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第十六話
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偽聖女アリアンナは追放となり、新聖女ヴェロミアが神殿に入った。
その知らせを父である皇帝ハルファスに届けたザイオンは、数日後にもう一度宮殿に呼ばれ、玉座の前で膝を突かされた。
皇帝直属の審問官――鞭を持った男二人が、ザイオンの衣服の上を脱がせ、後ろに控える。ザイオンはこれから自分が尋問を受けるのだと自覚し、身に覚えがないという顔で父を見た。
「皇帝陛下、なぜ私にこのような……」
「ザイオンよ。前聖女との婚約を破棄した理由を、今一度申してみよ」
ハルファスの持つ統治者としての威風は、その権勢が極まった壮年期の終わりを迎えても衰えてはいなかった。
しかし長い間正室との間に男子が生まれなかったために、待望となった嫡男のザイオンとは祖父と孫のような年の差がある。
ハルファスはザイオンに自分の青年期の姿を重ね、ザイオンが王立学院を首席で卒業したあと、彼が望むままに権限を与え、現在は副帝ともいえる待遇となっている。
宮廷と大神殿の関係は建国当時から密接であり、ハルファスは神官長を通して祈祷や祭礼を行うように命じ、それに応じた結果を得られていた。
「聖女との結びつきを強め、その力を直接取り込むことで、我が帝国はさらなる繁栄を迎える……そう考えていたのだが。おまえが選んだ新たな聖女は、本当に聖女となるべき資格を持っているのか?」
「はっ……父上、これはお伝えせずにおくつもりでしたが、私への疑念を晴らすために、改めてご報告差し上げることがございます」
「……申してみよ」
玉座に座った皇帝ハルファスは、老境に差し掛かっていながらも、短い言葉一つで場の空気を制してみせる。
しかしザイオンは引くことなく、自らの潔白を主張するべく話し始めた。
「前聖女は私との婚約期間に、私以外の男性と通じていた疑いがあります」
「……聖女アリアンナが不義を働いたと?」
「はい。アリアンナは私の呼び出しに応じず、『祈りの間』にこもっていたとのことでしたが……その『祈りの間』から、男の声が聞こえたとの報告がありました」
「神聖な儀礼を行う場所に、不浄の者を連れ込んでいたということか。それは確かな情報なのか?」
「アリアンナに仕える女官の一人からの報告です。彼女は自分の一存では秘匿すべきでないと考え、神官長に勇気を持って告発をしてくれました」
ハルファスはザイオンを見つめる。虚偽の発言とされれば自分ですら命がないことをザイオンは良く知っている。自分の冷酷さはこの父から継いだという自覚があるからだ。
その知らせを父である皇帝ハルファスに届けたザイオンは、数日後にもう一度宮殿に呼ばれ、玉座の前で膝を突かされた。
皇帝直属の審問官――鞭を持った男二人が、ザイオンの衣服の上を脱がせ、後ろに控える。ザイオンはこれから自分が尋問を受けるのだと自覚し、身に覚えがないという顔で父を見た。
「皇帝陛下、なぜ私にこのような……」
「ザイオンよ。前聖女との婚約を破棄した理由を、今一度申してみよ」
ハルファスの持つ統治者としての威風は、その権勢が極まった壮年期の終わりを迎えても衰えてはいなかった。
しかし長い間正室との間に男子が生まれなかったために、待望となった嫡男のザイオンとは祖父と孫のような年の差がある。
ハルファスはザイオンに自分の青年期の姿を重ね、ザイオンが王立学院を首席で卒業したあと、彼が望むままに権限を与え、現在は副帝ともいえる待遇となっている。
宮廷と大神殿の関係は建国当時から密接であり、ハルファスは神官長を通して祈祷や祭礼を行うように命じ、それに応じた結果を得られていた。
「聖女との結びつきを強め、その力を直接取り込むことで、我が帝国はさらなる繁栄を迎える……そう考えていたのだが。おまえが選んだ新たな聖女は、本当に聖女となるべき資格を持っているのか?」
「はっ……父上、これはお伝えせずにおくつもりでしたが、私への疑念を晴らすために、改めてご報告差し上げることがございます」
「……申してみよ」
玉座に座った皇帝ハルファスは、老境に差し掛かっていながらも、短い言葉一つで場の空気を制してみせる。
しかしザイオンは引くことなく、自らの潔白を主張するべく話し始めた。
「前聖女は私との婚約期間に、私以外の男性と通じていた疑いがあります」
「……聖女アリアンナが不義を働いたと?」
「はい。アリアンナは私の呼び出しに応じず、『祈りの間』にこもっていたとのことでしたが……その『祈りの間』から、男の声が聞こえたとの報告がありました」
「神聖な儀礼を行う場所に、不浄の者を連れ込んでいたということか。それは確かな情報なのか?」
「アリアンナに仕える女官の一人からの報告です。彼女は自分の一存では秘匿すべきでないと考え、神官長に勇気を持って告発をしてくれました」
ハルファスはザイオンを見つめる。虚偽の発言とされれば自分ですら命がないことをザイオンは良く知っている。自分の冷酷さはこの父から継いだという自覚があるからだ。
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