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第4章
12話:氷雪の女王3
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彼女の声は冷たく澄んでいて、俺たちを飲み込むように広間に響いた。表情ひとつ崩さず、俺たちを楽しむかのように玉座で見下ろしている。
相対して分かったが、レベルは2000もないだろう。
「遠路はるばるこんなところまで会いに来てやったんだ。自己紹介くらいしたらどうだ?」
俺が挑発気味に声をかけると、彼女の微笑がさらに深まった。まるで俺の言葉さえも凍りつけんばかりの冷たい眼差しで、少しも動揺しない様子だ。
「それもそうね。では改めまして、私は数百年の時を生きる魔女、イシュリーナ。氷雪の女王とも呼ばれているわ」
「俺はテオ。こっちはエイシアスだ」
「テオとエイシアス、ね。それで、私に何か用かしら?」
尋ねてくるイシュリーナに、俺は告げる。
「帝国に降り、力になれ」
お願いでもなんでもない、強者による命令だ。
俺の発言に、イシュリーナは目を細め、微笑みは消え去り無表情となった。
「……へぇ、この私に命令?」
「命令だ。だがまあ、俺は力で語るも、交渉するも、どっちでも構わないさ。選ぶのはお前だ」
「私が魔女だと知ってその態度、死にたいらしいわね。いいわ、あなたを氷漬けにして、一生愛でてあげるわ。あなたも氷漬けにしてあげる」
イシュリーナがエイシアスに告げるも、彼女は涼し気に微笑んだ。
「貴様のような雑魚に、私の主が負けるわけがなかろう? その高慢さが命取りにならないことを祈っておくよ」
「……残念ね」
イシュリーナは微動だにせず、むしろその視線に冷えた怒りが宿ったようにも見える。
氷の女王だろうがなんだろうが、俺たちに敵う存在がいるとは思えないが、こいつもなかなか傲慢でいい。久しぶりに楽しめそうな相手だ。
「ふふ、いいわね。力のある者にしか分からない、この感覚……あなたたちのような来訪者を待っていたのよ」
彼女の手が静かに動き、その指先から冷気が広間に広がっていく。空気が重く、冷たくなる。だが、それに怯む俺じゃない。エイシアスも同じように微笑んでいる。
俺たちは、こんな程度で止まる存在じゃない。
「待っていた、だと?」
俺は肩をすくめて不敵に笑った。
「そんな暇があるなら、せいぜい退屈しのぎになる準備でもしておけよ。お前みたいな引きこもりの相手をする暇も、俺たちにはないんでね」
「……主よ、それは私のことも含めての発言か?」
「……どうだろうな。まあ、今回はエイシアスがやるか?」
エイシアスはふふんと笑って頷いた。
「いいだろう。主に引きこもりだと言われるのは心外だ。イシュリーナ、覚悟するといい。貴様の宮殿と共に、この広間ごと凍りつかせるぐらいで丁度いいと思っているよ」
イシュリーナは微動だにせず、目を細めただけでこちらを見据えている。その表情からは、俺たちに対する侮りがわずかに読み取れた。だが、その侮りが彼女の誤算になることを教えてやるのが、俺たちの役目だ。
彼女の傲慢さは、さらなる傲慢によって踏み潰されるのだ。
「さあ、イシュリーナ。貴様が世界に氷の死をもたらすという力があるなら、俺たちに見せてみろ。少しは楽しませてくれよ?」
「すぐに終わっては楽しめないからね」
イシュリーナは一瞬、瞳を鋭く光らせた。彼女の背後に立つ氷の騎士たちが、ゆっくりと動き出し、まるで生きているかのように剣を構える。それに続くように、広間全体に氷の結晶が舞い、次第に俺たちを包み込んでいく。
一歩、前へと歩み出すエイシアスが俺に告げる。
「では、主よ。約束通り、今回は私が楽しませてもらおう。主はそこでゆっくりティータイムをしているといい」
「そうさせてもらうよ」
俺は下がり、エイシアスが用意した席に着いて、ティータイムを始める。
「この私を前に随分と余裕なことね」
「勘違いしているよ」
「なんですって?」
「私が貴様を楽しませるのではない。貴様が、私たちを楽しませるのだ。さあ、かかって来るといい、氷雪の女王よ」
エイシアスは本来の姿を露にする。
側頭部から生える二本の黄金のツノ。腰から生える身丈ほどの黒い二枚の翼。
その姿を見たイシュリーナが、一瞬驚いた表情を浮かべた。
「漆黒の翼に黄金のツノ……まさか、伝承で語られる天魔? いや、たしか神々によって封印されているはずでは……」
俺が連れ出したからね。
「いかにも。私は天と魔を統べる覇者である」
尋常ならざるプレッシャーがエイシアスから放たれる。それでもまだ、エイシアスは加減しているようだ。
本来なら、戦意すら消失するはずであるが、イシュリーナは苦悶の声を漏らすも、すぐに表情を戻した。
「た、大したものね。でも、その程度なの」
玉座から立ち上がり、手を振るった。
「騎士ども、彼女を殺しなさい」
控えていた氷の騎士たちがエイシアスへと襲い掛かるも、騎士たちは動かない。
それを見て何度も命令を下すイシュリーナだが、エイシアスが事実を告げた。
「斬られたのだから、動けるわけがないだろう?」
「……は? 何を言って――」
瞬間、氷の騎士たちに線が入り、崩れ落ちた。俺はエイシアスが何をしたのか見ていたが、イシュリーナには見えていなかったようだ。
「一体、何をした?」
「なに。風の刃を飛ばして斬っただけだよ。こんな風に」
エイシアスがつま先で床をタンッと叩くと、風の刃がイシュリーナの横を通り過ぎた。
エイシアスはただ、イシュリーナが認識するよりも早く、風の刃を飛ばしただけである。
「お人形遊びは最初の段階で見飽きているからね。魔術がどういったものか、見せてはくれないか?」
「ふっ、あははっ、いいわ。なら、見せてあげる。魔術こそ至高なのだと、教えてあげるわ!」
相対して分かったが、レベルは2000もないだろう。
「遠路はるばるこんなところまで会いに来てやったんだ。自己紹介くらいしたらどうだ?」
俺が挑発気味に声をかけると、彼女の微笑がさらに深まった。まるで俺の言葉さえも凍りつけんばかりの冷たい眼差しで、少しも動揺しない様子だ。
「それもそうね。では改めまして、私は数百年の時を生きる魔女、イシュリーナ。氷雪の女王とも呼ばれているわ」
「俺はテオ。こっちはエイシアスだ」
「テオとエイシアス、ね。それで、私に何か用かしら?」
尋ねてくるイシュリーナに、俺は告げる。
「帝国に降り、力になれ」
お願いでもなんでもない、強者による命令だ。
俺の発言に、イシュリーナは目を細め、微笑みは消え去り無表情となった。
「……へぇ、この私に命令?」
「命令だ。だがまあ、俺は力で語るも、交渉するも、どっちでも構わないさ。選ぶのはお前だ」
「私が魔女だと知ってその態度、死にたいらしいわね。いいわ、あなたを氷漬けにして、一生愛でてあげるわ。あなたも氷漬けにしてあげる」
イシュリーナがエイシアスに告げるも、彼女は涼し気に微笑んだ。
「貴様のような雑魚に、私の主が負けるわけがなかろう? その高慢さが命取りにならないことを祈っておくよ」
「……残念ね」
イシュリーナは微動だにせず、むしろその視線に冷えた怒りが宿ったようにも見える。
氷の女王だろうがなんだろうが、俺たちに敵う存在がいるとは思えないが、こいつもなかなか傲慢でいい。久しぶりに楽しめそうな相手だ。
「ふふ、いいわね。力のある者にしか分からない、この感覚……あなたたちのような来訪者を待っていたのよ」
彼女の手が静かに動き、その指先から冷気が広間に広がっていく。空気が重く、冷たくなる。だが、それに怯む俺じゃない。エイシアスも同じように微笑んでいる。
俺たちは、こんな程度で止まる存在じゃない。
「待っていた、だと?」
俺は肩をすくめて不敵に笑った。
「そんな暇があるなら、せいぜい退屈しのぎになる準備でもしておけよ。お前みたいな引きこもりの相手をする暇も、俺たちにはないんでね」
「……主よ、それは私のことも含めての発言か?」
「……どうだろうな。まあ、今回はエイシアスがやるか?」
エイシアスはふふんと笑って頷いた。
「いいだろう。主に引きこもりだと言われるのは心外だ。イシュリーナ、覚悟するといい。貴様の宮殿と共に、この広間ごと凍りつかせるぐらいで丁度いいと思っているよ」
イシュリーナは微動だにせず、目を細めただけでこちらを見据えている。その表情からは、俺たちに対する侮りがわずかに読み取れた。だが、その侮りが彼女の誤算になることを教えてやるのが、俺たちの役目だ。
彼女の傲慢さは、さらなる傲慢によって踏み潰されるのだ。
「さあ、イシュリーナ。貴様が世界に氷の死をもたらすという力があるなら、俺たちに見せてみろ。少しは楽しませてくれよ?」
「すぐに終わっては楽しめないからね」
イシュリーナは一瞬、瞳を鋭く光らせた。彼女の背後に立つ氷の騎士たちが、ゆっくりと動き出し、まるで生きているかのように剣を構える。それに続くように、広間全体に氷の結晶が舞い、次第に俺たちを包み込んでいく。
一歩、前へと歩み出すエイシアスが俺に告げる。
「では、主よ。約束通り、今回は私が楽しませてもらおう。主はそこでゆっくりティータイムをしているといい」
「そうさせてもらうよ」
俺は下がり、エイシアスが用意した席に着いて、ティータイムを始める。
「この私を前に随分と余裕なことね」
「勘違いしているよ」
「なんですって?」
「私が貴様を楽しませるのではない。貴様が、私たちを楽しませるのだ。さあ、かかって来るといい、氷雪の女王よ」
エイシアスは本来の姿を露にする。
側頭部から生える二本の黄金のツノ。腰から生える身丈ほどの黒い二枚の翼。
その姿を見たイシュリーナが、一瞬驚いた表情を浮かべた。
「漆黒の翼に黄金のツノ……まさか、伝承で語られる天魔? いや、たしか神々によって封印されているはずでは……」
俺が連れ出したからね。
「いかにも。私は天と魔を統べる覇者である」
尋常ならざるプレッシャーがエイシアスから放たれる。それでもまだ、エイシアスは加減しているようだ。
本来なら、戦意すら消失するはずであるが、イシュリーナは苦悶の声を漏らすも、すぐに表情を戻した。
「た、大したものね。でも、その程度なの」
玉座から立ち上がり、手を振るった。
「騎士ども、彼女を殺しなさい」
控えていた氷の騎士たちがエイシアスへと襲い掛かるも、騎士たちは動かない。
それを見て何度も命令を下すイシュリーナだが、エイシアスが事実を告げた。
「斬られたのだから、動けるわけがないだろう?」
「……は? 何を言って――」
瞬間、氷の騎士たちに線が入り、崩れ落ちた。俺はエイシアスが何をしたのか見ていたが、イシュリーナには見えていなかったようだ。
「一体、何をした?」
「なに。風の刃を飛ばして斬っただけだよ。こんな風に」
エイシアスがつま先で床をタンッと叩くと、風の刃がイシュリーナの横を通り過ぎた。
エイシアスはただ、イシュリーナが認識するよりも早く、風の刃を飛ばしただけである。
「お人形遊びは最初の段階で見飽きているからね。魔術がどういったものか、見せてはくれないか?」
「ふっ、あははっ、いいわ。なら、見せてあげる。魔術こそ至高なのだと、教えてあげるわ!」
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