四人の勇者

福澤賢二郎

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第三領の勇者

14.破壊王

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《天野翼》
火を囲むように僕達は座った。
アレキサンダーが焼けた肉を差し出した。
肉汁が垂れてとても美味しそう。
「食べろ!」
「ありがとう」
手に取り、一口かぶり付く。
少し塩の味がするが、肉の味が口の中に広がる。
想像していた通り、美味しい。
アリスもサイラスも美味しそうに食べている。

アレキサンダーが肉を平らげて尋ねてきた。
「私は第三領の勇者で終わるつもりは無い。この世界を私が統一しようと思う」
「何故です?」
「この国を守っているのは誰だ?領主か?イグニン王か?違うだろ」
「だから、領主から奪うんですか?」
「そうだ。お前の考えは?」
「僕は罪人として扱われていますから」
「そうか。今日は天幕を一つ貸そう。そこで休まれよ」
「お言葉に甘えてお借り致します」

翌朝、アレキサンダー軍は北に侵攻した。
アリスが僕の隣で優しく微笑む。
「どうしますか?」
「薬草を摘もう。約束したからね」
「はい。そうしましょう」
僕達は森から少し北に進み、草原で薬草を摘む。
そこは少し高台になっており、遠くまで見通せた。
遠くにアレキサンダー軍と魔王軍の戦いが見える。
気にするなと自分に言い聞かせるが、どうしても見てしまう。
僕は平和主義者なのに。
戦場の至るところに雷が落ちまくっている。
アレキサンダーの力だ。
凄い轟音。
ファンが隣でふわふわと浮遊している。
(君、アレキサンダーの戦いが見たいの?)
「興味ない。ないはずなのに」
(男の子だね。負けたくないんだ)
魔王軍の兵士は倒されても倒されても起き上がる。
だから、アレキサンダーは雷で丸焦げにしているんだ。
(正解。破壊王の兵士は既に死んでる者達なの。だから、痛みなんてない)
「このままだと、アレキサンダーは負けてしまう」
(そうだよ。破壊王を倒さない限りはね)
「だから、アレキサンダーは無理してでも進むのか」
(そう。破壊王にたどり着かなければ、アレキサンダーの負け)
白馬に乗るアレキサンダーが腕に巻き付けている鎖を振り回して敵兵を粉砕。
稲光が周囲に飛びまくる。
味方の兵士達はそれに巻き込まれないように少し距離をとって戦っていた。
大きな力を感じる。
草原に大きなうねりが起こり、そこから真っ黒い馬に乗った騎士が現れた。
大きい!
黒い鎧を纏った髑髏の騎士だ
馬に乗った状態で高さが十メートルぐらいある。
「ファン、あれは?」
(あれが破壊王だよ)
アレキサンダー軍を蹴散らし、踏み潰していく。
白馬に乗ったアレキサンダーが破壊王に向かっていく。




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