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第二章 悪夢
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「友野君」
と奈保子が軽い足取りで近づいてきた。
高校からの帰り、駅前だった。奈保子の笑顔を見て、隆夫の心臓の鼓動が早くなった。
「ねえ、何か食べていかない。何だか、この頃すごくお腹が空くんだ」
奈保子は当たり前のように言った。
「えっ、そう、いいけど」
隆夫は答えた。考えると不思議な会話だった。隆夫と奈保子は特別親しいわけではない。たまたま同じクラスにいて、同じ駅から学校に通っているだけだ。
わずか二週間前までは、合ってもせいぜい会釈をするくらいで話したこともない。
それが、「この頃、すごくお腹が空く」と、隆夫に自然に話しかけてくる。そして、隆夫自身も、その会話に何の疑問も持っていなかった。
確かに空腹だった。二人は駅を出て南口に出た。ファーストフードの店が道路沿いに並んでいた。ハンバーガー、アイスクリーム、クレープ、フライドチキン。看板が二人を誘っていた。
隆夫の左腕が奈保子に触れた。左腕から脳の中心に向かって電流が流れる。
奈保子の体臭が隆夫を包む。歩くたびに、奈保子の腕や腰が隆夫の体に触れる。
隆夫は横目で奈保子を見た。風に流れる髪、ブラウスから伸びた腕、首筋、短いスカートからのぞく白い太股。
熱い感情が湧き上がって来る。奈保子を抱きしめて、押し倒したくなる。
女子高生が三時に食べるとしたら、アイスクリームかクレープかケーキ。
しかし、奈保子の足がとまったのは、髭の太った人形が立っているフライドチキンの店だった。
相談しなくても決まっていたことだった。口に出すまでもなく分かっていた。肉、肉だ。骨の付いた肉が食べたい。体が命令していた。
フライドチキンの臭いと奈保子の臭いが混ざり合って隆夫の肺に入った。心臓の鼓動が一層強くなり、気持ちが高ぶった。食欲と性欲が綯い交ぜになった強烈な感情だった。
奈保子がフライドチキンの臭いをかぎ、潤んだような目で隆夫を見た。
「ここ」
「いいよ」
奈保子はフライドチキンが七個入ったセットメニューを注文した。
「おいしい」
骨を持ち肉を口に運んでいく。前歯で食いちぎり、咀嚼する。
滞ることなく肉は奈保子の口に運ばれていった。フライドチキンは一つ一つ、奈保子の胃の中へ消えていった。
店は満員だった。みんな恍惚とした表情で
黙々と肉を口に運んでいた。
隆夫もその一人だった。とぎれることなく肉を口に運び、かみ切っていく。
オオカミやライオンが声をあげて肉に食らいつく姿とおなじだった。
はるか昔、狩りの獲物を分け合って、火の周りで、肉をほおばる原初の人の姿がだぶって見えた。
本能で生きていた時代。法律も礼儀もテーブルマナーも無かった時代に戻っている。
七つのフライドチキンは消え、骨が箱に残った。奈保子は油の残った指を舐め、満足しきった顔で隆夫を見た。
「おいしかったね」
奈保子が笑顔で言った。
「おいしかった」
隆夫も応えた。
二人は席を立った。店を出るとき、もう一度店に戻って、食べたくなった。
店を出てから、隆夫は奈保子と並んで歩いていった。
「家は? こっちだっけ?」
隆夫が聞くと、奈保子は「うん」と微笑みながらうなずいた。
食欲が満たされ、異性が心をくすぐっていた。隆夫は感じたことのない満足感に満たされていた。
自分の体に不安が無くなれば、関心は外に向く。右肘の赤い発疹を気にしていた友野隆夫は消え失せ、日に日に力がましていく若い男がいた。
漫画の中のヒーローにあこがれる気持ちがなかったわけじゃない。しかし、憧れても余りに自分と違いすぎ、夢と呼ぶには空しすぎた。
一度も懸垂ができない男が、どうやってヒロインを助けたら良いのか。太陽を浴びるとジンマシンがでるヒーローなんているのか。
それが、今は漫画の主人公になれそうな気がする。ボールを投げれば、どこまでも飛んでいきそうだ。高い壁も軽々と飛び越えられそうな気がする。
拳を握ると力が腕の隅々まで行き渡っていく。今なら喧嘩も―そんなこと考えたこともなかったが―勝つ自信がある。
公園があった。隆夫が雪を見た公園だった。
公園に入り、二人でベンチにすわった。右腕に奈保子の体温が感じられた。
こうして異性と二人だけで話すのは、隆夫も奈保子も初めてだった。
バレンタインデーもホワイトデーも、プレゼントも携帯電話のメールも、木陰でうつむいて手をつなぎ、抱き合いたいのに我慢していることも、全てテレビの中の出来事のように自分には関係のない世界だった。
「さっきのフライドチキンおいしかったね」
奈保子が隆夫を見る。
「そうだね」
「また一緒に食べたいね」
「そうだね」
話題は何でもよかった。
「昨日はびっくりしちゃった」
「僕も、まさか同じお握りを取ろうとしてるなんてね」
「ほんと」
今は、どうでもいいような事で笑っている。
靴のつま先で転がす小石の動きさえ可笑しい。心が浮き立っている。顔は光があふれていた。病弱で暗くくすんでいた顔が光っている。それは、奈保子も同じだった。前髪を垂らして顔を隠していたのに、顔を上げて真っ直ぐ前を見ている。
「夏休みは、どうするの」
奈保子が隆夫にたずねた。
「別に……何も、決めてないけど。君は、アルバイトだっけ」
「そう、今年は、少しいろいろやってみようかなって」
「そうだね」
今年の夏休みは何か新しいことをしよう。
「今週、携帯電話も買ってもらうつもり」
「いいね。僕も頼んでみようかな」
携帯電話なんて、考えたこともなかった。どうせ、メールを送る相手も送ってくる人もいなかった。
「買ったら、メールアドレス、教えてね」
と奈保子が言い、隆夫はうなずいた。
「何だか、今、すごく嬉しい。こんな気持ち、初めて。友野君は?」
「えっ、僕は……」
僕もそうだ、と言いかけて、言葉が止まった。小さなトゲが心を突いたような気がした。それでも、それは一瞬だけで、奈保子の笑顔が小さな痛みを消してしまった。
「あのさ、一度、プールに行かない?」
隆夫が言うと、奈保子は、少し驚いたような顔をした。
驚いたのは隆夫も同じだった。自分の口からプールに誘うのは信じられなかった。だいたい自分は泳げない。ただ、今はなぜか泳ぎなんか簡単にできるような気がしていた。
「……うん。いいよ」
奈保子は答えた。
「やった」
隆夫は立ち上がり、ブランコに乗った。大きくこいで、空中に飛び出し、手を広げて降りた。
走っていって、公園の低い鉄棒に飛び乗り、バランスをとって鉄棒の上を歩いていき、端まで行って、飛び降りた。
「私もやってみようかな」
奈保子が言って、隆夫と同じように、ブランコから飛び、走って鉄棒に飛び乗った。
奈保子が宙に飛ぶたびに、スカートの裾がめくれ奈保子の白い太股見えた。
鉄棒から飛び降りようとしたとき、バランスを崩した。
奈保子が隆夫の向かって落ちてきて、隆夫が抱き留めた。
「ごめんなさい」
奈保子の顔が隆夫の目の前にあった。目が合う。息がかかる。テレビドラマならば、ここでどうするだろう。抱きしめて、口づけをして……。
無意識に隆夫の腕に力が入る。奈保子が力を抜いて、隆夫に体を預ける。
キスってどうやればいい。誰も教えてくれない……。
急にパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。音が公園に近づいて来て、隆夫と奈保子はあわてて体を離した。
パトカーは公園の横を通り、住宅街の中に走り去っていった。
住宅街の中でパトカーは止まったらしく、サイレンの音が動かなくなった。
「事故かな」
「すぐそこみたい」
二人は公園を出て、音の方角に歩いていった。
パトカーは、住宅街の真ん中に止まっていた。
幾人もの警察官が忙しく動き回り、立ち入り禁止のロープを張っていた。
家の前にはすでに幾重にも人垣ができていて、隆夫は人垣の後ろから背伸びをして、ようやく、家の玄関を見ることができた。
「田部井さん……」
「息子さんと二人暮らしで……」
「二人とも無くなって……」
野次馬の会話が断片的に脈絡無く聞こえてきた。
「お母さんが具合が悪くて……」
「自殺……」
「二人で……」
事件の家から、隆夫の家まで、二百メートルと離れていなかった。
「田部井?」
隆夫は奈保子の顔を見た。
奈保子は首を振った。
「息子さんも亡くなったらしいわよ」
「心中なの?」
「さあ」
無責任な野次馬のうわさ話が、小声で交わされていた。
「後ろに下がってください」
警察官が前に出ようとする人垣を後ろに押し戻していた。
「田部井さんとは、昨日、会ったのよ。駅前のスーパーで。病気が治ったみたいで、具合が良いって話していたのに、人の命なんて分からないわよね」
「あら、そう。先月には、寝たきりで、もう長くないみたいな話を聞いたのよ」
近所の主婦が人の不幸を楽しんでいた。小声なのだが言葉が弾んでいる。大抵の人にとって幸福は相対的な物だから、大きな不幸があれば、自分は幸せな気分になれる。
「せっかく、治ったのにねぇ」
誰かがつぶやいた。
急に、隆夫の胸が苦しくなった。
奈保子と一緒にフライドチキンを食べた幸せの余韻が消えていった。公園で感じた心臓の鼓動も熱い感情も急速に冷えていった。
「病気が治った」
少し前、何度も聞いた言葉だった。
病気が治った。治したのは誰だ。誰がどうやって治したんだ。
叔父のガン。寝たきりのおばあさん。透の腎臓病。自分のぜんそくと発疹。
普通の人は、このごろ体調が良いぐらいにしか感じていないのだろう。きっと、ニキビが一つ消え、セックスの回数が増えた程度だ。
元々健康だった人が更に健康になった所で特に気にはしない。
隆夫の父や母が肩こりが消え、胃の調子が良くなってもほとんど気にしていないように、大抵の人にとって健康は空気のように当たり前のことだ。
しかし、病気を抱えた人にとって、特に死にそうだった人にとって、健康は劇的な変化だ。
「あら。隆夫」
隆夫の母、信子が野次馬の中にいた。
信子は隆夫を見つけて、声をかけた。
「ただいま」と隆夫は場違いな返事をした。
奈保子が反射的に信子に会釈した。信子は、
「あらっ」と口を開けて、奈保子を見た。
引きこもりがちで、病弱な高校生の息子が、女の子と一緒にいる。良かったじゃない。信子の表情が明るくなった。
野次馬の目が隆夫と奈保子に向けられていた。若い男女が幸せそうに寄り添っている。きっと、あの二人は……。妄想が脳を支配する。関心が事件から二人に移る。好奇の目が二人に向けられていた。隆夫は野次馬の輪が自分達を取り囲んできそうに思えた。
「行こう」
隆夫は奈保子の手を引いて、野次馬の視線から離れた。
隆夫は何かに追われるように、田部井の家から離れた。角を二回曲がったところで、隆夫は後ろを振り返った。
誰も追っては来なかった。隆夫は足をゆるめた。そして、「ふう」と、息を吐いた。
隆夫は奈保子の手を握っていることに気づき、あわてて手を離した。
「あ、あの、それじゃ。僕、こっちだから」
隆夫は右を指さした。
「私はこっちなの」
奈保子は左を示した。
「明日。学校で」
「ええ、明日」
隆夫は奈保子と別れた。
奈保子が手を振っていた。風に奈保子のスカートが揺れた。奈保子の白い太股が露わになった。
急に震えが来た。強烈な欲求が足もとから突き上げてきた。脳が熱く、心臓の鼓動が激しかった。全身に鳥肌が立っている。隆夫は何か思い切り叫びたかった。性欲とも少し違う、体験したことのない感情だった。
奈保子の姿がしだいに遠ざかっていった。
隆夫は家に向かって歩き出した。サイレンはまだ聞こえていた。体の震えは、しだいにおさまっていく。隆夫は腕時計を見た。三時五十分。見ても特に意味はなかった。健康なら時間は意識しなくても過ぎていく。
家の前で、スーパーの袋を下げた奥さんが三人、立ち話をしていた。
「田部井さんて、息子さんと二人だけだったんでしょ」
「そうそう、少し暗そうな息子さん」
「二人とも死んで……」
隆夫は三人の横をすり抜けるようにして家に入った。
隆夫は自分の部屋に入ると、着替えもせずに、ベッドに横になった。奈保子の笑顔、脚、腕、うなじ、声が頭のなかで混ざり合いながら回り、体の中で花火がはじけた。
田部井の家の間取りは、隆夫の家とほぼ同じだった。
浦積市美浜と呼ばれる地区には、およそ百軒の家が並んでいた。二十年前に二年かけて分譲されたのだが、分譲会社は土地を五十坪に切り分け、どの家も似たような間取りで売り出した。
およそ工夫のない住宅地なのだが、都心からの距離に比べて値段が安いこともあり、当時は建てたそばから次々と売れていった。
間取りは4LDK。子ども二人の四人家族を想定し、二階に子ども部屋が二部屋用意されていた。
田部井の家は設計者の思惑とは反し、年老いた母親と髪の毛が薄くなり始めた息子の二人暮らしだった。
田部井公治の母、久江は糖尿病を患い、二年前、ひざを痛めてからは、寝たり起きたりを繰り返す生活を送っていた。
田部井が浦積に家を購入したのは、三年前だった。田部井が勤めていた薬品会社の研究所が浦積市に移転し、田部井もそれに合わせて、転居してきた。
浦積に初めて来たとき、駅前の不動産屋で目にしたのがこの家の売り出し広告だった。
不動産屋は田部井を家に案内し、
「前に住んでいた方が急に転勤されることになって、これはお買い得の物件ですよ」ともみ手をしながら言った。
本当はリストラに合い、サラ金の借金から逃れるために売りに出したのだという事は、もちろん一言もふれなかった。
ともかく、田部井は賃貸アパートを出て、中古ではあるが庭付き一戸建ての家を買った。病弱な母親の面倒をみながら、家を買った孝行息子だった。
田部井と母、久江の遺体は一階の居間に残されていた。
一体は明らかに自殺だった。田部井は、居間のソファにうずくまるようにして倒れていて、前のテーブルにはガラスのコップに水が半分残っていた。
服毒自殺。使用した毒薬は勤めていた研究所から持ち出したものと推察された。
もう一体が難物だった。失血死。久江の体は獣にでも食われたように、頸動脈が食いちぎられ、首筋から肩にかけて肉が一部無くなっていた。
浦積は都会とは言えないが、獰猛な野獣が住む場所ではない。
「野良犬か?」
大型の犬。犬がかつてオオカミだったことを考えれば、人を襲っても不思議ではないのだが……。
「ペットか何か飼っていたのか?」
近頃は変わったペットを飼う人間がいる。ワニやトラ、鑑識が知らない獰猛な野獣がいるのかもしれない。しかし、田部井の家には、ペットを飼っていた形跡はなかった。
さらに、玄関のドアも部屋の窓もいずれも内側から施錠されていた。家のどこにも、外から大型の動物が入った形跡は見あたらなかった。
取りあえずの結論は、何らかの理由で母親が死に―もちろん、その理由が一番問題なのだが―悲観して息子が自殺した。
田部井は中学生のときに父親を亡くしていることもあり、母親を過剰なほど大事にしていた。母親も息子を溺愛していた。父親は死んでいる、兄弟もいない。
「自殺で済ませよう」
ささやく声が聞こえていた。母親は体が弱く、ガンも見つかっていたらしいじゃないか。親しい親族もいないらしい。
「深入りするな」
調べれば調べるほど、重苦しい事件になりそうだった。
「どうせ……」
そう、真実を明らかにしても喜ぶ人間はいないのだから。
青いシートを被されて、母親と息子の遺体は静かに運び出されていった。
と奈保子が軽い足取りで近づいてきた。
高校からの帰り、駅前だった。奈保子の笑顔を見て、隆夫の心臓の鼓動が早くなった。
「ねえ、何か食べていかない。何だか、この頃すごくお腹が空くんだ」
奈保子は当たり前のように言った。
「えっ、そう、いいけど」
隆夫は答えた。考えると不思議な会話だった。隆夫と奈保子は特別親しいわけではない。たまたま同じクラスにいて、同じ駅から学校に通っているだけだ。
わずか二週間前までは、合ってもせいぜい会釈をするくらいで話したこともない。
それが、「この頃、すごくお腹が空く」と、隆夫に自然に話しかけてくる。そして、隆夫自身も、その会話に何の疑問も持っていなかった。
確かに空腹だった。二人は駅を出て南口に出た。ファーストフードの店が道路沿いに並んでいた。ハンバーガー、アイスクリーム、クレープ、フライドチキン。看板が二人を誘っていた。
隆夫の左腕が奈保子に触れた。左腕から脳の中心に向かって電流が流れる。
奈保子の体臭が隆夫を包む。歩くたびに、奈保子の腕や腰が隆夫の体に触れる。
隆夫は横目で奈保子を見た。風に流れる髪、ブラウスから伸びた腕、首筋、短いスカートからのぞく白い太股。
熱い感情が湧き上がって来る。奈保子を抱きしめて、押し倒したくなる。
女子高生が三時に食べるとしたら、アイスクリームかクレープかケーキ。
しかし、奈保子の足がとまったのは、髭の太った人形が立っているフライドチキンの店だった。
相談しなくても決まっていたことだった。口に出すまでもなく分かっていた。肉、肉だ。骨の付いた肉が食べたい。体が命令していた。
フライドチキンの臭いと奈保子の臭いが混ざり合って隆夫の肺に入った。心臓の鼓動が一層強くなり、気持ちが高ぶった。食欲と性欲が綯い交ぜになった強烈な感情だった。
奈保子がフライドチキンの臭いをかぎ、潤んだような目で隆夫を見た。
「ここ」
「いいよ」
奈保子はフライドチキンが七個入ったセットメニューを注文した。
「おいしい」
骨を持ち肉を口に運んでいく。前歯で食いちぎり、咀嚼する。
滞ることなく肉は奈保子の口に運ばれていった。フライドチキンは一つ一つ、奈保子の胃の中へ消えていった。
店は満員だった。みんな恍惚とした表情で
黙々と肉を口に運んでいた。
隆夫もその一人だった。とぎれることなく肉を口に運び、かみ切っていく。
オオカミやライオンが声をあげて肉に食らいつく姿とおなじだった。
はるか昔、狩りの獲物を分け合って、火の周りで、肉をほおばる原初の人の姿がだぶって見えた。
本能で生きていた時代。法律も礼儀もテーブルマナーも無かった時代に戻っている。
七つのフライドチキンは消え、骨が箱に残った。奈保子は油の残った指を舐め、満足しきった顔で隆夫を見た。
「おいしかったね」
奈保子が笑顔で言った。
「おいしかった」
隆夫も応えた。
二人は席を立った。店を出るとき、もう一度店に戻って、食べたくなった。
店を出てから、隆夫は奈保子と並んで歩いていった。
「家は? こっちだっけ?」
隆夫が聞くと、奈保子は「うん」と微笑みながらうなずいた。
食欲が満たされ、異性が心をくすぐっていた。隆夫は感じたことのない満足感に満たされていた。
自分の体に不安が無くなれば、関心は外に向く。右肘の赤い発疹を気にしていた友野隆夫は消え失せ、日に日に力がましていく若い男がいた。
漫画の中のヒーローにあこがれる気持ちがなかったわけじゃない。しかし、憧れても余りに自分と違いすぎ、夢と呼ぶには空しすぎた。
一度も懸垂ができない男が、どうやってヒロインを助けたら良いのか。太陽を浴びるとジンマシンがでるヒーローなんているのか。
それが、今は漫画の主人公になれそうな気がする。ボールを投げれば、どこまでも飛んでいきそうだ。高い壁も軽々と飛び越えられそうな気がする。
拳を握ると力が腕の隅々まで行き渡っていく。今なら喧嘩も―そんなこと考えたこともなかったが―勝つ自信がある。
公園があった。隆夫が雪を見た公園だった。
公園に入り、二人でベンチにすわった。右腕に奈保子の体温が感じられた。
こうして異性と二人だけで話すのは、隆夫も奈保子も初めてだった。
バレンタインデーもホワイトデーも、プレゼントも携帯電話のメールも、木陰でうつむいて手をつなぎ、抱き合いたいのに我慢していることも、全てテレビの中の出来事のように自分には関係のない世界だった。
「さっきのフライドチキンおいしかったね」
奈保子が隆夫を見る。
「そうだね」
「また一緒に食べたいね」
「そうだね」
話題は何でもよかった。
「昨日はびっくりしちゃった」
「僕も、まさか同じお握りを取ろうとしてるなんてね」
「ほんと」
今は、どうでもいいような事で笑っている。
靴のつま先で転がす小石の動きさえ可笑しい。心が浮き立っている。顔は光があふれていた。病弱で暗くくすんでいた顔が光っている。それは、奈保子も同じだった。前髪を垂らして顔を隠していたのに、顔を上げて真っ直ぐ前を見ている。
「夏休みは、どうするの」
奈保子が隆夫にたずねた。
「別に……何も、決めてないけど。君は、アルバイトだっけ」
「そう、今年は、少しいろいろやってみようかなって」
「そうだね」
今年の夏休みは何か新しいことをしよう。
「今週、携帯電話も買ってもらうつもり」
「いいね。僕も頼んでみようかな」
携帯電話なんて、考えたこともなかった。どうせ、メールを送る相手も送ってくる人もいなかった。
「買ったら、メールアドレス、教えてね」
と奈保子が言い、隆夫はうなずいた。
「何だか、今、すごく嬉しい。こんな気持ち、初めて。友野君は?」
「えっ、僕は……」
僕もそうだ、と言いかけて、言葉が止まった。小さなトゲが心を突いたような気がした。それでも、それは一瞬だけで、奈保子の笑顔が小さな痛みを消してしまった。
「あのさ、一度、プールに行かない?」
隆夫が言うと、奈保子は、少し驚いたような顔をした。
驚いたのは隆夫も同じだった。自分の口からプールに誘うのは信じられなかった。だいたい自分は泳げない。ただ、今はなぜか泳ぎなんか簡単にできるような気がしていた。
「……うん。いいよ」
奈保子は答えた。
「やった」
隆夫は立ち上がり、ブランコに乗った。大きくこいで、空中に飛び出し、手を広げて降りた。
走っていって、公園の低い鉄棒に飛び乗り、バランスをとって鉄棒の上を歩いていき、端まで行って、飛び降りた。
「私もやってみようかな」
奈保子が言って、隆夫と同じように、ブランコから飛び、走って鉄棒に飛び乗った。
奈保子が宙に飛ぶたびに、スカートの裾がめくれ奈保子の白い太股見えた。
鉄棒から飛び降りようとしたとき、バランスを崩した。
奈保子が隆夫の向かって落ちてきて、隆夫が抱き留めた。
「ごめんなさい」
奈保子の顔が隆夫の目の前にあった。目が合う。息がかかる。テレビドラマならば、ここでどうするだろう。抱きしめて、口づけをして……。
無意識に隆夫の腕に力が入る。奈保子が力を抜いて、隆夫に体を預ける。
キスってどうやればいい。誰も教えてくれない……。
急にパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。音が公園に近づいて来て、隆夫と奈保子はあわてて体を離した。
パトカーは公園の横を通り、住宅街の中に走り去っていった。
住宅街の中でパトカーは止まったらしく、サイレンの音が動かなくなった。
「事故かな」
「すぐそこみたい」
二人は公園を出て、音の方角に歩いていった。
パトカーは、住宅街の真ん中に止まっていた。
幾人もの警察官が忙しく動き回り、立ち入り禁止のロープを張っていた。
家の前にはすでに幾重にも人垣ができていて、隆夫は人垣の後ろから背伸びをして、ようやく、家の玄関を見ることができた。
「田部井さん……」
「息子さんと二人暮らしで……」
「二人とも無くなって……」
野次馬の会話が断片的に脈絡無く聞こえてきた。
「お母さんが具合が悪くて……」
「自殺……」
「二人で……」
事件の家から、隆夫の家まで、二百メートルと離れていなかった。
「田部井?」
隆夫は奈保子の顔を見た。
奈保子は首を振った。
「息子さんも亡くなったらしいわよ」
「心中なの?」
「さあ」
無責任な野次馬のうわさ話が、小声で交わされていた。
「後ろに下がってください」
警察官が前に出ようとする人垣を後ろに押し戻していた。
「田部井さんとは、昨日、会ったのよ。駅前のスーパーで。病気が治ったみたいで、具合が良いって話していたのに、人の命なんて分からないわよね」
「あら、そう。先月には、寝たきりで、もう長くないみたいな話を聞いたのよ」
近所の主婦が人の不幸を楽しんでいた。小声なのだが言葉が弾んでいる。大抵の人にとって幸福は相対的な物だから、大きな不幸があれば、自分は幸せな気分になれる。
「せっかく、治ったのにねぇ」
誰かがつぶやいた。
急に、隆夫の胸が苦しくなった。
奈保子と一緒にフライドチキンを食べた幸せの余韻が消えていった。公園で感じた心臓の鼓動も熱い感情も急速に冷えていった。
「病気が治った」
少し前、何度も聞いた言葉だった。
病気が治った。治したのは誰だ。誰がどうやって治したんだ。
叔父のガン。寝たきりのおばあさん。透の腎臓病。自分のぜんそくと発疹。
普通の人は、このごろ体調が良いぐらいにしか感じていないのだろう。きっと、ニキビが一つ消え、セックスの回数が増えた程度だ。
元々健康だった人が更に健康になった所で特に気にはしない。
隆夫の父や母が肩こりが消え、胃の調子が良くなってもほとんど気にしていないように、大抵の人にとって健康は空気のように当たり前のことだ。
しかし、病気を抱えた人にとって、特に死にそうだった人にとって、健康は劇的な変化だ。
「あら。隆夫」
隆夫の母、信子が野次馬の中にいた。
信子は隆夫を見つけて、声をかけた。
「ただいま」と隆夫は場違いな返事をした。
奈保子が反射的に信子に会釈した。信子は、
「あらっ」と口を開けて、奈保子を見た。
引きこもりがちで、病弱な高校生の息子が、女の子と一緒にいる。良かったじゃない。信子の表情が明るくなった。
野次馬の目が隆夫と奈保子に向けられていた。若い男女が幸せそうに寄り添っている。きっと、あの二人は……。妄想が脳を支配する。関心が事件から二人に移る。好奇の目が二人に向けられていた。隆夫は野次馬の輪が自分達を取り囲んできそうに思えた。
「行こう」
隆夫は奈保子の手を引いて、野次馬の視線から離れた。
隆夫は何かに追われるように、田部井の家から離れた。角を二回曲がったところで、隆夫は後ろを振り返った。
誰も追っては来なかった。隆夫は足をゆるめた。そして、「ふう」と、息を吐いた。
隆夫は奈保子の手を握っていることに気づき、あわてて手を離した。
「あ、あの、それじゃ。僕、こっちだから」
隆夫は右を指さした。
「私はこっちなの」
奈保子は左を示した。
「明日。学校で」
「ええ、明日」
隆夫は奈保子と別れた。
奈保子が手を振っていた。風に奈保子のスカートが揺れた。奈保子の白い太股が露わになった。
急に震えが来た。強烈な欲求が足もとから突き上げてきた。脳が熱く、心臓の鼓動が激しかった。全身に鳥肌が立っている。隆夫は何か思い切り叫びたかった。性欲とも少し違う、体験したことのない感情だった。
奈保子の姿がしだいに遠ざかっていった。
隆夫は家に向かって歩き出した。サイレンはまだ聞こえていた。体の震えは、しだいにおさまっていく。隆夫は腕時計を見た。三時五十分。見ても特に意味はなかった。健康なら時間は意識しなくても過ぎていく。
家の前で、スーパーの袋を下げた奥さんが三人、立ち話をしていた。
「田部井さんて、息子さんと二人だけだったんでしょ」
「そうそう、少し暗そうな息子さん」
「二人とも死んで……」
隆夫は三人の横をすり抜けるようにして家に入った。
隆夫は自分の部屋に入ると、着替えもせずに、ベッドに横になった。奈保子の笑顔、脚、腕、うなじ、声が頭のなかで混ざり合いながら回り、体の中で花火がはじけた。
田部井の家の間取りは、隆夫の家とほぼ同じだった。
浦積市美浜と呼ばれる地区には、およそ百軒の家が並んでいた。二十年前に二年かけて分譲されたのだが、分譲会社は土地を五十坪に切り分け、どの家も似たような間取りで売り出した。
およそ工夫のない住宅地なのだが、都心からの距離に比べて値段が安いこともあり、当時は建てたそばから次々と売れていった。
間取りは4LDK。子ども二人の四人家族を想定し、二階に子ども部屋が二部屋用意されていた。
田部井の家は設計者の思惑とは反し、年老いた母親と髪の毛が薄くなり始めた息子の二人暮らしだった。
田部井公治の母、久江は糖尿病を患い、二年前、ひざを痛めてからは、寝たり起きたりを繰り返す生活を送っていた。
田部井が浦積に家を購入したのは、三年前だった。田部井が勤めていた薬品会社の研究所が浦積市に移転し、田部井もそれに合わせて、転居してきた。
浦積に初めて来たとき、駅前の不動産屋で目にしたのがこの家の売り出し広告だった。
不動産屋は田部井を家に案内し、
「前に住んでいた方が急に転勤されることになって、これはお買い得の物件ですよ」ともみ手をしながら言った。
本当はリストラに合い、サラ金の借金から逃れるために売りに出したのだという事は、もちろん一言もふれなかった。
ともかく、田部井は賃貸アパートを出て、中古ではあるが庭付き一戸建ての家を買った。病弱な母親の面倒をみながら、家を買った孝行息子だった。
田部井と母、久江の遺体は一階の居間に残されていた。
一体は明らかに自殺だった。田部井は、居間のソファにうずくまるようにして倒れていて、前のテーブルにはガラスのコップに水が半分残っていた。
服毒自殺。使用した毒薬は勤めていた研究所から持ち出したものと推察された。
もう一体が難物だった。失血死。久江の体は獣にでも食われたように、頸動脈が食いちぎられ、首筋から肩にかけて肉が一部無くなっていた。
浦積は都会とは言えないが、獰猛な野獣が住む場所ではない。
「野良犬か?」
大型の犬。犬がかつてオオカミだったことを考えれば、人を襲っても不思議ではないのだが……。
「ペットか何か飼っていたのか?」
近頃は変わったペットを飼う人間がいる。ワニやトラ、鑑識が知らない獰猛な野獣がいるのかもしれない。しかし、田部井の家には、ペットを飼っていた形跡はなかった。
さらに、玄関のドアも部屋の窓もいずれも内側から施錠されていた。家のどこにも、外から大型の動物が入った形跡は見あたらなかった。
取りあえずの結論は、何らかの理由で母親が死に―もちろん、その理由が一番問題なのだが―悲観して息子が自殺した。
田部井は中学生のときに父親を亡くしていることもあり、母親を過剰なほど大事にしていた。母親も息子を溺愛していた。父親は死んでいる、兄弟もいない。
「自殺で済ませよう」
ささやく声が聞こえていた。母親は体が弱く、ガンも見つかっていたらしいじゃないか。親しい親族もいないらしい。
「深入りするな」
調べれば調べるほど、重苦しい事件になりそうだった。
「どうせ……」
そう、真実を明らかにしても喜ぶ人間はいないのだから。
青いシートを被されて、母親と息子の遺体は静かに運び出されていった。
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