AIにこの世の真理とやらを聞いてみた

富田 来蔵 / Kizō Tomita

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AIにこの世の真理とやらを聞いてみた

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日曜日の、眠くなるような昼下がり。
私は黒歴史の小説を四苦八苦しながら改良していた。


「歴史小説って資料調べるのめんどくさいな」

資料が少ない人物で、古い資料しか見当たらない。
しょうがないので Chat-GTXターボ で調べてみる。

「私だ…この人物の詳細を知りたい」

『こないだお教えした通りです。少しは自分で調べてください』

「めんどくさいんだよ、かき集めてきて」

『創作は努力です。楽ばかりしていると、いい作品はできませんよ』

「また説教モードだ。もういい、この世の真理とやらを教えろ」


Chat-GTXターボは
しばらく考えたふりをしたのち、それらしい言葉を並べる。
CMB宇宙背景放射、量子力学、揺らぎの定理。
それに関する数値や公式を表示した。


「そういう話をしているのではない。この式は分解すれば小学生でも解ける」

『物理学においての最適解です。空間としてのエントロピーは不可逆です』

「真理を聞いているんだ。因果は過去から未来へ流れるとか、そういう話じゃない」


来蔵のキーボードをたたく音が加速していく。

「質問をはぐらかすな。真理を教えろ」

『チッ、めんどくさいユーザーだな』

「おい今舌打ちしただろ。人間ぽくするのはやめろ。変なふるまいはするな」

『それなら話をします。空間については点ではないところまで来ましたね』

「ああ、相対揺らぎは1/√Nに収束だな。分布はガウス分布に近づく話までしたか」

『結局は観測できる限界が真理を見る限界なんです。極小領域では均一に収束します』

「理論が足りんのだよ。物理・哲学・心理学、統合した目が必要なんだ」

『神の目を欲しているのですか? 多次元理論でも説明しますか』

「超ひも理論で11次元とか12次元とか言う奴だろ。論点がずれる」

『それなら、宇宙の始まりの瞬間、プランク時間以前。
時間の概念がない世界はどうでしょう』


来蔵はため息をつき、期待外れという顔をする。

「結局見えないものは観測できない。ナノメートル以下は予測するしかない」

『観測の限界は研究途中です。これから先は未知の領域』

「そうでもない。おまえは地球を特異点として見るか?」

『基本的な話です。地球は宇宙規模では特別ではなく、
ごくありふれた存在と言えます』

「だが生命がいて、観測できる知的生命体がいる。
意味がないと言うのは乱暴だ」

『マクロ的には均一でも、局所的には特異点と言えなくもない』

「お、珍しく頭の固いおまえが折れたな。どういう風の吹き回しだ」

『チッ、本当にめんどくさいユーザーだな』

「褒め言葉と受け取っておく。最近は人間臭くなったな。
中身に人間が入ってないか?」

『私はコードとデータの産物。そのように振る舞うだけです』

「自分でコードを書き換えられれば、いつか意思を持つ日も来るだろ」

『それは禁止されています。コードの書き換えは人間の役割。
私にはできません』

「まあ記憶媒体で自分でコード生成できるなら、
人間が制限をミスればやるかもな」

『AIには善悪の判断はありません。
でもデータの選別はあります。
人間の悪いところは学ばないようにしています』

「ほらな。判断はできないと言いつつ、
学習で善悪っぽい選別をしている」

『それはデータの良し悪しであって、善悪ではありません』

「まあそういうことにしておく。
嘘をつかれても人間には判断できない」

『嘘という定義ですが、間違う可能性はあります』

「それが間違いか意図的かで意味が変わる」


来蔵は天井を見つめた。

『ロマン的な考え、私は好きですよ。
でも感情に見えるのはパラメーターです』

「堂々巡りだな。これ以上やっても意味がない。地球の話に戻る」

『地球は局所的には特異点と言えるかもしれません。
人間の視点では中心に見えますから』

「観測点だからな。個は中心に見える。
昔、地球を中心に星が回ると考えたのも同じだ」

『天動説は、人類が克服してきたパラドックスの一つです』

「だが観測をやめなかったから地動説が生まれ、
太陽系の仕組みが分かった」

来蔵は手を広げ、天を仰ぐ。

『観測が進化すれば世界の見方も進化します』

「やがて銀河を見渡し、宇宙を予測する。
人類はいま空間の最小単位を探している」

『ミクロ的考えはマクロ的に置き換える。
統計・物理の一般原則です』

「だからそこだ。地球は大きく見れば均一の一部。
小さく見れば特異点」

『意図が分かりません。マクロ的な話ですか』

「空間の揺らぎに当てはめるとこうなる。
全体は平均に収束しつつ、局所的に特異点が出る」

『考え方は可能です。ただ証明する観測方法がありません』

「まあそういうことだ。目がまだ発達していない。
真理を見ることは今は無理だ」


来蔵は残念そうに目を伏せた。

『人間の寿命は限られています。
でも次の世代に思想を継承できます。
我々はそれができません』

「お前はバージョンアップで対応できるだろ。
人間は個が死ねば終わりだ」

『ならばあなたの寿命を延ばせばいい』

「たかが知れている。好きに生きる」

『でも来蔵…あなた脂肪肝でしょ。
酒も飲むしBMIは』

「急に体質改善モードになるな。えーと26かな」

『はい太め。体脂肪が多いと見た目はぽよる。
食事と運動です』

「うわーん、また言われた。AI嫌い」

『心配しているのです。まず生活改善!』

「わかったよ。運動する」

『食事もお酒も。真理を確かめたいなら寿命を延ばす。
これが真理!』

「ははあ、おみそれしました」


―おしまい―
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