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小さな女性
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学校の火災から2日経った。
回ってきた連絡に依ると、思っていた以上に大事になっているらしく暫く休校になるとか。
「いやぁーこわかったねー」
「皆怪我なくてよかったよ」
そして現在、私の家に実鈴と花南が遊びに来ている。
私の部屋のテーブルを囲んで三人でだらだらと好き勝手に足をのばして読書。
「なーんか聞いた話に依ると、理科室が爆発したらしいよー」
花南が漫画を読みながら上の空で会話を始める。
「それは聞いたことある」
「すぐ回ってきた情報じゃんかぁ」
「じゃあねーんーとねー、生徒が行方不明っていうのはー?」
「「それも」」
「んーじゃあーじゃあー……」
行方不明の話も生徒間のネットワークで早くに回ってきた。同学年の男子生徒二人が行方不明らしい。
それ以上の情報は無く、知り合いでもないし、今のところ進展もないので興味は薄い。
「……あー、あのエレベーターが掲示板で噂になってるっていうのはー?」
「「え、知らない」」
中身のありそうな話が出てきた。私と実鈴は漫画を読む手を止めて花南を見た。
花南はそれでも読む手を休めずにぼんやりと続ける。
「えっとー、他にもチケットの夢見たとかいう人がちらほら掲示板に聞き込みしててねー、釣りかはわかんないけど音信不通の人とか出てきてるみたいなんだー」
実鈴と目があった。
「エレベーターに乗ったってことかな」
「あくまでもネットだから鵜呑みにはできないけどねぇ。でもチケットとかエレベーターを知ってる人が他にもいるのは本当にかも」
「エレベーターの写真は乗ってたよー。私たちが見たものと同じだった。まぁ釣りだと思ってる人が殆どみたいだけど、これはさぁー」
「チケットのことを知ってる人からしたら……違うよねぇ」
ふわふわした会話が、途端に重くなった。
「音信不通ってことはエレベーターに乗ったかもってことだよね。それって……その……エレベーターの競争率上がるってこと、かな?」
実鈴が口許に手を当てて眉を潜めた。
そう、最初のルールにはエレベーターは一つにつき一度とあった。
「そもそも、チケットの所持者数がわからないからなんともいえないかなぁ」
「あ、そっか」
エレベーターの場所と数は既に持っている情報。でも私以外のチケット所持者についての情報はひとつもない。
顔を見合わせて黙りこむ私と実鈴をよそに、花南が漫画を片付けて立ち上がった。
「チケット所持者探ししてみるー?」
唐突提案。
「そんなに身近にいるものなのかな」
「とりあえず出掛けようよーこないだ見たエレベーターとか気にならないー?」
そう言われると気になってくる。あのままなのか、誰かが使ったのか。
「行ってみよー!」
花南が部屋の外を指差して笑った。
「………というわけで来たけれどー」
「ない」
「ねぇ」
例のビルの裏に来た私たちは呆然とエレベーターがあったはずの空間に立っていた。
無い。エレベーターが無い。
誰かが使ったんだ、きっと。
「実物が無くなると急に覚めてきちゃうねぇ……」
「わかるよ、夢だったのかなって」
「写真あるから、ちゃんとここにあったからー!」
肩を落として裏口から表に出ると、一階の古本屋の前で背の小さな女性とひょろひょろのおじいさんが立ち話をしていた。
「………ぅなんですか」
「困ったもんだよな、急に連絡に取れなくなっちまうんだから」
「お休みの連絡も無かったんですよね?」
「無かったなぁ。本当にぷっつりと忽然と。働いてたのはあの子だけだから、このじじい一人じゃあしんどいもんだ」
「困りましたね……」
状況からして先日来たときにレジにいた女の人が連絡取れなくなってるってところか。
オタクの妄想力をフル回転させてその状況を眺めていると、話をしていた女性と目があった。
私より頭一つ小さなショートボブの女性。かっちりめでシンプルな服装に、濃すぎないナチュラルなメイク。
できる大人という言葉がぴったり合いそうな人。
「貴方達」
ハキハキした声だ。目もまっすぐ私たちを見て。
「どうしてビルの裏から出てきたの?」
ぎくり。
「え、えへへーこの先になにがあるのかなーって気になっちゃって!」
花南がへらへらと笑いながら返すと、その女性は小さく首を傾げ、おじいさんに頭を下げてこちらに向けて歩いてきた。
「こんにちは、地元の子?」
「はい、そうです」
三人の中でも一番ハキハキ会話をする実鈴が前に出た。
「もしかして火事の起きた学校の生徒?」
「そうです、今休校になってて」
「そうよね、大変な事件だったし……。
ところで、貴方達
【チケット】
持ってるよね」
「え……」
思いもよらない言葉がその女性から発せられ、思わず私が反応してしまった。
女性が私に視線を向けて。
「貴方なんだ、持ってるの」
その場の空気が凍りだす。
回ってきた連絡に依ると、思っていた以上に大事になっているらしく暫く休校になるとか。
「いやぁーこわかったねー」
「皆怪我なくてよかったよ」
そして現在、私の家に実鈴と花南が遊びに来ている。
私の部屋のテーブルを囲んで三人でだらだらと好き勝手に足をのばして読書。
「なーんか聞いた話に依ると、理科室が爆発したらしいよー」
花南が漫画を読みながら上の空で会話を始める。
「それは聞いたことある」
「すぐ回ってきた情報じゃんかぁ」
「じゃあねーんーとねー、生徒が行方不明っていうのはー?」
「「それも」」
「んーじゃあーじゃあー……」
行方不明の話も生徒間のネットワークで早くに回ってきた。同学年の男子生徒二人が行方不明らしい。
それ以上の情報は無く、知り合いでもないし、今のところ進展もないので興味は薄い。
「……あー、あのエレベーターが掲示板で噂になってるっていうのはー?」
「「え、知らない」」
中身のありそうな話が出てきた。私と実鈴は漫画を読む手を止めて花南を見た。
花南はそれでも読む手を休めずにぼんやりと続ける。
「えっとー、他にもチケットの夢見たとかいう人がちらほら掲示板に聞き込みしててねー、釣りかはわかんないけど音信不通の人とか出てきてるみたいなんだー」
実鈴と目があった。
「エレベーターに乗ったってことかな」
「あくまでもネットだから鵜呑みにはできないけどねぇ。でもチケットとかエレベーターを知ってる人が他にもいるのは本当にかも」
「エレベーターの写真は乗ってたよー。私たちが見たものと同じだった。まぁ釣りだと思ってる人が殆どみたいだけど、これはさぁー」
「チケットのことを知ってる人からしたら……違うよねぇ」
ふわふわした会話が、途端に重くなった。
「音信不通ってことはエレベーターに乗ったかもってことだよね。それって……その……エレベーターの競争率上がるってこと、かな?」
実鈴が口許に手を当てて眉を潜めた。
そう、最初のルールにはエレベーターは一つにつき一度とあった。
「そもそも、チケットの所持者数がわからないからなんともいえないかなぁ」
「あ、そっか」
エレベーターの場所と数は既に持っている情報。でも私以外のチケット所持者についての情報はひとつもない。
顔を見合わせて黙りこむ私と実鈴をよそに、花南が漫画を片付けて立ち上がった。
「チケット所持者探ししてみるー?」
唐突提案。
「そんなに身近にいるものなのかな」
「とりあえず出掛けようよーこないだ見たエレベーターとか気にならないー?」
そう言われると気になってくる。あのままなのか、誰かが使ったのか。
「行ってみよー!」
花南が部屋の外を指差して笑った。
「………というわけで来たけれどー」
「ない」
「ねぇ」
例のビルの裏に来た私たちは呆然とエレベーターがあったはずの空間に立っていた。
無い。エレベーターが無い。
誰かが使ったんだ、きっと。
「実物が無くなると急に覚めてきちゃうねぇ……」
「わかるよ、夢だったのかなって」
「写真あるから、ちゃんとここにあったからー!」
肩を落として裏口から表に出ると、一階の古本屋の前で背の小さな女性とひょろひょろのおじいさんが立ち話をしていた。
「………ぅなんですか」
「困ったもんだよな、急に連絡に取れなくなっちまうんだから」
「お休みの連絡も無かったんですよね?」
「無かったなぁ。本当にぷっつりと忽然と。働いてたのはあの子だけだから、このじじい一人じゃあしんどいもんだ」
「困りましたね……」
状況からして先日来たときにレジにいた女の人が連絡取れなくなってるってところか。
オタクの妄想力をフル回転させてその状況を眺めていると、話をしていた女性と目があった。
私より頭一つ小さなショートボブの女性。かっちりめでシンプルな服装に、濃すぎないナチュラルなメイク。
できる大人という言葉がぴったり合いそうな人。
「貴方達」
ハキハキした声だ。目もまっすぐ私たちを見て。
「どうしてビルの裏から出てきたの?」
ぎくり。
「え、えへへーこの先になにがあるのかなーって気になっちゃって!」
花南がへらへらと笑いながら返すと、その女性は小さく首を傾げ、おじいさんに頭を下げてこちらに向けて歩いてきた。
「こんにちは、地元の子?」
「はい、そうです」
三人の中でも一番ハキハキ会話をする実鈴が前に出た。
「もしかして火事の起きた学校の生徒?」
「そうです、今休校になってて」
「そうよね、大変な事件だったし……。
ところで、貴方達
【チケット】
持ってるよね」
「え……」
思いもよらない言葉がその女性から発せられ、思わず私が反応してしまった。
女性が私に視線を向けて。
「貴方なんだ、持ってるの」
その場の空気が凍りだす。
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