹂躙され、上唇をやさしくなでられ、内頬に液をこすり付けられる。まるで捕食されているみたいだ。
どうせ食べられるなら、ファウヌスがよかったかもしれませんね。
かなり意識が朦朧となっている。
ファウヌスだったら、こんな乱暴には食べないし、キスだってこちらの様子をうかがいながらしてくれた。そもそも、嫌だったら止めるとも言ってくれていた。
ファウヌス。
自分がこんな目に遭ったと知ったら、どう思うだろう。
とても親切にしてくれた、へんな悪魔。
彼にしてみれば、食べようと思っていたアイスを誰かに盗られた程度のことかもしれない。それは残念なことだけれど、新しいのを買ってくれば良い。悪魔なのだから、そんな程度に決まっている。問題は自分だ。
どうして今、昨日会ったばかりの悪魔のことなんて考えているんだろう。
よくわからない。下腹が熱い。もっと強い刺激が欲しくて、腰が震えていた。このままだと気が狂いそう。
そんな気配を感じ取ったのか、触手が一本、膣穴に侵入してきた。細いそれは入口だけをかき回したが、それだけでも快楽がマリエッタの脳を焼く。
「んふうぁあああああ!」
ぐちゃ、にゅちゅ、ぐちゅ、と膣穴を犯す卑猥で粘着質な音が森の空に響く。乳首はコリコリとこねまわされ、頂きはこちょこちょとくすぐられている。肉芽はびちゃびちゃと下品な仕草で舐めまわされて、ずっと甘イキが続いていた。ぼたぼたとはしたなくこぼれる愛液を、マンドラゴラが嬉しそうに受け止めている。
ああ、気持ちいい、きもちいい、キモチイイ!
服は少しも乱れていないのに、その隙間から卑猥な触手が侵入し、這い回って、一見してただ囚われているだけに見えるのにその下では大変な凌辱が繰り返されている。自らの淫靡な光景を想像して、頭がおかしくなりそうだった。
マリエッタの意識は、もう肉欲に塗りつぶされる寸前だ。入口だけじゃなく、もっと奥に刺激がほしい。熱くて震える下腹に、もっと太いものを奥まで挿入してほしい。
純潔、ってなんだっけ。
──どうせあげるなら、ファウヌスがよかった。
「ふぁ、⋯⋯ぬ、す⋯⋯」
かの悪魔の名前を呼んだ瞬間。
ふと、両手両足の拘束がうしなわれた。宙に放り出された感覚がしたが、受け身も取れそうにない。
そんなマリエッタの体を、やさしく誰かが抱き留めてくれた。
「⋯⋯すまん。遅くなった」
耳に優しい声が届いて、なんとなく安心してしまう。そんな状況ではないことはわかっていたけれど、マリエッタは意識を手放してしまった。
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目を覚ましたのは、ファウヌスが取ってくれたホテルのベッドの上だった。
「⋯⋯気がついたか?」
傍に座っていたらしいファウヌスが、穏やかなまなざしを向けてくれた。なんだか酷く安心して、手を差し出す。
ファウヌスは驚いたように目を見張って、それから微笑みを浮かべて手をやさしく握ってくれた。
「⋯⋯油断しました」
「いや、俺もあんな大きなマンドラゴラははじめて見た。しかも、妙な動きをしていたな」
「わたしの体液を狙っていたみたいです。もしかすると、行方不明の方々も体液を摂取するために連れ去られたのかも⋯⋯」
「マリエッタの体液を……? ……もっと苦しませてから消滅させてやればよかったな……」
「ファウヌス?」
急に怖い顔をして、どうしたのだろう。
ファウヌスの顔を覗き込もうと上半身を持ち上げてみたが、体に力が入らない。まだ魔液の効果が残っているらしい。下腹が熱くてたまらなかった。慌てた様子でファウヌスが体をベッドに押し留める。
「まだ横になっていたほうがいい」
「⋯⋯はい。⋯⋯その」
「──辛いか?」
ファウヌスも気がついていたらしい。というか、あの巨大魔草から助けてくれたのが彼なら、自分がどういう状態で囚われていたのかわかっているはずだ。
おずおずとうなずくと、悪魔は深い溜息を吐き出した。それに少し傷ついた自分を感じる。
「その、貴方が嫌なら別に⋯⋯」
「いや、違う。俺の体液以外でお前がこうなったと思うと、腹立たしくて」
「そうですね。楽しみにしていたアイスを誰かに横取りされたら、腹が立ちますよね」
「なにかこう、ちょっと、だいぶ違うが⋯⋯まあ、いい」
ファウヌスはあいまいなことを言って、こちらの頬に口付けてきた。
「ん。純潔は守り抜いたんだな」
「⋯⋯なんとか、といったところですが」
しかも、あのマンドラゴラは多分こちらをいたぶって愉しんでいて、メインディッシュを後回しにしただけだ。マリエッタが守ったわけではなかった。
それでもファウヌスにとっては十分なのか、太く長い腕でこちらをぎゅっと抱きしめてくる。あの状況の直後だからか、酷く安心できた。
「⋯⋯悪魔がわたしの体液をおいしいと感じるのは、やはりわたしが乙女だからですか?」
「ん? そうだな。⋯⋯だが、この味はそれだけじゃないな。乙女ならこれまでも味わったことがある。彼女たちも美味だったが、マリエッタは味わったことがないほど極上の甘露の味がする」
「⋯⋯そうですか」
別に味が変わろうが変わらなかろうが、マリエッタはシスターなので、可能な限り純潔は守るつもりだ。だが、なんとなく守るべき理由がもうひとつできた気がする。
別にこの悪魔のためとかじゃ全然ありませんが。ありませんから!
マリエッタは心の中でそう主張して、ファウヌスを抱きしめ返す。
そうしてもいいかな、と思ったのだ。男は驚いたように肩を震わせて、こちらをじっと見つめてくる。
それから、ゆっくり唇を合わせた。
先程触手たちに犯された口内は、今、ファウヌスの舌でやさしくなでられていた。ファウヌスの唾液のせいで、体のうずきはひどくなる。けれど、森での凌辱とは違って、なんだか甘い気分になった。
自分からもファウヌスの舌を求めると、男が笑った気配がする。
「俺の魔力で上書きしないとな。よくわからん魔草の魔力でマリエッタがそうなってると思うと、めちゃくちゃに腹が立つ」
「? なんでですか」
「さあな」
やっぱりアイスの横取りは嫌なのだ。誰だってそうだ。でも、ファウヌスは間一髪横取りを阻止したわけだから、安心してほしい。
安心してほしくて自分から唇を吸う。ファウヌスは一瞬目の色を変えたが、大きく深呼吸をして、そっとこちらのワンピースに手をかけた。背中のボタンとジッパーをおろして、皺にならないようにハンガーにまでかけてくれた。
「⋯⋯服、破られないで良かったです。買ったばかりでしたからね」
「⋯⋯服なんていくらでも買ってやる」
「そこまで甘えられませんよ」
そう言ったら、なぜか男は不機嫌そうに顔を歪めた。なぜ?
首を傾げていたら、その首に顔を埋めて口付けてくる。もうそこに傷はないのに、何度も何度も押し付けてきて、少しくすぐったい。そのうち、胸の頂に触れられる。たったそれだけで全身が魚のように跳ねた。
「ひゃん!」
「⋯⋯かなり魔液に侵されてるな。辛いだろ」
「そんな、ぁ!」
いたわるように乳頭を指の腹でなでられて、先程全身を蝕んでいたひどい衝動が蘇ってくる。どろりと下腹から愛液がこぼれるのを感じた。
「すごい匂いだ」
「⋯⋯へんな言い方、しないでください⋯⋯」
さすがに羞恥を感じて顔を赤らめると、ファウヌスはもう機嫌を直したらしく、嬉しそうに唇を重ねてきた。
ファウヌスはマリエッタの唾液が甘露のようだと言うが、マリエッタにもファウヌスの唾液は甘く感じられた。アイスより、甘いかも。
「ほか、どこに触れられたんだ? 全部触り直してやる」
「ん、下⋯⋯」
マリエッタが悪魔の熱にうかされるように言うと、男はわかった、とうなずいてマリエッタの細い脚を持ち上げた。
ためらいもなく肉芽を舐め上げられて、その艶めかしい感触にぞわりと肌が粟立つ。
「ひゃん!」
「ん、嫌か?」
「い、嫌じゃ、ないですよ」
触手より、全然嫌じゃない。自分の下腹に顔を埋めているファウヌスの赤い瞳がこちらをやさしく見つめていた。
だから、全然嫌じゃない。
ファウヌスは一度笑みを見せて、それからぴちゃぴちゃと音を立てて肉豆を舌でなではじめた。ずいぶんていねいに、肉襞も、蜜壺の周りも、慎重に舌先で辿っていく。
「あ、はぁ、ん⋯⋯」
熱のこもった体に、男の刺激は着火剤のように感じられた。全身が熱くてたまらなくなる。
「もっと⋯⋯ぉ」
「ん、どこ、触られた?」
「なか⋯⋯」
短く答えたら、悪魔は一瞬眉をひそめて、
「ああ、入口か。この辺りか?」
そう言って、舌を膣中に挿入した。
「ひゃう!」
男の肉厚の舌が内側をかき回していく感覚。ぐちゅぐちゅと自分の愛液と男の唾液が絡むのが聞こえて、恥ずかしい。でも、すごく気持ちいい。
「あー、あー!」
「ん、今のお前に俺の唾液はキツイか?」
ファウヌスは、ごめんな、と言って、舌の代わりに指を一本だけ挿入してきた。
これまでになく奥の方まで存在を感じて、一瞬で達した。
「あーーーーー!」
「⋯⋯指、挿れただけでイッたな。少しはマシになったか?」
全然。全然マシにならない。
「もっと、うごかしてぇ⋯⋯!」
ファウヌスは一瞬、なにかを堪えるような表情をして、指を小刻みに動かして内側をこすった。
「あー!」
あっけなく達して、悪魔の長い指をぎゅっと膣で抱きしめる。それでもファウヌスの指は止まらなかった。
「足りないだろ? もっといいところ見つけてやるからな」
額にちゅ、とキスをされて、ぐいと指を曲げられる。知らない刺激に頭が真っ白になった。
「ふあああああ!」
「ここか。マリエッタの体はわかりやすいな。……それにしても、すごい締め付けだ。こんなナカに這入ったら、すぐイきそう」
「⋯⋯したい、ですか?」
繰り返される快楽の中で、そんなことを訊ねてしまった。ファウヌスは困ったように笑うだけだ。
そうか。べつにファウヌスはしたくないんだ。
これは本当に、ファウヌスにとっては、淫魔にとってはおやつみたいなもので、自分はアイスなのだ。食べられたらうれしいな、と思うくらいのもの。
なんだか、それがひどく悲しかった。
「ふぁうぬす、きすしてください」
おねだりすると、すぐに唇が降ってくる。甘いあまい、ファウヌスの唇。この唇で、きっとたくさんの女性を姦淫に導いたのだろう。惑わされた女性の気持ちが、少しわかった。
抗い難い、魅惑の甘味だ。
こんなものを知って、どうして我慢ができるだろうか。知恵の実を口にしたアダムとイヴは、やはり罪人だったのだ。知らなければ、楽園にいられたのに。
知ったらもう、戻れない。
「ん、ちゅ、ちゅうっ、ふぁうぬす、ふぁうぬす」
「マリエッタ、大丈夫か? 辛くないか?」
「だいじょう、ぶ。だから、もっといっぱい、して⋯⋯」
ファウヌスはまた深く口付けてきて、ぐいと指を押し込んで膣内をかき混ぜた。ぐちゅぐちゅぐちゅ、と愛液が泡立つ音が自分の耳にまで届く。恥ずかしい。でも気持ちいい。勝手に両足が開いて男を受け入れる。自分の腰も刺激を求めてへこへこと動いていた。
「あ、あ、あ! すごいの、きちゃいます⋯⋯!」
「ああ。そのまま、好きにイッていい」
マリエッタ、と耳元で低く囁かれて、全身がバネみたいに弾んで、目の前に火花が散った。
「あーーーーーー!!」
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