崩れゆく世界

伊原亜紀

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EP10

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 通報したら、警察はすぐにきた。パニックになってしまった秋山は、女の警察官が警察署までパトカーで連れていった。落ち着かせた後に、話を聞くつもりなのだろう。

「おい佐藤」後ろから聞き覚えのある声に呼びかけられ、佐藤は振り返った。

「本郷か。相変わらず忙しそうだな」

「誰かさんが死体を見つけたせいでな」本郷は無精髭の生えた顎をさすった。

「俺のお陰だろ。健全な市民として当然のことをしたまでさ」

本郷は苦虫を潰すような顔をした。
「健全な市民は鍵をピッキングして、他人の家に勝手に上がり込んだりしねえんだよ」

「それもそうだな」そう言われると、佐藤としては反論できない。

「てか、なんでここにいたんだよ。あ、タバコあるか?」

佐藤はポケットからタバコとジッポを取り出し、本郷に渡した。
「依頼だよ。今回の被害者を探してくれって頼まれたんだ」

「そんな探偵みたいなこともやってたのか」本郷はタバコに火をつけると、それを佐藤に返した。

「タバコで、不法侵入はチャラな」佐藤もタバコに火をつけた。

「そんな小っさいことでお前のことしょっ引いてるほどこっちも暇じゃねえよ」本郷は虫を払うように手を振った。

「それもそうだな。で、容疑者の目星はついているのか?」

本郷はタバコの煙を吐き出した。
「まだ確定したわけじゃないがな。半年前から若い女を狙った殺人事件が、今回もあわせて四件起きていて、その事件には一つの共通点がある」

「被害者の頭だけ見つかってるところか」

「ああ。けどまだ容疑者の素性が全く分かってないもんで、賞金もかけれてない。こんな事件、昔ならすぐに犯人が分かっただろうにな。今じゃ人員が足りない。監視カメラが高性能に変わっても、それを設置、維持する金銭力がない。東京の中心以外はな。それにどんなカメラを設置しても、技術か金のあるやつはそれを偽装することができる。敵さんにだけアドバンテージがあるよ」

「じゃあ今回の犯人は、、、」

「まあ、おそらく高度な技術を持っているか、その技術がある協力者がいるんだろう。じゃなきゃいくら俺らでも捕まえられてるよ」本郷は自虐的に笑った。

「そう卑下するなよ。お前は頑張ってるよ」佐藤は本心を言った。

「ありがとよ。けどそれじゃ意味ないんだよな」

 佐藤は本郷の答えに曖昧な相槌を打った。警察組織による不正のニュースは最近ますます増えている。世間から警察という組織に対する風当たりは良いとは言えない。
「他に何かわかっていることはないのか?」

「そうだな。今のところ被害者の性別もバラバラだし、、、」

「そうなのか?」佐藤は頭部を切り落とすという異常な犯行から、女に対して執着のある人間の犯行だと思っていた。

「ああ」本郷はタバコをコンクリートに押しつけ、火を消した。

「灰皿あるか?」

 佐藤はポケットから携帯灰皿を取り出して本郷に渡した。

「すまない。共通点か、、、ああ」本郷は何かに気づいたかのように言った。

「何かあったのか?」

「そういえば、被害者全員の顔が整っているな。みんな世間的に見たら美男美女だ」

 佐藤はエリカの顔を思い出す。濃いメイクが施されていたが、確かに綺麗な顔だったように思う。それに整形もしていたようだし、比較的端正な容姿であったことは間違い無いだろう。
「意外とあるかもしれないな」

「そうか?偶然かもしれないぞ」

「いや、分からないさ。被害者の共通点がそこしかないなら、そこを探ってみる価値はあるよ。他の被害者の情報を俺に回してくれ」
    
 本郷はすぐに頷いた。警察は世間に公開していない情報を、賞金稼ぎに公開することができる。これは賞金稼ぎが導入されたタイミングで、法律によって認められている。
「分かった。署に戻ったら、情報をお前宛に送るよ。機密事項だからくれぐれも漏れないようにな」本郷は佐藤に釘を刺した。

「分かってるよ。素人じゃ無いんだ」

 その後、佐藤は自宅に戻るために駅までの道を歩いた。佐藤は、自分が田中の思い通りに動いていることに苦笑いを浮かべ、地面に落ちていた石を軽く蹴った。
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