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 第10章 魔法学院(入学)編

1005.魔法学院の入学式

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 今日は、魔法学院の入学式がある。シルバは、朝から、忙しく走り回っていた。初めての入学式で、新入生だけでなく、教師も、保護者も緊張している。

 私達は、講堂の隅で、座っていた。すると、ガーベラが青ざめた顔で、走って来た。何か、起こったようだ。

 「テラ、大変なの」

 「ガーベラ、まあ、落ち着いて、ゆっくり、話してよ」

 「実は、王が、ウェーリィ王が、」

 「えっ、亡くなったのか。それは、大変だ」

 「違うわ。テラこそ、落ち着いてよ」

 「だったら、何だよ」

 「今日の入学式で挨拶したいって、言って来たの」

 「前に、打診したときは、引退したような身だから、辞退するって言っていたよね」

 「街に活気が戻って来て、ウェーリィ王も、元気になったみたいなの。最近は、街に出歩いてばかりよ」

 「参ったなあ。挨拶してもらうのは、いいが、来賓に挨拶を頼んでいたよね」

 「はい、この街一の大商店の店主オーガネッチに頼んでいます」

 「参ったなあ。金だけは、持っているからね。オーガネッチは」

 「テラ、それだけならいいけど、オーガネッチは、貴族にも顔が利くので、王宮の運営にも口を出してくるのよ」

 「そうなんだ。大変だね。どうしよう?」

 「オーガネッチは、いつ挨拶するの?最初?最後?」

 「確か、最後だったね。最初は、シルバが話して、次に生徒代表のレイカ、最後にオーガネッチだったね」

 「そうよ。私が、司会をすることになっているわ」

 「それなら、シルバの前にウェーリィ王に挨拶して貰おう。それなら、式典とは関係ないと言えるよ。魔法学院の入学ではなく、創立の記念として、話してもらおう」

 「そうね。そうしましょう」

 何とか、納まりそうだ。しかし、何故、こんな些細なことに大騒ぎするのか、よく分からない。

 どうも、時期王を誰にするか、そんなことで、いがみ合っているようだ。確か、今の王には、3人の子供がいたっけ、誰とも会っていないから、名前も忘れている。まあ、王宮はまだ、寝るだけの場所だから、いいか。

 開式前の大騒ぎが嘘のように、式典は静寂の中、進んで行った。ガーベラの司会も、初めてとは思えないほど、堂々としていた。

 この後は、教師陣の紹介と、担任紹介があって、専攻課程ごとに教室に集めて、説明があるようだ。

 「そろそろ、失礼しようか」

 「うん。お腹空いた」

 「それじゃ、食堂で、何か食べよう」
 
 「うん。食堂、行く」

 私達は、まだ、誰もいないはずの食堂に入っていった。

 「おっ、テラじゃないか」

 「これは、オオガネモチ、いえ、オーガネッチさん。久しぶりですね」

 「いや、ここで会えてよかったよ」

 「はい、久しぶりです」

 「うん。ところで、テレは、ウェーリィ王の息子は、知っているな」

 「いえ、まだ、誰ともお会いしていません」

 「えっ、まだ、誰とも会っていない。そうか、そうか。それは良かった」

 「何が、良かった、ですか?」

 「まあ、それは、置いといて、今度、長女マテーダに会ってくれないか」

 「なぜ、会うのですか?」

 「いや、意味などないよ、紹介したいだけだ。明日の夕方は、時間を開けといてくれないか」

 「時間は、ありますけど」

 「そうか。ありがたい。それじゃ、明日」

 言いたいことを言い終わると、オーガネッチは、急いで食堂を出て行った。

 その後、のんびりと、スピアと食事をとった。すると、新入生たちが入って来た。年齢制限は、無かったが、ほとんどが13才らしい。

 「すみません。隣いいですか?」

 「いいよ。座って」

 「私は、レイカと言います」

 「レイカ、あっ、新入生代表で、挨拶してたね」

 「はい、そうです。少し、恥ずかしかったです」

 「そうか、君がレイカか。私は、テラ、こっちが相棒のスピアだよ」

 「初めまして、レイカと言います。スピアもよろしくね」

 「レイカ、ここの食事美味しいね」

 「はい、私も好きです」

 「確か、レイカは、満点だったて、シルバが言ってたよ。凄いね」

 「いえ、たまたま全属性に適合しているだけで、大したことはありません」

 「確か、ルカとオウカも、全属性の適合者だよ」 

 「そうですか、私以外にも2人もいるのですね」

 「ダメかい」

 「いえ、そんなことないです。故郷では、2属性適合しているだけで、特別扱いされていましたから。やはり、魔法学院の生徒は違いますね」

 「この国全体から、集まって来ているからね」

 「テラは、属性は、何ですか?」

 「私も、一緒だよ。でも、内緒にしていてね。知られるのいやんなだ」

 「わかりました。2人だけの秘密にします」

 「秘密か、いい響きだね。2人だけの秘密って、なんだか、特別な関係みたいだね」

 「えっ、特別だなんて、恥ずかしい」

 「私じゃ、ダメかい」

 「いえ、そんなことないです。テラは、素敵です」

 「ありがとう。レイカも可愛いよ」

 私は、思わず、レイカの頭をポンポンしてしまった。

 レイカは、ますます、顔を赤らめて、下を向いてしまった。

 「ごめん、嫌だった?」

 「いえ、嫌なことありません」

 「それなら、良かった。それじゃ」

 私達は、席を立って食堂を出ようとした。

 「また、お話させてください」

 「レイカ、いいよ。もう、友達だよ。2だけの秘密もあるしね。またね」

 私達は、食堂を出て行った。レイカは、素直で、可愛いね。やはり、13才は若い。話すだけで、自分も若返る思いだ。
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