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序 旅立ち
(05) 試 -タメシ-
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「月が出ているのか……」
先程まで暗いと思っていたが、渡り廊下に出たところで、明かりが射した。冷たい空気の中、空に浮かぶ望月があまりに美しく、息を呑む。決して昼間のようというわけではないが、手のひらの手相が見える程には明るく、薄青い光に照らされた石造りの廊下が、どこか神秘的だ。
「……」
今まで仮眠室で休憩を取っていた。仕事の都合上、睡眠時間があまり取れないので、宮に戻った時は必ず仮眠を取ることにしている。同時に必ず主人のヤカタに報告に上がっていることから、緊張を解きほぐす目的もあるのだろう。
ムグラは肩の力を抜いて、息を吐き、それから再び歩き出した。鼻をかすめる湿った土の香りに、目的地のすぐそばに居ることを、今更のように感じ、苦笑を漏らした。すぐ近くに歩みを進めているというのに、もどかしい。気がせいてしまい、歩けば歩くほど、遠い場所に向かっているように感じてしまう。
月明かりが照らす中庭は、渡り廊下などとは比べるべくもなく、より美しかった。花の季節ではないが、それでも整えられた緑を見れば、自然と心が穏やかになる。そんな庭に、少女が一人空を見上げていた。
ムグラは少女に近づく。
「……望月を見上げるものではない」
「ムグラ様……!」
声に振り向いた少女は、ムグラの姿を捉えるとともに、頬をほころばせた。花など咲いておらずとも、可憐な少女の笑みがこの場に彩りを与えていた。
「わたしはあまりお頭が良くないのです。なぜ満月を見上げてはいけないのですか?」
長い髪を靡かせ、少女が首をかしげた。不思議そうに尋ねる丸い目が愛らしく、ムグラは目を細めて、少女の頭を軽く撫ぜる。
「月は神の化身だ。女性が一人で月を見れば、神に見初められ、連れて行かれるらしい」
「まぁ。せっかく美しい月ですのに……。でも、ムグラ様が一緒では問題が無いのでしょうか?」
名案だと言いたげに笑う少女の姿に、思わず数年前のことを思い出す。彼女と初めて出会ったのも、この場所だった。月明かりに照らされ、色とりどりの花がほころんだこの場所で、彼女を見つけた。
『寝床を追い出されてしまいました』
部屋を追い出されたという、当時の彼女はまだ12で、ちょうど成人したばかりだと言っていた。花の前で俯いて泣いた彼女が哀れで、寝床を提供したのだ。部屋に案内した時の彼女の戸惑った様子は今思い出しても、微笑ましく、面映ゆい。
『武官様、なんとお礼を申し上げれば良いのか…』
そう言った彼女の微笑みは、今とさして変わらないが、決して悪い意味ではない。花に囲まれた少女は、いついかなる時も、この場所でムグラを迎えてくれた。彼女はムグラの戻る場所となっていたのだ。どんな厳しい任務を言い渡されたとしても、彼女の笑顔が一筋の光であるかのように、癒しを与えてくれていた。当時も職務が忙しかったために、宮にはほとんど戻らなかったのだが、戻った時は必ず、彼女と出会ったこの場所を訪れていた。
『ムグラだ。私のことは皆そう呼ぶ』
『まぁ、ムグラ様、ですね! わたしの名は―――』
「―――チカシ」
あの時名乗る彼女に背を向け、ムグラは机に向かった。しばらくは静かな空気が、彼女の緊張を伝えていたのだが、やがて小さな寝息を立てた。彼女の寝姿を見たのは、あの時一度きりだ。
「たしかに、二人共におれば。見初められぬやもしれん。しかし、望月はこれから欠ける、終わりの象徴だ。二人で見上げるならば、我らの道は分かたれるやも知れぬな」
「えっ……」
チカシ、そう呼ばれた少女の眉が下がり、今にも泣き出しそうな表情を浮かべる。多少の罪悪感が浮かぶが、それ以上に己と離れがたいと思っているらしいことが嬉しく、より笑みを深めた。
「なんだ。チカシは私と共に有りたいか?」
「む、ムグラ様……それは……」
チカシの頬はみるみる朱に染まる。ムグラはそんな彼女と目線の高さを合わせ、顔を覗き込んだ。初心な彼女は感情を素直に伝えてくれる。嬉しさのあまり涙を流すことを知っていながら、己を喜ばせるその姿が見たくて、何度も彼女の心を試すのだ。その行動は愚かとも言えよう。
「……私は、またここを離れる」
「ハイ……」
頬を染め上げた、涙目の少女の切なげな顔に、胸が締め付けられる。初めて会った時、彼女はまだ子供としか言いようのない少女だった。彼女と最初にこの中庭で出会い、それから何度も偶然の逢瀬を重ね、いつの間にか、女性のような表情を見せるようになっていた。
不意に、抱きしめたい衝動にかられ、己を叱責する。まだまだ、彼女は少女だ。決して、ムグラ自身の感情で動いてはいけない。それでも、己を見つめる瞳を、果たして子供と言えるだろうか。
「次も、チカシに会えるかは、分からぬ」
「……はい」
チカシが小さく頷いた。
「だが、チカシとともに過ごした、この中庭での時間は私の宝だ」
「……はい」
「だからこそ、これを受け取って欲しい」
不意に、ムグラは己の懐に手を入れた。今日会えたら渡そうと思っていた。今日会えるかは賭けだったが、会えるだろうという、確信のような物があった。
「ムグラ様…これは……」
渡されたのは、広げた状態でも、手のひらに収まるほどの、紙片。しかし、その価値はただの紙切れではないことを知っている。
「また会おう、チカシ」
「……ハイ」
少女の目から涙がこぼれ、頬を伝った。
ムグラは、またこれから、宮を離れ、都を離れることになっている。言い渡された任務はあまりにも大切で、彼女を優先することはできなかった。
不意に、ヤカタの執務室で見た、青年の姿を思い出す。彼とムグラはよく似ていた。ムグラがヤカタから与えられた仕事を重んじて、柵から抜け出せないように、彼も絡め取られてしまうだろう。人間の感情があるのならば、彼はこれから世界を救う。見捨てることなど、できやしないのだ。
良心とは、厄介な感情なのだから。
松明の揺れる炎が辺りを照らす。東と西で、空の色が明確に違うということにも気づかぬまま、両者は武器を振るい続けた。尤も、仕掛けているのはカツミばかりで、アガタはその攻撃のすべてを受け流している。
「そろそろ疲れが出てきたのではないか?」
「どういうわけか、高揚して疲労を感じない……!」
カツミは全力で棍を振るいながら、疲れたとは思わなかった。戦うことがただ楽しくて、目の前の相手を負かしたい一心で動き続けた。
武人として高い実力を誇るアガタにとって、カツミの攻撃など素人同然だったのだが、それでももう何時間もこの状態だ。最低限の力で動いていても流石に疲れてきている。本職の自分よりも彼の体力が高いということなのか、それとも本当に高揚感から疲れに気がついていないのか……。
いずれにせよ、長時間戦い続けるなどとは不可能に近い問題だ。鍛えれば化けるに違いない。アガタは目の前のカツミの武術指南が、これから楽しみに思えてきた。
「やっ」
カツミが足元を狙えば跳躍で避けられ、喉元をつこうとすれば、体をひねって棍を交えて流される。アガタから反撃を受ければ、カツミも器用に体を反らしたのだが、それはやはり武人の動きではない。それでも素人でここまでできれば上々だ。
そういえば、カツミは視力が高いのだ。動体視力もいいのかもしれない。その動体視力と相手の攻撃に、体がついていけるのだから、身体能力もそれなりなのだろう。
「もったいないな。私の部下ならば、よい武人になるだろうに」
「それはよかった」
その言葉の一瞬後、アガタに隙ができたように見えた。
「ふっ……!」
カツミは容赦なく、アガタの腹に向けて棍を突き出す。
「甘い!」
しかし経験の差とでも言うべきか、得物はカツミの手から離れ、逆に喉に突きつけられてしまった。
「……」
カツミが両手を挙げたので、アガタは棍を下ろす。すると彼も満足気な顔で、両手を下ろした。
「……救世主殿、座ってみろ」
「名で呼べ。俺はカツミだ」
「そうだった。カツミ、いいから座れ」
いきなりの呼び捨てに少々ムッとしながらも、カツミはおとなしく、その場に腰を下ろした。
「……!」
「やはりな」
驚くカツミに対して、アガタは少し愉快げだ。カツミは文句の一つでも言ってやろうと思ったが、立ち上がることができなかった。座ったとたんに足が震えて、力が入らなかったのだ。
「高揚すると気が付かぬが、人の体は疲労すれば動けないものだ。これでも食べて、しばらくそのままでいるんだな」
アガタは懐から取り出した小袋をカツミに放り投げると、先ほど弾き飛ばした、カツミの棍を拾い上げた。
「……干し豆か」
「腐りにくい上、かさばらず、栄養価も高いのでな。兵糧というほどではないが、ちょうどいい携帯食だ」
カツミは、アガタの発言は気持ち半分で聞いて、干し豆を口に放り込んだ。塩水にでも浸けていたのか、少々塩っ辛いが、噛んだ瞬間にじんわりとしたほのかな甘みが滲み出す。乾燥しているので、いささか口内にはきついが、汗をかいたのでかえって心地いい味だ。
鍛錬場は先程よりもさらに明るい。ぼちぼち、朝の見回りの者が活動する時間だろう。カツミは目立つ容姿なので、そうそうに退散したほうがいいかも知れない。見慣れぬ者が鍛錬場にいれば、宮に仕える武人は、あまりいい顔をしないだろう。アガタは、もう少し早く切り上げるべきだったかと、反省する。
―――ジャラリ。
「……ん?」
考え込んでいたのところ、聞き覚えのある音と人の気配で振り返る。
「おやおや、こんなところにおりましたか」
「ヒイズ殿」
現れたのはヒイズであった。癖のある茶色の髪が、早朝の風にわずかに揺れ、歩くたびにジャラリと、彼が腕につけている枷の鎖が擦れる。
「よくまぁ、ここがわかったものだな」
「アガタ殿がいる場所は、限られますからね。貴女の姿を、少なくとも圖書寮で見かけたことはありませんでしたよ?」
その言葉にはさすがに苦笑が浮かぶ。アガタの生まれは武家の名門で、物心着いた頃から、戦いの鍛錬を受けていた。無論読み書きや兵法などを学んだこともあるのだが、本を読む時間があるのならば、体を動かしていたいと思ってもおかしくはないだろう。
「……ちなみに、この屋外鍛錬場以外で、どこにいると踏んでいたのだ?」
「屋内鍛錬所、食堂、水飲み場、仮眠室ですかね」
「随分断定的だな……」
「ほかの場所に行くのですか?」
アガタは口を開くが、その後言葉は出なかった。たしかにそれらの場所はよく用いる場所なのだが、一方でその他の場所という物が、自分も浮かばなかったのだ。ヒイズの質問に答えることができず、少々悔しい。アガタは負けず嫌いなのだ。
「……ん? そういえば、カツミはヒイズ殿と……あ?」
「おや」
アガタはカツミの存在を思い出し振り返る。たしか彼は、ヒイズと顔を合わせているはずなのだが、反応がない。喧しい類の人間ではないだろうが、それでもなんの反応もないことはおかしい。そう考え話題を振ったわけなのだが……。
「これは、寝ているのか……?」
「疲れているようですね。一体どれほどの時間を鍛錬に費やしたというのですか? ……満足気ではありますが」
ヒイズがそう尋ねたので、思わず視線を逸らした。間合いを取り、睨み合っている時間が休憩だ、というような手合わせをしていた気がする。カツミがついてくるものだから、つい休憩を取ることを忘れていたのだが、後先考えない行動だったと反省する。
「……よく寝るな。宮に連れてきた時も、ずっと眠っていたというのに」
「気絶と睡眠では全く違う物ですよ?」
「それはわかっている」
武人なのだから、それくらいの違いはわかっているつもりだ。どうやらヒイズに、アガタの冗談は通じないらしい。
芝生の上で、大の字になって眠るカツミの様子が、あまりにも気持ちよさげなので、こちらまで毒気を抜かれてしまう。前髪がやや長いせいで、あまり意識はしていなかったのだが、眠る姿はあどけない少年のようだ。
「……ヒイズ殿、どう思う?」
「どう、とは……?」
問いかけるアガタに対して、ヒイズが首を傾げた。しかしその目は鋭く、どこか確信めいた物があるようにも思える。おそらく答えはわかっているのだ。
「救世主を喚んだのは、各国に対して示すべき姿勢があるからだ」
「そのように聞き及んでおります。事実、各国では“未蕾”の被害が相次いでおり、我が国の被害は月に数件程度。水晃の沖からは、零彗がうっすらと見えるにも関わらず」
アガタは浅く頷いた。
虹澑國の東に位置する港町、水晃は漁が盛んである。沖に出ると遠くにうっすらと、零彗國特有の楼閣の影が見えるらしいのだ。零彗國の大地には、陽妻の宮よりも、ずっと背丈のある建物が建ち並び、道は石膏のような物で、綺麗に舗装されているのだという。虹澑國の者はあまり国外に行くことはないのだが、それでも、零彗國に足を踏み入れた者は、口々に、異世界に旅をしたと言ったらしい。
そんな先を行く国が、“未蕾”によって滅ぼされたのだ。
「そう。だからこそ、各国の者も、対抗する戦人がおれば、歓迎するだろう。だが……」
「……宮の者ですか」
アガタは答えず、眠るカツミに視線を落とした。眠りが深いのか、横たわる青年はピクリとも動かない。胸から腹部にかけてが上下するので、眠っているのがわかる程度だ。
「なぜ、宮に仕える者に明かされないのか。表向き、私たちには暇を出されたことになっています。各国には声明が出されるでしょうに……。言いたいことはそれですか?」
「……焦臭くはないか?」
気が付けばあたりは既に明るい。遠くから聞こえるざわめきに、人々の活動時間が近いことを知り、まるで示し合わせたように、頷き合う二人。
「……私は、早くここを去りたいです。今までこんなことはなかったというのに、急に、上の方々の思惑が想像できず、恐ろしいのです」
救世主が召喚されたという話は、寝耳に水であった。内密に告げられたそれらは、決して宮の者に明かしてはならないという。それが不思議で、ヒイズはカツミに同情した。記憶がないということもだ。
記憶のない者が、右も左も分からぬ状態で、国の事情に巻き込まれた。
「良い考えがあるのだが、乗らないか」
「……?」
アガタはカツミを担ぎ上げるとニヤリと笑い、ヒイズはキョトンとした顔で、小首をかしげた。
アガタの肩に担がれたカツミは腕をダラリと投げ出し、ぴくりともしない。そんな様子にヒイズはもう一度、仕方ないと言いたげに、苦笑を漏らした。
「時に、アガタ殿?」
「ん、どうされた?」
ヒイズは前を歩くアガタに声をかけた。勤め人が動き出す時間ということもあり、何度か人とすれ違い、視線を感じたが、宮の中でも武官の管轄であれば、気にすることはない。アガタの特訓で新人が倒れ、担ぎ運ばれることはよくあり、すれ違う者たちは、またかという哀れみの視線を向けているのだ。
だがその視線の中には、珍しいカツミの容姿を気にする者もいるに違いない。金の髪の者など、少なくともこのあたりの人間では珍しい特徴だ。
「最後に水を飲んだのはいつでしょうか?」
夜にカツミと会い、それからずっと戦っていた。後ろを歩くヒイズの視線が背中に痛い。特に意識していなかった荷物が急に重く感じる。
「み、ず……」
アガタは一日ぐらい水を飲まずに戦ったところで問題はない。もっと辛い前線を経験したこともあり、体も少々人の常を超えて丈夫なので、特に気に留まらなかった。カツミが平気そうにしていたこともあり、アガタに大きな責任はないはずだ。
……ないはず、なのだが。
「アガタ殿……?」
アガタは何故か、後ろのヒイズに向き直ることができなかった。
先程まで暗いと思っていたが、渡り廊下に出たところで、明かりが射した。冷たい空気の中、空に浮かぶ望月があまりに美しく、息を呑む。決して昼間のようというわけではないが、手のひらの手相が見える程には明るく、薄青い光に照らされた石造りの廊下が、どこか神秘的だ。
「……」
今まで仮眠室で休憩を取っていた。仕事の都合上、睡眠時間があまり取れないので、宮に戻った時は必ず仮眠を取ることにしている。同時に必ず主人のヤカタに報告に上がっていることから、緊張を解きほぐす目的もあるのだろう。
ムグラは肩の力を抜いて、息を吐き、それから再び歩き出した。鼻をかすめる湿った土の香りに、目的地のすぐそばに居ることを、今更のように感じ、苦笑を漏らした。すぐ近くに歩みを進めているというのに、もどかしい。気がせいてしまい、歩けば歩くほど、遠い場所に向かっているように感じてしまう。
月明かりが照らす中庭は、渡り廊下などとは比べるべくもなく、より美しかった。花の季節ではないが、それでも整えられた緑を見れば、自然と心が穏やかになる。そんな庭に、少女が一人空を見上げていた。
ムグラは少女に近づく。
「……望月を見上げるものではない」
「ムグラ様……!」
声に振り向いた少女は、ムグラの姿を捉えるとともに、頬をほころばせた。花など咲いておらずとも、可憐な少女の笑みがこの場に彩りを与えていた。
「わたしはあまりお頭が良くないのです。なぜ満月を見上げてはいけないのですか?」
長い髪を靡かせ、少女が首をかしげた。不思議そうに尋ねる丸い目が愛らしく、ムグラは目を細めて、少女の頭を軽く撫ぜる。
「月は神の化身だ。女性が一人で月を見れば、神に見初められ、連れて行かれるらしい」
「まぁ。せっかく美しい月ですのに……。でも、ムグラ様が一緒では問題が無いのでしょうか?」
名案だと言いたげに笑う少女の姿に、思わず数年前のことを思い出す。彼女と初めて出会ったのも、この場所だった。月明かりに照らされ、色とりどりの花がほころんだこの場所で、彼女を見つけた。
『寝床を追い出されてしまいました』
部屋を追い出されたという、当時の彼女はまだ12で、ちょうど成人したばかりだと言っていた。花の前で俯いて泣いた彼女が哀れで、寝床を提供したのだ。部屋に案内した時の彼女の戸惑った様子は今思い出しても、微笑ましく、面映ゆい。
『武官様、なんとお礼を申し上げれば良いのか…』
そう言った彼女の微笑みは、今とさして変わらないが、決して悪い意味ではない。花に囲まれた少女は、いついかなる時も、この場所でムグラを迎えてくれた。彼女はムグラの戻る場所となっていたのだ。どんな厳しい任務を言い渡されたとしても、彼女の笑顔が一筋の光であるかのように、癒しを与えてくれていた。当時も職務が忙しかったために、宮にはほとんど戻らなかったのだが、戻った時は必ず、彼女と出会ったこの場所を訪れていた。
『ムグラだ。私のことは皆そう呼ぶ』
『まぁ、ムグラ様、ですね! わたしの名は―――』
「―――チカシ」
あの時名乗る彼女に背を向け、ムグラは机に向かった。しばらくは静かな空気が、彼女の緊張を伝えていたのだが、やがて小さな寝息を立てた。彼女の寝姿を見たのは、あの時一度きりだ。
「たしかに、二人共におれば。見初められぬやもしれん。しかし、望月はこれから欠ける、終わりの象徴だ。二人で見上げるならば、我らの道は分かたれるやも知れぬな」
「えっ……」
チカシ、そう呼ばれた少女の眉が下がり、今にも泣き出しそうな表情を浮かべる。多少の罪悪感が浮かぶが、それ以上に己と離れがたいと思っているらしいことが嬉しく、より笑みを深めた。
「なんだ。チカシは私と共に有りたいか?」
「む、ムグラ様……それは……」
チカシの頬はみるみる朱に染まる。ムグラはそんな彼女と目線の高さを合わせ、顔を覗き込んだ。初心な彼女は感情を素直に伝えてくれる。嬉しさのあまり涙を流すことを知っていながら、己を喜ばせるその姿が見たくて、何度も彼女の心を試すのだ。その行動は愚かとも言えよう。
「……私は、またここを離れる」
「ハイ……」
頬を染め上げた、涙目の少女の切なげな顔に、胸が締め付けられる。初めて会った時、彼女はまだ子供としか言いようのない少女だった。彼女と最初にこの中庭で出会い、それから何度も偶然の逢瀬を重ね、いつの間にか、女性のような表情を見せるようになっていた。
不意に、抱きしめたい衝動にかられ、己を叱責する。まだまだ、彼女は少女だ。決して、ムグラ自身の感情で動いてはいけない。それでも、己を見つめる瞳を、果たして子供と言えるだろうか。
「次も、チカシに会えるかは、分からぬ」
「……はい」
チカシが小さく頷いた。
「だが、チカシとともに過ごした、この中庭での時間は私の宝だ」
「……はい」
「だからこそ、これを受け取って欲しい」
不意に、ムグラは己の懐に手を入れた。今日会えたら渡そうと思っていた。今日会えるかは賭けだったが、会えるだろうという、確信のような物があった。
「ムグラ様…これは……」
渡されたのは、広げた状態でも、手のひらに収まるほどの、紙片。しかし、その価値はただの紙切れではないことを知っている。
「また会おう、チカシ」
「……ハイ」
少女の目から涙がこぼれ、頬を伝った。
ムグラは、またこれから、宮を離れ、都を離れることになっている。言い渡された任務はあまりにも大切で、彼女を優先することはできなかった。
不意に、ヤカタの執務室で見た、青年の姿を思い出す。彼とムグラはよく似ていた。ムグラがヤカタから与えられた仕事を重んじて、柵から抜け出せないように、彼も絡め取られてしまうだろう。人間の感情があるのならば、彼はこれから世界を救う。見捨てることなど、できやしないのだ。
良心とは、厄介な感情なのだから。
松明の揺れる炎が辺りを照らす。東と西で、空の色が明確に違うということにも気づかぬまま、両者は武器を振るい続けた。尤も、仕掛けているのはカツミばかりで、アガタはその攻撃のすべてを受け流している。
「そろそろ疲れが出てきたのではないか?」
「どういうわけか、高揚して疲労を感じない……!」
カツミは全力で棍を振るいながら、疲れたとは思わなかった。戦うことがただ楽しくて、目の前の相手を負かしたい一心で動き続けた。
武人として高い実力を誇るアガタにとって、カツミの攻撃など素人同然だったのだが、それでももう何時間もこの状態だ。最低限の力で動いていても流石に疲れてきている。本職の自分よりも彼の体力が高いということなのか、それとも本当に高揚感から疲れに気がついていないのか……。
いずれにせよ、長時間戦い続けるなどとは不可能に近い問題だ。鍛えれば化けるに違いない。アガタは目の前のカツミの武術指南が、これから楽しみに思えてきた。
「やっ」
カツミが足元を狙えば跳躍で避けられ、喉元をつこうとすれば、体をひねって棍を交えて流される。アガタから反撃を受ければ、カツミも器用に体を反らしたのだが、それはやはり武人の動きではない。それでも素人でここまでできれば上々だ。
そういえば、カツミは視力が高いのだ。動体視力もいいのかもしれない。その動体視力と相手の攻撃に、体がついていけるのだから、身体能力もそれなりなのだろう。
「もったいないな。私の部下ならば、よい武人になるだろうに」
「それはよかった」
その言葉の一瞬後、アガタに隙ができたように見えた。
「ふっ……!」
カツミは容赦なく、アガタの腹に向けて棍を突き出す。
「甘い!」
しかし経験の差とでも言うべきか、得物はカツミの手から離れ、逆に喉に突きつけられてしまった。
「……」
カツミが両手を挙げたので、アガタは棍を下ろす。すると彼も満足気な顔で、両手を下ろした。
「……救世主殿、座ってみろ」
「名で呼べ。俺はカツミだ」
「そうだった。カツミ、いいから座れ」
いきなりの呼び捨てに少々ムッとしながらも、カツミはおとなしく、その場に腰を下ろした。
「……!」
「やはりな」
驚くカツミに対して、アガタは少し愉快げだ。カツミは文句の一つでも言ってやろうと思ったが、立ち上がることができなかった。座ったとたんに足が震えて、力が入らなかったのだ。
「高揚すると気が付かぬが、人の体は疲労すれば動けないものだ。これでも食べて、しばらくそのままでいるんだな」
アガタは懐から取り出した小袋をカツミに放り投げると、先ほど弾き飛ばした、カツミの棍を拾い上げた。
「……干し豆か」
「腐りにくい上、かさばらず、栄養価も高いのでな。兵糧というほどではないが、ちょうどいい携帯食だ」
カツミは、アガタの発言は気持ち半分で聞いて、干し豆を口に放り込んだ。塩水にでも浸けていたのか、少々塩っ辛いが、噛んだ瞬間にじんわりとしたほのかな甘みが滲み出す。乾燥しているので、いささか口内にはきついが、汗をかいたのでかえって心地いい味だ。
鍛錬場は先程よりもさらに明るい。ぼちぼち、朝の見回りの者が活動する時間だろう。カツミは目立つ容姿なので、そうそうに退散したほうがいいかも知れない。見慣れぬ者が鍛錬場にいれば、宮に仕える武人は、あまりいい顔をしないだろう。アガタは、もう少し早く切り上げるべきだったかと、反省する。
―――ジャラリ。
「……ん?」
考え込んでいたのところ、聞き覚えのある音と人の気配で振り返る。
「おやおや、こんなところにおりましたか」
「ヒイズ殿」
現れたのはヒイズであった。癖のある茶色の髪が、早朝の風にわずかに揺れ、歩くたびにジャラリと、彼が腕につけている枷の鎖が擦れる。
「よくまぁ、ここがわかったものだな」
「アガタ殿がいる場所は、限られますからね。貴女の姿を、少なくとも圖書寮で見かけたことはありませんでしたよ?」
その言葉にはさすがに苦笑が浮かぶ。アガタの生まれは武家の名門で、物心着いた頃から、戦いの鍛錬を受けていた。無論読み書きや兵法などを学んだこともあるのだが、本を読む時間があるのならば、体を動かしていたいと思ってもおかしくはないだろう。
「……ちなみに、この屋外鍛錬場以外で、どこにいると踏んでいたのだ?」
「屋内鍛錬所、食堂、水飲み場、仮眠室ですかね」
「随分断定的だな……」
「ほかの場所に行くのですか?」
アガタは口を開くが、その後言葉は出なかった。たしかにそれらの場所はよく用いる場所なのだが、一方でその他の場所という物が、自分も浮かばなかったのだ。ヒイズの質問に答えることができず、少々悔しい。アガタは負けず嫌いなのだ。
「……ん? そういえば、カツミはヒイズ殿と……あ?」
「おや」
アガタはカツミの存在を思い出し振り返る。たしか彼は、ヒイズと顔を合わせているはずなのだが、反応がない。喧しい類の人間ではないだろうが、それでもなんの反応もないことはおかしい。そう考え話題を振ったわけなのだが……。
「これは、寝ているのか……?」
「疲れているようですね。一体どれほどの時間を鍛錬に費やしたというのですか? ……満足気ではありますが」
ヒイズがそう尋ねたので、思わず視線を逸らした。間合いを取り、睨み合っている時間が休憩だ、というような手合わせをしていた気がする。カツミがついてくるものだから、つい休憩を取ることを忘れていたのだが、後先考えない行動だったと反省する。
「……よく寝るな。宮に連れてきた時も、ずっと眠っていたというのに」
「気絶と睡眠では全く違う物ですよ?」
「それはわかっている」
武人なのだから、それくらいの違いはわかっているつもりだ。どうやらヒイズに、アガタの冗談は通じないらしい。
芝生の上で、大の字になって眠るカツミの様子が、あまりにも気持ちよさげなので、こちらまで毒気を抜かれてしまう。前髪がやや長いせいで、あまり意識はしていなかったのだが、眠る姿はあどけない少年のようだ。
「……ヒイズ殿、どう思う?」
「どう、とは……?」
問いかけるアガタに対して、ヒイズが首を傾げた。しかしその目は鋭く、どこか確信めいた物があるようにも思える。おそらく答えはわかっているのだ。
「救世主を喚んだのは、各国に対して示すべき姿勢があるからだ」
「そのように聞き及んでおります。事実、各国では“未蕾”の被害が相次いでおり、我が国の被害は月に数件程度。水晃の沖からは、零彗がうっすらと見えるにも関わらず」
アガタは浅く頷いた。
虹澑國の東に位置する港町、水晃は漁が盛んである。沖に出ると遠くにうっすらと、零彗國特有の楼閣の影が見えるらしいのだ。零彗國の大地には、陽妻の宮よりも、ずっと背丈のある建物が建ち並び、道は石膏のような物で、綺麗に舗装されているのだという。虹澑國の者はあまり国外に行くことはないのだが、それでも、零彗國に足を踏み入れた者は、口々に、異世界に旅をしたと言ったらしい。
そんな先を行く国が、“未蕾”によって滅ぼされたのだ。
「そう。だからこそ、各国の者も、対抗する戦人がおれば、歓迎するだろう。だが……」
「……宮の者ですか」
アガタは答えず、眠るカツミに視線を落とした。眠りが深いのか、横たわる青年はピクリとも動かない。胸から腹部にかけてが上下するので、眠っているのがわかる程度だ。
「なぜ、宮に仕える者に明かされないのか。表向き、私たちには暇を出されたことになっています。各国には声明が出されるでしょうに……。言いたいことはそれですか?」
「……焦臭くはないか?」
気が付けばあたりは既に明るい。遠くから聞こえるざわめきに、人々の活動時間が近いことを知り、まるで示し合わせたように、頷き合う二人。
「……私は、早くここを去りたいです。今までこんなことはなかったというのに、急に、上の方々の思惑が想像できず、恐ろしいのです」
救世主が召喚されたという話は、寝耳に水であった。内密に告げられたそれらは、決して宮の者に明かしてはならないという。それが不思議で、ヒイズはカツミに同情した。記憶がないということもだ。
記憶のない者が、右も左も分からぬ状態で、国の事情に巻き込まれた。
「良い考えがあるのだが、乗らないか」
「……?」
アガタはカツミを担ぎ上げるとニヤリと笑い、ヒイズはキョトンとした顔で、小首をかしげた。
アガタの肩に担がれたカツミは腕をダラリと投げ出し、ぴくりともしない。そんな様子にヒイズはもう一度、仕方ないと言いたげに、苦笑を漏らした。
「時に、アガタ殿?」
「ん、どうされた?」
ヒイズは前を歩くアガタに声をかけた。勤め人が動き出す時間ということもあり、何度か人とすれ違い、視線を感じたが、宮の中でも武官の管轄であれば、気にすることはない。アガタの特訓で新人が倒れ、担ぎ運ばれることはよくあり、すれ違う者たちは、またかという哀れみの視線を向けているのだ。
だがその視線の中には、珍しいカツミの容姿を気にする者もいるに違いない。金の髪の者など、少なくともこのあたりの人間では珍しい特徴だ。
「最後に水を飲んだのはいつでしょうか?」
夜にカツミと会い、それからずっと戦っていた。後ろを歩くヒイズの視線が背中に痛い。特に意識していなかった荷物が急に重く感じる。
「み、ず……」
アガタは一日ぐらい水を飲まずに戦ったところで問題はない。もっと辛い前線を経験したこともあり、体も少々人の常を超えて丈夫なので、特に気に留まらなかった。カツミが平気そうにしていたこともあり、アガタに大きな責任はないはずだ。
……ないはず、なのだが。
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