モンスターバスター in 大江戸

はなぶさ 源ちゃん

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大江戸編

2 第3の勇者

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 人影がはっきりしてくるに従って、ギターの音が聞こえてくる。
 人影、いや男はギターを演奏していたのだ。
 一心不乱にギター演奏に夢中になっているようだ。
 だんだんはっきりしてくる演奏者を巧人は半ば呆然と見つめていた。



 「出たな、デカブツ!!覚悟しろ!!」
 アナスタシアはしかし、モアイガーが出てもひるまなかった。
 しゃちにゃん達を次々とぶった切りながらモアイガーに向けて突っ走っていく。

 「喰らいやがれ――!!」
 ガギーーン!!
 しかし、目にも見えないほど速く斬撃を撃ち込んだが、刀はあっさり折れてしまった。

 「だめか?!元の刀が弱すぎる!!」
 モアイガーの攻撃をさっとかわすと、アナスタシアは手早く後退した。


 「お兄さん!ギターを演奏している場合じゃないですよ!!逃げなきゃ!!」
 はっきり姿を現した男が夢中になってギターを弾き続けるのをみて、巧人は慌てた。
 巧人より少し高いくらいの整った顔立ちの青年は自身のギターの音色の酔っているようだ。確かに演奏そのものは相当上手なのであろう。
 そして、この騒ぎにも気づかない集中力は大したものだが、このままでは命に係わる。

 どれだけ叫んでも反応を示さない男に組み付いてやろうとした時、飛ぶように戻ってきたアナスタシアが男の頭に蹴りを入れた。

 「カイザス!!あんた、こんなところでなにやってんの?!ギターを弾いてる場合じゃないから!!あの化け物をなんとかして!!」
 「いててて、あれ、アナスタシアか?日本語で話すということは…ここは日本…」
 言いながら周りを見回して、『カイザス』はモアイガーに気づく。
 「あれ、『あの程度の化け物』なら、アナスタシアなら、楽勝だろ?なんで、自分でやんないの?」
 「エレーナがいなくて、俺一人だから!まともな武器もないし、俺一人じゃ無理!!」

 カイザスはギターを置くと、拳法のような構えを取った。
 「ようし、わかった。それでは……あれ??」
 「カイザス、どうした?」
 「……この場所は『魔法の働く法則』が少し違うようで、魔法が全然発動しないんだ!!」
 「それ、ヤバイじゃん!!武器になるようなものは何か持ってない?!」
 「……ギター以外何も持っていない…。仕方ない、『闘気で肉体を強化』して、なんとかしてみよう!」
 カイザスは雄叫びを上げながら、しゃちにゃん達を次々と殴り倒していった。そして、モアイガーの足に右正拳を叩きこむと……。
 「くそ痛てーーー!!!」
 右手を引っ込めてフーフー息を吐きかけている。
 そこをモアイガーの右足て蹴飛ばされ、あえなく、城壁の外へ飛ばされていった。

 「…だ、ダメだったか…。巧人、やつの弱点とかわからないか?」
 アナスタシアがすがるように巧人を見る。
 (弱点?!よし!)

名前:モアイガー 
召喚獣
レベル:150
弱点: 辛いものが苦手

 (ふぁ!? 落ち着け、巧人!自分に何かできることがないか考えろ!!)

今度は巧人の頭の中に自分の情報が浮かんできた。

水守 巧人 17歳 人間 男
具現士
レベル:3
スキル:異世界言語 異世界文字 
魔法: 情報 武器具現化 防具具現化 回復 
装備
称号 異世界召喚勇者

(異世界言語 異世界文字…ここ日本だろ?! いや、ツッコミ入れている場合じゃ……具現士に武器具現化だって?!一か八かやってみるか?!)


 巧人が必死に考え込んでいるのを見て、アナスタシアは頭を振った。
 「巧人、すまん。弱点が見つからないんだな?!俺が時間を稼ぐから姫様とかなんとか逃がすように…。」
 「アナスタシアさん、待って!!今武器を出すから!!」
 巧人は叫ぶと、必死に刀をイメージした。ゲームで何度も遊んだ、戦国武将たちが扱ったあの大太刀のような…。
 そして、巧人の手の中に……やくざ映画に出てくるような短刀が現れた。
 (いやいや、こんな刃渡り三〇センチくらいの短刀じゃあの化け物に通用するはずが…)

 愕然となった巧人の手からアナスタシアは短刀をさっと抜き取って言った。
「これは使えるぜ!巧人、ありがとう!!

 アナスタシアは短刀を振りかぶると、モアイガーに向かって突っこんでいった。
 「アナスタシアさん!!そんな短い刀じゃ…。」
 アナスタシアが持つ刀が見る見る伸びていくのを見て、巧人の言葉は止まった。

 刀は白色の光を放ちながらさらに伸びていった。
 「うりゃ――!!覚悟しろ、化け物!!」
 刀身が二メートルを超える刀を目に留まらない速度で振りかざすと、モアイガーはだるま落としのようにいくつもの断片に分かれて、崩れ落ちていった。


 「盾魔獣!私を守れ!!」
 怪人・召喚士男はアナスタシアと自分の間に盾に手足の生えたような魔獣を呼び出し、その隙に逃げようとした。

名前:盾魔獣 
召喚獣
レベル:150
特徴: レベル300の魔獣並みの防御力を持つ。


 「召喚士男、覚悟!!」
 アナスタシアは刀を振りかぶり、盾魔獣ごと召喚士男をなます切りにしてしまった。

 (一体どういう…)
アナスタシアを見た、巧人の頭の中に今度はアナスタシアの情報が入ってきた。

名前:アナスタチア(ナースチャ) パザロヴァ 19歳 人間 女
一六五センチ 五五キロ 八四 五九 八三
レベル:1263
精霊騎士
スキル:剣技 ロシア語 日本語 英語 気を込める 武器具現化補助 防具具現化補助 
 魔法:  回復
装備
称号 異世界勇者 不死の騎士(双子揃って) モンスターバスター一〇星

 (アナスタシアさんは19歳!?同い年くらいかと思ったら、二つ年上だったのか。
 それから、スレンダーだよな…
 レベル1263?!!何かの間違いだろ?!いや……あのモアイの怪物や盾の怪物を『なます切り』にするところを見ると…本当かもしれない…。

 巧人がデータを見ていろいろ悩んでいると、アナスタシアが巧人の元に走り寄ってきた。
 「巧人、ありがとう!!巧人のおかげで勝てたよ!!」

 興奮したままアナスタシアは巧人に抱き付いてきた。…ネグリジェ姿のままで…。
 「巧人、すごいよすごい!!」
 (…待って!嬉しいんだけど、ヤバイ!ヤバいんだけど!…、)
 先日見たロシア美女の○○動画のことを思いだして、巧人の真っ赤になった顔がさらに赤くなった時、アナスタシアの後ろにひょっこりとカイザスが姿を現した。

 「驚いたな!アナスタシア、そこの『美少年』と『そんな関係』になっていたとは。」
 「へ、そんな関係て?」
 「ネグリジェで抱き合う関係。」
 「………わーーーー!!」
 生死をかけた戦いに必死になって失念していたが、ネグリジェ姿であることを思いだしたアナスタシアが慌てて、胸元を隠した。

 「こ、これ着て下さい!」
 『例の部分』が立ち上がってしまわないように必死に気を逸らしながら、巧人は着ていた学生服の上着をアナスタシアの上から羽織った。
 「…巧人、ありがとう…。」



~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~


 「そなたらのおかげで、本当に助かった。まずは礼をいわせてもらう。
そして、同時にわびねばならない。本当にすまなかった。」

 巧人たちを呼び出した張本人・九代将軍家々は巧人たちに頭を下げた。

 「本来であれば、悪の首魁の『伴天連の首領』を倒して頂いた時点で、そなたらに褒美を渡して、元の世界に帰ってもらう予定であった。
 だが、召喚した魔方陣が壊されてしまったので、そなたたちを返しようがなくなってしまったのだ。重ね重ね申し訳ない。」

 三十代半ばの誠実そうな将軍は傍にいる巫女とともに沈痛な表情で頭を下げている。

 「せめてもの償いに任務の達成に関わらず、そなたらを一生に渡って、厚遇することを約束する。だが、きゃつらを壊滅できねば、この国も滅んでしまうであろう。」

 「将軍様、お顔をお上げください。少なくとも私とアナスタシアはご心配頂かなくても、元の世界に必ず帰還できます。」
 カイザスの言葉に一同はどよめく。

 「我らの仲間に優秀な魔術師と陰陽師がおりますゆえ、彼らの手を借りれば、確実に帰還できます。今まで我らの仲間が異世界へ召喚・あるいは神隠しにあった例が7例ありますが、全て帰還に成功しています。
 ただし、召喚・あるいは神隠しにあった側の時間と移行先の世界の時間差ゆえに、助けが来るのは三日後なのか、1年、あるいは5年後なのかはこちらからではうかがい知ることができないのです。
 そして、その折に、我らの仲間となった巧人も仲間の手助けにて帰還することがかなうでありましょう。」
 自信たっぷりに言い切るカイザスの言葉に、アナスタシア以外のその場にいたものの顔が明るくなる。

 「なにしろ、私とアナスタシアはもともとかようなごろつきや怪物どもを倒すための特殊任務に就いているです。ですから、『悪の秘密結社伴天連の征伐』は大船に乗ったつもりで我々にお任せいただきたい。」
 「わかった。たのんだぞ!」
 カイザスの言葉に将軍は嬉しそうに笑った。



 「で、一番活躍しなかったやつがなんで仕切ってるのさ?」
 控えの部屋に通されて、これからの打ち合わせに入る前にアナスタシアにジト目で見られてカイザスは頭をかきながら答える。
 ちなみに、アナスタシアは用意された作務衣に着替えている。

 「いやあ、面目ない。ただ、ネグリジェに巧人君の上着を羽織った、アナスタシアが話すよりは説得力があるかなと思ったもので。
 しかし、エレーナがいない中で、よくあれだけ活躍できたね。
 これも、巧人君のおかげだよ!!
 素人とは思えない、冷静な判断力、勇気、さまざまな気遣い、一緒に召喚されたのが、君でよかった!!」
 カイザスは興奮気味に巧人の両手をがっしりと握った。
 「…い、いえ、こちらこそあなたたちを一緒だったからこそ、助かりました。」

 カイザスの勢いに気圧されながらも巧人が何とか答える。
 「その日本人らしい謙虚なところも実にすばらしい!!」
 「…ど、どうも、光栄です…」
 「はいはい、そこまで!」
 にこにこしながら巧人の手を握り続けようとする、カイザスの手から巧人を救い出すように、アナスタシアが巧人を引き寄せた。

 「巧人を『毒牙にかけよう』とするのはそこまでにしたら?」
 アナスタシアが巧人を抱え込みながらカイザスを睨む。

 「いや、今君が巧人を毒牙にかけようとしているように見えるのだが…。」
 カイザスの言葉に自分の腕の中で真っ赤になっている巧人に気付き、アナスタシアは慌てて巧人を手放す。
 「ご、ごめん、巧人!決してそんなつもりでは…。」
そんなつもりであってほしいと願いながら、巧人は固まったままだった。
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