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 第2章 商人編

206.初めての客

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 私は、上級ダンジョンに潜ることを暫く諦めて、中級ダンジョンに潜って、ランクアップを狙うことにした。

 今日も店は開けておくことにした。その為、私は、転移魔法で店まで移動して、店のドアノブに「営業中」と書かれた札をぶら下げて、店を出た。

 私が、中級ダンジョンに潜って、薬草を採取しながら、魔物を狩っていた時だった。

 「アラームがなった。えーと、どれだったかな、あぁ、これだわ」

 「じゃまするよ」

 「はい、少しお待ちください」

 私は、手鏡越しに返事をした。それと同時に、転移魔法で店に移動した。

 1階の店に行くと、見慣れた顔があった。

 「今日は、どうしたの」

 「水臭いな、店を開いたなら、教えてくれよ」

 「あれ、言わなかったかしら」

 「お前が、初心者だってことだけだよ。聞いたのは。 ところで、どんなものを売っているんだ」

 「はい、今は、この棚にある物だけなんだ。欲しい物、ある?」

 私は、メイソンに棚を指さして、教えた。

 「そうだな。今日は、上級ダンジョンに潜るんだ。だから、ポーションを貰おうか」

 「メイソンは、魔法は使えるの?」

 「いいや、使えないよ。なぜだい」

 「うん、青か、赤か、どちらかなぁって。魔法を使わないのなら、赤のポーションでいいよね」

 「そうだな。それは、そこに書いてある『赤いポーション』の事か?」

 「そうだよ。そこに書いているように、1回で、HP100回復だよ」

 「もう少し、上等な物はないか? 1000ぐらいは、回復したいから」

 「ちょっと待ってね。これでは、どうかな?」

 私は、アイテムボックスから、赤のポーション(特級)を1本テーブルの上に出した。

 「おい、これって、特級じゃないか」

 「そうだよ。これなら、HPの総量の50%は回復できるよ。どうかな?」

 「そりゃ、欲しいよ。でも、高いんじゃないか?」

 「普通なら、金貨10枚だけど、初めてのお客だから、金貨2枚でいいよ」

 「えっ、そんなに安くていいのか」

 「うん、今後も、御贔屓にね。 それじゃ、何本いる? 手元には、20本あるけど」

 「いや、1本でいいよ。 必要になったら、また、来るよ。 その時も金貨2枚でいいのか?」

 「いいわよ。 でも、メイソンだけだよ」

 メイソンは、金貨2枚を机の上に出した。私は、赤のポーション(特級)を一本包んであげた。
 
 「はい、毎度ありがとうございます」

 「良い買い物をしたよ。ありがとう。また、来るよ」

 メイソンが、出て行ったので、私は、また、中級ダンジョンに潜ろうと思ったが、これでは、ゆっくり、狩りができない。

 「どうしようかな。遠隔投影では、店と冒険者の掛け持ちは難しいね」

 私は、店を閉めて。ドアノブの札を「休業中」に変えて、商業ギルドに向かった。

 「リンダ姉さん、今、時間ある?」

 「もちろんよ。テラなら、最優先で、話を聞くよ」

 「ありがとう。店の事で、相談したいんだけど」

 「何か、問題でもあったの?」

 「店を開いて、ダンジョンに潜りたい。そんなこと、できる?」

 「簡単よ。1つは、従業員を雇うということね。もう一つは、無人販売にするってことね」

 相変わらず、リンダの耳は、可愛い。どうしても、見とれてしまう。それに、あの尻尾、ふさふさの尻尾。見とれていて、うっかり、聞き逃すところだった。

 「えっ、無人販売って、それ、どういうこと?」

 「あれ? 知らなかったの。説明するのを忘れていたみたい」

 「これは、売る物が決まっていないとだめだけど」

 「うん。売るもの決まっているから、大丈夫よ」

 「それなら、無人販売用の機械を置くだけよ。レンタル料は必要だけど、便利よ」

 「それ、使いたい。いくらかかるの?」

 「保証金に金貨20枚で、あと、レンタル料が月金貨10枚よ。ちょっと、高いけどね」

 「いいえ、安いよ。1台で、何種類売れるの」

 「1台で、4種類だよ。それでもいいの」

 「そうだね。2台お願いします」

 「今すぐいるの? 配達なら、頼めるよ」

 「今すぐ、貰います。自分で運びます」

 「それじゃ、持ってきてもらうね。少し、待っていてね」

 暫くして、リンダが男の人達とやって来た。冷蔵庫ぐらいの大きさの機械が2台運ばれてきた。

 リンダが、テーブルの上に、契約用紙を出した。
 
 「これに、サインしてね。それから、何カ月借りる?」

 「延長は、出来る?」
 
 「もちろん、出来るよ。その時は、保証金はいらないよ。それに、レンタルを止めるときは、保証金は、戻ってくるよ。ただし、レンタル料は、月単位での計算になるよ。注意してね」

 「わかった。それなら、2カ月借りる」

 「それじゃ、金貨60枚になります」
 
 私は、商業IDを渡して、清算してもらった。それから、アイテムボックスに、2台の機械を入れた。

 簡単な説明を男の人に聞いた。それから、男の人に商業IDを渡して、管理者登録をしてもらった。その機械

 設定は、一括ではなく、少し面倒だった。一商品ごとに行う必要があった。つまり、内部的には、4台の機械をまとめただけみたいだ。

 2台の機械を無事設定できたので、これで、気軽にダンジョンに潜れそうだ。
 
 私は、中級ダンジョンに転移魔法で移動して、薬草の収集を中心にしながら、魔物を狩って行った。
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