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一・最悪なタイミング

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「私、子供を身篭ったの…徳さんとの子供なの。嬉しくて嬉しくて……ふふっ、まだ気が早いかな?」
「おめでとう! 芹菜! 妊娠って…何ヶ月?」
「まだ三ヶ月。お医者さんも、見つけずらかったらしいの。でも、やっと見つかって。みんなに早く発表したくて…ごめんね?変な時間に呼んじゃって」
 芹菜はお淑やかで、可愛くて、でも、強い人。私の自慢の友人。周りの人もそれは承知で、芹菜と付き合える旦那さん、徳さんを、羨ましいというくらい。
「おめでとう、芹菜。子育ては大変よ?」
「芹菜ちゃんおめでとー! 念願の子供じゃん! 困ったことあったら相談しろよー!」
 知恵と和樹は、高校時代からのカップルで、高校のベストカップル賞をとってったほどの仲良し。二人とも顔面偏差値はいいから、ちょっとずるい。

 そんな私も、2年後に籍を入れる彼氏がいる。彼氏も知恵たちのことは知ってるけど、見ず知らずの自分が行くのも、って遠慮して、今日は来ていない。

 私たちは高校からの友人。他にもいたけれど、大学を卒業した今、地元に残っているのは私達くらい。ほかはみんな上京してしまった。
「さぁて、じゃあ私達はお祝い買わなきゃね!」
「えっ? そんなのいいよ! たかるために呼んだんじゃないのよ! ただ発表しただけだから、気を遣わないで?」
「いいじゃない。あたし達が買いたいのよ」
「ベビーカーかな? それともベビーベット?」
「お前は気が早い。子供ができるまでの彼女は大変なのよ? それに手助けできるものにしなさい」
 和樹の言葉に、知恵の毒づきが決まる。賑やかで楽しい時間も過ぎ、私達はデパートに向かうことになった。
 そこで、芹菜とは別れた。妊娠している身。たとえ3ヶ月でも、無理に動かない方がいい。転んだら大変。と、知恵が叱ったから。
 知恵と和樹には、今小学生の子供がいる。和樹は自宅業で、子供は学校だから、一緒に行けるんだって。
「何がいいかな? んー…」
「妊婦さんって何が必要なの?」
「栄養のあるご飯と、適度な運動…あとは、周りの気遣いとか安心して眠れる寝具とか…」
「ゆったりとした服も必要そうだよねー」
 決今日私たちは、デパートの3階。婦人服売り場に来た。
 ゆったりとしたワンピースとか、スウェットとかを買おうか。という話になったから、男性である和樹は店外に待ってもらって、女子で服を選んで会計を済ませた。
「いやぁ、六着は買いすぎたかなぁ?」
「良いんじゃない? おおおに越したことはないわ」
「え、知恵。それちゃんと俺と二分割してるよな?」
「勿論よ。あなたのお金だけな分けないでしょ」
 軽く談笑しながら、彼氏に「そろそろ帰ります。晩ご飯は何がいいですか?」とメッセージを送る。すぐに帰ってきたのには「ハンバーグ」と書いてあったから、今日はハンバーグにしようと食品コーナーにも寄った。
「あれ? あれって徳じゃない?」
 食品コーナーから出る時に見たのは、女の人と腕を組んでる、徳だった。
 私たちの頭では、なんで? という疑問だけが渦巻いた。


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