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 第6章 軍事都市リーベン編

603.鉱山の人影

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 私達は、森の前まで来た。私は、スキル探索で、森の魔物を調べてみた。だが、言われていたような、強い魔物を見つけることが出来なかった。

 スキル探索がうまく機能していない場合もあるので、念の為に、全員に闇魔法で、結果を作り、防御力を強化しておいた。
 
 先頭を、スピアに任せて、向かてくる魔物を狩って貰った。2番目がサルビアで、大怪我をしたときに備えて、治癒魔法を掛ける準備をして貰った。最後尾は、私で、魔物の探知と群れに対する範囲魔法での攻撃を担当した。

 しかし、ほとんどの準備が無駄に終わった。大した魔物が居なかった。

 いつの間にか、森を抜けていた。森を抜けると目の前には大きな山があった。その山の頂上には雪が積もっており、白く見えた。

 「あれ、魔物がいて、通行できないって言っていたよね」

 「はい、そう言っていました」

 「おかしいなぁ」

 私達は、取り敢えず、先に進むことにした。暫く、山の頂上を目指して歩いていると、小さな村が見つかった。

 私は、その村に入る前に、少し道から離れた所に、転移魔法用の魔法陣を描いた。そして、闇魔法で、隠しておいた。

 「さあ、ドワーフの村だ」

 「はい、わくわくしますね」

 「うん。楽しみ」

 私達は、村に入っていった。途中で、何人かのドワーフに出会ったが、特に、声を掛けられることはなかった。

 「すみません。村長に会いたいのですが、どこに居られるか、教えて貰えますか」

 「この先の家にいるよ。この道を真っ直ぐに歩いて行きな」

 「どうも、ありがとうございました」

 私達は、言われたように、歩いて行くと、小さな家が見つかった。

 「すみません。ここは、村長の家ですか?」

 「そうだが、誰かな?」

 「私達は、商人です。私は、テラと言います」

 「私は、サルビアと言います」

 「私、スピア」

 「そうですか。どちらから、お越しですか」

 「私達は、リーベンの街から来ました」

 「ほぉ、リーベンの街ですか、最近は、誰も行き来をしていないです」

 「そのようですね。何か、理由があるのですか?」

 「そうか、知らなかったのか。でも、リーベンの街から、来られたのだな」

 「はい、そうです。それが、何か?」

 「おかしいな。リーベンの街から、連絡があって、森の中は危険だから通るなという、お達しだ」

 「お前たちは、森を抜けて来たのか?それとも、迂回したのか?」

 「いえ、私達は、森を抜けてきましたが、特に、危険はなかったですよ」

 「それは、おかしいな。確かに、軍人が来て、危険だと言っていたのだが」

 「村長は、それを確かめなかったのですあか?」

 「我々は、ドワーフだ。危険な事は、決してしない」

 「それって、自慢ですか?そうすると、その軍人の言葉を信じたということですか」

 「そうだな。それに、それ以降、誰も、リーベンの街から、来たものはいなかった」

 「そうすると、お達しの後、私達が初めて旅人ということですか」

 「そういうことだ」

 「なぜ、そのような嘘を言ったのですか?」

 「私には、分からない」

 「少し、尋ねてもいいですか?」

 「構わぬ。何でも聞きなさい。ただし、酒を飲みながらでないとだめだ」

 「分かりました。スピア、酒の相手をしてくらない?」

 私は、アイテムボックスから、お酒を取り出して、並べて行った。

 「おぉ、気が利くな。それでは、遠慮なしに、頂こう」

 「うん、飲む」

 「よし、飲め」

 「いままでは、リーベンの街とどのような取引をしていたのですか」

 「大した取引はなかった。オリハルコンを使った武器や防具を売っていた」

 「リーベンの街からは、何か買っていたのですか?」

 「基本的に、日常品だが、リーベンの街以外にも、購入できるところがあるので、問題はない」

 「森の中を通るのは、リーベンの街へ行く時だけですか?」

 「いいや、オリハルコンを取り出すために、鉱山に行く時も、森の中を通る。というか、森の中に鉱山があるのだ」

 「そうすると、今は、オリハルコンを掘っていないということですね」

 「そうだ。だが、リーベンの街との取引がないので、特に困ることもない」

 「最近、鉱山に行った人はいないのですか?」

 「森に入らないのだから、当り前だろう。誰も、言っていないよ」

 誰かが、鉱山のオリハルコンを独占しているのだろう。でも、軍がそんなことをするかなぁ?

 どうも、違う気がする。あのベルーナ大佐のような軍人がするとは、思えなかった。

 「すこし、お願いがあるのですが、いいですか?」

 「いいぞ、なんだ?」

 少し、酒に酔った村長は、気が大きくなっているようだ。

 「鉱山に案内して欲しいのです。私達が、守りますので、危険はありません」

 「そうだな、お前達は、森の中を通って来た。だから、大丈夫だな」

 「はい、その通りです」

 「おい、ウイドールを呼んで来い」
 
 暫くして、ウイドールがやって来た。若いドワーフらしいが、ドワーフの年齢は、私には、分からない。

 「村長、何か用ですか?」

 「この旅人と鉱山に行ってくれ」

 「でも、何度も村長に頼んだのに危険だと言って、許してもらえなかったじゃないですか。
 それなのに、今になって、鉱山に行けとは、どういくことですか?」

 「この旅人は、森の中を抜けて、リーベンの街から、やって来たのじゃ。
 だから、この者たちと行けば、危険はない」

 「それでは、鉱山で、オリハルコンを採鉱しても、いいですか?」

 「旅の人よ、ウイドールが採鉱している間、魔物から守ってやってくれないか」

 「もちろん、守りますよ」

 「よし、それでは、行ってこい」

 「はい、村長、ありがとうございます」

 私達は、すぐに鉱山に向けて、出発した。残った酒は、村長に一任した。

 「ウイドール、迷惑かけて、申し訳ない」

 「いえ、私こそ、助かります。オリハルコンを使った武器を作っていたのに、急に採鉱に行くなと言われて、途方に暮れていたところです」

 「それでは、お互い様だね」

 「そうですね」

 暫く、森の中を歩くと、鉱山の入り口に来た。私は、ウイドールに見つからないように、こっそりと、転移魔法用の魔法陣を描いた、闇魔法で、隠した。

 次に、スキル探索で、鉱山の中を調べた。

 「鉱山の中には、魔物はいないよ。代わりに、10人程度の人がいるよ。特に強くないので、心配はいらない」

 「それじゃ、その人達の相手はお願います」

 「もちろん、大丈夫だよ。ウイドールは、私達の後ろで、暫く、見ておいてくれる?」

 「はい、待っています」

 私達は、そのまま入っていった。念のため、闇魔法の結界で、防御力は上げておいた。これで、中の人間からの攻撃で、傷つくことはないだろう。

 暫く、進んで行くと、忙しそうに、採鉱している人に出会った。

 「そこで、何をしているの?」

 「見て分からないか、採鉱をしているんだ」

 「じゃ、私達もやりますね」

 「何を言っている、俺たちの邪魔をするな」

 「あれ、この鉱山は、あなたの者ですか?それなら、権利証をお持ちですよね」
 
 「そんなものはない。早い者勝ちだ」

 「そうですね。それでは、私も、採鉱させてもらいますね」

 「いい加減にしろ、邪魔をするな」

 手に持った、シャベルで、いきなり殴って来た。別に避けることもなかったが、反射的に避けてしまった。勢い余って、こけてしまった。

 「何しやがる」

 「何も、していませんよ。喧嘩なら、相手しますが、怪我しても知りませんよ」

 「ふん、子供が偉そうに」

 「子供、って言いましたね。風カッターウインド・カッター

 私は、思わず、魔法を使ってしまった。手に持っていたシャベルを真っ二つに切り裂いた。

 「何、魔法を使うのか?おい、皆来てくれ」

 男の叫び声に、鉱山に入っていた人がすべて集まって来た。

 「こいつらが、邪魔をする。痛めつけてやれ。

 私は、土魔法で、この採鉱している者達の足元を泥沼にして、膝まで沈んだところで、泥を固めた。

 身動きが取れないようにしたまま、採鉱している者達のオリハルコンをすべて、アイテムボックスに入れて行った。

 「おい、お前、何をしている。それは、俺たちが採鉱したものだぞ」

 「ウイドール、もう、大丈夫だよ。採鉱を始めてね」

 「はい、ありがとうございます」

 ウイドールは、一生懸命に採鉱を始めた。やはり、ベテランだ、あっという間に、かなりの量を掘っていた。
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