レベリング・マーダー 一週間に一回は人を殺さないと自分が死んでしまう。ならばいっそ勧善懲悪しよう。

シオヤマ琴@『最強最速』発売中

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第105話 救出

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ごろんごろんと地面を転がる風丸の頭部。
俺は死を覚悟していたが助かったようだった。

とその時、
「何やってるの、ヤマトさん」
聞き覚えのある小生意気な声が廃倉庫内にこだました。
俺はその声の主に目線を合わせる。

「あきらっ」

そう。
俺の窮地を救ってくれたのは石神あきらだったのだ。

「もう、僕がいなかったらほんとに死んでたよ。ヤマトさん」
「あ、ああ……悪い、助かった」
「っていうかその腕早く治した方がいいんじゃない。痛くないの?」
あきらにそう言われた途端、急に腕の痛みがぶり返してきた。

「ぐあぁっ……ク、クフイカっ……!」


◇ ◇ ◇


檻の鉄格子を素手で折り曲げるあきら。
それを見た清水さんと美紗ちゃんは驚愕の表情を浮かべる。

「ほら、出ていいよ」
「あ、ありがとう」
「あ、ありがとうね、あきらちゃん」
「どういたしまして」

檻の中から無事に抜け出ることが出来た二人に俺は頭を下げた。

「すみませんでしたっ。俺のせいでこんな危ない目に遭わせてしまって……」
「や、やめてください鬼束さんっ。わたしたちは大丈夫ですからっ。ねっ? お母さん」
「ええ。無事だったんだしそんなに気にしないでちょうだい」
「でも、あきらがいなかったらどうなっていたか……」
「今のあたしたちの生活があるのはヤマトくんのおかげなんだから、そんなに自分を責めないの。いいわね」
と二人は優しく返してくれる。
だが清水さんからしたら自分の娘が誘拐されて平気なはずがない。
きっと俺に気を遣ってそう言ってくれただけだろう。

と、
「あの、あきらちゃんって殺人者さんだったの?」
美紗ちゃんがあきらに向き直り、訊きにくそうに声をかけた。

「あれ、言ってなかったっけ?」
「う、うん。この前会った時は鬼束さんの友達だって……」
「あーそっか、そういえばそうだったね。ごめんねお姉さん。でもヤマトさんの友達ってのは本当だから」
「そ、そうなんだ」
ちらちらと俺の顔を盗み見る美紗ちゃん。
やはり十二歳の少女と友達ってのは少しおかしいのかもな。

すると清水さんがあきらに、
「あなたがあきらちゃんだったのね。はじめまして、あたしは美紗の母親の清水秋江です。よろしくねっ」
手を差し出した。

「うん、よろしくお姉さんのお母さん」
あきらはにっこりと笑って清水さんの手を握る。

「じゃあヤマトさん。早くヤマトさんとこのボロアパートに帰ろう」
そう口にすると一人歩き出すあきら。
悪気なく言ったのだろうが、清水さん母娘もそのボロアパートに住んでいるんだぞ。

「い、行きましょうか?」
「ええ」
「は、はい」
俺と清水さんと美紗ちゃんは苦笑いを浮かべつつ、あきらのあとを追って廃倉庫をあとにするのだった。


◇ ◇ ◇


清水さん母娘とドアの前で別れた俺とあきらは二人して俺の部屋へと入る。

「前来た時とちょっと感じが変わってるね」
「そうか?」

もしかしたらメアリがソファやベッドを自分の好きな位置に動かしていたのかもしれないな。
メアリのことを思い出し少ししんみりしていると、
「それにしても、お姉さんたち無事でよかったね」
あきらがソファに座って俺を見上げ言った。

「ああ、あきらのおかげだ。本当にありがとうな」
「別にいいよ。ヤマトさんが喜んでくれるならさ」
あきらは小さいのでソファに埋もれているように見える。
そんなあきらを可愛らしく思いつつ、俺は冷蔵庫からジュースを取り出してグラスに注ぐとあきらに渡してやる。

「ありがとヤマトさん。いただきまーす」


◇ ◇ ◇


「それで、あきらは俺に何か用があったんじゃないのか?」
「う~ん、用ってほどでもないんだけどね。ヤマトさんなら暇かなぁと思ってさ」
テーブルの上に飲み干したグラスを置くと、あきらはグラスについた水滴を指先でなぞりながら言う。

「暇って……まあ、確かに昨日までは暇だったかもしれないけどな。今の俺にはやることが出来たから暇じゃないよ。悪いけど」
「やることってさっきの二人と関係してたりする?」
すべてを見透かしたかのような目で俺を見てくるあきら。
あきらは読心呪文で俺の心を読んでいるのかもしれない。

「大いに関係してる。二人が誘拐されたのは俺のせいだからな、これからもまた同じようなことが起こらないとも限らない……だから俺が二人を守らないと」
一人でどこまで守り切れるかわからないが、何もしないわけにはいかない。

「ってわけだからあきらの頼みは聞けそうにないよ。悪い」
「ふ~ん、でもそういうことならやっぱりヤマトさんは僕の話に乗ってくれると思うけどなぁ」
「……どういう意味だ?」
「んふふ。僕の呪文ならあの二人を守れるって言ったらどうする?」

そう問いかけるあきらの顔は十二歳の少女とは思えないとても大人びたものだった。
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