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第50話 ヘレンとおばあさん
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俺が助けた少女はヘレンと名乗った。
ヘレンは寝たきりのおばあさんと俺たちがさっきまでいた小屋で二人で暮らしているのだという。
明かりがついていたのに誰も出てこなかったのはヘレンのおばあさんが寝ていたからのようだ。
ヘレンはおばあさんが風邪をひいてしまったとかで薬草を取りに森の中をさまよっていたところ、レッドライオネルと遭遇してしまったらしい。
そこに俺たちが現れたというわけだ。
俺たちはヘレンを一人で帰らせるのは危険だと思ったので、家まで送り届けることにした。
「結城ってば森林破壊なんてしやがって、悪い奴だなぁ」
新木が楽しそうに言う。
いつもは何かと俺に小言を言われることの多い新木なので、ここぞとばかりに俺をいじってくる。
反論したいところだが森を破壊してしまったことは事実なので俺は黙ってスルーを決め込む。
「だ、大丈夫だよ。この辺りはおばあちゃんの土地だから」
「あーあ、だったらそのおばあちゃんに結城は謝らなくちゃなぁ」
「わかってるよ」
「あ、それも大丈夫だと思うよ。ここら辺って森があるせいでモンスターが出て危ないっておばあちゃん言ってたもん。だから森がなくなった方がモンスターがいなくなるから多分喜んでくれると思う」
少女は助けられた恩を感じてか、俺をフォローするように言葉を紡いでいった。
とても優しい子のようだ。
それから十分ほど歩いて俺たちは少女たちの住む家へとたどり着いた。
「やっと小屋についたぜっ」と声を張り上げる新木。
ガサツな奴め。
☆ ☆ ☆
「孫がお世話になりました。本当にありがとうございます」
ヘレンのおばあさんが頭を少し浮かせて俺たちの顔を見た。
「あ、無理はなさらずに。おばあさんは横になっていてください」
「そうですか。申し訳ありませんね」
俺はおばあさんを布団に寝かせるとヘレンのもとへ近寄っていく。
そしておばあさんには聞こえないように、
「なあヘレン、おばあさんはどこが悪いんだ? 怪我か? それとも病気か?」
小声で訊ねる。
「よくわからないの。うち貧乏だからお医者さんにも診てもらえないし……」
とヘレンはうつむいてしまう。
「おい結城、空気読めよな。そんなデリカシーのないこと訊くもんじゃないぞ」
お前が言うか。
「勘違いするな。怪我か病気か訊いたのはヒールかリフレッシュか判断するためだ」
「なーんだ、そういうことかよ。だったら早く言えよな」
「結城くんは本当に小さい女の子が好きなんだね」
語弊のある言い方をするな。
「え、えっと、ひーる? りふれっしゅ? って何?」
「あー、実は俺はどんな怪我でも病気でも治せるんだよ。だから今からヘレンのおばあさんを治療してもいいか?」
「えっ、ほんとっ?」
「ああ、本当だよ」
俺は努めて優しくヘレンに話してやった。
「おねがいお兄ちゃんっ、おばあちゃんを治してあげてっ」
「ああ、任せとけ」
俺は寝ているおばあさんの横に立つと「ヒール」「リフレッシュ」と立て続けに唱えた。
するとおばあさんは、
「……ぅん? あら? 何か体が軽くなったような……」
言いながらすくっと立ち上がってみせる。
「おばあちゃんっ!? 動けるようになったのっ!?」
「ヘレン。おばあちゃん、なんだかすっかり体の調子がよくなったわ。嘘みたいよ」
「うわぁ~ん、おばあちゃ~んっ!!」
「あらあらヘレンったら」
泣きながら抱きついてくるヘレンをおばあさんは涙ながらに抱きしめた。
その光景を前にふと横にいた新木を盗み見ると、新木は目を潤ませていた。
だが俺の視線に気付くやいなや、新木はそっぽを向いてしまった。
素直じゃないな、まったく……。
ヘレンは寝たきりのおばあさんと俺たちがさっきまでいた小屋で二人で暮らしているのだという。
明かりがついていたのに誰も出てこなかったのはヘレンのおばあさんが寝ていたからのようだ。
ヘレンはおばあさんが風邪をひいてしまったとかで薬草を取りに森の中をさまよっていたところ、レッドライオネルと遭遇してしまったらしい。
そこに俺たちが現れたというわけだ。
俺たちはヘレンを一人で帰らせるのは危険だと思ったので、家まで送り届けることにした。
「結城ってば森林破壊なんてしやがって、悪い奴だなぁ」
新木が楽しそうに言う。
いつもは何かと俺に小言を言われることの多い新木なので、ここぞとばかりに俺をいじってくる。
反論したいところだが森を破壊してしまったことは事実なので俺は黙ってスルーを決め込む。
「だ、大丈夫だよ。この辺りはおばあちゃんの土地だから」
「あーあ、だったらそのおばあちゃんに結城は謝らなくちゃなぁ」
「わかってるよ」
「あ、それも大丈夫だと思うよ。ここら辺って森があるせいでモンスターが出て危ないっておばあちゃん言ってたもん。だから森がなくなった方がモンスターがいなくなるから多分喜んでくれると思う」
少女は助けられた恩を感じてか、俺をフォローするように言葉を紡いでいった。
とても優しい子のようだ。
それから十分ほど歩いて俺たちは少女たちの住む家へとたどり着いた。
「やっと小屋についたぜっ」と声を張り上げる新木。
ガサツな奴め。
☆ ☆ ☆
「孫がお世話になりました。本当にありがとうございます」
ヘレンのおばあさんが頭を少し浮かせて俺たちの顔を見た。
「あ、無理はなさらずに。おばあさんは横になっていてください」
「そうですか。申し訳ありませんね」
俺はおばあさんを布団に寝かせるとヘレンのもとへ近寄っていく。
そしておばあさんには聞こえないように、
「なあヘレン、おばあさんはどこが悪いんだ? 怪我か? それとも病気か?」
小声で訊ねる。
「よくわからないの。うち貧乏だからお医者さんにも診てもらえないし……」
とヘレンはうつむいてしまう。
「おい結城、空気読めよな。そんなデリカシーのないこと訊くもんじゃないぞ」
お前が言うか。
「勘違いするな。怪我か病気か訊いたのはヒールかリフレッシュか判断するためだ」
「なーんだ、そういうことかよ。だったら早く言えよな」
「結城くんは本当に小さい女の子が好きなんだね」
語弊のある言い方をするな。
「え、えっと、ひーる? りふれっしゅ? って何?」
「あー、実は俺はどんな怪我でも病気でも治せるんだよ。だから今からヘレンのおばあさんを治療してもいいか?」
「えっ、ほんとっ?」
「ああ、本当だよ」
俺は努めて優しくヘレンに話してやった。
「おねがいお兄ちゃんっ、おばあちゃんを治してあげてっ」
「ああ、任せとけ」
俺は寝ているおばあさんの横に立つと「ヒール」「リフレッシュ」と立て続けに唱えた。
するとおばあさんは、
「……ぅん? あら? 何か体が軽くなったような……」
言いながらすくっと立ち上がってみせる。
「おばあちゃんっ!? 動けるようになったのっ!?」
「ヘレン。おばあちゃん、なんだかすっかり体の調子がよくなったわ。嘘みたいよ」
「うわぁ~ん、おばあちゃ~んっ!!」
「あらあらヘレンったら」
泣きながら抱きついてくるヘレンをおばあさんは涙ながらに抱きしめた。
その光景を前にふと横にいた新木を盗み見ると、新木は目を潤ませていた。
だが俺の視線に気付くやいなや、新木はそっぽを向いてしまった。
素直じゃないな、まったく……。
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