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第94話 悪人殺し
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すやすやとソファの上で寝そべっているメアリをよそに、俺は千里眼で遠く離れた熊本県にある介護施設の中を覗いていた。
もう一時間近く上本さんの母親を見続けているが特に変わった様子はない。
上本さんの母親はベッドの上で静かに眠っているだけだった。
それからさらに一時間が経過して正午になった。
すると上本さんの部屋に施設の職員さんが昼ご飯を運ぶために入ってきた。
男性の職員さんで見るからに優しそうな顔をしている。
その男性の職員さんが寝ていた上本さんの母親の肩をぽんぽんと叩いてそっと起こしてあげた。
上本さんの母親はまだ寝ていたかったのか、ぐずっている様子だった。
だが男性の職員さんはベッドについているテーブルの上に食器を乗せていく。
上本さんの母親はそれを見て、あろうことか目の前の食器を手で払い落としてしまった。
プラスチック製の食器だったようで床に落ちても割れなかったが、それなりに大きな音がしたのだろう女性の職員さんが部屋に駆けつけてきた。
男性の職員さんは女性の職員さんと言葉を交わすと、その後床に散乱したご飯を二人で一緒に片付け始めた。
二人とも嫌な顔一つしていない。
「うーん……やっぱり、職員さんの言っていることの方が正しいのかもな」
そう独りごちた時だった。
女性の職員さんが部屋を出ていった瞬間、それまで優しい顔をしていた男性の職員さんの表情が急に険しくなる。
そしてその男性の職員さんは上本さんの母親のもとへ近付いていくと、上本さんの母親の右腕を片手でねじり出した。
さらにもう片方の手で上本さんの母親の口を押さえ、大声を出させないようにした。
直後、
「うおっ!? こいつ、マジか……」
その男性職員は上本さんの母親の右腕をいともたやすく折った。
その上でベッドから床に引きずり落としたのだった。
俺はその一部始終を千里眼によって見ていた。
「おいおい、ひどいなこれは……」
「何、どうしたん?」
いつの間にか起きていたメアリが俺の背後でぼそっとつぶやく。
「ん、ああ。どうやら上本さんの母親の言ってることが正しかったみたいだ」
「せやったら施設の職員が悪人っちゅうことやな」
「そういうことになるな」
上本さんの母親の怪我はこの男性職員にやられたのだろう。
「ふ~ん……せやったらヤマトお兄ちゃん、その人の顔と名前と血液型教えてぇな」
そう言ったメアリの冷たくも美しい顔は、悪人を殺すためだけに造られたサイボーグのように俺の目には映った。
◇ ◇ ◇
俺が男性職員の情報をスマホで見せると、
「シクソ」
メアリは迷うことなく口にした。
その瞬間男性職員が床に倒れ込み、上本さんの母親の目の前で消失していく。
「これで今日の依頼は終わりだな。ご苦労さん、メアリ」
「……」
返事がない。
見るといつになく弱々しい顔をしている。
「どうしたメアリ?」
具合でも悪いのだろうか、そう思い訊ねると、
「……お、お腹減ったぁ~……」
メアリは目を回しながら俺に寄りかかるようにして倒れてきたのだった。
……朝ご飯なら充分食べたはずなのに、燃費の悪い奴め。
もう一時間近く上本さんの母親を見続けているが特に変わった様子はない。
上本さんの母親はベッドの上で静かに眠っているだけだった。
それからさらに一時間が経過して正午になった。
すると上本さんの部屋に施設の職員さんが昼ご飯を運ぶために入ってきた。
男性の職員さんで見るからに優しそうな顔をしている。
その男性の職員さんが寝ていた上本さんの母親の肩をぽんぽんと叩いてそっと起こしてあげた。
上本さんの母親はまだ寝ていたかったのか、ぐずっている様子だった。
だが男性の職員さんはベッドについているテーブルの上に食器を乗せていく。
上本さんの母親はそれを見て、あろうことか目の前の食器を手で払い落としてしまった。
プラスチック製の食器だったようで床に落ちても割れなかったが、それなりに大きな音がしたのだろう女性の職員さんが部屋に駆けつけてきた。
男性の職員さんは女性の職員さんと言葉を交わすと、その後床に散乱したご飯を二人で一緒に片付け始めた。
二人とも嫌な顔一つしていない。
「うーん……やっぱり、職員さんの言っていることの方が正しいのかもな」
そう独りごちた時だった。
女性の職員さんが部屋を出ていった瞬間、それまで優しい顔をしていた男性の職員さんの表情が急に険しくなる。
そしてその男性の職員さんは上本さんの母親のもとへ近付いていくと、上本さんの母親の右腕を片手でねじり出した。
さらにもう片方の手で上本さんの母親の口を押さえ、大声を出させないようにした。
直後、
「うおっ!? こいつ、マジか……」
その男性職員は上本さんの母親の右腕をいともたやすく折った。
その上でベッドから床に引きずり落としたのだった。
俺はその一部始終を千里眼によって見ていた。
「おいおい、ひどいなこれは……」
「何、どうしたん?」
いつの間にか起きていたメアリが俺の背後でぼそっとつぶやく。
「ん、ああ。どうやら上本さんの母親の言ってることが正しかったみたいだ」
「せやったら施設の職員が悪人っちゅうことやな」
「そういうことになるな」
上本さんの母親の怪我はこの男性職員にやられたのだろう。
「ふ~ん……せやったらヤマトお兄ちゃん、その人の顔と名前と血液型教えてぇな」
そう言ったメアリの冷たくも美しい顔は、悪人を殺すためだけに造られたサイボーグのように俺の目には映った。
◇ ◇ ◇
俺が男性職員の情報をスマホで見せると、
「シクソ」
メアリは迷うことなく口にした。
その瞬間男性職員が床に倒れ込み、上本さんの母親の目の前で消失していく。
「これで今日の依頼は終わりだな。ご苦労さん、メアリ」
「……」
返事がない。
見るといつになく弱々しい顔をしている。
「どうしたメアリ?」
具合でも悪いのだろうか、そう思い訊ねると、
「……お、お腹減ったぁ~……」
メアリは目を回しながら俺に寄りかかるようにして倒れてきたのだった。
……朝ご飯なら充分食べたはずなのに、燃費の悪い奴め。
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