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第16話 北原すみれ
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髪型と性格がだいぶ違うので気付かなかったが、言われてみればたしかに北原すみれは顔の作りが北原奏美とよく似ている。
いや、よく似ているどころか目元や口元、顔の小ささなど見れば見るほど姉である北原奏美とうり二つだ。
「……あ、あの……?」
じろじろと無遠慮に眺めていたせいだろう、北原すみれは落ち着かない様子で俺を見上げる。
「あ、悪い」
「……い、いえ……そ、それより、私の姉のこと知ってるんですか……?」
「まあね。この島で初めて会った……というか倒れていた俺を起こしてくれたのが北原だったから」
「……そ、それで今、姉はどこにっ……?」
北原すみれは身を乗り出して訊いてきた。
さっきまでより声が大きい。そして顔が近い。興奮して我を忘れているのかもしれない。
「あー、いやそれが……北原とは三ヶ月前に別れたきり会ってないんだ」
「……え……」
俺の言葉を受け絶句する。
「だから今どこで何をしてるのかはわからない……悪いけど」
「……そ、そうですか……」
そう返した北原すみれは、うつむいて自らの足元に目線を落とした。明らかに落胆している。
この時はまだ知らなかったが、北原すみれはこの島で三ヶ月間ずっと姉を探していたのだそうだ。しかもたった一人で。
なのでせっかく掴んだと思った姉の手掛かりが消えてしまったと知った北原すみれがかなりのショックを受けたのも当然と言えば当然だ。
「……そ、そうですか……」と返答したきり北原すみれはうつむいたまま一言も言葉を発さない。
そんな北原すみれの様子を見るに見かねて俺は静かに語りかける。
「あ、あのさ、元気出したら……? 北原ならきっとこの島のどこかで元気にやってるさ。ほら、北原は俺たちと違って社交的だし、問題ないって。なっ?」
そう口にしたあとで、[俺たち]とひとくくりにしてしまっていたことに気付いて慌てて訂正。
「あ、いや、別にきみが社交的じゃないとかそういうことじゃ全然ないけどっ……」
「……」
棒立ちのまま足元を見下ろしている北原すみれ。
「えっと……うーん、と……」
「……」
「だから、そのー……」
「……」
なんとか元気づけようと必死に頭を巡らせるも、次に続く言葉が全然出てこない。
そんな自分が情けなく、自己嫌悪に陥る。
やはり落ち込んでいる女子を励ますことは口下手な俺には荷が勝ちすぎたようだ。
気付けば沈黙が二人の間を包んでいた。
気まずい空気が流れる。
とそんな時だった。
「……あ、あの……柴木さんの強さを見込んで、お、お願いがあります……も、もしですよ、もし、ご迷惑じゃなかったら……し、柴木さんも、この島のどこかにいる姉を探すのを……て、手伝ってくれませんかっ……そ、それで、姉に会えたら、私が探していると伝えてくれませんかっ……」
北原すみれがおもむろに顔を上げ言った。
見ると口元が小刻みに震えている。
「……え?」
という俺の反応を否定ととらえたのか、
「……あっ、す、すみませんっ、や、やっぱり虫が良すぎますよねっ……すみません、すみませんっ……」
謝りながら何度も頭を下げる北原すみれ。
それは見ているこっちが申し訳なく思ってしまうほどだった。
そんな北原すみれを見ながら俺は考える。
俺と同じでおそらくコミュニケーション能力に難のある北原すみれにとって、初対面の俺にプライベートな頼みごとをするのは勇気がいっただろう、と。
そしてもし俺が北原すみれの立場だったら同じように出来ただろうか、と。
また、北原奏美に関しても俺には多少思うところがあった。
三ヶ月前、北原たちと別れる際に俺が海沿いを逆方向に歩いて、いつかまた再会しようというようなニュアンスの話をしたのだが、北原がもし今もそのことを憶えているのだとしたら少し心が痛む。なぜなら俺は梶谷たちとの再会を望まなかったので、はやばやとその約束を反故にしていたからだ。
――なので俺は、今も目の前で頭を下げ続けている北原すみれに向かって自然とこう口にしていた。
「……いいよ。手伝うよ」と。
いや、よく似ているどころか目元や口元、顔の小ささなど見れば見るほど姉である北原奏美とうり二つだ。
「……あ、あの……?」
じろじろと無遠慮に眺めていたせいだろう、北原すみれは落ち着かない様子で俺を見上げる。
「あ、悪い」
「……い、いえ……そ、それより、私の姉のこと知ってるんですか……?」
「まあね。この島で初めて会った……というか倒れていた俺を起こしてくれたのが北原だったから」
「……そ、それで今、姉はどこにっ……?」
北原すみれは身を乗り出して訊いてきた。
さっきまでより声が大きい。そして顔が近い。興奮して我を忘れているのかもしれない。
「あー、いやそれが……北原とは三ヶ月前に別れたきり会ってないんだ」
「……え……」
俺の言葉を受け絶句する。
「だから今どこで何をしてるのかはわからない……悪いけど」
「……そ、そうですか……」
そう返した北原すみれは、うつむいて自らの足元に目線を落とした。明らかに落胆している。
この時はまだ知らなかったが、北原すみれはこの島で三ヶ月間ずっと姉を探していたのだそうだ。しかもたった一人で。
なのでせっかく掴んだと思った姉の手掛かりが消えてしまったと知った北原すみれがかなりのショックを受けたのも当然と言えば当然だ。
「……そ、そうですか……」と返答したきり北原すみれはうつむいたまま一言も言葉を発さない。
そんな北原すみれの様子を見るに見かねて俺は静かに語りかける。
「あ、あのさ、元気出したら……? 北原ならきっとこの島のどこかで元気にやってるさ。ほら、北原は俺たちと違って社交的だし、問題ないって。なっ?」
そう口にしたあとで、[俺たち]とひとくくりにしてしまっていたことに気付いて慌てて訂正。
「あ、いや、別にきみが社交的じゃないとかそういうことじゃ全然ないけどっ……」
「……」
棒立ちのまま足元を見下ろしている北原すみれ。
「えっと……うーん、と……」
「……」
「だから、そのー……」
「……」
なんとか元気づけようと必死に頭を巡らせるも、次に続く言葉が全然出てこない。
そんな自分が情けなく、自己嫌悪に陥る。
やはり落ち込んでいる女子を励ますことは口下手な俺には荷が勝ちすぎたようだ。
気付けば沈黙が二人の間を包んでいた。
気まずい空気が流れる。
とそんな時だった。
「……あ、あの……柴木さんの強さを見込んで、お、お願いがあります……も、もしですよ、もし、ご迷惑じゃなかったら……し、柴木さんも、この島のどこかにいる姉を探すのを……て、手伝ってくれませんかっ……そ、それで、姉に会えたら、私が探していると伝えてくれませんかっ……」
北原すみれがおもむろに顔を上げ言った。
見ると口元が小刻みに震えている。
「……え?」
という俺の反応を否定ととらえたのか、
「……あっ、す、すみませんっ、や、やっぱり虫が良すぎますよねっ……すみません、すみませんっ……」
謝りながら何度も頭を下げる北原すみれ。
それは見ているこっちが申し訳なく思ってしまうほどだった。
そんな北原すみれを見ながら俺は考える。
俺と同じでおそらくコミュニケーション能力に難のある北原すみれにとって、初対面の俺にプライベートな頼みごとをするのは勇気がいっただろう、と。
そしてもし俺が北原すみれの立場だったら同じように出来ただろうか、と。
また、北原奏美に関しても俺には多少思うところがあった。
三ヶ月前、北原たちと別れる際に俺が海沿いを逆方向に歩いて、いつかまた再会しようというようなニュアンスの話をしたのだが、北原がもし今もそのことを憶えているのだとしたら少し心が痛む。なぜなら俺は梶谷たちとの再会を望まなかったので、はやばやとその約束を反故にしていたからだ。
――なので俺は、今も目の前で頭を下げ続けている北原すみれに向かって自然とこう口にしていた。
「……いいよ。手伝うよ」と。
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