【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~

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第15話 前髪の長い女子学生

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ピピー、ピピー、ピピー!

コカトリスを葬り去ったことでスマホが大きな音を立てて鳴った。
俺はコカトリスがアイテムをドロップしたかどうかを確かめるため、ズボンのポケットからスマホを取り出し操作する。
表示された画面を見て――

・コカトリスを倒したことで570の経験値を獲得しました。
・レベルが1上がり、レベル757になりました。

「なんだ、ドロップは無しか……っていうかさっきのモンスター、コカトリスっていうんだな」

この時初めてコカトリスという名前だったと知った俺は、
「ん? そういえば昔、何かのゲームでそんなモンスターがいたような……たしかそいつも石化能力を持ってたっけ? それに気付いてればこんな苦労はせずに済んでたのかもな」
未知のモンスターに対しては慎重に慎重を期すべきだとあらためて思わされた。

だが今は――
「なあ、誰かそこにいるんだろっ?」
俺を助けてくれた声の主に興味がある。
コカトリスに殺されそうになった際に俺の石化を解いてくれた人間がまだ近くにいるはずだ。

「もうコカトリスは倒したから出てきても大丈夫だぞっ」
森の中に向かって声をかけるが一向に反応がない。

あれ、おかしいな?
俺の思い違いかな……?
……いや、たしかにあの時「リリリル!」という声がした。
そしてそのあとに俺の石化が解けたことは間違いない。

「おーい、誰かいるなら出てきてくれないかっ? お礼が言いたいんだっ」

あの時聞こえた声によって俺は命拾いをしたわけだからせめてお礼くらいは言わせてほしい。
人付き合いが苦手だからといって命の恩人に不義理はしたくない。

「おーい、聞こえてるんだろっ。それともこっちから行こうかっ?」
俺の放ったその言葉に反応したようで、
「……わ、私からそちらに行きます、からっ……」
か細い声が森の中から返ってきた。

少ししてガサガサと木々が揺れたかと思うと、若い細身の女性がゆっくりと姿を現す。
こんな若い教師はいないだろうから俺と同学年の学生でまず間違いない。

「……す、すみませんでした……今まで、ずっと隠れてて……」
「いやまあ、それはいいんだけどさ」
「……お、お強いんですね……」
と女子学生。
やはり俺がコカトリスを倒すところを見ていたようだ。

「まあ、それなりに。それよりもさっきはきみが俺を助けてくれたんだよな……?」
「……そ、そうです……」
消え入りそうな小さい声。
しっかり耳を澄ましていないと聞き逃してしまいそうだ。

「ありがとう、助かったよ。もう駄目だと思ってたから」
「……は、はい……」
「リリリルだっけ? 石化を解く呪文なのか?」
「……い、いえ。あ、そ、そうですけど……正確には、状態異常を治す呪文です……」
「そうなのか? それはすごいなっ」

俺が過去に遊んだことのあるゲームには毒や麻痺、石化や混乱などの状態異常があった。
それらは専用のアイテムや呪文で治すことが出来たのだが、この【魔物島】では俺はまだそのようなアイテムや呪文には出会ったことがなかった。

状態異常をきたすと致命的な場合も多々ある。
だからこそ俺はそれらをかなり警戒してこれまで過ごしてきたつもりだ。
そんな状態異常をすべて治せるのだとしたらこれほど便利で頼りになる呪文はない。

俺が手放しで褒めたからか、目の前の女子学生は恥ずかしそうにうつむいてしまっている。
俺が言うのもなんだが、この女子学生は俺に負けず劣らず人とのコミュニケーションをとるのが苦手なようだ。

と、名前を聞いていなかったことに思い至り、
「あのさ……俺は柴木善っていうんだけど、きみはなんていうの……?」
気持ちの悪い奴だと思われないかという不安も大いにあったが、目の前の女子学生に妙な親近感を覚えた俺は出来るだけ自然に訊いてみた。

「……え、えっと、私は、北原です……北原すみれ、です……」
「え? きみの名前、北原っていうのか?」
「……は、はい……へ、変でしょうか……?」
北原すみれと名乗った女子学生はおどおどしながら上目遣いで訊き返してくる。
二重でくりんとした目が長い前髪の隙間から覗いて見えた。

「いや、変じゃないけどさ……あの、北原ってもしかして双子だったりする?」
俺は気になったことをすかさず訊ねる。
初対面の女子にプライベートな質問をするなんて我ながらどうかしていると思うが、この時はどうしても確認せずにはいられなかったのだ。

「……えっ? は、はい、双子ですけど……なんでそれを……?」
戸惑いながらも俺の質問に答えてくれる北原すみれ。

「やっぱり……じゃあ、北原奏美ってもしかして?」
「……き、北原奏美は、わ、私の姉ですけど……」

北原すみれは目をぱちくりさせながら小さな声でそう言った。
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