失われた記憶を探す闇の魔法使い(The dark wizard searching for lost memories)

無似死可

文字の大きさ
22 / 22
第3章 記憶を求めて

第21話 赤色の光の先

しおりを挟む
 ムーンライト・ウィザードのメンバーに、リリアが黒魔導士として加わり、パーティも、5人になった。そして、ついに、中級ダンジョンを制覇して、Bクラス冒険者パーティになった。

 私達は、旅を急いだ。夜になっても、光魔法で、光球ライト・ボールを常に出して、明るくしながら、北に向かった、進んで行った。

 漸く辿り着いた村では、村長らしき人物から村の外で休むように言われた。争いごとは避けたいので、言われるままに、村から離れた所に、土魔法で、小屋を創り、1夜を過ごした。

 夜が明けてから、もう一度、村を訪れた。

 「すみません。少し聞きたいことがあるのですが?」

 「何かな?」

 昨日の村長らしき人物が、今回も、我々を出迎えた。しかし、昨日のような、明らかな敵対視では無く、温和な眼差しで、少しビックリした。

 「昔の事で、恐縮ですが、ここに、光に関する伝説は無いですか?」

 「どういうことかな?」

 私は、どうのように聞けばいいのか、よく分からなかった。光の矢が飛んできたとでも、聞いたらいいのだろうか?

 「昔、光がこの村に向かって、飛んできませんでしたか? あるいは、そのような言い伝えがありませんか?」

 「うーん、私も、それほど古くからこの村に住んでいるわけではないが、光に関する祠がある。それのことかな?」

 「それを見に行ってもいいですか?」

 「構わないが、何もないぞ!」

 「構いません。教えてください」

 「分かった。私についてきなさい」

 光の方向に旅をし来た。そして、漸く、その1つの到達点に来ることが出来た。尋ねた村では光の進んだ先に遺跡が作られていた。
 
 そして、光が落ちた場所には、大きな穴が出来ており、その穴の中には、何か埋まっているようだったが、触ろうとしても弾かれて、触れることが出来なかった。そこで、何か特別なものだと村人たちが考えて、その上に遺跡を作ることになったようだ。その場所が特別な場所として、皆が認識できるように。

 村長のような人物に案内されて、ついに遺跡の前に来ることが出来た。

 「すみませんが、掘り起こしてもいいですか?」

 「構わないが、元通り戻して貰うぞ!」

 「はい」

 私は、急いで、土魔法で、遺跡の下を掘り起こした。そして、赤い光を放つ物体を見ることが出来た。

 「ラズ、触ってごらん」

 リリアが、私に声を掛けて来た。

 正当な所有者でなければ、触れることが出来ないのだろう。これまで、多くの村人が触れようとしたが、失敗したという。

 その物体は、透明な水晶の中に輝く宝石が埋め込まれている。私は、ゆっくりと穴の中に入り、その透明な水晶ごと宝石を抱きかかえて、元の場所に出て来た。

 「おぉ、取り出せた!」

 村長らしき人物は、驚いたように、大きな声を出した。いつの間にか、村人たちが、遺跡を取り囲む形で、私を見つめていた。

 私は、水晶の中の宝石を取りだ章と、水晶の中に手を入れた。そして、宝石に触れると、宝石は赤い光を放ちながら輝き、私の身体の中に吸い込まれていった。

 すると、私は、忘れていた記憶がよみがえって来た。まるで、映画でも見るように、自分の記憶が再生されていく。そして、忘れていた魔法が、蘇って来た。だが、火魔法に関するものだけで、それ以外の魔法に関する知識は依然として、不明なままだ。

 私は、ついに記憶を取り戻すことが出来た。しかし、それは、すべて出ななかった。今から、75年前までの記憶が消えている。つまり、失った記憶の内の約25年分が、蘇って来ただけだった。

 まだ、どのように現在の状態になったのかは、まだ、わからない。

 そして、火魔法のすべてを思い出した。これまでは、使えているが、正確には、覚えていなかった。つまり、他の者の魔法を真似て行っていただけだった。理解してはいなかった。しかし、今は違う。火魔法に関しては、すべて、思い出した。そして、理解もしている。

 私は、土魔法で、遺跡を元に戻しておいた。

 「ありがとうございました」

 私は、村長らしき人物に声を掛けた。

 「役に立てたようだ。良かった。できれば、話を聞かせてほしいのだが?」

 「すみません。私は、記憶を失っているのです。そのため、旅を続けています。今回の事で、少しは記憶を取り戻すことが出来たのですが、それは、一部で、まだ、すべてを取り戻したわけではありません」

 「そうか。残念だ」

 「すみません」

 私達は、村を後にした。

 「ラズ、次は、どこに行くの?」

 ルナが、私の腕に絡みつきながら、訊いて来た。

 「大きな穴の中心から、此処までの距離を考えて、次は、東の方角に飛んでいった光を追いかけたい」

 「それなら、東南の方角ね」

 「いいかな?」

 「勿論よ」

 ルナは、パーティの他のメンバーの顔を見渡した。誰も、反対をするような顔をしていない。

 「ラズ、どんな記憶が戻ったの?」

 リリアが、思念伝達で、私に訊いて来た。私は、ありのままに答えた。特に隠し事をする必要ないだろう。

 「忘れていた記憶の最初の25年分が、蘇った。そして、火魔法をすべて思い出した」

 「そう、よかった。やはり、あの光がラズの記憶を奪い取ったのね」

 「そのようだ。でも、まだ、何があったのかは、思い出せない」

 「ねえ、私のことはまだ?」

 「まだ、みたいだ」

 リリアは、残念そうな顔を私に向けて、また、元に戻った。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】花咲く手には、秘密がある 〜エルバの手と森の記憶〜

ソニエッタ
ファンタジー
森のはずれで花屋を営むオルガ。 草花を咲かせる不思議な力《エルバの手》を使い、今日ものんびり畑をたがやす。 そんな彼女のもとに、ある日突然やってきた帝国騎士団。 「皇子が呪いにかけられた。魔法が効かない」 は? それ、なんでウチに言いに来る? 天然で楽天的、敬語が使えない花屋の娘が、“咲かせる力”で事件を解決していく ―異世界・草花ファンタジー

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

処理中です...