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EP9
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「ここが彼女の家ですか」佐藤は二階建ての古い木造アパートを見上げた。
「はい。彼女は、稼ぎはあったんですけど、そのお金を貯めていたので」秋山はそう答え、外階段を上がっていった。
「貯めた金を何に使おうとしていたかご存知ですか?」階段を上がりきったところで、佐藤は尋ねた。
秋山は振り返って答えた。
「整形です」
「なるほど」
「佐藤さんには、理解できないですよね」
「いいえ、そんなことないですよ。ここまでルッキズムが進行した世界で、整形をすることは合理的であるとは思いますよ」佐藤は少し冷たい口調で言った。合理的ではある。
「合理的ですか、、、」秋山は部屋の前に立つと、インターフォンを鳴らした。返答はない。部屋の奥からは物音もしない。秋山がドアノブを回したが、鍵はかけられているようだ。
「失礼」佐藤は秋山とドアノ間に体を滑り込ませるようにして、鍵穴を確認した。古いアパートだから、単純な作りだ。これなら簡単に開けられる。佐藤はカバンからピッキングツールを取り出した。
「そういえば、家主とは連絡は取ったんですか?」重要なことを聞き忘れていた。
「はい。けどエリカはここをまた借りしているみたいで。女の子には貸してないよって言われてすぐに切られちゃいました」
「なるほど」佐藤はピッキングツールを鍵穴の中に入れた。20秒ほどガチャガチャと動かすと、鍵の外れる小気味良い音がした。
「すごいですね」秋山が驚いて言う。
「鍵が古いだけです」佐藤は慎重にドアを開いた。中の空気が外に流れてくる。佐藤はその空気の匂いを嗅いだ。とりあえず、死体が腐った匂いがしないことには安堵した。佐藤はドアの隙間から中を除いてみる。玄関のすぐ隣に小さなキッチンがあり、キッチンを抜けたところに部屋があった。
「念の為ここで待っていて下さい」佐藤は秋山にそう告げ、鞄を置き、中に入った。
土足のままキッチンまで踏み入り、キッチンの対面にあるドアを開けた。ユニットバスだ。仕切りになっているビニール製のカーテンを開ける。何もない。ただ小さな浴槽があるだけだ。佐藤はユニットバスを出て、奥の部屋に向かった。
部屋の中は特に変わった様子がなかった。ものは多いが整頓された部屋。空きっぱなしのクローゼットは服でパンパンだ。化粧机の上には化粧品が並んでいる。特に変わった様子はない。この荷物の量が部屋に残っているとなると、荷物をまとめて計画的に出ていった線はなさそうだ。何かから逃げるために慌てて最低限の荷物だけ持って出ていったか、外で何かトラブルに巻き込まれたか。
佐藤は冷蔵庫を開けてみた。あまり自炊はしないタイプだったのだろう。マヨネーズやソース、お茶があるだけで、食材はない。続いて冷凍庫の中を開けた。スライド式の上の段には冷凍食品が並んでいた。中華料理が好きだったのだろうか。チャーハン、餃子、シュウマイ。そして、液体食物。庶民の必須アイテムだ。しかし、これは見たことのないパッケージだ。佐藤は液体食物を冷凍庫から取り出した。チーズケーキ味。こんなものが出ていたのか。気分が向いたら買ってみようと思い、液体食物を冷凍庫に戻そうとした時、佐藤はあるものに気づいた。液体食物を取り出したことでできた隙間から、透明なスライド式の段を通して、冷凍庫にあるべきでないものを佐藤は見つけた。金色の髪の毛だ。いや、これは、、、佐藤は上の段を移動させた。下段にあったのは、人の頭だった。
「はい。彼女は、稼ぎはあったんですけど、そのお金を貯めていたので」秋山はそう答え、外階段を上がっていった。
「貯めた金を何に使おうとしていたかご存知ですか?」階段を上がりきったところで、佐藤は尋ねた。
秋山は振り返って答えた。
「整形です」
「なるほど」
「佐藤さんには、理解できないですよね」
「いいえ、そんなことないですよ。ここまでルッキズムが進行した世界で、整形をすることは合理的であるとは思いますよ」佐藤は少し冷たい口調で言った。合理的ではある。
「合理的ですか、、、」秋山は部屋の前に立つと、インターフォンを鳴らした。返答はない。部屋の奥からは物音もしない。秋山がドアノブを回したが、鍵はかけられているようだ。
「失礼」佐藤は秋山とドアノ間に体を滑り込ませるようにして、鍵穴を確認した。古いアパートだから、単純な作りだ。これなら簡単に開けられる。佐藤はカバンからピッキングツールを取り出した。
「そういえば、家主とは連絡は取ったんですか?」重要なことを聞き忘れていた。
「はい。けどエリカはここをまた借りしているみたいで。女の子には貸してないよって言われてすぐに切られちゃいました」
「なるほど」佐藤はピッキングツールを鍵穴の中に入れた。20秒ほどガチャガチャと動かすと、鍵の外れる小気味良い音がした。
「すごいですね」秋山が驚いて言う。
「鍵が古いだけです」佐藤は慎重にドアを開いた。中の空気が外に流れてくる。佐藤はその空気の匂いを嗅いだ。とりあえず、死体が腐った匂いがしないことには安堵した。佐藤はドアの隙間から中を除いてみる。玄関のすぐ隣に小さなキッチンがあり、キッチンを抜けたところに部屋があった。
「念の為ここで待っていて下さい」佐藤は秋山にそう告げ、鞄を置き、中に入った。
土足のままキッチンまで踏み入り、キッチンの対面にあるドアを開けた。ユニットバスだ。仕切りになっているビニール製のカーテンを開ける。何もない。ただ小さな浴槽があるだけだ。佐藤はユニットバスを出て、奥の部屋に向かった。
部屋の中は特に変わった様子がなかった。ものは多いが整頓された部屋。空きっぱなしのクローゼットは服でパンパンだ。化粧机の上には化粧品が並んでいる。特に変わった様子はない。この荷物の量が部屋に残っているとなると、荷物をまとめて計画的に出ていった線はなさそうだ。何かから逃げるために慌てて最低限の荷物だけ持って出ていったか、外で何かトラブルに巻き込まれたか。
佐藤は冷蔵庫を開けてみた。あまり自炊はしないタイプだったのだろう。マヨネーズやソース、お茶があるだけで、食材はない。続いて冷凍庫の中を開けた。スライド式の上の段には冷凍食品が並んでいた。中華料理が好きだったのだろうか。チャーハン、餃子、シュウマイ。そして、液体食物。庶民の必須アイテムだ。しかし、これは見たことのないパッケージだ。佐藤は液体食物を冷凍庫から取り出した。チーズケーキ味。こんなものが出ていたのか。気分が向いたら買ってみようと思い、液体食物を冷凍庫に戻そうとした時、佐藤はあるものに気づいた。液体食物を取り出したことでできた隙間から、透明なスライド式の段を通して、冷凍庫にあるべきでないものを佐藤は見つけた。金色の髪の毛だ。いや、これは、、、佐藤は上の段を移動させた。下段にあったのは、人の頭だった。
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