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平和の章

不思議な腕輪の最後

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新編 不思議な腕輪

商会主となった後継者は一つの遺言を受けていました

それはたった一つ残された殺人をさせる腕輪を回収するように
という遺言でした


ただしその腕輪はスイッチを入れなければ、唯の金と銀の竜が絡み付いている
品の良い腕輪にしか過ぎないが、スイッチが何らかの原因で入ると、周り中
の人間を皆殺しにする怖ろしい効果があるという

幸い予備の停止装置があるので、それを持っていけばそれを止められるはずです
しかしそれを持っているのは現在ダニエル商会主です

しかしダニエル商会主は急な仕事で忙しく、捜索に力を入れられません
信用した店のものに探させていますが、まだ発見されていないようです







ダニエル商会主の本店から遥か遠く辺境の貴族の家で
事件が起こりました

なんと10人以上の貴族が一気に死んだのです

しかし不思議にも残りの貴族たちは生き残ることが出来たのです

おかしいと思いませんか、スイッチを切るまで殺し続ける機械が
途中で動作をやめるなんてあり得ません

何者かが、その操作をしたとしか思えません

誰がそんな事をしたのでしょうか

一体何のために

馬鹿にされたから、でも馬鹿にされたぐらいで殺すでしょうか
苛められて、でも多少のいじめで報復に殺すでしょうか

彼の街は大きく発言力もあります、また軍隊も強力です
しかし先代が脳筋だったため軍事的には問題なかったのですが

潜入しての工作活動にはどうしても疎い部分があり
そこを狙われてしまったのです

そしてその先代が死んでしまい、圧倒的に不利な3代目が
就任して困っていた彼がわざと隙を見せて貴族になっていた
潜入勢力をその腕輪で殺したと言うわけです


後は数名しか残った勢力はおらず、もう脅威ではなくなったので
安心しきるには早いけど、少しだけ安心していました







7ヵ月後
ダニエル商会主がやって来ました、要件は唯一つ
私が探している腕輪のようです、あの殺されよう

「辺境伯 すいませんがあの腕輪を私に売ってはいただけませんか」

「はて、あの腕輪とは何のことでしょうか」

「判っておいででしょう、金と銀の竜が巻きついている腕輪と言ったら判りますか
目には宝石があしらってあります」

「ああ、あれかあれなら宝物箱に保管してあるはずであるが
幾ら払うつもりかな、我が家の家宝のように大切にしてあるのだが」

「しかし必ずお売りして頂けないと我が方も子供の使いではないので
そうですかと引き下がるわけには行きません、どうかお売りいただけるように
お考え下さい」

「今のところ全く売る気はないのでお帰りいただこうか」


「金貨1000枚ではどうでしょうか」

「たとえ幾ら積まれてもお売りできないものがある、と言うことは
判っていただけると思うが」


「しかし、危険なものをその宝石箱に入れたままでは危ないと言うものです」

「何処が如何危険なのだ、興味が湧いたので聞かせてもらおう」


辺境伯はその腕輪の機能の詳細を知りたくなった、もしかすると
もっと素晴らしい機能を持っているかも知れない、そう思った


「ではお話します、機能の一番はスイッチを停止するまで回り中の
人間を殺しつくすと言うことで間違いありません」

「フムフムそれで、他にはどんな機能があるのかね」


現物を持ってきてあります


「それでここを持って動かすと赤い点が向けた方向に出ます
そしてこれを押すといっそう強力な光線が発射され相手を
死亡させます、これで十分危険性がわかったでしょう、どうか
我が商会にお売りくださり破棄させていただきたい」


「なんと破棄とな、それでは使えなくなるではないか」

「何度も言っているとおり破棄する為に買わせていただきたくて
ここまで参ったのです、そういったつもりでしたが、伝わっていなかったようで
申し訳ありません」


「とにかく、我が家としても家宝であるから、考える時間が欲しい
数日ほど逗留してもらいたい」


「判りました、色よい返事をお待ちしています」


「誰か、この者達に部屋を用意してやってくれ」

慌しく走り回っているようです



辺境伯
「実はあれから考えていたのだが、あれがあるというだけで
敵には脅威になるので、我が家には当面は必要なのだ、それで
相談だが、この問題は保留と言うことにしたい、わかって頂けるだろうか」


執事

「これからも必用な家宝なのでお願いしたい、そして貴方の商会を
出来るだけ優遇する、だからわかって欲しい」

「それにまだ残してある潜入勢力に脅威として残しておきたいのです
家宝を見せると言えば断ることはまず出来ないのでやって来るでしょう」

「それが脅威と抑止力になるのです、我が家に必要なのです」


商会長

「それは両刃の刃のようなもの悪いことしか起きません、私にお渡しください
これでもわからないのですか」


会談中


商会長

「どうやら判ってもらえなかったようです、紛争を避けるため、この件は保留と言うことで
優遇の件はわかりました、受け入れます、それでは帰らせてもらいます」


そういって商会長は帰っていきました


館から、十分遠くなってから
商会長はある装置を取り出しました、この装置は遠隔で爆破が出来るのです
但し距離の関係で他のものも壊れてしまうのですが已むを得ないと決断しました


バーンと音が辺境伯邸宅でしました

辺境伯は何か書類と格闘しているようです





数ヵ月後
パーティーのため宝石箱を確認したところ、あの腕輪が
完全に破壊されているのが確認されました

どうしてこうなった辺境伯は頭を抱えましたが
もう後の祭りです







一方商会長は安心していました、これで最後の殺人腕輪が破壊され
人が死ななくなったのです、半分決裂しましたが、もう関わることは
ないでしょう




あのような汚らわしい優遇など欲しくはありません
監視は必要ですが、かなり安心できます

これからは、後継者を育成することに力を尽くしましょう
そして初めて責任を果たしたと言えるでしょう



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